【敗北者主観】「敗北」と「紅葉様を優遇しすぎ」の偏ったシナリオ。そして選択肢は少なく誘導されるがままに行動していく。ポーカーをシナリオに組み込むのは面白く、夕桜戦など面白いパートもいくつか存在するが、全体としてはちょっと地味なシナリオだった。最後までじっくりとプレイする気力がある人向け。
水葬銀貨のイストリア 76点 29時間 2時間
【敗北者主観】「敗北」と「紅葉様を優遇しすぎ」の偏ったシナリオ。そして選択肢は少なく誘導されるがままに行動していく。
ポーカーをシナリオに組み込むのは面白く、夕桜戦など面白いパートもいくつか存在するが、全体としてはちょっと地味なシナリオだった。
最後までじっくりとプレイする気力がある人向け。
※ネタバレあります
※この感想は個人の妄想です
インストール容量は3.82GB
煤ヶ谷小夜 CG16枚(通常CG11枚、HCG5枚) 回想3枠
汐入玖々里 CG17枚(通常CG12枚、HCG5枚) 回想3枠
茅ヶ崎夕桜 CG16枚(通常CG11枚、HCG5枚) 回想3枠
小不動ゆるぎ CG15枚(通常CG10枚、HCG5枚) 回想3枠
八椚紅葉 CG5枚
神峯灯 CG2枚
久末紫子 CG4枚
進藤和奏 CG1枚
井土ヶ谷祈吏 CG3枚
久末紫乃 CG1枚
安針塚いつみ CG1枚
茅ヶ崎英士 CG6枚
ラフ絵 5枚
合計 CG87枚 回想12枠
BGM23曲 ボーカル曲が1つ
まず一番最初に書かなくてはいけないこと。バグについてですね。
『水葬銀貨のイストリア』は誤字・脱字・バグがとてもとても多いゲームです。
私の長文感想は誤字脱字があまりに酷すぎて、日本語がどうこう言える立場にないので基本ノーコメントでいきたいところなんですけど
前作『紙の上の魔法使い』に引き続き、今作『水葬銀貨のイストリア』でも体験版公開時から誤字脱字が多いことが話題になりました。
前作や体験版がすごく良かったので購入するのは確定事項だったのですが、バグが多いメーカーだとわかっていると発売日に買うのは躊躇われます。
修正パッチが来てからプレイしたほうがいいとプレイヤーが感じてしまえば、予約や初動売上に響くでしょう。
発売から1ヶ月して修整パッチも来たみたいなので、お店で購入してインストールしてパッチも当てて
さてゲームを始めてみようかなと…
1クリック ポチっとな
[EPISODE 01]
Lonly boy
――・・・――
サブタイトルのスペルを間違えてるよ!!!
最初の1クリック目から誤字だよ!!!!!
履歴
2017年1月14日 『水葬銀貨のイストリア』体験版公開
→ Lonly boy(スペルミス)
2017年3月24日 『水葬銀貨のイストリア』製品版発売
→ Lonly boy(スペルミス)
2017年5月04日 『水葬銀貨のイストリア』修正パッチ公開
→ Lonly boy(スペルミス)
Lonly boy(スペルミス)は体験版公開時から言われてきたわりと有名なバグだったと記憶していますが直っていません。
製品版はバグだらけ。なら修正パッチを当てれば直っているのかというと、残念ながらそうではありません。
パッチの中に入っているのはCG2枚とスクリプト。修整したのはほんの数箇所のみで、2章~12章まで全く修正していないのを確認しています。
ちなみにゲームのバージョン情報を確認することもできないので、パッチが正常に作動しているのかもわかりません。
スクリプターを雇うとか、テストプレイをしっかりやるとか
決していいやり方ではないですが、発売後にユーザーにデバックしてもらって指摘されたところを直すとか、色々あると思うのですが。
前作でバグが指摘されたのに、開発体制を変えることはなく『イストリア』でも同じことを繰り返す。
どうやら「ウグイスカグラ」さんには、Q&Aコーナーは更新してもバグを直すことができないようです。
修正パッチの第2弾がくることを願って積んでいたわけですが、どうもパッチはもう来ないようで
諦めて誤字脱字スクリプトミスが多いカオスなゲームを進めてみることにしました。
伏線張りが重要なシナリオのように見えるのですが大丈夫なのでしょうか?
ただし本作は変なバグは山ほどあっても◆◆ゲーム進行不可になるようなバグはありません◆◆。
同人クォリティ+αで定価9504円ですが、まあプレイできればいいんですよ。面白けりゃいいんですよ。
●システム
・OPムービーはありますが、EDはスタッフロールすらありません。
・コンフィグは必要最低限しかありません。
・クィックセーブ/クィックロードが実装されていません。
・バッグログからのシーンジャンプが実装されていません。
・バックログの表示がバグる。(吉里吉里でよくあるバグ)
・ボリュームを変更するとバグる。(体験版からの仕様。)
・演出、効果音もほぼなし。
以下、バグについては大きくは触れません。他の人がバグについて詳しく書いてくれているでしょう、きっと。
●エロ
シーン回想モードでは1人5回ずつになっていますが、上では3回ずつと書きました。1つのエロシーンを分割登録しているだけですからね。
エロ1 前戯→本番
エロ2 フェラ
エロ3 1回戦→2回戦
4人ともこの形式です。前作と同じ。
個別ルートに入って告白後すぐに発情したヒロインのほうから押し倒してエロシーンに投入したり、流れを無視してエロを入れるなど、
◆◆◆エロ書きたくないでござる◆◆◆のメッセージが伝わってきます。まあ一般的なヒロイン攻略型エロゲーとは違う内容なのですが。
モザイクの範囲がやたら広いのも特徴でしょうか?性器がないところにもモザイクがかかっています。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
気になったことをつらつらと。構成ぐっちゃぐちゃです。
この長文感想では《紅葉》を極悪人として扱います。《紅葉》様が大好きな人はブラウザの「戻る」ボタンをクリック。
■■敗北者主観
「ヒーロー」とは何でしょうか?
