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una08さんの天ノ少女《PREMIUM EDITION》の長文感想

ユーザー
una08
ゲーム
天ノ少女《PREMIUM EDITION》
ブランド
Innocent Grey
得点
95
参照数
390

一言コメント

色羽――それは瑠璃色の羽。 殻ノ少女が求めた自由な青い翼を持ち、未来へと羽ばたいていく。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

色羽――
それは瑠璃色の羽。

殻ノ少女が求めた
自由な青い翼を持ち、
未来へと羽ばたいていく。

―――

筆者の感じたことを
概ね以下の順でまとめた。

素晴らしきこのゲームに対しての想い、
感情を共有出来たら嬉しく思う。

1.TrueEnd感想
2.絵画「瑠璃の鳥」考察
3.Trueタイトル背景 考察
4.Innocent Greyへの偏執
5.全体的な感想


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1.TrueEnd感想
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~TrueEnd:色羽との邂逅~

自分の出自が知りたい。
人として、根源的な願い。

冬子と同じ様な出会い。
それは宿命か、それとも運命?

彼女の第一声で、
顔に一筋の涙が伝う。

フィナーレを飾る曲、
エンディングは「瑠璃の鳥」。

冬子との想い出が頭を駆ける。
それと同時に冬子との別れを自覚。

そしてタイトルバック、
そこで感情の箍が外れた。
数分間泣いて、動けなかった。
そこまで唐突で大きな感情変化。

その理由は何だろう。
 幸せ?
 嬉しさ?
 麗しさ?
 寂しさ?
 愛しさ?
 切なさ?
 懐かしさ?

簡単には表現できない。
何故なら複雑に強固に難解に、
感情が織り交ぜられているから。

生まれた感情を唯一表せるのは、
この「殻ノ少女」の物語のみ。

胸に渦巻く想いを記述出来ない。
だから物語は素晴らしい。
新しい感情をありがとう。


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2.「瑠璃の鳥」 考察
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「瑠璃の鳥」
冬子が最後に残した絵画の銘。

殻から青色が美しい“ルリビタキ”が
飛び立つ様が描かれている。

これは“殻ノ少女”である冬子から、
“青い鳥(ルリビタキという種)“である
色羽(瑠璃)が生まれ羽ばたくことの暗示。

生まれや環境により、
多くのしがらみを抱えてしまった冬子。

その様な環境の中で自由を求め
本当の自分を探し始める。

そして、その発露が色羽(瑠璃)である。
彼女は生まれこそ因果を持っているが、
その後の生き方は正に自由。

本当の自分を教えてくれる人も居る。
佐枝家でも真っ当な愛を受けて育った。

自らを知り自分で判断し、
自由に進める未来を持つ。


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3.Trueタイトル背景考察
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<背景概要>
冬子との大切な出会いの場所、
井の頭公園のベンチに佇む色羽。

色羽の横には青い鳥の羽。
桜が舞い季節が春だと想像出来る。

―――

①「構図について」
左半分は青い鳥と淡い青のみ。
右半分には色羽と桜、色彩は薄紅。

左側は過去、
右側は未来を示す。

冬子が憧れ手を伸ばした自由への想い。
その澱(おり)がベンチに佇む、青い鳥の羽。
まさしくそれは過去。

対し色羽と薄紅色の桜、
その枝々が美しい長髪の
ベールのように見える。

それはどこか花嫁衣装のようだ。
明日や将来を感じる、それは未来だ。

物語は文字で語られる。
それもまた左から右へ。
 左は過去
 右は未来
綴られる文は時を孕む。

―――

②「舞う桜の花弁」
舞う方向は右から左。
未来から過去へ向かって舞う。

玲人との春を見られなかった、
冬子に対して色羽からの
贈り物だろうか。

淡い青に向かって舞う薄紅色。
青の中にいるからこそ、美しさが際立つ。

凄惨な事件が多かった本作に対し、
その未来は明るい色で彩られる。
負があることで、正が際立つ。


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4.Innocent Greyへの偏執
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このゲームのメーカーとして
意図した思惑というのは、
「Innocent Greyへの偏執」を
抱かせることであっただろう。

メーカーに対しプレイヤーに
パラノイアを抱かせ、離せない様にする。

事実、私もイノグレ新作である
「カルタグラHD」の発売が待ち遠しい。
※秋吾と和菜さんの
馴れ初めが見れるはず。
楽しみすぎる、うひょぉぉぉ!!
  イノグレもう絶対離さないw

読んで頂いたいる方もどうだろう、
天ノ少女までプレイし偏執に囚われただろうか?
いや囚われていないはずはない!w

―――

良い物語とは
感情を伝えて、心を動かし
行動に移させることが出来るもの。

その行動には様々ある。
 ・考え方が変化して
  前向き生きようする
 ・ゲームの感想書く(まさに)
 ・聖地巡礼する
 ・布教活動する
 ・次回作を期待する
 ・ブランドのゲームを買う

