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shiratoriさんの恋する乙女と守護の楯 Re:boot Plusの長文感想

ユーザー
shiratori
ゲーム
恋する乙女と守護の楯 Re:boot Plus
ブランド
戯画
得点
70
参照数
2914

一言コメント

我思う、故に我在り。天上天下唯我独尊。(追記:2/10,11,12,15,18,20)

長文感想

履歴(2021年)
 2/08:初稿(「はじめに」、「内容について」、「戯画の販売方法について」、「おわりに」)
 2/10:追記(「一言感想の意味」、「備忘録」<雪乃編>)
 2/11:追記(「なぜ「楯」であって「盾」でないのかを考察」)
 2/12:追記(「備忘録」<蓮編>)
 2/15:追記(「備忘録」<鞠奈編>)
 2/18:追記(「備忘録」<有里編>)
 2/20:追記(「備忘録」<設子編>)

○はじめに
今更、『恋する乙女と守護の楯』関係の感想を書こうと思う方々など、殆どいないとは思いますが、せっかく"Plus"のDL版が先行発売されたのですから、"Plus"版の感想穴埋めに一肌脱ごうと、ひっそりと書き残しておこうと思います。

私は、本作関係は初めて購入しました。つまり、今までにプレイしたことは一度もありませんでした。私が把握していた事前情報としては、女装ゲームというよりは女装した警備会社の男性エージェントが女子学院に潜入して活躍するゲームらしいといった程度でした。そのため、1年前にリメイクの"SHIELD-9"が発売された時も購入を検討してはみたものの、今一歩踏ん切りがつかず、悩んだ末に出した結論が、どうせリメイクだし、そのうち50%OFFキャンペーンで安く買えるだろうから、その時に購入しようと判断し、見送りました。

今となっては、50%OFFで買うことはできませんでしたが、1年経たずに"Plus"版が出たので、私にとっては、ラッキーみたいな("SHIELD-9"の時はけっこうバグもあったみたいだし、Ver.1.10になって不具合に悩むこともなくなったわけですし)。

※私、まだ一人も攻略し終えていないので、現時点(2/8)では点数なしです。おいおい各戸別ルートを完了するごとに、自分向けに備忘録として追記しておきたいと考えております(2/20:全ルートを備忘録に追記。完了したので点数とメモ書き含めた総プレイ時間を記入)。


○内容について
今更、5人のヒロイン全員のアフターHシーンが追加されただけの内容について書いても、意味なんかないかなと思ったので、特にそれについて言及する気はさらさらありませんが、スタートして最初に思ったことは、『蒼の彼方のフォーリズム』をプレイした時と同じでした。つまり、あらゆる面で「子供っぽすぎる」。そのため再度、「子供向けのマンガかアニメの雰囲気と構成が前面に押し出されていたので、18禁エロゲーの筈なのに、物凄く場違いなものをプレイしてしまった」と感じてしまったのでした。まぁ、プレイしていくにつれて、だんだん慣れて気にはならなくなるのですが、私がイメージする18禁エロゲーとの差異による違和感だけは払拭できず、私の中では何とも解消しようがなかったですけどね。

私は現時点(2/8)で、まだ誰一人として攻略できてはいないのですが、本作について唯一感想めいたことを書くとすれば、登場人物達の立ち絵の目のデザイン(特に瞳孔の虹彩表現が)が悪魔的だと感じたことでした。大きな目を見つめていると、どこか異次元に自分の精神が持って行かれそうになってしまうのです。まさに、メドゥーサの目ですね、これは。特に設子さんの目なんか、魔王級です。本当に危ないので、まだプレイ中なのですが、なるべく見つめないようにしております(笑)。

そういえば、設子さんで思い出したのですが、本作はリメイクなので、2010年以前のエロゲー仕様ですよね。つまり、ストーリーはちゃんとあって、しかもゲームとしての体面を保つために、選択肢多めの阿弥陀くじ紙芝居ゲーなわけです。それで、ちょっと気になったのが、設子さん以外の攻略対象ヒロイン達は、選択肢での名前は敬称なしの呼び捨てなのに、設子さんだけ最初のうちは「設子」ではなく「設子さん」なのです。選択肢の具体例としては、次のとおり。
 雪乃が気になる
 蓮が気になる
 鞠奈が気になる
 有里が気になる
 設子さんが気になる <== これ
最初にこの選択肢を目にした時には、笑ってしまいました。これは何故なんだろうかと。設子さんは何か特別な存在なのでしょうか? すみません。現状、本作の知識ゼロから始めているので、選択肢の項目内容どおり、ちょっとしたことが本当に気になってしまっております(笑)。
(2/10追記:修史視点の地の文が「設子さん」で終始一貫しているので、共通ルートの途中の選択肢から「設子」と呼び捨てになっているのは、ミスなんじゃないかという気もしています。まだ、設子項目のどれも選択してはいないのだけれど……)