このゲームでは「弱者を守る」「自己犠牲精神」「諦めないこと」などと書かれています。この長文感想ではこれらを否定していきます(笑)。
ヒーローがたくさん出てくる雑誌『週刊少年ジャンプ』には1つのお約束が存在します。「努力」・「友情」・そして「勝利」です。
「勝利」はとても大切なことでヒーローは勝たなければ意味はありません。勝利の代償に自己犠牲があるなら物語は盛り上がるでしょう。
しかし《英士》くんは弱く負け続けます。大切な人たちを守ることもできず、戦っては負けるだけです。勝利しないものはヒーローを名乗る資格はありません。
この作者は《紅葉》様が最高にお気に入りキャラであると推測できます。そうでなければここまで超優遇キャラにしている理由にならない。
《紅葉》様に負け続ける、主人公視点でプレイヤーが敗北感を味わい続ける、そんな内容になっています。
というのも3大鬼畜―《紅葉》《紫子》《征士》が強すぎるからです。
圧倒的な権力、メンタル、運の良さなど支配者としての全ての能力を兼ね備えています。
不幸になるもの(《英士》《小夜》《玖々里》《夕桜》)と支配者たちの差は歴然で逆らうことは許されません。
わかりやすい第2章『Run away』を例に挙げてみましょう。
この章は《英士》が悩み《玖々里》を助ける手段を探そうとする話ですが、
《玖々里》を助ける手段など最初から用意されていなく、どれだけ悩もうが苦しもうが《紅葉》様の掌の上で踊らされるだけなのです。
いくら主人公が苦しみもがいている姿を見せて感動させようとしても、絶対に勝てないとわかったらそこでおしまいなのです。
もう1つ例を。第6章『Peper tiger』は《あかりん》に裏切られて敗北するお話です。勝ちも負けもある話なら楽しく読めるかもしれませんが、
これだけ死亡フラグを重ねて、エロゲーなのでまだ個別ルートにも入ってない状況で《C・A》大勝利になるわけがありません。
これが『紙の上の物語』だとすれば邪道の推理が成り立ち、
《あかりん》の手役がフラッシュで負けるためのお話だとプレイヤー視点ではすぐにわかってしまう。負けるだけのお話になっているんですよ。
《C・A》が本物のカジノの強豪プレイヤーならここで降りると思うのですが、物語の都合上降りることができない「操作された」キャラクターになっています。
「ハッピーエンドを約束しよう」。
キャッチコピーが大嘘であるのは過去作をプレイした人、体験版をプレイした人ならすぐにわかります。
まあ精々一番最後だけハッピーエンド風になるだけで、全体の8割以上がバッドエンド風味なのは誰もが予測できることです。
「ご都合主義バッドエンド」もしくは「逆ご都合主義」とでも言うべき作風は、
ありとあらゆる手段でハッピーエンドの可能性を潰して、《紅葉》様大勝利へ物語を矯正します。
・《祈吏》がカジノで戦いそして敗北
・《C・A》が《あかりん》と戦いそして敗北
・《ゆるぎ》が《征士》と戦いそして敗北
ただ物語の都合のいいように感情を操作され、行動を操作され、(※《小夜》にカードも操作され)、敗北という結末に向かっていくのがこのゲームの特徴です。
《紅葉》様は絶対に勝つ。《C・A》は絶対に負ける。この理不尽な勝敗決定事項が『水葬銀貨のイストリア』の特徴です。
↑ここまでが個別4ルート終了時に書いたメモ
TRUEルートでは今まで支配者側だった《紫子》《紅葉》様も敗北者になります。
一方が勝利すればもう一方は敗北します。ハッピーエンドが約束されて主人公たちが活躍するために「わざと負けてあげるよ」展開にするしかないのですね。
2人もポーカー勝負を自分から仕掛けて負けます。
そもそもポーカーで勝負する必然性すらない場面なのに、主人公にハッピーエンドのチャンスを与えるためにポーカーすると言い出すようにミエナイチカラが働きます。
では何で負けたのか?さらに言えば何でここまで弱体化したのか?を考察する必要があります。
その答えを「主観を得てしまった」からではないかと推測します。
