マルチシナリオADVにおいて最も美しい答えの一つだと思う。
マルチシナリオADVと呼ばれる物には様々なタイプがある。
古典であるポートピア、神宮寺、慟哭、遺作に代表される推理型。
大多数のエロゲやギャルゲで採用されているマルチヒロイン読み切り型。
Kanonやつよきす、家族計画などがその最たるものだが、ぶっちゃけヒロインが五人いたら五本シナリオが用意されているだけなんだからオムニバスっていった方が良くね?
そして、本作の鍵にもなっているYU-NOやマブラヴオルタに代表される並行世界ネタ。
推理物の傑作は?と問われるとシナリオを度外視してシステム進化の果てともいえる慟哭と答えたい。
しかし、答えは?と問われると変わってくる。
慟哭はアンサーというよりは発展型と考えた方がしっくりくるので推理物のアンサー作品といえば個人的には「クロス探偵物語」を上げたい。
ADV黎明期には存在していたコマンド入力型を現代へと復活させただけでなく、初心者でも楽しめるよう凝らされた作りに好感が持てる。
推理物=純粋な知恵比べという原点回帰が答えとは皮肉に感じなくも無いが私の勝手な答えなので無問題だ。
キャラを攻略するたびに気持ちをリセットするっていうのはプレイヤーとしてどうなの?というマルチヒロイン型のアンサーとして平行世界やループネタがある。
話は多少それるが、これはヘビーユーザー視点への答えであり、好みのタイプを一人攻略したからもういいよというライトユーザーへの答えはAIR等に代表されるトゥルーエンド物だと思う。
話を戻すと、この手の作品の多くは主人公感情移入型の最たるもので好きなキャラがいたらOKというヒロイン訴求型の手法を使わず
シナリオを一つのエンディングへ収束させる事も多く、リスク分散ができない事から好みが分かれることが多い。
しかし、そのリスクを負うだけの価値はあるという事は本サイトを始めとして多くの世評から明らかであると思われる。
そして、このマルチヒロイン型のアンサーである平行、ループネタに対してあたかも別解を示すかの如くアンサーを叩き付けたのが前作であり、本作はその補足説明と捉えることができる。
平行ネタとは攻略ヒロインを断片的ではなく連続的に捉える事を可能とさせたギミックであり
前作はそのギミックにギミックを仕掛けた裏の裏は表といういやらしい答えだった。
本作はそのギミックにギミックを仕掛けた物に更にギミックを仕掛けるという自虐ともいえる荒業である。
これはヒネたプレイヤーには好評なのだが、素直なプレイヤーには耐え難い仕打ちなのか前作よりも輪をかけて理解されない事が多い。
しかし、これは前作、そして本作と連作で考えると壮大なネタフリを含めた既存への挑戦であり、従来のADVとは一線を画していると言いたい。
余談ではあるが、次作にあたる「Remember11」は本作で素直な人を振り落としたにも関わらず、解釈を強要する事で更にヒネた人まで篩にかけようというマゾ仕様である。
大抵のゲームは起承転結で纏めた後は個々のプレイヤーの解釈に委ねられ、好きに判断してもらっていい。
たとえ解釈や受け取り方がが違ったとしてもプレイヤーがそう感じたならそうでしかないという割りきりがある。
場合によっては開発後記や設定資料集などで明かされる場合もある。
それに対し「Remember11」ではソフト単品で起承転結了までいく。
いわば強制的に設定資料集をみせられ正しく理解することが目的であり、プレイして楽しいかどうかは二の次という鬼仕様を取っていて
ここまでゲームという物を斜に構えて作れるのも天晴れな才だなぁと感心してしまう。