短くも、丁寧に描かれ作られている作品。最近の萌えゲー、純愛ゲーになれている人には敬遠されがちな設定が多々有り、画も独特なので人を選ぶ作品だなと思う。あやめを先に攻略すると他のルートをやる気になれなくなるかもなので後に回すことをオススメします。
卒業直前の五日間の物語で、とうぜん必要な部分は回想で補っているので話としてのまとまりは非常にいいが、その回想を含め終始、主人公とヒロイン達の思い出話を傍から聞かされているという印象を受ける。それは、あくまで主人公とヒロインの思い出であってプレーヤーとキャラクター達との思い出ではないので感情移入がやや難しい。できれば、通常の作品と同様に彼らと共に時間を過ごしていけたらよかったのにと思う。でもそうしてしまうと、作品全体に流れる、あの卒業シーズン独特の雰囲気は描けなかったのかなとも思う。
また、個人的にマイナスなのは、アナザーシナリオの存在。ただでさえ、上記のように感情移入が難しいのに、アナザーでは、また違う彼らの物語を見せられる。本来もっとも「正しい」終わりが各TRUEのはずなのに、クリア後にそれとは違う未来を見せられてしまうと、今までの話はなんだったのかという気持ちになってしまう。明らかに蛇足。こんなもん作るくらいならアフターを作って欲しかった。
蛇足という意味では美夢ルートの存在も不要に思う。全ルート終了後に開放されるので、ループではないが、全ルートにまたがる裏設定のようなモノが語られるのかと思えばそういうこともなく、シナリオ自体も尻切れトンボのように終わる。こんなシナリオを最後に見せられるくらいなら、あやめルートを最後に設定して美夢ルートはカットしたほうが高評価になったのではないかと思う。
ただ、上記の回想中心の構成、アナザー・美夢ルートの存在からエロゲー、美少女ゲーへのアンチテーゼのようなもの感じなくもない。まあ気のせいだと思うけど。
文章、表現は非常に丁寧かつ美しいが、あやめルートの某事件を考えると、他のルートとの整合性が取れていないような気もする。他のルートではキスもエッチも初めてみたいな顔しといて、お前それはないだろってなった。でもシナリオはあやめルートがダントツに良かった、主人公もあやめも頭おかしいかったけど。