《C・A》は「エースの貴公子」として強豪ポーカープレイヤーとしてゲームに登場します。
ところが《C・A》=《英士》視点でのポーカーのシーンを見るとあまり強くなさそうに見えます。そして大半は負けています。
視点がころころ変わる『イストリア』では多くのキャラの主観視点を読むことができます。
客観視点では《C・A》が強く見えても、主観視点では《C・A》は実は弱い。それは「主観を得てしまった」からです。
本作は物語の舞台に上がった者を敗北させて嘲笑うシナリオになっています。
《紫子》は物語の舞台に上がってしまった。ここから《紫子》主観のシーンが大量に増えていることがわかると思います。
敗北者の精神状態を描くことを目的としたシナリオでは、視点が移動してしまったら負けフラグ。どれだけ設定上は強キャラだろうと哀れに負けていく運命にあります。
最強キャラの《紅葉》様ですら、カメラが回ってきて今のお気持ちを見透かされると敗北のフラグが立ち、負けさせるために弱くなっていきます。
『水葬銀貨のイストリア』は「敗北」の物語。「敗北者主観」のシナリオがこのゲームの本質ではないか?と私は考えています。
いやー「ヒーロー」をテーマにするなら勝たなきゃダメですよ。敗北より勝利インタビューのほうが大事なのが普通ですが、「ルクル」さんのシナリオは普通ではありません。
■■自己犠牲と人魚姫
第7章『Fishing game』より引用します。
>【小夜】
>「お願いですから、離して下さい!! もう、誰かを辛い目に合わせるのは嫌なのです!!」
> 汐入先輩に逃してもらったはずの小夜さんが、再び現れる。
> ああ、やっぱり小夜さんは小夜さんなんだ。
> どこかで、分かっていましたよ。
> あなたは絶対に、逃げないと。
> だからこそ、心から助けたいと願うのです。
>【小夜】
>「ゆるぎちゃん――!? それに、英士くん――!?」
> 英士先輩のおかげで、悪魔は去った。
> 結局、わたしは何の役にもたっていないことを、否が応でも教えられてしまう。
>【ゆるぎ】
>「ああ……わたしは……」
> いつだって、どこだって。
>【ゆるぎ】
>「なんて、惨めなのだろう……」
> 弱いまま、誰かを救える事が出来ない。
> 正義のヒーローにはなれないと、現実が厳しく教えてくれた。
> それでも、小夜さんにとってのヒーローに、なりたかった。
> それだけが、わたしに残された、償いの道なのですから。
この「自己犠牲」を単なる邪魔と呼びます。自分の正義感、自分のエゴだけでみんなの足を引っ張る行動を取っています。
誰かのために犠牲になるなら「勝利」が必須事項。この場合は《征士》戦にプラスになる行動をとる必要があるのです。
《小夜》さんはさっさと逃げるのが正解。《ゆるぎ》は戦わないのが正解。《玖々里》はお外で人魚姫の涙能力を使用しないのが正解です。
足を引っ張ってないのは《夕桜》だけですね。
「自分が犠牲になれば他の人が幸せになれる」行動は本当に他の人を幸せにしてこそ意味があります。つまり結果を伴う行動=「勝利」しなきゃ駄目なんです。
「自己犠牲」の結果は《征士》に逃げられ、人魚姫は見つかりと最悪の結果。《紅葉》様大勝利となっています。
相手のことを想っての行動ならば、事前によく話し合ってお互いが納得できる結論を出して、相手がハッピーになる「自己犠牲」ならとてもいいことでしょう。
そんな「自己犠牲」はまず見かけません。「自己犠牲」は相手に心の傷を残していきます。だから私はエロゲーでよく出てくる「自己犠牲」エゴが大嫌いです。
人魚姫は自己犠牲精神の塊のようですが、この人魚姫の定義がよくわからないんですよね。特にラスト3人の人魚姫はシナリオの都合にも見える。
殺伐としてワガママな《夕桜》が人魚姫だったり、《小夜》さんは最後まで人魚姫になれなかったりと。これも客観と主観では違うということでしょうか?
・《汐入玖々里》
・《茅ヶ崎夕桜》
・《久末紫乃》
・《久末紫子》
・《茅ヶ崎英士》
・《八椚紅葉》
問.
