好意的にみれば純文学的といえなくもないが、フィクションにおける現実味みたいなものが欠如しているように感じた
大勢のクズどもが織り成すくそったれなお話。
このブランドの作品は『300年ぶりの地球に、泣け』しかプレイしたことはないが、ライターの描きたいテーマとして「世界はくそったれで、悪意に満ちているけれど、それでも世界は彼らが思っているよりもほんの少しだけ優しい、かすかでも希望はある」みたいなのがあるのかなと感じる。
このあたりは瀬戸口廉也なんかと通ずるところがあるが、瀬戸口に比べてフィクションにおける希望と悪意のバランス感覚が圧倒的に悪い。『300年ぶりの地球に、泣け』の時もそうだが、散々暗く陰鬱とした世界を撒き散らしておいて最後の最後だけ申し訳程度に希望を見せられても、説得力がないし読者は納得しない。それゆえに掴みはいいが終わりがだめといった評価につながる。
ある意味、瀬戸口の方がフィクション的キャラクター達で現実にはいそうになく、このライターの描くクズ達の方が、ああこういうクズいるよねと思えなくもない。でも現実とフィクションは別物で、フィクションにはフィクションなりの行動原理があって、こういう扱いを受けたらこういう行動を取るといったフィクションにおける現実味がこのライターの登場人物達にはないように思う。このあたりが、筆力不足の瀬戸口廉也と評したくなる原因かなと思う。
ただ荒削りながら、人を引き込む魅力、筆力は十二分にあり今後も注目していきたいブランドではある。