威勢良く啖呵を切って真っ向からぶつかり合う、ハイエンドレベルの熱い和風中二バトル
※ Dies irae プレイ済み。PARADISE LOST, 神咒神威神楽(18禁版)未プレイ
Dies と比較してのコメントが多いので、その点はご容赦願いたい。
◆ 本作は Dies の続編である
本作は Dies 玲愛ルートの後の世界を描いた続編に当たるため、Dies プレイ済み、もしくは 神咒→Dies→もう一度、神咒 という順番でプレイすることをオススメする。また、PARADISE LOST, Dies irae, 神咒神威神楽は共通の世界観をもっており、その世界の仕組みが夜行・龍水ルートで説明されるので、PARADISE LOST もプレイ済みだと、更に楽しむことができると思う。
◆ ストーリーは一本道
ストーリーは主人公勢が協力して敵・夜都賀波岐を倒すところまで共通である。その後ラスボスに挑むところで個別行動となるため、ルート分岐によってどのキャラの行動が描写されるか変わってくるが、物語の結末は変わらないので群像劇のようである。
ルートは、
刑士郎・咲耶ルート → 宗次郎・紫織ルート → 夜行・龍水ルート → 覇吐・竜胆ルート
の順がオススメ。
◆ 主人公らの精神状態が特殊
シナリオライターの正田崇が電撃オンライン上で語っていたが、本作は極端な自己愛まみれの主人公ら(竜胆を除く)が更生して他者を認めるようになる物語である。特に初期では彼らは自己中心的な発言を数多くしており、素直に感情移入することができなかった。
とは言うものの、「何事につけても己が一番」「他者は己のための踏み台」のような思考には自分にも心当たりがあるので、誰もが持つ自己中心的な思考を極端にし戯画化した姿が書かれていると思って読み進めた。
◆ バトルはやっぱり熱い。けど...
Diesのように策略・裏切り・仲間割れといった混沌としたバトルはなく、敵味方がはっきりと分かれている。夜都賀波岐とのバトルの組み合わせも、作中や公式webページで予告されていた通りだったので意外さはなく、歌舞伎のようなお約束ささえ感じた。
自分はDiesのような混戦・乱戦の方が好きなのだが、威勢良く啖呵を切って正面から正々堂々激突するバトルも痛快に感じ楽しめた。
一方で、主人公らが急成長を遂げパワーインフレ感があったのはちょっとマイナスだった。夜都賀波岐との初戦では4人まとめてかかっても悪路一人に敵わなかったのが、後に一人ひとりが夜都賀波岐1人を倒すことができるまでに急成長する。その急成長は神様である波旬の後押しによるものであるという説明があり、また主人公らが自身の急成長ぶりを疑問に思わないのは、自分の能力・才能を絶対視している自己中心的な人間だからという理由付けはされているが、やはりパワーインフレを感じてしまった。
◆ 詠唱
詠唱は古事記や日本書紀、祝詞や真言などを元ネタとしており、理解するには一般常識レベルを超えた古典の知識を必要とされており、自分には難しかった。意味が理解できなかったため本当に呪文やお経のように聞こえ、Diesほど詠唱シーンに接しても盛り上がらなかった。
「伊邪那美命言 愛我那勢命 爲如此者 汝國之人草 一日絞殺千頭」とか読めないし意味も取れないよ!
◆ 追加要素
18禁版とくらべて、東征前の小話が2つ、東征中の小話が1つ、外伝が2つの合計5つのエピソードが追加された(そうだ)。それぞれの内容をまとめると以下の通り。
・東征前
「如月の章」…龍水の成人の儀式を通して、東征出発前の龍水の内面を掘り下げるエピソード
「弥生の章」…宗次郎&咲耶、刑士郎&紫織のやりとりがある珍道中エピソード。特に宗次郎と咲耶が精神的異常っぷりがクローズアップされている
・東征中
「箱根の章」…Diesと神咒の世界を繋げるエピソード。黄金を慕う龍明の思いが迸っている。
・外伝
「龍明の章」…元々夜都賀波岐側だった龍明がなぜ彼らと袂を分かったのかが判明する、本編から300年前の話。
「グランドエンディング」…現代的な服を着た主人公らと、現代に一般人として転生した夜都賀波岐らとの交流が書かれている。Diesファンとしては、蓮・玲愛と覇吐・竜胆が談笑するCGはとても感慨深い、フィナーレに相応しいものだと思った。
◆ CG
本作のコンセプトである「和風」を墨のような線で力強く絵を書くことによって表現しており、これがメチャクチャ格好良くてシビれる(何を言っているんだコイツと思った方は是非OHPにいって確認してほしい)。夜都賀波岐のグロテスクなCGはちょっと自分の趣味ではなかったが、それを差し引いても、自分がプレイしたなかでCGが最もカッコ良いエロゲだと思っている。
ただ、紫織が両腕を失い義手になってからも、いくつかのCGで腕が生身だったので、そこのところはしっかり統一してほしいと思った。
◆ BGM
笛や和太鼓、三味線やイヨーッという掛け声が入るなど、和風が全面にでているBGMであり、個々の音楽のレベルはかなり高く、DiesのBGMよりもカッコイイ。また、DiesのBGMの和風ロックアレンジが3曲あり、この3曲はかなりお気に入りである。ただ、専用曲を持っているのは刑士郎、夜刀、波旬くらいなので、BGMを聞いた時の自分の中での盛り上がりはDiesほどではなく、その点は物足りなく感じた。
◆ システム
シナリオライター正田崇のこだわりにより、文章は縦書でシステム上もカタカナ・英語は一切ない(流石にブランドロゴは英語だけど)。カタカナ・英語を排した結果、auto が「自動再生」、quick save が「高速記録」、quick load が「高速再開」となり、ストレスなく操作するのに少々時間がかかった。また、縦書のテキストでは、右側のテキストボックスに表示される縦書文章を読みつつ左右に長いCGを鑑賞する、という視線を左右に動かす必要があり、若干読みにくさを感じた。
☆ 総括
シナリオ、BGM、CG全てが最高に近いレベルでまとまっているバトル物。今後も正田崇×Gユウスケ×与猶啓至の作品は注目していきたい。