この6人の共通点と「自己犠牲」と踏まえて人間が人魚姫になれる条件を提示しなさい。
ただし《煤ヶ谷小夜》と《神峯灯》は人魚姫になれないものとする。
私はこの問題を解くことができませんでした。
もちろん本編には人魚姫の条件や《小夜》が人魚姫になれなかった理由などがたくさん書いてあるのですが、納得のいく理由には程遠く、
全部まとめてじっくりと考察する気分にもなれなかったです。この問題が解けた人は『水葬銀貨のイストリア』マスターと言えるでしょう。
簡易回答なら「他人の為に涙を流せる人」なんでしょうが。人魚姫になれなかった2人は「腹黒い」「自分はヒーロー」で自己犠牲までいけなかったとなります。
でも《紫子》《紅葉》を自己犠牲枠に強引に入れて《あかりん》を自己犠牲枠に入れずに人魚姫を定義するのもおかしいですから、これでは不正解だと思いますけどね。
人間と人魚姫の違いは長寿であることくらい。出産時に病死したりするなど普通の人間と同じです。
人間は肉や魚を食べます。生き物への感謝の気持ちを持っている人もいれば感謝してない人もいるでしょう。
また人間社会は誰かに助けられて成り立っています。みんなが助け合っているです。
人魚姫の場合は一方的搾取の描写が大半で、どうも人間(久末病院)を悪と定義しています。
この久末病院と人魚姫との搾取関係はそのまま、《紅葉》様と奴隷たちの関係と同じです。人魚姫になった白髪ロリが唆したのが久末医療システムですしね。
TRUEルート後半では犠牲に対する感謝を要求する描写がありますが、
《英士》は《夕桜》《紫子》に助けられたことをそもそも覚えていない。記憶障害を責めても仕方ないように見えます。
■■選択
第8章『Which?』では《征士》が説明口調でどちらかを見捨てなさいと語りかけます。
突然の《安針塚》先生の乱入と説明口調は、この作者の好きなメタ要素が強く出てきていると感じました。
この選択も主人公が自ら選ぶというよりは、用意されている答えを選ばされるようなそんな感じです。
物語の都合よく主人公たちを操作し、選択は最初から用意されたものです。
ついでに《英士》が「選択」した後に外野が「その選択で本当に良かったのか?」と五月蝿く罵倒してくるのですが、
お前らが選べって言ったのだろうと突っ込みたくなります。どれを選んでも正解はなく、鬼畜3人の都合のいい方に進んでいきます。
というか「片方を見捨てたら片方は助けてあげる」発言はどこまで信用できるんですかね?
本当の意味で自らの意思で「選択」しているのではない。選ばされているだけなのだ。
権力者に振り回されるだけの人生では、「選択」のテーマはうまく機能しないように思えます。
ちなみに1週目は何も迷うことなく《夕桜》を見捨てました。
この妹に対しお兄ちゃんは兄らしい行動をほとんど取らずに《小夜》さんの方ばかり見ている。そんなのお兄ちゃん失格です。《夕桜》も同じ実妹ですよ。
《夕桜》がいなくても物語には特に支障がないのでは……と感じるくらい空気な妹を見捨てることに躊躇う必要はなく。
エロゲーなのでLoadすれば別の選択肢も後から選べますから(笑)。プレイヤーは迷う必要なんてないんですよ。
ここよりも、すごく感動した選択肢があります。TRUEルートの「コール」or「フォールド」です。
このゲームが敗北のゲームで負けさせるために強制的に負けの行動を取らされている
→つまりBAD ENDの選択肢=1択の選択肢「コール」を今までずっと選び続けていたんだと気づかされたことが大きいです。
最近のエロゲーは選択肢少ないですけど、昔は1つ選択を間違えればバッドエンド一直線なものもありました。
物語はBAD ENDの後も続く。選択肢を間違えて敗北して最悪の結果になっても終わらないストーリーをずっとプレイしていたのですね。
ハッピーエンドにするにはこの強制敗北システムを打破する必要があります。その為の選択肢なのです。はじめての反撃、はじめて自分の手で道を選んだ瞬間となります。
「ルクル」さんのシナリオはメタ要素が入ったほうが調子がいいように見えます。
なお「コール」を選ぶと(現代編では)一番きつい展開があります。
■■イカサマ
まんまと騙された、このゲームの評価が大きく跳ね上がったトリック。
私が『水葬銀貨のイストリア』でダントツで一番好きなシーンです。
第1章『Lonly boy』(スペルミス)はイカサマを使って勝つ話で「トランプはイカサマをしやすいゲームだ」とはっきり書いています。
《C・A》はサマ師なのかと思いきや、その後のトランプは正統派の心理戦ばかりで、イカサマ無しのゲームだとうまく誘導できています。
《あかりん》戦も過去のトラウマを使った三味線で負けたと納得してしまいました。私は二重トリックに物凄く弱く、奥の手を隠しているトリックに敬意を評します。
また《小夜》の演技力。個別ルートではあなたの傍でディーラーをしたいと発言するなど、正統派美少女ヒロインを強調させてることもポイント。
《C・A》の正体を知らないのは《小夜》さんだけです。(《祈吏》も知らないですけど)
登場キャラみんな知っている、すぐにバレる《小不動》さんには告白する。でも《小夜》さんだけ不自然に正体に全く気付いていません。
これは「お父さんを殺したのは《C・A》」という縛りが影響していて、
「《英士》くんが《宗名》を殺すことだけは絶対にありえない」という思い込みが彼女から可能性を奪います。(※「紫子は人魚でない」も該当します)
実はこれとイカサマは全く同じトリックなんですよね。
《C・A》以外の全てのキャラはイカサマを知っているわけですよ。《C・A》だけが「《小夜》さんそんなことするはずがない」と思い込んでいます。
何も知らない《小夜》を見ている《英士》が、実は《英士》だけが気づいていないことがある。この鏡面のようなトリックは美しく感服しました。
叙述トリックはプレイヤーが気づけた時に「やられた!」と思えば大成功なのです。
早い人は《あかりん》戦で気づいていたでしょうね。私はTRUE第9章になってようやく気づきました(遅すぎる)。
人魚姫《夕桜》を手に入れた《紫子》が、《夕桜》の提案を「絶対に勝てる」と受け入れる。この展開に違和感を感じましたね。
