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t2さんの素晴らしき日々 ~不連続存在~の長文感想

ユーザー
t2
ゲーム
素晴らしき日々 ~不連続存在~
ブランド
ケロQ
得点
89
参照数
1519

一言コメント

「リアルな鬱」と「妄想の電波」 多視点により少しずつ見えてくる、小難しいエンターティメント

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

■■シナリオ
「鬱」と「電波」のエロゲーです。【苦手な人は回避】しましょう
全6章のシナリオ。主人公は章ごとに変わります




■■1章 Down the Rabbit-Hole
《由岐》視点で4時間くらい

まずはサービス回ということで、百合百合とした《由岐》ハーレム
しかしぶっきらぼうの女主人公はオッサン臭く、全然百合に見えないのが残念
電波も弱め。ただ意味不明な発言をしている割にオチは綺麗
C棟の人形落としは別世界での自殺がこれからあるんだなぁと伏線理解

自殺と終末の話は有り触れている
《卓司》の豹変からが面白いです。まさかこんなキャラになるとは
名探偵《由岐》の推理力は高く《卓司》の自作自演なのがバレバレですが、話はかなりテンポよく進む
狂気キャラと宗教じみた強い電波な世界観“だけ”じゃなく
人為的な予言で犯人がいるという現実と電波の2方面から進む物語が魅力ですね
序章に引き続きオチは綺麗でいい感じ。鏡の人形化と先が楽しみになってきます




■■2章 It's my own Invention
《卓司》視点で6時間くらいあります

煙草とか麻薬など犯罪ネタが多く、18禁ゲームとしてエロ以外でも一線を越えているのは評価できますが
「P2Pソフトによる違法ダウンロード」は商業エロゲー会社としては絶対にやってはいけないネタです
Waresでエロゲー業界全体が大ダメージ受けているんだから。ソフ倫でもケロQスタッフでも全力で止めようよ

前半のイジメは結構きつめ。イジメ自体よりも《卓司》の思想がリアル
《卓司》の反応にはイライラし好感が持てるキャラではなく、
「イジメられると思想がどんどん歪み、他人からは嫌われる行動をとっていく」スパイラルの典型
オチは《卓司》の「自己嫌悪」と「被害妄想」なのですが、
《卓司》の悪い面ばかり見てもイジメはなくならないというのが教訓。同情します

電波キャラとして目覚めても理性はあり、完璧に壊れているわけではなくどこか計画に詰めが甘いんですよね
抜けがかなりあったのに全く失敗しないのに違和感。と思ったら《希実香》が埋めてくれていたんですね
《希実香》の教祖への忠誠心は堅く、ギャグぽくなっても許される良キャラ
「閉鎖空間」「集団意識」「終末予言」「超能力」「演説」「麻薬」「性による支配」「縁切り」「集団自殺」と
カルト宗教の基本要素を押さえていますね。マインドコントロールのお手本みたいなシナリオです(ギャグも強いですが)

電波要素はかなり強烈
ただ「同じ文章を何回も繰り返す」ネタが多すぎて流石にくどい。適当に書いていると感じられる部分あり
文章で遊べば電波になるってほど単純でもないですよと。空白文字が多すぎて何が何やら
落書きCGもあったりと悪ノリしすぎかなぁと




■■3章 Looking-glass Insects
《ざくろ》視点で2ルート合わせて5時間ほど。Insectsと複数系
《卓司》への反応がリアルだったり《由岐》への反応がラブコメ的だったり両方の要素があるシナリオです

《希実香》のルートはイジメネタに対する王道。《ざくろ》視点なのに《ざくろ》超空気の《希実香》無双シナリオ
反撃ネタも面白く最後に《皆守》が助けてもらうというのも超ベタ。清々しいシナリオです
この《希実香》は《由岐》でも《皆守》でもなく《卓司》にデレデレになるのがすごい(笑)
理系な人間なので文学話よりも怪しい科学薀蓄や数学ネタの方が楽しい

反面《ざくろ》のルートはかなりキツイですね。こっちはリアル指向
薬物という危険ネタを堂々とやっているのはいいですね
エロゲーの薬物は媚薬や肉体強化の代わりとして使われることが多いのですが
使用シチュエーションや《ざくろ》の精神状態が何故かリアルに感じます(※当方、ドラックの知識はほとんどありません)
一方で後遺症が無く体調不良は起こしていないのはエロゲーの限界なんでしょう

イジメでオタ《卓司》と同じイジメスパイラルに陥って可哀想なキャラ
「なんで処女じゃないんだ!」がまさかの伏線として使われ、一瞬助かるのかと期待させておいて
処女喪失は喘ぎ声すらないという悲惨な演出。《ざくろ》が電波ちゃんになるのも納得
分岐後1時間程度と短時間でまとめたのもいいです。というかこれ以上続けられたらこっちがキツイ

多重人格ネタは薄々気づいていた伏線で「やっぱりな」という程度
でも最後の《由岐》へのキスは衝撃的でした。長々と説明するより一発で分かる衝撃的な回答でよかったです
リリカシーンも予想外の繋がり方。ラストの2つの伏線回収が見事です

シナリオとしては2つとも絶賛ですが、あのアホ神様絵だけは無い。何で悪ノリするかなぁ・・




■■4章 Jabberwockey
■■5章 Witch Dreamed It
■■6章 Jabberwockey II
《皆守》編で全部で4時間

電波や鬱要素はかなり少なく、ギャグやライトエロが多めで明るいシナリオ。今までとは大きく作風が異なります
ここまで《皆守》や《羽咲》の出番は少なかったのでこんなキャラだったのかと違和感。《由岐》も別人
1~3章には出てこない新キャラの話なので、外伝と捉えるかこれが本編と捉えるかで解釈は変わるでしょう
自分は前者でした。結論だけなら大量自殺者を出しておきながら《皆守》と《羽咲》のHAPPY ENDですもの(笑)

シナリオはほとんど結末の解っている話が続き驚く要素はなし
多重人格のルールは面白くないですね
《由岐》の記憶消去や《皆守》の存在ルールなど、新ルールがどれもご都合展開で
ストーリーの都合を合わせるための人格入れ替え発動になっているのが残念

エンディングは「素晴らしき日々」エンドが好き。死者達への敬意が感じられたので
「終ノ空II」エンドはTRUE ENDとは思えない悪趣味な曲で後味悪いです




■■総評
「鬱」と「電波」がかなり強くて期待以上の出来でした
多視点を使った伏線回収の見せ方が素晴らしいです
キャラ1人1人を深く掘り下げているので感情移入しやすいです
不満点は《卓司》の扱い酷すぎとか、4~6章が唐突&ボリューム不足とか色々あるんですが
それ以上に強い魅力のあるエロゲーです

哲学は好きなジャンルじゃないのでノーコメント。別に考察しなくても問題なく楽しめます




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■■エロ
掘 ら れ な く て よ か っ た