学園ものと見せかけた大人のファンタジー
いい意味で色々と作品へのイメージを裏切っている作品です。
キャラクター
他の方も指摘しているように、パッケージでいかにもメインヒロイン感をアピールしている亜依ではなく、茜が真の、そして真実の
ヒロインです。事前の情報などから亜依と茜のダブルヒロインと思わせておいて、「普通女子」の茜にここまで焦点が当たるシナリオとは思いませんでした。
シナリオ
汐里と茜の個別√でプレイヤーは物語の舞台がある「作られた世界」であることに気づかされます。伏線の答えはTrueで明かされたように、先生=天使が作り出した記憶の青春世界というある意味で単純なもの。主人公は現実の人生に疲れ、心を失いかけていたが、記憶の青春世界での体験から、現実で別れたパートナー茜の大切さに気付き現実に回帰していきます。展開としては
よくあるループもののパターンにもかかわらず、プレイして感動させられたのは回帰すべき現実が茜を失った世界であるにも
関わらず、茜との思い出=恋の記憶を取り戻そうとする主人公の姿勢にあるのでしょう。現実で復縁し故郷・石神で結ばれた
2人のラストはHシーンで終わりますが、感動しながら見れたHは久しぶりでした。
また、個別√の結末を見れば、Trueでの真相も茜以外のヒロインにとってもある種の救済となっています。
亜依:現実には厳格な両親に縛られ得られなかった青春を虚構とはいえ体感して、自分の意志で生きる勇気を手にできた
カナ:幼馴染3人組のわだかまりを解くことができた(正確には現実の主人公がその必要性に気づけた?)
汐里:生まれて以来の病院生活で本来得られなかったはずの学生時代と青春を過ごし、現実でも未来への希望を抱けた
こう考えると、ノスタルジックな作風の中に、今をよりよいものにして生きることの大切さがメッセージとなっていたとも読めます。
この作品が大人のファンタジーと述べたのは、おそらく青春真っ只中の学生や社会人になりたての人よりも、主人公と
同じくある程度社会に揉まれた人の方が感情移入できるから。多くの人は茜のように頑張り続けることやヒマワリの花言葉
「ずっと貴方を想い続ける」を忘れてしまいがちでもありますし...
Moreのゲームは『祝祭の歌姫』『あやめの町』とデビュー以来気になり購入してきましたが、ようやくブランドカラーを確立したと
いう感じです。今後も注目していきたいメーカーですね。
最後に、どうか主人公・優と茜、そして新たな現実を歩んでいくヒロインたちの未来に幸あらんことを