《紫子》の人魚姫への執着は異常なものでバトルを入れるのはおかしいのでは?→絶対に勝つ必勝法(イカサマ)があるはず
→普通のイカサマなら《C・A》が気づかないはずがない→つまり《C・A》の死角になるイカサマが存在する→ああああああああああ
の流れですかね。伏線たっぷりあったので情報が1つあれば、あとは連鎖的に埋まっていくのがこのイカサマトリックの面白いところ。
次のシーンでディーラー《小夜》が出てきて「やっぱりな」と確信。《小夜》卓で戦えの命令も二重の意味がありました。
イカサマを完全に理解した前提で《夕桜》戦を読むと、伏線貼りまくりなのがよくわかって面白かったです。
そして今まで通りイカサマに気づけない選択肢と、気づけた選択肢を用意したのもポイント高い。
イカサマ破りの手段も完璧。『水葬銀貨のイストリア』で唯一となる「《紅葉》様への反撃」となります。
サングラスを外すだけ、たったこれだけでイカサマを封じることができたのです。いつかは訪れる《C・A》の正体バラしを最高の形で使ってきましたね。
大絶賛のイカサマトリックですが、強力な副作用もあったりします。
《C・A》が今までイカサマで勝ってきたとなれば、以降の展開で「勝利」してもイカサマではないか?と疑いの目を向けなくてはならなくなることです。
《紫子》を退けたのも実はイカサマかも。
《紅葉》様を倒したのもイカサマかもしれません。彼女はイカサマしないでと言っていますが、今まで騙し続けてきた小娘が何を言うのでしょうか。
最終バトルの一番最後は「4枚目がAで5枚目がQだったらドラマチックだよなー」と思って読んでいたら、実際にその通りになって大笑いしました。
あんな奇跡が起こるわけがありません。最後にシャッフルしたのは《英士》くんなのでイカサマしたのでしょう、きっと。
■■鳥籠事件
監禁の基本テクニックを紹介します。(絶対に真似しちゃ駄目です)
・子供を狙う
弱者を狙うのは基本中の基本と言えるでしょう。行動能力が低いので束縛しやすく、子供は意思が弱いので言う事を聞きやすいです。
子持ちを狙うのも効果的。子供は弱点になります。
・閉鎖空間に隔離する
逃げられなくなる効果があるので監禁は当然ですが、
世間から長期間隔離することは思考能力の低下に繋がります。希望を1つずつ奪っていけば洗脳しやすくなります。
・異常なルールと連帯責任
閉鎖空間に加えて異質なルールを儲けることでさらに思考能力を削ることができます。
複数人を監禁する場合は連帯責任のルールをつけることで行動と精神状態を縛ることができます。
ただ数日家を開けて3人で話し合える余裕を与えてしまったのは大きなマイナス。「自己犠牲」は話し合いをすることで解決できてしまうからです。
せめてカメラ監視しておけば、人魚姫を見つけられたのですけどね。
・被害者も加害者にする
このケースでは《英士》が該当。人形とペットの飼育係をやらせて罪の意識を植え付けます。
暴力もこの3人の誰かに強要させればさらに効果的だったでしょう。
例えば《英士》が《小夜》を攻撃するとかすれば、2人の仲を引き裂いて強烈な罪の意識で縛ることができます。罰則を与えるのが《征士》だけだったのは甘いですね。
他には「性行為による支配」「麻薬」「洗脳」「演説」なども定番ですが、鳥籠事件ではなし。
子供時代に2年間の監禁があれば《小夜》さんのように精神ボロボロになって当然です。《夕桜》のように最後まで希望を捨てなかったのはまずありえないこと。
洗脳が甘いのです。《征士》は悪党ではあってもカスリマ性には欠けるのでは?と感じましたね。
悪趣味と残酷性は兼ね備えていても狂気キャラではなく計画は穴だらけ。《小夜》を泣かせる計画は失敗していますし、久末に匿われるほどの能力はないように見えました。
なので「ただ気持ち悪いだけの極悪おっさん」の印象です。能力値は高くないのに、物語の補正で運が良くしぶとく生き延びます。
これも客観と主観の違いでしょうか?《征士》の場合は客観でも失敗が目立つのですけどね。
変化のないCG1枚だけで語られる監禁生活はドラマCDと同じですね。
十二分にエグい話で決して破壊力が低いわけではないのですが、もっと《征士》を凶悪にすればさらに破壊力は増していたでしょう。セーブしているなあと感じましたね。
《小夜》さんのキャラ付けのための事件ならこれくらいで十分効果あるでしょうね。
「ルクル」さんはそこそこエグい鬱シナリオを書く割には、
萌えゲーマーが求めるボーダーラインを意外に理解していて、最後の一線だけは超えない甘さみたいなものも所々に見受けられます。
(監禁は犯罪です。絶対に真似しちゃ駄目ですぞ。)
■■殺人
人を殺すことの是非も『水葬銀貨のイストリア』のテーマの1つです。でもリアルとゲームは別物なので、あくまでゲームの視点から書きます。
このゲーム、バトルが多い割に殺人はほとんどありません。一撃で仕留めず逃がすシーンが多すぎるような。
《あかりん》が直接人を殺すシーンはなく、《小夜》《玖々里》共通パートでは《征士》が焼死するので殺人にはなっていません。
《紫子》が《あかりん》を撃つシーンも殺すまでいたっていません。
《煤ヶ谷宗名》親殺しの特別性を高めるため、が表向きの理由ですがそうでもないようです。殺人から明らかに逃げているのが真の理由のようです。
創作でも「主人公が殺人を犯す」ことを極端に嫌う作家さんは多いように見えます。罪を犯してしまったら主人公を一生許せなくなりハッピーエンドになれないからです。
エロゲーは美少女ゲームなので、かわいい女の子がたくさん出てくるので、殺せば不快感は残るでしょうね。
1つ前の項で書いた「最後の一線だけは超えない甘さ」はここでも発揮されます。
《茅ヶ崎征士》は1点の曇りもない悪党として描かれ、同情できる点は皆無です。野放しにすることはハッピーエンドの条件になりません。
長年の恨みがあり、殺してもほぼ全てのプレイヤーは怒らない状況を作り出しているので、殺害が可能となったわけです。
尊属殺人だとしても執行猶予がつきそうなケースですね。
では殺すことで物語を変えることは正しいのか?
