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tglさんのフルキスの長文感想

ユーザー
tgl
ゲーム
フルキス
ブランド
戯画
得点
40
参照数
1683

一言コメント

前回の「リプキス」で「シナリオを短くして欲しい」というアンケート結果が多かったのであろうか? 今回の「フルキス」は、無理矢理にシナリオを短縮したように思える内容で、一部に不満が残る残念な結果となった。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

「リプキス」の時には感じなかった違和感を、なぜ「フルキス」で感じたのか疑問に思い、もう一度「リプキス」をやり直して「フルキス」と比較してみた。
シナリオの展開、ヒロインを始めとする登場キャラクターの魅力、代わり映えのない退屈な日常に潜んでいる面白さなどの要素は、「リプキス」も「フルキス」も、ほぼ同じであった。
だが、「フルキス」が「リプキス」より魅力が劣っている点は、「恋人になってから距離を縮めていく過程が短すぎること」であったと思う。

具体的には、「告白して恋人になってから、「恋人って何だろう?」と試行錯誤を重ねながら互いの距離を縮めていき、
そうして初エッチに至る、というこそばゆい展開がキスシリーズの魅力の一つであったと思う。
しかしながら、今回の「リプキス」はこの過程の時間に大なたが振るわれバッサリとカットされていた。
この結果、「主人公はセックスをしたいがために、手近な女の子に告白した」軽薄な下半身男のようにふるまったことで、
共通ルートでの良い雰囲気が台無しになってしまったのがとても残念であった。


特に残念であったのが結希シナリオと、陽子先輩シナリオ。
結希編のシナリオは、幼馴染から想い人へ変わっていく相手とのふれあい、そして後夜祭で告白して恋人になる時まで秀逸であったのに、
恋人になったらわずかない間で「我慢できないからやらせて」男にしてしまったのはどうにかならなかったものか。
さらに、嫌がる結希を強引に押し倒してのしかかり、本気で怒る結希に対し「愛してる」で片付けようとするとは「どんなダメ男だ」とつっこんでしまうほど。

今作はキスシリーズのもつ良い雰囲気を壊してくれたのが残念。今後キスシリーズを継続するのであれば、リプキスのような「平凡であるが、その中に潜む非日常性を楽しむストーリー」を復活させて欲しいと思う。