2021/2/10追記
○一言感想の意味
私の一言感想(長文感想のタイトル)、なに訳の分からんことを書いてと思われてしまっているのかもしれませんので、簡単に説明しておこうと思います。

本作の序盤をプレイしていて、修史は「自分以外はみんな敵」かもしれないという、誰も信用できない状況に放り込まれた状況に陥ってしまったということが分かりました。それで私は、思いました――自己だけは犯人(敵)ではないと(笑)。つまり、そういう作品なんだと。

また、主人公は当初たった一人で、複数の敵と対峙する環境下におかれています。この世で自分以外の誰も信じられないと思ったとしても、不思議ではないでしょう。つまり、主人公だけが善。しかし、主人公は敵を殺すことにはとても躊躇する(銃が下手)、良く言えば人類皆兄弟、悪く言えばヘタレでもあるのです。そして、最後に主人公の神が与えし使命「守ること(守護の楯になること)」によって、主人公は「解脱(悟りを得る)」するというストーリーなのであろうと考えました。

とまあ、そんなこんなを序盤プレイ中に夢想してしまったので、それらの意味をタイトルに込めてみました、マジで。


2021/2/11追記
○なぜ「楯」であって「盾」でないのかを考察
「楯」と「盾」の違いって、
 楯:部首が「きへん」のとおり盾の中でも木製の盾
 盾:鉄製、木製、革製などを含む板状の防具
ということらしいのです。仮に修史を、防具としての「たて」に準(なぞ)えるとすると、修史は俊敏ではないにしても機敏には動ける設定ですから、重い鉄製の盾には該当しないでしょうね。そうすると木製が革製かとなるわけですが、革製の盾って、某牛丼屋のキャッチコピー「うまい、安い、早い」ではないのだけれど、「硬い、安い、軽い」という相当に使える性能らしいのです。実際問題、革は茹でて硬化させれば薄い鉄板よりも硬く、矢も貫通しにくいとのこと。また、斬るという行為に対しては特に強く、方向を合わせれば刃物が滑って効果を無くすこともできるのだとか。なお、「皮」を鞣(なめ)したものが「革」です。

さて、盾に関する某ゲームの設定は、次のとおりでした。
    防御力 回避力 速さ LV 値段
 皮の盾: 4 30% ―― ――  100
 木の盾: 6 45% ――  3  600
 鉄の盾:14 35% -1 13 3200

一般的な認識だと、革製より木製の方が性能が良いってイメージなんでしょうかね。回避力から考えると修史にぴったりなのかも(某ゲームの設定に従うのなら)。ただ、私が修史に抱(いだ)くイメージは、皮が一番しっくりくるのですが……。鉄は論外ですが、木ほど硬そうなイメージはなく(女装してもバレない見た目と華奢さ)、それ以前に鉄、木、皮の素材の順により人間らしいというか、温かみがあるというか、心が存在するというか、そんな気がするのです。また、常用漢字では「盾」しか認められていませんしね。

これらの理由から、私は、タイトルは「楯」ではなく「盾」とするべきだったのではないかと思うのです。どうせ、『ChronoBox -クロノボックス-』がキャッチコピーを当初の「死ね」から「屍ね」に変えたのと同じような理由で、漢字の見た目が「盾」より「楯」の方がカッコいいとかの発想ですよね、きっと。

このように考えていくと、そもそも盾は重すぎたら使いようがないのですから、一番軽量で安そう(修史は機敏に動くけれどアイギスでは一番の下っ端ですからですから単価が一番安い筈)な革製の盾が修史のイメージにはぴったりで、それに漢字の意味するところを加味すると、タイトルは「楯」より「盾」にするべきだったのではないだろうかというのが、私の最終結論です。まあ、私が結論を出したからといって、今更タイトルは変わりませんがね(笑)。

