優しく暖かい冬の物語。「家族の絆」というテーマに感じ入るものがあれば是非。
まず始めに、BGMが素晴らしかったです。
同メーカーの過去作はこれといって印象に残るようなBGMはなかったのですが、本作のBGMは全体的に冬、雪といったものを彷彿させるような雰囲気に合った優しい曲調のものが多く、私の好みにドストライクでした。
特にタイトルBGMでもある「永久に舞う、雪の詩」がお気に入り。作中での使い方も良かったです。1ルートクリアする毎にタイトル画面で10分くらいぼーっと聞いていたりもしました。
本作は「家族」や「絆」といった人と人との繋がりを、エルフィンやルーンといった要素を上手く絡めながらストレートに描いています。
そのため、そういった題材のものが好きな方であれば間違いなく楽しめると思いますが、このテーマが終始一貫して語られるため、家族愛とか食傷気味だよぉ……って人にとっては冗長に感じてしまう部分が多いかもしれません。私個人としては大好物なので、かなり楽しめました。
シナリオはキャラごとに格差はありますが、世界観や雰囲気が心地よく、最後まで浸ることができたため全ルート安定して楽しむことができました。
以下ルートごとの感想。
・落葉
前述したとおり、基本的に全ルートで家族や友人、そして主人公との繋がりというものを描いており、そこにルーンやエルフィンといったファンタジー要素を絡めてドラマチックに展開するというシナリオです。
これを一番自然に、そして面白く描けていたのがこのルートで、家庭を顧みなかった父親の真実と和解、お互いに気を使いすぎた結果すれ違ってしまった姉妹間の壁の解消と感動できる場面も多かったです。
落葉と葉月、そして主人公の関係性や空気感が非常に居心地の良い空間を作り上げており、プレイしていてかなり癒されました。葉月の無垢な問いかけに対して恥ずかしがる落葉という構図が楽しい。
・りんね
落葉ルートの次に好みだったのがこのルート。実は妹でしたーという設定であるため、一番主人公が深く関わっていたルートだったと思います。
恋人になる→兄妹であることを知るという流れなので、それを知った主人公が悩みだすシナリオなのかなと思いきや結構あっさり受け入れ俺の想いは変わらないと宣言するりっくんがカッコよかったです。
・一夏
一番微妙でした。一夏がそこまで社畜姉にこだわる理由がよくわからないし、うじうじしている時間が長いため若干イライラさせられました。
一夏自体は可愛いし桐谷華ボイスも大好きなので、あまりネガティブな面は出さずに明るいキャラ通せばよかったんじゃないかと思わなくもないです。
・琴里
他と少し毛色が違う感じがしました。
親に捨てられたと思い込んでいたが実はそうではなく……という割とよく見る展開ですが悪くはないです。
・コロナ
宇宙飛行士としての使命を全うしようとするコロナと、それを支えようと一緒になって頑張る主人公の姿を描いた話。展開が一番ドラマチックで、宇宙から帰還するシーンは素直に感動しました。エロシーンが一回目に野外で二回目に観覧車というハイレベルっぷりには笑った。
・雪々
今までの複線の回収と自己犠牲の極致のようなシナリオ。雪々と幸、そして主人公の絆とそれぞれのルーンへの想いに、号泣とはいかないまでも思わずほろりときてしまう優しくあたたかい話でした。
当たり前だけど雪々が好きになれないとキツいかも。他の方のレビューを拝見させていただくと、仮に好きになれたとしてもロリロリであるため攻略ヒロインとして見れるか、というところが壁のようです。
全体的な話をすると、基本的に主人公が起こる問題に対して受け身であり後手に回ることが多く、前述したりんねルートのような要所でかっこいいところは見せるものの情けないところが目に付きやすいです。
また雪々ルートまで読めば許せるような気がしてしまうものの、ヴァル研やそれに関連する大人たちに関しては葉月の誘拐や非人道的な研究や試み、それに対して反省する姿勢が全くない点を思うと正直あまり好きにはなれず、後手に回る主人公も相俟ってフラストレーションが溜まるような展開も多かったのでそのあたりはキツかったです。
テキストは今までのなかひろ氏よりも癖が少なくなっており、取っ付きやすくなったんじゃないかなと思います。そのためか複数ライターであることもあまり気になりませんでした。
また、本作は過去作よりもキャラクターに重きが置かれており、キャラクターの魅力を十分に引き出してくれていました。ヒロイン達はもちろんサブキャラ達も総じて魅力的であり、ひなたなんかは攻略キャラでもおかしくないくらいには出番も多く、掘り下げもしっかり行われています。
しかしまあ、注目すべきはなんといっても葉月なのは間違いなく、正直葉月と落葉の存在のおかげでこのゲームを最後まで読むことができたといっても過言じゃありません。
システム周りの不満は特にありませんが、強いて挙げるとするならばやはり選択肢スキップがないことに尽きますかね。とても長い話なので、これがあるだけでかなり快適になるんじゃないかと思います。
個人的には星メモと同等、いろセカ以上には楽しめました。シナリオ的には星メモの方がすっきりしているしクライマックスの感動もあると思いますが、テーマが一貫しており、かつ世界観や雰囲気がこちらの方が魅力的で、キャラクターの可愛さ、特に橘姉妹は今年発売のエロゲの中でもトップクラスの可愛さであったこともあり満足度は高いです。
最後に、幸姉さんとイチャイチャしたいのでFDオナシャス。