主人公とお姉ちゃんの退廃的な雰囲気がとても刺さった。
今作のメインヒロインはなんとお姉ちゃん。近親相姦ものは好きなのでかなり嬉しかった。
お姉ちゃんは過保護で、主人公は病的なところがあり、家庭は崩壊気味。暗い雰囲気が支配する。タイトル画面の冬の道路はロシア文学を思い出させる。
すかぢばりに引用があるのはいかがなものかと少し思ったが、中原中也が私は好きなので絶頂してしまった。主人公は必ずしも陰キャと言い難いが、近い者はあると思う。
母親が焼身自殺した話や、父親と姉弟が似ていないあたりが、最後の設定開示につながる辺りはよかったかな。叙述トリックをやろうとしている節はあるが、説明描写が多くてダレてしまう。ここら辺は下手。でも凝ってているし、かなり面白さが詰まっている。
近親相姦がタブー視され、社会などの檻の中では嫌われるという話。主人公たちが父親や学校といった監視してくる存在が作る籠の中にいるという比喩。そして主人公が姉を鳥籠の中で育てる百合の花のように閉じ込めて愛でたいというメタファー。これらがくどいくらいに使われて気持ちよくなる性癖なので、好感を持って受け止められた。
ただ、社会や常識や家族といった外側の檻を壊して、心の中に作る檻の中に姉を閉じ込めるというあたりが分かりにくいというか、複雑だった。
最終的に運命というか、どうしようない理を感じさせるのはモヤッとする。今までのシリーズにあったような解放感が薄れていて悲しかった。