少し話がそれますが、修史が所属する組織名称が「アイギス(ギリシア神話でゼウスおよびアテナの持物として現れる山羊革の盾)」ってのも、なんだかなぁって感じです(きちんと世界観を練ったと言うべきなのか、それとも安易なと言うべきなのか)。でも、やっぱり革の盾ではあるわけで、上記の私の結論での補完情報にはなるのかもしれません。

因みに、私は「アイギス」と聞くと、『カミカゼ☆エクスプローラー!』を思い出してしまいます(姫川 風花の不可視の盾「アイギス」)。そういえば、『カミカゼ☆エクスプローラー!』の「祐天寺 美汐」と本作の「春日崎 雪乃」って、同じ声優さん(青山ゆかりさん)ですよね。なんか、同じ系統(ヒロインの設定や立ち位置。また、氏名の文字数は漢字と仮名書きとも同じ)のキャラが同じ声で演じられているので、既視感が半端なかったです。

これってつまり、『カミカゼ☆エクスプローラー!』と本作って、同じ作風の作品だってことですかね。類は友を呼ぶってわけですね。


○戯画の販売方法について
実は、これが一番書きたかったことなのですが、本作の広報は、独立して存在するのではなく、"SHIELD-9"のオフィシャルWebページに、注目情報として「“Plus”版 発売決定!」と追加されているだけなのです。発売前は、本編をお持ちの方々には無償で追加部分を提供予定みたいなことが書かれていたと思うのですが、発売後は「既に本編をお持ちの方にはDLコンテンツとして追加部分を無料配信中です」となっています。

ただ、今現在(2/7)「DLコンテンツのダウンロードはこちら」を見ると、 Ver.1.03のアップデートファイルが掲示されているだけです。本当だったら、「恋する乙女と守護の楯 Re:boot The "SHIELD-9". アップデートファイル(2021/02/05, Ver.1.10). 主な変更点. 演出の調整; アフターHシーンの追加; 本パッチをインストールすることにより、各ヒロインのアフターHシーンが追加されます」みたいな事柄が書かれている内容が掲示されていないといけない筈なのに……。これはどうなっているのでしょうか? まぁ、“Plus”版を購入した私には関係ない話ではあるのですが、ちょっと気になっています(2/11追記:今日見たら掲示が復活していました。ここ数日、なんだったのでしょうね?)。

それで思ったのですが、それで思ったのですが、戯画がリメイクの本編発売後、1年経たずに“Plus”版(実体はVer.1.10)をフルプライスで出すことにしたのは、マーケティング戦略上どうなのかなってところが、私にはとても興味深いです。この戦略ですと、これからもちょこっとずつアップデートしていくだけで、あたかも新商品であるかのごとく見せかけて、何回でもフルプライス発売が可能になるのです。驚くべき戯画マジック。頭が良いのか、悪徳なのか、ユーザーはどう評価するべきなのでしょうか?

最近の傾向としては、例えば『ぬきたし2 スス子ルートアペンド』や『あざスミ』みたく超低価格でのDL販売とかで、あわよくば購入時に個人情報をゲットして今後の販促に繋げるマーケティング戦略が多くなりつつあるような気がします。不特定多数に宣伝するより、エロゲーを確実に買う購買層に絞って販促した方が、無駄がなくて効率的ですからね。どこも購買層のユーザーを特定できる情報は、喉から手が出るほど欲しい筈です。そのため私は、今回も無償アップデートを餌に、エロゲー販促のための個人情報ゲットのパターンなのかなと思っていたのですが、単なる不特定多数への修正パッチ提供方針なのでしょうか? だとすると、販促担当者は相当頭の悪いマーケターだな、なんて個人的には思ってみたりもして……。


○おわりに
私としては、本作は“Plus”版で打ち止めにして欲しいところですが、そんなわけないか(笑)。またまた1年後には、しれっとして“**”版がフルプライスで出てくるのでしょうね、きっと。
(2023/3/30追記:戯画が2023年3月末で開発・販売を終了なため、砂上の楼閣となってしまった。DMMが諸権利を確保するのでしょうかね)


○備忘録
ヒロイン5人の個別ルート攻略が完了するごとに、追記予定(2/20完了)。
外向けの感想は上記に書きましたので、ここでは私が、後々に本作を振り返って考えることができるようにするための、飽くまでも個人的な内向けの内容です(『ef』じゃないですけど、私、本当に記憶力が足りなくて作品内容を記憶保持できず、個別ルートを完了するごとに、グラデーションのように内容を忘れ去っていくので)。そのため、一応、ネタバレしないようにはしますけど、自分以外の方々が敢えて読む必要性はございません。因みに、私の共通ルートの選択肢での項目選択方針は、終始一貫して同じヒロインで押し通すです。

