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walnutさんのハミダシクリエイティブの長文感想

ユーザー
walnut
ゲーム
ハミダシクリエイティブ
ブランド
まどそふと
得点
79
参照数
448

一言コメント

リズムの良い会話劇、緩急のついたシナリオ、萌えのツボをついてくるヒロインたち。完成度の高い萌えゲーでした

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

会話一つ一つが良かったのが、この作品の満足度を高めている要素に挙げられるだろう。現代的なパロディネタを豊富に取り込んでいる。主人公を含めたキャラクターたちがオタクであるため、ネタが会話に溶け込んでいる。また、各節ごとのタイトルにも工夫が凝らされていた。そういったネタだけでなく、そもそもの会話がコメディとして成立している。キャラクターそのものが魅力的なのもそうだし、それぞれの会話での役割も明確なのも手伝っている。主人公は変態紳士のような人物で、キモい発言をしてツッコまれたり、逆に暴走しかけるヒロインたちをツッコんだりする。柔軟に動けるのは主人公らしい。妃愛は主人公らの発言をより盛り上げる反応をする。バッファーとでもいうべき存在だ。華乃はオタク女子的なノリでツッコむ。語尾がおもしろいので、セリフのたびにリズムができる。あすみは純真キャラ。会話が過激になりすぎないよう中和する。詩桜センパイは、会話の引き締めだろうか。このように、キャラが立っているから会話が自然に面白いものになっている。会話が小気味よく進むからキャラがより確立されていく。キャラコメディそのものがしっかりしているのだ。

次にストーリーだが、最初に生徒会の立ち上げ、夏休みでの発展、次に文化祭という大目標、そして文化祭後のアフターストーリーと、汎用的でわかりやすい起承転結ができているのだ。だからこそシナリオの流れそのものに身を任せられる。

そして萌え。友人ポジの広夢くんやギャルのアメリは、攻略対象でないながらに主人公に気のあるような素振りを見せる。この2人の個別ルートがないのが、もどかしい。各ヒロインたちも主人公に気があるんだかないんだか、曖昧に反応するので、素直にかわいいし、自尊心を満たしてくれる会話をするのだ。だから気持ちいい。

ストーリーそのものに言及する。具体的に各個別ストーリーを眺める。

あすみルートは、あすみの処女性と、主人公への信頼感が強調されており、庇護欲がたいへんくすぐられるものとなっている。もともと小動物的な印象をうける彼女であるのだから、それを加速させるようなストーリーになっているのだろう。Vtuberという極めて現代的なテーマを扱ってもいる。現在進行形で揺れ動く業界事情が感じられた。

詩桜先輩ルートは文句が多く出てしまう。そもそも出会いから印象の悪い先輩だ。そのマイナスを見事に吹っ切るものにしてくれれうだろうと期待したが、実際はよりヘイトが溜まる形となった。そもそも傍若無人なところがあるヒロインなのだから、むしろ主人公らをぶん回した上で大成功くらいしてくれるかと思っていた。しかし実際は主人公に圧をかけて努力義務を押し掛ける、主人公に論理的な正しさを求めるわりには、大切なところで嫉妬を剥き出しにして主人公に当たるダブスタさ、この2つが大きいだろう。特に後者の展開には大変イラだたされた。出会い以上にストレスだった。結局主人公が先輩の傲慢さを肯定することで解決しようとしたストーリーも、ヒロインの悪い面を強調するようで心象が悪い。
加えてシナリオのネタばらしにも愕然とした。コメディとして楽しみたいところが、理屈づけられてしまった。興醒めである。
唯一不満点が先に出るシナリオだった。

華乃ルートは、共通と個人のギャップが面白かった。かわいい、デカい、性欲旺盛!甘々だった。非の打ち所がないと言えるだろう。

妃愛ルートは最高の妹ルートだった。そもそも妃愛が主人公を好きになるある程度の動機付けがされており、ある選択肢でその肯定が加速するかどうかといった他ルートの差別化もわかりやすかった。その上で妃愛が身を置く声優業界の険しさや、強さばかりが見えた妃愛が見せる弱さのギャップという、シナリオ内の高低差がそのまま面白さになっていた。そこから、兄妹関係がより強化された様で、素直に良かったと思えた。

総評。ラブコメとして完成度が高い。満足度の高い萌えを提供してくれた良作だった。