サスペンス風ADVの形式で描かれる、犯人とヒロイン達の心の闇を暴く狂気ゲーム。あまり深い事を考えずにプレイする人向け。(優衣84点 千歳90点 羽矢64点 透子61点)
インストール容量は3.57GB
●《天童優衣》
CG17枚 (通常CG13枚+HCG4枚) 回想2枠
●《氷室千歳》
CG15枚 (通常CG11枚+HCG4枚) 回想2枠
●《早乙女羽矢》
CG16枚 (通常CG12枚+HCG4枚) 回想2枠
●《九重透子》
CG14枚 (通常CG12枚+HCG2枚) 回想1枠
●《桐生梓》
CG4枚 (通常CG2枚+HCG2枚) 回想1枠
●その他
CG9枚 事件16枚
合計 CG75枚+(事件16枚) 回想8枠
BGMは23曲 ボーカル曲は2つ
『バタフライシーカー』はサスペンスADVです。いわゆる「日常シーン」=「ヒロインとの恋愛パート」がごっそり削られていて、15時間ずっと殺人事件の話です。
「萌え」や「恋愛」は無いに等しいです。これが萌えゲーだったら◆コンドーム使用率3/8◆に怒っているところですが。
ヒロイン3人娘はテンプレ属性に見えて少し癖が強く、キャラの内面描写が強く描かれている作品です。
「推理ゲーム」としてお話が面白くないのは他の人の感想と同じです。
「プロファイリング」と「バタフライシーカーの探査結果」と「人間嘘発見器」が「正しい」の前提で推理していること、
「ミスリード」がほぼないのは推理ゲームとして致命的欠点であり、シリアルキラー達はわざわざ署名的行動をしていたり犯行を隠す気がないです。
なのでプレイヤーが考察する余地は少ないですね。淡々と与えられる情報を読めば必ず解けるように作られています。
《桐生》先生が攫われた時にGPS機能つき携帯を使っているとか、矛盾点が無いわけでもなく。
まあ本作は推理ゲームがメインじゃない(はず)なのでどうでもいいです。
●《天童優衣》ルート
モニター越しに見る分にはいいですが、自分の目の前には絶対出てきてほしくないヒロイン。
現代のエロゲーキャラは感情を読み取り踏み込んでくるキャラが増えてきました。《天童》さんは見た目とは違い、主人公の心の闇に土足で踏み込んできます。
《遠野》くんが《天童》さんに侵されていくというか調教されていく展開は、プレイヤー視点でも精神的ダメージが大きいです。
彼女は好きor嫌いの価値観で判断するのではなく、魅力の絶対値が高いヒロインだと感じました。
共通パートで《演奏オジサン》と直接対決した時に《遠野》くんの狂気の一部が見えました。
このまま狂っていくのかを楽しみにしていましたが、それ以上に《天童》さんが恐ろしく《遠野》くんの狂気すら丸め込むような言動は恐ろしかったです。
《介護オバサン》は狂った殺人鬼ではありますが、見た目は普通なんですよね。
「プロファイリング」することで犯人の精神状態を読み取っていきます。シリアルキラーに近づいていく《天童》さんとそれを見るプレイヤー。
正常と異常との境界がはっきりしてないこと、壊れるのか壊れてないのかの判断が曖昧なのが怖い。
誰もが狂う可能性がある街――『バタフライシーカー』の魅力は日常の中の狂気にあると思います。
BADエンドは情報を得てかなり警戒しながらプレイしたのでダメージは最小限でした。
あのトラウマ生活シーンが短いのが幸いで、もし1時間以上続いたらヤバかったかも。
●《氷室千歳》ルート
このゲームの楽しみ方を理解したので、必要以上にキャラに感情移入しないようにしました。それでもこのルートが一番キツかったです。
まず《氷室》先輩のトラウマが想像以上に重く、心が壊れているヒロインを上手く表現できていますね。
「プロファイリング」シーンだけ見ればCOOL、かつたまに抜けている良くある眼鏡っ子キャラでいいのですが、