実際の人間なら殺してはいけません。これは非実在の架空の人物であって、殺すという行動もモニターの向こうで行われていることです。
警察が動いたり法律があったりすることがないアウトローの世界観ですから、一般常識を当てはめても意味はないわけです。
《八椚紅葉》の処分は?私の中の答えは決まっています。「抹殺する」それ以外考えられません。悪を滅ぼすものが「ヒーロー」なのですよ。
《紫子》や《征士》を超えるこのゲーム最大の巨悪であり改心することもないです。
殺人では何も解決しないのかもしれません。でも消す以外にハッピーエンドはありえないのです。
もちろん物理的抹消ではなく、牢屋にぶち込んだり、手足を縛る、封印するなどの方法で完全無力化してもOKです。《紅葉》を野放しにするのだけは駄目でしょう。
■■《紅葉》様好き好きシステム
最終章より
>【英士】
>「今はただ、紅葉のことが悪にしかみえません。茅ヶ崎征士よりも、久末道理よりも――あなたは、悪だ」
>【紅葉】
>「人間にとって――私は悪でしょうね。でも、私は最初から人魚姫の味方だから、それで正解よ」
『水葬銀貨のイストリア』の最大の特徴であり、最大の長所であり、最大の欠点でもある《八椚紅葉》さん。
常に《紅葉》様が勝利し主観者が敗北する。すべての物語が《紅葉》様の掌の上で語られます。
《英士》も《紫子》も《久末道理》も《征士》ですらも、全ては彼女の思いがままに動きます。
イカサマや《紫子》への人魚の嘘など、媚薬入り毒りんごなど罠はいくつも張っています。人心掌握術も完璧と言えるでしょう。
作者の相当のお気に入りキャラであると想像でき、作中での《紅葉》様優遇はゲームバランスを大きく崩壊させています。
いくらなんでも強すます。
>「現実を変える力は、ある!! いつまでも諦めたままだと、あらゆる全ての可能性を失うぞ!」
と先生は言っていましたが、途中までは「別に諦めてもいいんじゃない」と思っていました(笑)。
だって《紅葉》あまりにも強すぎて、立ち向かっていくごとに敗北するのですもの。「ルクル」さんの《紅葉》ラブ補正の前には何もかも無駄なのです。
これはプレイヤーが屈したとかとかではなく、諦めるは「選択」した行動です。物語の意思に逆らうことは自己決断です。
好きの反対は無関心。無関心になることが本当の意味で「勝利」に繋がるのです。
この世界は《紅葉》様のさじ加減次第。
このゲームがどうすればハッピーエンドになるか色々と考えながらプレイしていました。鬼畜を抹殺することで勝利する。でも勝利が不可能な世界なら?
個別ルートの見捨てるのもう1つの意味「《英士》が見捨てられる」の結末はある意味説得力がありましたね。なーるほどと関心。
《紅葉》様に一発入れたのはイカサマ破りのサングラス外しのシーンたった1回だけです。
バッドエンドのほうの《紅葉》様は最高に気持ち悪かった。作者補正がかかったキャラはここまで酷くなれるのかと。
ラストバトルも《紅葉》様にダメージを与えたのでは?と思う人もいるかもしれませんが、あれは舞台に上がったことで主観を得て弱体化しただけ。
ゲームで勝って精神ダメージを与えても何も解決しません。結局《英士》は《紅葉》様に何がしたかったのかさっぱりわかりませんよ。
生命をかけた勝負をするメリットが彼女には一切なく、むしろ「《英士》は私を殺せない」と確信があるからこそのラストバトルにも見えてしまうのです。
ああこれがイカサマ使用の副作用ですね。何もかも勝負か胡散臭く見えてしまいます。
諦めなければ夢は叶う。TRUEで主人公たちは根性論でしか言ってないんですよね。
《紫子》とのバトルとか子供たちが綺麗事言っていますが、大魔王は魂だけではを殺せません。
《紅葉》様逃がしておいて「紅葉の計画をすべて阻止する」と言ったところで説得力ないんですよ。
今まで1回しか出来てないんですから、ちょっとポーカーが強い程度じゃ無理です。「空白の1年間で人脈を広げた」は今までの《英士》には出来ないことであり