<雪乃編>(2021/2/10追記)
雪乃の個別ルートに入ってから、チャートを見る機能があることを知って愕然としました(笑)。それまで、一所懸命に選択肢の内容をメモっていたのに。それで思ったのですが、本チャートモードで唯一足りていないのは、選択肢を示す理由が即座に分からない点ですかね。私のメモで具体例を示すのなら、下記「⇒」のコメントに関する部分。
 ◎選択肢
  どうしてですか?
  は、恥ずかしいです
 ⇒雪乃のストーカーを捕まえた後、お姉さんと呼んでも良いと言われての選択
これがないと、後で振り返った場合に選択肢の意味がまるで分からなくなってしまいます(記憶力ゼロなもので)。そのため、チャートの各選択肢を示す枠にマウスカーソルを持っていくと、吹き出しとして選択肢の意味内容を表示してくれると、本当に助かると思いました。

さて、雪乃ルートをやり終えて思ったことは、本作は基本的にジャンルとしてはミステリーですよね。いわゆる「犯人(敵)は誰だ?」ってことを楽しむゲームだと思うのです。そのため、本当にネタバレ内容を読んでしまったら、本作は全く楽しめなくなってしまうと思うのです。

本作は、ヒロイン5人によるマルチエンディングスタイルですから、それぞれの個別ルートを楽しむためには、少なくとも各個別ルートごとに固有のラスボスがいないと――誰か一人を攻略したら――残りのルートの楽しみ方は大幅に半減してしまうことになるでしょう。従って、それをどう対処したのかで、本作品の評価が決まるのではないかと思いました。

また、主人公の性別が各ヒロインにばれていく過程も、女装ゲーでは重要なポイントだと思うのですが、雪乃ルートはけっこう端折ってる感があったかなって気がします。後半、ばたばたと進行していったような気がします。他の個別ルートもこんな感じなのでしょうか?

・アフター
最後に本作、本当の目玉、雪乃のアフターストーリーは……まあ、アフターHでした(笑)。ただそれだけ。感想おしまい。

・間違い
Ver.1.10になっても、テキストの間違い撲滅は不可能だったみたい(笑)。
誤字?
修史「すみません、毎日笹塚先生と先生のファンから逃げるのが必死で……」
 ⇒違和感のない「てにをは」の文章にするのなら「逃げるのに」だと思うのですが。ただ「~から逃げるのが、必死で……」と考えるのなら、OKなのかもしれません。個人的には違和感あるけど。
誤字
ト書き:依頼主である彼女の親御さんからは『娘を不安にさせたくないから、一切教えてないで欲しい』という要望が来ていた。
 ⇒「教えないで」が正しい。
声優さんの読み間違い
有里「普通の特製鎮痛剤って、どーいう意味よ」
 ⇒「鎮静剤」と読んだ。「鎮痛剤」と「鎮静剤」じゃえらい違いですが、まあ、声優さんの読み間違いは採録なんかするわけがないので、今後も直らないだろうけど。ところで私は、同じような読み間違いを前にも経験しているのですが、普段、声優さんが何の薬に依存しているのかの病み上がり度が、何となく窺い知れる気がしてしまいます。

※それにしても、遅々として進みません。5日かかってまだ1ルート攻略しただけ。この調子だと、残りのルートを全部やり終えるのに、後16日はかかりそうです(感想書きを含む)。


<蓮編>(2021/2/12追記)
蓮のストーリーって、社会の現実と家族がテーマで、それをお笑い要素で包み込む構成だと思いました。例えば、社会の現実を見せるでいえば、次のとおり。
 
★世の中、金
 蓮「タエの部屋はもっと手前だ」
 蓮「寮の部屋は家柄とかお金持ちの順で決まってる」
 蓮「この辺りは深窓の令嬢しかいないんだよね」
 修史「かっ、金ですか!?」
 ト書き:カソリックの学院なのに、なんて俗にまみれた空間……
 修史「世の中所詮、金なんですね」
 修史「貧乏人は末席にいろって話なんですねーっ!」
 ト書き:こんなところで格差社会の縮図に出会うとは。
 ト書き:閉鎖された学院社会、恐るべし。