このルートでは感情が無いヒロインの狂気を感じることができます。
犯人の《来栖叶絵》は5つの事件の中で最もキャラが立っています。低難易度ミステリーなので最初から犯人を見せるやり方のほうが適していますね。
彼女の「愛」の感情や、絵画の意味とポエム、《氷室》先輩と《来栖叶絵》の会話を考察してもいいのですが、私は考えることを放棄しました。
あまり直視したくないシナリオなので面白いことが書けてなくてすみません。
『バタフライシーカー』の狂気度はそこまで高くありません。普通のエロゲーの狂気シーンから大きく逸脱しているとも感じませんでした。
でも、むしろ《優衣》ルートと《千歳》ルートは日常にありえる範囲内での狂気なのがじわじわとダメージを与えてきます。
●《早乙女羽矢》ルート
ここからは「ヒロインの狂気が足りない」「犯人の狂気が足りない」の2ルートになります。
《羽矢》のキャラ自体は悪くないんですがね。作風と合ってないので不遇は仕方ないとしか。
《羽矢》の激昂はむしろ見ていて可哀想に感じるくらい。ちゃんと彼女を導いてあげる「保護者」の存在が必要でしょうね。
普段の性格を考えれば《透子》に会わせたらどんな反応するか十分に想像できるでしょうに。ここは《羽矢》にいくらお願いされても面会を断るべきところ。
処分が下った後でも、《羽矢》を《透子》に会わせたらまた同じことを繰り返す可能性が高いです。それでも会わせるのはおかしいです。
その後も謹慎する気は一切なく普通に捜査しています。
つまりライターさんは《羽矢》のキャラ設定通りに暴れさせてみたものの、
捜査シナリオの都合で活動謹慎するわけにはいかなく、処分自体を「なかった」ことにしようとしているのです。
本当に不要なイベントは何だったのか。謹慎期間の行動ではなく謹慎の「起」がそもそもの間違いで、
これなら最初から《羽矢》が留置所で暴れる話を入れなければよかったのでは?が私の仮結論ですねえ。《遠野》センパイと《桐生》先生が悪いです。
赤い傘を落として《犯人青》を倒すシーンは結構気に入っています。
●《九重透子》ルート
一応本作のTRUEルートですが内容はがっかり。
《透子》の心神喪失と狂気キャラが消えて、いつの間にか《透子》が被害者扱いされているのが違和感ありました。演技は無理があるような。
ゲーム中にも書いてありますが、《透子》が8人殺した殺人鬼であることには変わりありません。何でも蝶のせいにすればいいわけではありません。
あとラスボスさんが情けないというか、GPS機能だけで証拠が埋まるのはギャグか?と思いました。
TRUEルートのMVPは間違いなく《秘書》さんです。彼女はバタフライシーカー能力をフル活用します。
遺髪など死体の一部があれば良く、「死人に口なし」の原則を破る能力なのは大きいです。証拠が少ない6年前の事件だろうと探査可能。
シリアルキラーが遺体を必ず遺棄するのも能力を生かす為の設定。探査が見える=その人は死んでいるとなり生死判定にも使えます。
死の遠因しか見えない探査能力は他ルートでは性能イマイチなのに、TRUEルートのみ重要なシーンばかり見えます(笑)。ロッカーと鍵の証拠とかね。
チート能力を持っていても使い方次第で効能は全然違います。《秘書》さんの的確な探査依頼により犯人を追い詰めることが出来ました。
ムシクイ達が《秘書》さんの犠牲に全く触れてないのはどうかと思いました。
■■総評
前半と後半で内容に大きな差があるシナリオでした。個別ルートとキャラが変わっている人も(《羽矢》以外は別人モード)。
推理自体はあまり面白くありません。グロやホラーはそこまでキツくはなく。
強烈な破壊力があるものではないのに、じわじわと浸食してくる日常的に起こり得る(かもしれない)狂気が魅力です。
推理も狂気もあまり考えずにプレイする人向けです。