このハッピーエンドは完璧なハッピーエンドからは程遠いでしょうね。《紅葉》様の悪意が阻止できるなら今での悲劇は何だったんだ?ということになりますから。
言うまでもないですが私は《八椚紅葉》が大大大嫌いです。不快感は少なく魅力のある必要悪キャラなのは理解していますが、許す/許さないなら話が別です。
もしも《紅葉》様が好きという人がいたらバッドエンドをやり直すことをオススメします。あれが「ルクル」さんの中の《紅葉》の理想像ですから。
第12章『All Four One』より
>【紅葉】
>「君の気が済むようにやって欲しかっただけよ」
>【紫子】
>「……よく言いますわ」
> 白々しい、と。
> 目を逸らしながら、呟いた。
>【紫子】
>「無様に足掻くわたくしの姿を見ることが出来て、満足しましたか?」
この5行だけでもこのゲームの全てを表現できるような気がします。
■■ポーカー(テキサス・ホールデム)
監禁事件や人魚姫の涙とは、一切関連ないポーカーパートについて。
ポーカーをエロゲーのテーマに盛り込むのはやはり難しかったようですね。
ポーカーのルールを知っている人はかなり多いでしょうが、この手札2枚チェンジなし+共通カード5枚の特殊ルールは知らない人が多いように思えます。
半分は知っているルール、でも半分は知らないルール。この加減がちょうど良くプレイヤーを引きつけますね。
私はこのポーカールールはよく知りません。
そもそもポーカーは手役の強さで全てが決まるゲームなので、ベットで駆け引きするしかないんです。
「テキサス・ホールデム」をよく知らない身で書きますけど、みんなオールインしすぎじゃないですか?
負けたら破滅がかかる試合で全財産を賭ける勝負はかなり勇気がいると思います。
「オールイン」→「コール」の場面が多く、これでは運ゲーでしかありません(もしくはイカサマ)。
片方の視点から描かれることも多く、敗北ゲーということもあって主観サイドがほぼ負けと確定しています。
心理描写は両方の視点から書かないと駆け引きになりません。なのでギャンブルシナリオとしてはイマイチの出来でした。
《C・A》は設定上あまり喋ることが許されないのもマイナス効果になっています。
一番良かったのはもちろん大絶賛した《夕桜》戦。
ルールをよく知らない人には「あれ?勝率が2人合計で100%になってないぞ。またバグ表示か?」とさらに楽しむことができます。
ラストバトルはフォールドと三味線が多く楽しいバトルです。勝利するとプレイヤー視点でわかっていると、4枚目Aが出た時の《紅葉》様の反応がより楽しめます。
■■キャラについて
●茅ヶ崎英士 黒度40% ★★★★☆ ☆☆☆☆☆
人魚姫。
感情の起伏が激しく流されやすい主人公、時々COOL。
基本的にヘタレで行動力は弱いですね。自分から動くとか自分で罠を回避して逆に罠にかける(サングラス外し)のような成長が1箇所しか見られなくて残念。
それも悲惨な設定と《紅葉》様絶対世界では仕方ないとある意味同情はできます。
●煤ヶ谷小夜 黒度10% ★☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆
腹違いの妹。
鳥籠事件の被害者でありある意味リアル。
腹黒キャラとして位置づけられていますが、2つの嘘は納得できるものであり黒度は低めであると判断します。
ヒロイン枠にいる=人魚姫なのかと思わせて泣けないよくわからないポジション。
彼女の個別ルートではポーカープイレヤーを目指せと主人公を唆します。このゲームの主人公に(《夕桜》戦を除いて)選択権はありません。
バッドエンドでの告白は「御苑生メイ」さんの声がよく響きます。
●汐入玖々里 黒度0% ☆☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆
人魚姫。
盲信の人魚姫であり「僕のことを信じて」の決め台詞が心に響きます。
主人公の回復役であり精神的な支えでもあります。個別ルートで《あかりん》の誘いと跳ね除けたのは偉い。
というか個別でイチャイチャオンリーなのが《玖々里》だけってどういうことよ?
