心理描写が秀でており、それがギャンブルという要素と合っていました
共通とTRUEが面白かった。個別は短いし、内容も薄かった。
主人公がポーカーで稼いだり失敗したいるする。そのヒリヒリした戦いがルクル氏による詳細な心理描写であらわれていた。伏線がしっかり張られており、良い形で回収されている。
あまり『紙の上の魔法使い』が合わなかったので、本作が合うかわからなく不安だった。杞憂で済んだ。やっぱりルクルのゲームは面白い。
《共通》
主人公がギャンブルに強そうなのはわかっていた。しかし、気が弱そうで、どうにも油断していた。主人公の正体が、CAだと明かされたときは「やられたー」と声に出してしまった。考えてみたら伏線はかなり張ってある。思わせ振りな単語が多かったので、気付くべきだった。
そこで何度か主人公がギャンブルで戦う姿が描かれた。そこでルクル氏の筆力が思う存分出ており、こっちまでヒリヒリさせられた。久し振りにテキストでここまで読まされた。
人魚姫の設定はよくわからなかった。ゴチャゴチャしていると感じたのが正直なところ。泣ける泣けないの話がピンとこなかったなぁ。
主人公たちが誘拐・監禁された事件「鳥籠事件」が繰り返し話題にあがり、何度も意味が上書きされていったのは印象深い。
そしてラスボス格の征士が登場する。ルクルの書く悪役はとってつけたようなものが目立つが、このキャラクターは変なセリフとたくさん吐いてくれたので好感触。一番好きなセリフは「男女平等エルボー」。
もとから人工的な描写が目立つ作者なので、そこを楽しんでいるまである。
《ゆらぎ》
このキャラいる?
最初のブラフ以外ではあまり活躍してなかった印象。キャラクター的にもヒーローになりたいってのが薄いし、小夜さんへの想いのもともかなり弱かった。ヒロインの格じゃないよ。
《夕桜》
実妹キャラ。ルクルっぽい。いっつも頭がおかしいテンションで会話してる。でもその狂ったテンションがスパイスになるなんて……あまり好きなキャラ付けではなかってけど、ちょっと好きかな。
個別の話が一番良かったキャラだな。主人公がポーカーしてたし。だから楽しかった。
TRUEエンドで鉄バットを振り回してたシーンがとても良かった。唐突にB級スプラッター映画並の雑な展開で笑ってしまった。
《くくり》
実質メインヒロイン? 彼女が人魚姫だったから物語が動いていたね。
小夜に嫉妬し続けていたのがかわいいキャラでしたね。
《小夜》
偽の妹。主人公のことをお兄さんと呼ぶの大好き。主人公にリンゴを食べさせてもらう描写がえっちっくて最高だったなぁ。ルクルのこの、実の妹ではないけど、しかし妹と同等の関係へと向かっていく力場が刺さる。
一度主人公が灯さんにボロ負けするシーンがあった。そこで主人公を蔑んだ目で見る描写がとても興奮した。偽の妹に蔑まれるなんて……ご褒美か?
実際は半分だけ血がつながっていたらしい。その設定が明かされたところもよかった。兄に縛られている彼女が、兄の喪失に発狂するってのがとてもキましたね。
《その他》
灯さん―――良いキャラだったなぁ。正義感に溢れて行動しつづけた末に、歪む。でも頑張りつづけたんだから、ね。明るくて、かわいい。
紫子―――ほぼメインヒロイン級の業を背負っている。伏線のおおくが交じわっているから、このキャラクターに関する話はだいたい面白かった。本作で本当に報われてほしかったなぁ。
紅葉―――ラスボスだとは。全ての元凶。別に殺されてもよかったでしょ。でもクリソベリルが生き残ったし、この子も生き残ってしまうんだ……最後の勝負で途端に動揺したのは興醒めだった。強いんだったらそれくらいで怖気付くな!ちょっと残念だった。