行動は物語の周知・伝播や
購買行動へと結び付く。

それは提供する側と消費する側の
良いサイクルとなっているだろう。

私も「殻ノ少女」を知りプレイし、
イノグレのファンの一員に
なれたことを誇らしく思う。


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5.全体的な感想
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1)全体について
まずスッキリとした読後感。
多く泣いたからか、満足。

各々の登場人物に対して、
幸せそうな未来が見えた。

続編作成は可能な様な印象を受けるが、
まず過去であるカルタグラHDが待ち遠しい。

(ダンテ「神曲」からの考察は有識者に任せますw)


2)各登場人物について
 ※印象に残した人物のみ
―――――女性陣―――――
◆◆ 朽木 冬子 ◆◆
私は「殻ノ少女」をプレイした段階では、
冬子と向き合い始めたばかりだと思った。

その後二人の関係性が進み、
生存は無いにしろ何かあると思っていた。

思い想い続けていた。
まさしくパラノイアに囚われていた。

そして天で語られた真実の物語。
娘の生存とTrueEndで偏執は解かれた。
(気がします…)

未散にも言われた気がしますが、
 “見えないもの”を見てはいけないし、
 “見えるもの”を見ないのもいけない。
本当に真を突いた良い考え方だと思う。

過去に囚われると前に進めないし、
現実を自覚せず逃げていても然り。

簡単にいえば、
 無いものは無い。
 有るものは有る。
 現実から目を逸らすな。
ってところだろうか。

現実を受け止め、
前に進む力を貰えました。

ありがとう。


◆◆ 茅原 冬見 ◆◆
真崎いじりが最高に面白かったです。

雪子と未散という二人の娘を持ち、
前向きに生きている姿に尊敬します。

真崎とくっつくことは無いだろうが、
いつか幸せになってほしい。


◆◆ 時坂 紫 ◆◆
昆虫好きという芯を持っている。
大学でゆっくりと将来を考えて欲しい。

相関図では真崎に対して
何の矢印がついていない。
しかしあの関係性ならいつかは…


◆◆ 葉月 杏子 ◆◆
魚住と末永くお幸せに。

きっちりと玲人と関係を精算し、
別れたところが良かった。

それでも良き友人として、
二人の関係を眺めていたい。


◆◆ マリス・ステラ ◆◆
青い鳥の物語の様に、
身近なところにこそ
幸せがあるのではないか。

その様に感じた。

お互いに無くしたピースが
ピッタリとはまった様な関係。

“愛している“とは違うかもしれないが、
ただお互いが必要な関係もあるだろう。

進むためには、休息も必要。


◆◆ 窪井 千絵 ◆◆
え?
ビジュアルも声も
めっちゃ好きなんだが、、、、、


◆◆ 佐藤 歩 ◆◆
佐藤さんめっちゃカッコいい!
結婚式の礼装姿、大好き。。。


―――――男性陣―――――
◆◆ 時坂 玲人 ◆◆
色々とお疲れ様でした、と伝えたい。

イケボに常に癒されてました。
ありがとうございます。

由紀子への墓参りも、決着の後でないと
絶対に行かない男の意地に惚れました。

新車?の「PGC10型スカイラインGT-R」
ハコスカを是非とも大切に乗って下さい。


◆◆ 真崎 智之 ◆◆
いじられキャラとして、
いい味を出してました。

感情が動きにくい心となっていますが、
人間味溢れる味がとても大好きです。

冬美に「あんな奴~」って感じで
いじらている状況が好きでした。

紫とどうなる???
妄想捗りますね。


◆◆ 八木沼 了一 ◆◆
姉というパラノイアを抱えながら、
必死に警察官として進んでいる姿に
とても共感できた。

幼少期の体験を考えれば
歪んでしまうのは当然のこと。

想いが強すぎたため、
六識に利用されてしまう。

自殺してしまう√では、
モニタ前で「八木沼…」と
つい言葉が漏れた。

やっぱり
眼鏡・官僚・高圧っていいよね。。。


◆◆ 黒矢 尚織 ◆◆
最後まで本心を掴めなかった。

「小説を出し、読んでもらう」
という偏執があったそうだが、
本当かどうか判断つかなかった。

曲がったことはしてないので、
筋は通っている様な気がする。



【最後に】
拙い感想になりましたが、
最後まで読んで頂きまして
ありがとうございます。

感情の澱を出し切り、
すっきりしました。

またこのゲームに対しての想い、
感情を共有出来たなら
嬉しい限りです。