共通ルートで、雪乃ストーリーばかり追っかけていた時には、分からなかった現実。また、家族がテーマでいえば、次のとおり。

★家族が一番大事
 蓮「そっか、あたしにとっては家族が一番大事なんだ」
★修史の思い出(サバイバルキャンプ)
 修史「荷物はナイフ一本と緊急用の信号弾。食料は現地調達で、丸一週間ジャングルを放浪しました」
 ト書き:楽しかったとは言い難いけど、今の自分を作った大事な思い出なのは間違いない。
 ト書き:それに……
 ト書き:ガケから落ちて動けなくなった俺を、課長が助けにきてくれた。
 ト書き:まだ小さかった俺は、課長の顔を見た途端に泣いてしまった。
 ト書き:その時は『泣くな』って怒られたけど。
 ト書き:後で聞いたら、丸2日寝ないで俺を探していたらしい。
 ト書き:昔、俺がまだあの人を『お父さん』と呼んでいた頃の話。

このように、雪乃ストーリーでの孤独、疎外感とは間逆のストーリーを紡ぐ蓮ルートは、次のとおり人間関係に思いを巡らすのです。

★気配り
 ト書き:雪乃と蓮を護る任務があるのに、人間関係にも気を配らなければならないなんて、非常に憂鬱だ。
★仲間思い
 蓮「今度雪乃さまが襲われたときは、あたしも一緒に助けるからさ」
 蓮「なにかあったら呼んでよ。ねっ?」
 ト書き:仲間を思う気持ちに共感できるからか、蓮の言葉は不思議と俺の心を温かくさせた。

そんな人と人との関わり合いを、次のようにお笑いコントを接着剤として進めていくのが、蓮ルートなのです。

★真・料理部設立に燃える蓮
 蓮「自慢じゃないが――あたしには、シェフ並の料理の腕がある」
 蓮「あたしは、この腕を生かそうと料理部に入った」
 蓮「でも……たった3日で追放されてしまった」
 蓮「あたしの料理が…あまりに完璧だったから!」
 蓮「あたしの才能に嫉妬した副部長と、他の部員たちから、クビにされてしまったんだ」
  :
 蓮「タァァッ! アタッ! ホァタァァッ!!」
 ト書き:食材が宙を舞いながら蓮が包丁で切り、打ち付けて、伸ばして、炒める。
 ト書き:鉄人さながらの独創的な料理で、完成型が全く見えない。
 修史「……普通に美味しそうです」
 蓮「実際美味しいんだよ。ほらほら~、食べてみなって」
  :
 修史「うぐおっ!?」
 ト書き:なんだ、このデンジャラスな味は。
 ト書き:料理、ど下手じゃないかっ。むしろ殺人的に下手糞じゃないかっ!
 ト書き:どこが才能溢れるシェフ並の料理人やねんっ。

一部抜粋で編集しているため面白みが半減しておりますが、余りにも予定調和のお笑いコントで、テンプレートすぎるだろって、思わず素で突っ込んでしまいました。本作、本当に18禁エロゲーなんだろうかと、私の脳裏に「?」マークが数多く舞い散ってしまったのでした(笑)。

ところで、蓮のストーリーを追っていて分かったのですが、このライターさん、地の文の人称と視点の書き方がごちゃ混ぜのちゃんぽん状態です。基本は「俺は」の一人称視点みたいなのですが、一人称の文章の中に三人称の文章がポンポン入ってきて、読んでいると訳が分からなくなる文章に巡り合ったりします。例えば、次のとおり。

例1)
 ト書き:修史が動けない状況の時は、笹塚に護衛のヘルプを依頼していたのだが……ここまで蓮が徹底するとは、さすがの修史も鞠奈も想像していなかった。
 ⇒これは三人称の文章だと思うのですが、前半は一元視点とも考えられますが、後半は神視点ですよね。
例2)
 修史「はぁっ……痛くないか?」
 蓮「ちょっとだけ……あっ、ん……でも、いい。ふぁぁ、あ……」
 ト書き:秘部の狭さには驚いてるけど、痛くはない。①
 ト書き:蓮と手を繋ぎ、ゆっくりと奥に挿入していく。②
 ⇒①は、「秘部の狭さには驚いてるけど」は修史視点だけれど、「痛くはない」は蓮視点だよね。その二つの視点が合体している文章なのです。神視点なのかこれは。②は一人称なのか三人称なのか良く分からない文章です。

