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t2さんのWHITE ALBUM2 ~introductory chapter~の長文感想

ユーザー
t2
ゲーム
WHITE ALBUM2 ~introductory chapter~
ブランド
Leaf
得点
82
参照数
406

一言コメント

恋愛の王道に見えて深い 「序章」ではあるが単体でも評価できる内容

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想


丸戸氏のシナリオは相変わらず読みやすいです
会話を中心としておりキャラクターの魅力を引き出す文章になっています

前半は学園祭ライブを開くまでの超王道シナリオ
《冬馬》を落とすまでをじっっくりと丁寧すぎるくらいに描いています
なのにテキストがいいので全くテンポが崩れません
コメディ要素もいくらか入っています

過去に丸戸氏がツンデレの代表格であるキャラをかつて書いていたのを思い出しました
暴力的で口も悪くて我儘。こんな《冬馬かずさ》を魅力的に書けるのはすごいです
それに比べて《雪菜》はちょっととっつきにくいタイプ


後半はちょっと重くなってテンポが落ちる
三角関係モノ独特の空気が重くのしかかるのに加えて
告白して付き合っている《雪菜》と《春希》がかなり焦って見えるんですね
その原因に見当はついているものの確信までは行けずにモヤモヤします

1週目だと別に《冬馬》が悪いようには見えないんですが
2週目をやると「先制攻撃」していたのが分かり、印象が大きく変わること
面白いトリックですが、逆に《春希》や《雪菜》の感情を素直に受け止めれなかったかも



このゲーム最大のトリックがOP曲の「届かない恋」です

>作詞:北原春希
>作曲:冬馬かずさ
>編曲:冬馬かずさ
>歌:小木曽雪菜

 《春希》が《冬馬》への「届かない恋」を詞にして
 好きな子の《冬馬》が曲にする
 それを《春希》のことが好きな別の女の子に歌わせる

《春希》と《雪菜》の行動も全て1本に繋がる。EDでこの意味に気づいたときは衝撃的でしたね
冒頭の「どうしてこうなるんだろう…」もてっきり《春希》のセリフだと思ってたのに《雪菜》だったとは
《雪菜》のピエロぷりは可哀想になるレベル


WHITE ALBUM2の全ての始まりのエピソードが「-introductory chapter-」であり
それだけによく計算されたシナリオになっています
ライブシーンも含め派手さはなく、やや地味なゲームではあるんですが 
最後のトリックにより余韻が残る作品です
ドラマCD等、補完エピソードもあるようです。秋放送予定のアニメでその辺が見れればと期待しています



良くも悪くも「WHITE ALBUM」の系統です
1ルートのみ選択肢無しでもちゃんと1つの話としては完成しています
コスパは悪いですがストーリーはボリューム不足ということはないです(※購入したのはセット版)