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twilightさんの群青の空を越えての長文感想

ユーザー
twilight
ゲーム
群青の空を越えて
ブランド
light
得点
87
参照数
0

一言コメント

最終兵器彼女(5分後の世界やリング オブ レッドでも可)+TOP GUM+きけわだつみのこえ+ぼくらの七日間戦争+意外に濃いエロ=本作 という下種な批評は置いといてコンシューマ移植の可能性大な作品だと思う。萌え市場を取り込めそうに無い所が痛いが・・・近年稀に見る傑作。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

個別シナリオでの主人公の世界に対してのアプローチが大差ないのにも関わらず
こうも情勢が異なってしまうのはどーした物かと思ってしまう。
まぁ、ゲーム的には共通シーンが減ってありがたいかぎりではあるのだが・・・・・・

若菜シナリオは王道中の王道というか若菜と社と演劇と戦争を絡めた分り易い話に仕上がっている。

加奈子シナリオもとい最悪事態シナリオ('A`)
加奈子や社はどちらかというと蚊帳の外で若菜とクーとタツ、そして使命に殉じて散っていく学徒兵、
といった本作のマルチサイトを上手く利用した、複数視点話で群像劇として良くまとまっている。
若菜×タツ話あたりのレベルで本作での性に対するアプローチは十分表現されていると思うので
コンシューマで売ったとしても不思議ではなかったと思う。

美樹シナリオは加奈子シナリオでの報われない部分をフォローした形の大団円シナリオとなっている。
戦時物とはいえ陰鬱な話ばかりではキツイのでハリウッドライクなさっぱりしたテイストを持ってきたのだろう。
例によってキスで〆(ノ∀`)

夕紀シナリオは今ひとつ意義が感じられなかった、圭子シナリオへの橋渡し以外の無い物でもなかった気がする。
兵士一人一人息遣いを高める為の描写ならば恵実シナリオでも構築した方がマシだったろうし、
GRAND ROUTE時の流れを先に暗示させる形でサイレンシナリオを構築しても良かったように思える。

圭子シナリオ、腐女子キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!
という事は置いといて・・・上でも書いたが夕紀と想いが繋がる事が無かった以上、
夕紀シナリオと圭子シナリオは一つと考え、夕紀は夕紀で喰ってしまってから圭子へと収束しても良かったと思う。
どちらにしろ尻切れ感は夕紀といい勝負。

GRAND ROUTEは作り手が書きたい事、やりたい事をとにかくやりましたという感がしないでもない。
一番皆がが輝いているシナリオだったように思う(美樹が微妙にハズレくじ引いた臭いが)、少しぼくらの七日間戦争的な感じがしないでもなかったが・・・
最後の言葉、「人は・・・・・・」の後には何が続いたのだろうか?
個人的には人は人の為と続きそうな感じがするのだが、個人解釈はいいだろう。
多分、アナザーストーリーを作り易いよう配慮したのかもしれない。

総括としてはライターが締めくくる事はしなかったという面が強い話が多かったものの提起としては大変面白い作品という所だろうか。
個人的ダメ出しとしては衆愚、衆愚と連呼しておきながらの、やはり最後は皆様方の心ですな欧米市民主義的結末は少し残念かなぁと思う。
ナショナリズムを利用しつつもナショナリズムを否定した所のイデオロギー論という学説ゴリ押しで進められたとしても、最後はSFで逃げるのかよ的感想を抱いたとは思うのだが・・・・・・
個人的には円経済圏理論に対する主人公の結論は教授の域で留めて欲しかった様に思う。
気付いてないんだ!と言い切って市民感情を促す様は、教授の言を借りれば「若さか・・・」と思えてしまう。
本作はやたら理念に燃える侍ばかりが出てくるのでアレだが、お上や社会が変わっても適当に逞しく生きていくよ・・・
という日本町人的価値観がシナリオ的に皆無だったのは軍事ネタが頻出するが故に少し残念だった。
やはり日本人は市民たりえず町人である、という面をライターは筑波司令の「七割が侵略に~」の件から察するに理解しているはずなのだが、
主人公等の理想論がさも正しいように見せてお涙でお茶を濁したのはプレイヤーにレベルを合わせたというか、こういうのが喜ぶと思ったのだろうか?


まったくの余談だが
幕間にある抜粋記述の数々の内の一つである
「わたしたちのいつの日も・・・」より抜粋って
なに抜粋しとんじゃい!(゚Д゚)