ただお外で人魚姫の涙を使うなと。基本的に頭のいいキャラのはずなのに、どこか抜けたところがあるのが欠点でしょうかね。
●茅ヶ崎夕桜 黒度10% ★☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆
人魚姫。
義妹に完全敗北する実妹。妹キャラなのにここまでスルーされるのは珍しく、妹の変化球を求めすぎなのでしょう。
精神年齢が高く達観していて、自分のポジション・自分が何をするかを理解しています。ワガママでも人魚姫になれたのは大切な人のために引いた位置にいるからでしょう。
ヒロイン4人衆の内3人は頭が悪いのですが、その中で《夕桜》だけは冷酷でまともなところがあります。でも黒いかと言われるとそうでもなかったり。
「秋野花」さんの2面性がある役作りが光っています。
●小不動ゆるぎ 黒度0% ☆☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆
数合わせヒロイン。シナリオには一切不要なキャラ。
ムードメーカーということもなく、《夕桜》と違って正義バカで頭の悪さも全キャラ中トップ。
●八椚紅葉 黒度500% ★★★★★★★★★★ ★★★★★★★★★★ ★★★★★★★★★★ ★★★★★★★★★★ ★★★★★★★★★★
人魚姫。
『水葬銀貨のイストリア』のゲームマスターであり支配者。この世界は彼女の思いのままに動きます。快楽主義者で人間にとって残酷。
私は彼女が大嫌いです。《紅葉》の消滅イベントが存在しなければこのゲームは未完成のままでしょう。
●神峯灯 黒度40% ★★★★☆ ☆☆☆☆☆
元ヒーロー。
基本的にいい人、ストーリーの都合上で悪人になることも。
《英士》とは対になっている存在のように感じました。同じ《紅葉》の下僕でも能動的な《あかりん》と受動的な《英士》は反対です。
行動力があり能力値も高め。協力者であっても味方ではない距離感も魅力的です。
●久末紫子 黒度100% ★★★★★ ★★★★★
人魚姫。
《あかりん》を撃ったり《英士》を刺したり間違いなく悪役で死を持って償うしかないポジションでありながら、
第11章~第13章の3時間以上メインヒロイン役になる被害者でもあります。
メインヒロインになったら、主観を得たら化けの皮が剥がれてどんどん可哀想になっていくのはこのゲームならでは。
人魚姫の涙を求める理由。プレイヤー視点では第8章で《夕桜》に涙回復が効かず、人魚姫に涙は無効ルールが分かっています。
だから《紫子》人魚姫説は却下したんですけどねー。というかこれ正解できた人いたのでしょうか?
もう1つ約束を破ることについて。《夕桜》の引渡しを約束だと律儀に守っていますが、《宗名》のデスゲームでは医療順番は別料金だとしっかり騙しています。
なので《夕桜》戦を隠し条件をつけずにバカ正直に受け入れたのは納得できません。《夕桜》と《紅葉》のポーカーは本来必要なく、ハッピーエンドのための手抜きです。
●井土ヶ谷祈吏 黒度0% ☆☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆
《夕桜》ルートを乗っ取ったり、TRUEルートでは一切出番がないなど、よくわからないキャラ。
《ゆらぎ》もですが《小夜》への思い入れ深すぎて、《小夜》は行動原理になっています。
●安針塚いつみ 黒度60% ★★★★★ ★☆☆☆☆
人生に後悔している人。仕方ないと思う部分はあっても、彼女の罪が許されるわけではありません。
妹がいい人(いい魚)すぎたのが幸運だったのもかもしれません。
●茅ヶ崎征士 黒度100% ★★★★★ ★★★★★
黒度は《紫子》と同等です。プレイヤーへの不快度は《征士》がトップでしょうけどね。
一点の曇りもない悪ですがそれ以上のものもなく。カリスマ性がなく感情のままに行動する、どうやって人脈を得たのはよく分からない悪役。
残酷性はあっても洗脳能力は高くないように見えます。
過去編《宗名》の最期に出没しますが、ここで《征士》を出してしまうと、《英士》が《紅葉》に居場所を突き止めて欲しい依頼がかしくなるような。
■■水葬銀貨のイストリア
主人公の苦悩を描いた理不尽な物語。鬱ゲーと呼べるのは過去編「鳥籠事件」くらいでその他はやや暗い程度で収まっています。
第6章《あかりん》辺りまでは悪くなかったものの、過去編乱発の構成はさすがに読みにくく、しかも大体が既出情報で驚くような過去はないのが残念でした
現代の主人公の行動力が低く、物語展開が遅いこともテンポを悪くしていますね。4ルート終了後までこの微妙な空気は続きます。
TRUEはポツポツと光る部分があります。《夕桜》戦や人魚姫3連発など。ただヒーローごっこバトルは寒かったです。
どちらかと言えばTRUE1強シナリオ。《紅葉》様に虐められる日々に耐えれるならTRUEはそこそこ楽しめると思います。
「主観者敗北」と「紅葉様を優遇しすぎ」の2点はかなり気になったところ。
ずっとこの2つだけで展開に変化が少なく、先が読みやすいシナリオばかりなんですよ。選択を選ばされているとも強く感じました。
得意なメタでも何でもいいですから、もう少しメリハリをつけるなり、事件解決型にして勝利回数を増やすなど、物語をより面白くしてほしい。
■■ハッピーエンドとは?
「ハッピーエンドを約束しよう」。最後に『水葬銀貨のイストリア』がハッピーエンドだったどうかについて。
個別(見捨てる)でもヒロインは救ってるからハッピーエンド扱いでいいと思います。TRUEも《紅葉》の扱いに納得はいきませんが、概ねハッピーエンドです。
後付けで「個別で連れていかれた人魚姫は涙1滴だけでした」と説明してハッピーエンドを強調していますが、私はこういうのは要らないほうです。
アンチハッピーエンドゲーなのは間違いなく、道中はバッドエンドの選択肢を選び続けた内容になっています。
無理やりハッピーエンドというか、ハッピーエンドを皮肉ったような、まあハッピーエンド好きは絶対に買わないであろう内容でした。
「ルクル」さんは多分、普通の萌えゲー書けるんだと思います。萌えパートもそこまで悪くないように見えますし。意地でこういうのを作っていると予測してます。
バグだらけ誤字だらけで、パッチを作る気もないなら商業流通でなくてもいいような気もします。
媚びるか媚びないか。どっちでも面白ければいいのですが、1つだけ言うなら中途半端なものは誰も喜ばないということです。