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walnutさんのKing Exitの長文感想

ユーザー
walnut
ゲーム
King Exit
ブランド
深爪貴族
得点
89
参照数
280

一言コメント

シナリオが熱くてとても良かった。王道を行ったものであり、テンポがよく、終盤はとても盛り上がり、止まらなかった

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

主人公のゲオルイースが無実の罪で投獄されてしまい、そこから脱出を目指す地下監獄編。ゲオルイースが魔族の生き残りである残滓たちを討伐し英雄となるまでを夢の中で追想する戦争編。この2編を重ね合わせるように進めていく本作はRPGならではの仕立てと言えるだろう。

しかしながら、シナリオそのものが先行しており、RPG自体はそこまで面白いわけではない。よくあるゲームシステムなので、そこに力を入れてないのもあるだろう。正直、シナリオを早く読みたいのに、ゲーム部分をしないといけないのが面倒ではあった。

しかしシナリオはとても良いものだった。良シナリオを求める人には胸を張ってオススメできる。

序盤は世界観の理解に苦しんだり、一気に出てくるキャラクターに混乱するだろう。が、段々とキャラクターを知り、世界がわかるようになった頃には、もう先が気になって仕方がなかった。最初のうちは過去と現在がどっちがどっちだかわからなかったけど、話の主軸は脱獄で、過去編は夢の中の話だとわかるとスルスル進められる。

戦争編は、魔族に酷い目に合わされたやつらが魔族に復讐するという感じに近い。
しかし、それぞれに戦う理由があり、矜持があり、各残滓を打ち果たすために頑張れちゃうんだよな。ここで特に好きなのはベローの話かな。弟子たちを洗脳されて、30人いた弟子が3人にまでなってしまった。家族同然の弟子たちを殺さないといけない、でもその辛さを乗り越えるところが大好きなんだ。

さて、この作品の面白さはなんといっても脱獄するところにかかっているだろう。特に終盤の面白さは商業のシナリオゲームにまったく退けと取らない。
過酷に立ち向かい、ゲオルイースとスティアラは絆を深めていく。ゲオルイースはカリスマ性を発揮して多くの人から支持を集めていく。そういう積み重ねが終盤で結実するから思わず涙しちゃったよ。
特に、無二の親友であったグイーネが闇堕ちして絶望を与える敵になってしまったところ、それからスティアラに守られるシーン。多くの人から王となるのを望まれ、そして本当のピンチの場、大王に死の淵まで追い詰められた末に王の紋章の覚醒。この2個はこの先何度も思い返しては感動に浸れる名シーンだと言える。

ゲームそのものは難易度をぐっと落としており、簡単なので気軽にできるだろう。あまりRPGを遊ばないので助かった。

荒削りながらも熱がこもった良いゲームだった