さて、最後のラスボス(雪乃ルートとは別人物)との戦闘シーンですが、なかなかどうして、心地よかったです。次のような敵の掛け声が、また乙なもので。
 「哈ァッ!」(読みは「はぁっ」)
 「ふっ! 呀ァッ!」(読みは「やぁっ」)
 「哈ァッ! イ呀ァァァァッ!」
私にとっては戦闘シーンの演出が、BGMも相まってちょっぴり往年のpropeller作品を彷彿とさせてしまいました。『あやかしびと』と『Bullet Butlers』、本当に良かったな。もう、あのような作品、出ないのかなと感慨もひとしおに陥ってしまったのでした。

・アフター
蓮のアフターストーリーですが、雪乃と蓮のアフターHシーンをやってみて、この作品のアフターHって、イメプレとコスプレによるシチュエーションを楽しむセックスがテーマみたいですね。それによって、ストーリーのあるドラマ性を出そうと試みるのが、制作方針のようです。そこは評価できると思います。単なるエッチシーンじゃ、やっぱりマンネリだし、本当に辛いのよ、強制スキップしたくなるのよ、ストーリーのない文章を読むのは。眠くなっちゃうでしょ、普通は。実際に、地の文でも次のように書いているのです。

 ト書き:クスッと笑う蓮に、不思議な気持ちになってしまった。……まだ『ごっこ』は続いていたらしい。だが、これはこれでエッセンスになっている。

なるほど、『ごっこ』の追求が、本作のアフターストーリーの真髄というわけですね。『ごっこ』内容はネタバレになるから書かないですけど。ただまあ、最初から最後まで『ごっこ』を貫き通していないのが、残念な点ですかね。だから、結果的に「アフターH、ただそれだけ」っていう一言感想になってしまうのですが……。

・間違い
声優さんの読み間違い?
優「???。あなたが来る前、お兄さまから止めるように説得されて、正直、心が揺れました」
 ⇒声優さんは「止める」を「とめる」と読みました。しかし、修史は優と次のように会話しているのです。
   修史「???、こんなことはやめろよ」
  つまり、修史から「やめる」ように言われたのだから、ここは「とめる」ではなく「やめる」だと分かります。
   (とめる):主語が、主に主語以外の人の行為を制止する。
   (やめる):主語が、主語の行為を自ら制止する。
  ただし、「常用漢字表」に従えば「止める」は「とめる」としか読めないので、本来ならライターさんは、気を利かして「やめる」と仮名書きすれば良かったと思います。そもそも、修史の会話文では「やめろよ」と仮名書きしているのですから。


<鞠奈編>(2021/2/15追記)
鞠奈って、一言でいうと「いたずらっ子でだだっ子のわがままなマスコットのツンデレ」という絵に描いたような設定なのですが、学園理事長候補の娘は、『遥かに仰ぎ、麗しの』の「風祭 みやび」をはじめ、どうして背は低くチッパイという体形がデフォルトなのでしょうか。性格設定はともかく、この体形設定、誰が最初に考えついたんでしょうかね。

鞠奈ストーリーは、敵に狙われる三人娘の中では、一番短くて一番良くできていました。ここまでの三人をプレイしてみて、各個別ルートの構成は、長短は別にしてプロットは同じですね。そのため、ストーリーの進行と成り行きは、大よそ想像することができました。ある意味、安心して読めましたネ! 裏を返すと、新規のわくわく感はあまり感じることができませんでした。

そもそも、私は雪乃編で「各個別ルートごとに個別のラスボスがいないと楽しみ方は大幅に半減するだろう」というようなことを書いたのですが、鞠奈ルートをプレイしてみて、個別ルートごとに固有のラスボスを用意できなかったことが分かったのでした。

さて、このルート、考察しがいがある題材がいろいろとあって、なかなか面白かったです。いっぱいメモっちゃいました。全部、書こうとすると残りの二人のルートに取り掛かれないので、現時点では、私がとても気になった事柄の二点について書いておこうと思います。残りの書きたかった事柄は、ゆくゆく追記していこうかと考えています(2/23:家族のこととか鞠奈の心情や性格とか、いろいろ追記しようか迷いましたが、内容が分かるとプレイ時の面白さが無くなってしまうと判断し、最終的にやめることにしました)。

