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tomosibee3104さんのあくまで、これは~の物語の長文感想

ユーザー
tomosibee3104
ゲーム
あくまで、これは~の物語
ブランド
Azurite
得点
80
参照数
291

一言コメント

あくまで、これは~の物語

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

絵柄が好みで気になっていたところで500円セールに追加され迷わず購入。
ヒロイン4人に各4シーン(ゆかりのみ5シーン)で計17シーンとエロも十分。
一応夏ゲーらしいということで満を持してプレイ。

フローチャート式で選択肢ごとに違った展開を見せる物語。1つ1つの話は短く分岐世界が多いためエロシーンは初Hが比較的多め。処女厨的にはどうなのだろうか。

物語は大別して3部構成。「あの夏の物語」であり「あくまで~の物語」である第一部。「あの夏の物語」のその後を描いた第二部。そして「~の物語」本編とも言える第三部。

第一部は物語として詰まらない。一応拙いことに納得のいく理由は説明されるのだが、物語として詰まらないことに変わりはないので個人的には好みでない。
第二部は非常に短い。あくまで繋ぎの物語。
第三部はひなみをヒロインとした本編。第一部ではひなみの攻略は出来ないため、ひなみが気になる人は第一部に負けず頑張って欲しい。

好きなヒロインはかな>ゆかり>ひなみ>えみ



以下ネタバレ



「あくまで、これは ハジメの物語ーー」とプロローグの終わりでも提示されるように、
そのままこれはハジメの物語。もしかしたらトリプルミーニングかもしれないし、他にも意味があるかもしれない。
①第三部で明らかにされるように「肇の物語」。つまり肇の創作物としてのあの夏の物語。
②「始めの物語」。第三部が不完全燃焼で終わることから続編の構想があったのかもしれない。
 発売から5年が経過しているため望み薄ではあるが。「都筑(ツヅキ)の物語」とか
 「亮(了)の物語」とか欲しかった。
③「初めの物語」。肇の処女作として、初心者向け創作教本としての物語。こうして観点で見ると
 第一部の拙さもまた違った受け止め方が出来るのかもしれない。

フローチャートの新たな使い道といい、こうした発想の勝利みたいな作品自体はかなり好みなのだが、他でも言われていたような問題点も非常に目立った。
・事件未解決に謎の視線で不完全燃焼
・ほぼ同じ説明が違った場面だと未読扱いで強制スキップするしかない。
・キャラクターの心情が不自然(かなの義憤、肇や周囲のおじさんへの甘さ等)
・恋愛過程の描写がほぼなく萌えゲーとして厳しい
・第一部がつまらなさすぎてネタバラシの後でもカタルシス不足
・成長後のヒロインたちに立ち絵がない
・フローチャートに概略どころか題名すらないクソ仕様
・立ち絵キャラ少なすぎて黒幕が大体想像つく

他、ミスリードのためとはいえ第一部で謎の男=肇を悪役っぽく描いたせいで後から見返すと間抜けぽい。
爆発事件が起こってENDみたいなのもいくつかあるが、あまりに終わらせ方が雑。 次はどうするかと言いながらベッドに横になったり、モニターの前でほくそ笑んでる場合じゃないぞ肇クン。こんな雑でクソみたいな結末量産してどうするんだ。

ただ一部がつまらないとは言え納得のいく説明はついているわけで、箸にも棒にもかからないような物語ではなかったと思う。そうした点は評価したい。序盤も城一(ジョウイチ)が渾名呼びで、本名はジョウ ハジメだったりするのだろうか、とか色々考えながらプレイできて面白かったことは面白かった。

余談
第一部の結末がえみとかなの二種類あるのは城一が自分の父親だと無意識にでも気づいていた可能性があるのだろうか。だから自然な流れとしてえみEND、城一が父親なら母親は可奈と考えてかなEND。
そうして自己認識上の母親の濡れ場を描ける点はまた違った才能を感じさせるが…