「取リ戻セ」、その対象は過去か未来か
コットンソフトの初プレイ作品にして私的同メーカー傑作の１つ。
海上ニュータウンに出没する首狩り女の殺人現場を目撃した
新任教師と男子学生が周囲のヒロインともども怪事件に
巻き込まれていくストーリーです。
前身メーカーであったねこねこの（一応の）最終作「スカーレット」
のテーマ「日常と非日常」が、犯人の妄執による犯行によって
破壊されていく日常という形で表現されています。
本作で特に高く評価できるのがシナリオ構成と伏線（回収）の
上手さ。このゲームでは～s'view という演出により頻繁に
キャラクターの視点が入れ替わるのですが、これが海上ニュー
タウンという広大な舞台で行動する各キャラの動向と心情を
理解するのに大きく貢献しています。また、ルートを攻略
するごと事件展開を記したカレンダーが閲覧できるようになり、
そこでのサブエピソードから「あの時、あの人はこうしていた
のか」と納得させられます。４つの個別ルートは2人の主人公
により大きく２つの展開に分岐します。メインキャラに悲劇が
振りかかる個別ルートをクリアすると過去の真相ルートと
グランドルートが開かれます。
プレイ開始直後の対話シーンに登場する2人がこの物語の展開の
中心になります。そして、この2人が失った大切なものに対し
それぞれの形で決着をつけることで、新しい未来が始まります。
個別が長いですが、ぜひグランドルートまで。
お気に入りキャラには本作の中心的ヒロインの秋月暮葉さんを。
北都みなみさんの演じる凛とした古風な黒髪ロングの女性像は
テンプレ属性に収まらない魅力がありました。