(1)「紡錘」の読み
まず最初に書いておこうと思うのは、「紡錘」の読み方です。この言葉、テレジア祭での出し物である『茨姫』(『眠れる森の美女』のグリム童話版ネ!)で、姫が死ぬ(眠る)原因となった凶器?のことです。

 鞠奈「ここは、健やかに育った姫が、紡錘に刺される大事なシーンなの」

鞠奈の声優さんは、上記のセリフで「紡錘」を「つむばり」と読みました。実は私、雪乃ストーリー攻略時からこの読みは気になっていて、

 雪乃「そりゃそうさ。王様がこの国の紡錘を全て焼いてしまったからねっ!」

上記で雪乃の声優さんも「紡錘」を「つむばり」と読んだのでした。その時もちらっと調べたのですが、再度、鞠奈の声優さんも同じ読みをしたので、本格的に調査してみました。

私が最初に思い浮かべた読みは「ぼうすい」でしたが、通常、「紡錘」の読みは「ぼうすい」か「つむ」です。「いとくり」と読む場合もあるらしいです。『茨姫』関係で見ると、どうも「つむ」と読ませているみたいですね。しかし、いろいろと検索してみましたが、「紡錘」の読みが「つむばり」だと書かれたものは、1つも検索できませんでした。あっ、嘘です。なんと当ゲーム関連で、次のツイートが1つだけ検索できました。

 「あーくん @HearTRump 2020年3月30日 新規収録の有里は紡錘(ぼうすい)と読むが、雪乃は紡錘(つむばり)と読んでいるので揃えて欲しかったな #恋楯」

なんと、私と同じように、声優さんの読みに注意を払っている人がいたんですね。なるほど、有里ストーリーはまだ攻略しておりませんが、有里の声優さんは「ぼうすい」と読んでいるのですね(有里は、リニューアル前と声優さんが交代しているので、その関係?)。しかし、これは本来の正しい読み方の1つなので、有里の声優さんは逆に褒められてしかるべきではないでしょうか。
(2/16追記:やっと有里の該当箇所に到達。劇のセリフ練習だから、会話の冒頭で「ぼうすい」と大きな声で叫んでますね。しかも2回も。そりゃあ気になるか。
  有里「紡錘に刺されて死ぬという呪いをかけられる姫」
  有里「紡錘に刺された姫は死なず、百年後に復活する魔法をかけましょう!」
調べた限りでは、この童話では「つむ」が本来の読みらしいので、さすがに「ぼうすい」読みは駄目そうですね)

さて、本作の制作陣は複数の声優さんに「つむばり」と読ませているわけですが、実際問題、「紡錘」の読みに「つむばり」があるのでしょうか? 残念ながら私の力不足で、結局、真偽のほどは調べがつかず、私にとっては永遠の謎となってしまいました。

ところで、体形が糸を巻いた紡錘に似ていることから「ツムブリ(紡錘鰤、錘鰤)」と呼ばれる魚がいるのですが、「つむぶり」から「つむばり」に変化したのだとしたら、笑ってしまうゾ!


(2)鞠奈の声優さんのエロシーンでの演技が秀逸
エロゲーって、普通の和姦もの作品に出演する声優さんの場合、通常の会話文は違和感がないのに、エロシーンになった途端、テキストを読む事に必死になって「何だこりゃ!?」みたいな演技力の馬脚を現す声優さんが多い気がしています。つまり、あまり上手でない(逆に、陵辱モノに出演する声優さんは、その道のプロみたいに上手な人が多い気がします)。

翻って、本作の鞠奈の声優さん(北都南さん)、エロシーンでの声の出し方がとても上手。しかも、音声さんの編集かもしれないのですが、フェラチオシーンでは、唾液をすする音と喘ぎ声を一緒に出しているのです(勿論、これまでの二人も似たような喘ぎ声を出してはいますが、今一つって感じ)。まるで、ソロ・ギター(メロディ「歌パート」と伴奏「リズム/ベース・パート」の両方をギター1本で演奏するスタイル)のような声帯模写、はたまた一人で複数の音声を出す超絶技巧の腹話術師かよって感じなのです。

