安心してプレイすることが出来る。
前作キスベルでも魅力的だった現実味のある描写(キャラクターの性格・制服デザイン・舞台など)と、イチャラブ&芸術を志す人間の苦悩を描いたシナリオが上手くマッチしている作品。地味な内容だと感じる人も多いだろうが、年相応の葛藤がメインとなっているため、むしろこの素朴さがリアリティを感じさせ、感情移入がしやすくなっている。また、全てのルートが大団円で終わることなく、どこか現実に対して妥協した選択をするところも好印象。絵に描いたようなご都合主義の結末も決して悪くはないけれど、どこかほろ苦さを感じさせる結末の方が記憶に残りやすい。プレイしていて不快になることもないので癒しを求める人には是非プレイしてもらいたい。
〇コンセプト：イチャラブ・クリエイターを志す人の葛藤
〇キャラクター：全ヒロインともに何かしら共感できる部分を持っているが、エロゲらしい可愛さも兼ね備えている。主人公は好青年だが、状況が揃うと節操なしに。
〇グラフィック：立ち絵・CGともに一部崩れている部分もあるが、全体的には満足。キャラクターデザインも身近に感じられ、落ち着きがある。奇抜な髪の色をしたキャラクターが一人もいないのが好印象。背景もとても綺麗。
〇サウンド：作品に良くマッチしているBGM。OP曲も良い。
〇エンターテインメント性：賑やかで楽しい共通・魅力的なヒロインとの各個別ルート
〇リプレイ性：高い。イベントモードですぐにお気に入りのシーンをプレイすることが出来るので、心が荒んでいる時につい起動してしまう。
●個別ルートの評価
・月夜 95/100
自分の思うままに絵を描くべきか、相手の好みに合わせるべきか・・・という芸術・娯楽で生計を立てている人なら誰もがぶち当たりそうなことが主軸となっている。月夜は作中すごく成長し、最後の場面で失敗した絵を取っておくという選択もなかなか考えさせられるものだった。自分のやりたいことだけをやるのがどれだけ大変なことなのか痛感させられるシナリオ。
・梓 95/100
天才が身近にいる凡人のお話。自分が取り組んでいることに対してとび抜けた才能がなくても、関わりようはいくらでもあるよねっていうことがテーマ。全ヒロイン中最もイチャラブシーンが多く、Hシーンもずば抜けてエロイ。堅物系ヒロインが付き合いだした途端、大きく変化するシナリオはギャップも相まって面白く感じる。ラブホのHシーンが省略されているのが地味に痛い。
・まどか 85/100
恋人or自分がやりたいこと。ありがちな展開ではあるが、主人公・まどか共に納得のできる答えを導いている。まどか先輩のヒモになりたい。
・有紗 85/100
付き合うまでの過程が一番可愛い。いちゃいちゃしていた場面が状況説明のみで語られることが多かったのが非常に残念。主人公は後半空気になり、有紗の独り立ちが描かれる。あじ秋刀魚さんの演技は今作でずば抜けて素晴らしい。