オノマトペ(擬音語、擬態語)でもない喘ぎ声文章を、よくぞここまで演技できるなって感心してしまいました。念のために、オノマトペ文章と喘ぎ声文章の違いを具体例で示すと、次のとおり。
 オノマトペ文章の例
  鞠奈「修史のこと考えると、胸がキュンとなって、体がポカポカしてくるんだよ」
 喘ぎ声文章の例(フェラチオで唾を啜りながらの場合)
  鞠奈「はふ……修史ぃ……んっ、あぁぁっ……ちゅば、れろ、ちゅぷぅぅ……ン、じゅるるっ」
  鞠奈「んっぢゅ……れろ、れるぅ……ぢゅぢゅッ、いっぱい吸わないと……」
上記の喘ぎ声文章では、フェラチオで鞠奈が修史のペニスを舐めて咥えて啜っているので、唾のすすり音声と喘ぎ声の音声の二つが、同時に一緒に入っているように聞こえるわけですね。因みに、フェラチオシーンでない場合は、吐息の音声と一緒に喘ぎ声の音声が入るのです。
 喘ぎ声文章の例(吐息をつきながらの場合)
  鞠奈「んくっ、ふぁぁ……あっ、中に入ってきてるぅ……あったかい……んっ、はぁ……嬉しい」
ここでの「中に入って」は、中出しされた精液のことです。中出しされた精液が温かいって表現は、よく使われるテンプレですよね。

私は、鞠奈の声優さんのアニメ声的な声色(こわいろ)は、個人的には好きではないのですが、ことエッチシーンでの自然な演技については、編集しているのでなかったとしたら、技巧派で上手だよねって思いました。

ところで、喘ぎ声の種類は大きく「吐息系」、「ノーマル系」、「絶叫系」、「セリフ系」の4つに分類されるのだとか。で、エロゲーのシナリオって、「セリフ系」が多いわけです。つまり、ヒロインがべらべらとセックスの実況解説をするわけですよ。そんなセックス、実際には殆どあるわけがないのに……。実際には殆ど存在しないものを、無理して声優さんに演技させようとするから、声優さんもどう演技して良いか分からず、結果的にクッソつまんないエロシーンが完成してしまうわけです。

とはいっても「吐息系(ハァ…ハァ…)」と「ノーマル系(アン、アン)」だけじゃ、殆ど静止画でしかない殆どのエロゲーでは、場を繋ぐのは至難の業。それにも拘らず最近はエロシーンの時間をできるだけ延ばそうとするものだから、刺身のツマのように食されず、飽きられて強制スキップさせられてしまう運命となるのが、殆どのエロゲーのエロシーンが辿る顛末だと思うのです。だったら、エロシーンでのストーリーをきちんと考えて、地の文で頑張って、それを回避するのがシナリオライターの役目だろっていつも思ってしまうのですが……そんな優秀なライター、駄々下がりのエロゲー業界には余り残っていないと思われますし、本当に世の中ままなりません。

因みに、本作のライターさんの文章、鞠奈のエロシーン部分は上手いと思いました。
 ト書き:ぬぷぬぷと潤った襞が陽根を飲み込んでいく。
欲を言えば、もうちょっと襞の状況説明だけではなくて、修史と鞠奈がそれぞれ、どう感じたかを書いて欲しかったかな(つまり修史ならペニスで、鞠奈ならヴァギナで)。

・アフター
今回も当然のように『ごっこ』がテーマ。まず、鞠奈は子供っぽい。子供が遊びで使う道具といったら、もう分かりましたよね。感想終わり。

・間違い
声優さんの読み間違い
鞠奈「そんな他人事みたいな言い方して……」
 ⇒「他人事」を「たにんごと」と読んだ。正しくは「ひとごと」。しかし、エロゲーの声優さんは、かなりの確率で「たにんごと」と読みます。勿論、間違いなのですが、今や「たにんごと」と読む人の方が多いので、もしかすると、鞠奈が「たにんごと」と読む派かもしれず、もしそうなら、声優さんの読みは正しいということに。まあ、最終的にはライターさんがどっちで打って漢字に変換したのかで結論は出るのですが、それはライターさん以外の誰にも分かりません。
誤字脱字
修史「せ、せめてブラを付けましょうよ」
鞠奈「鞠奈の胸は小さいから、着けたところで意味ないもん」
 ⇒「ブラを着けましょうよ」。そもそも、直後の鞠奈の会話文では「着けたところ」って正しく書いているのに、なんでって感じです。
誤字脱字?
鞠奈「無理してるわけないじゃん……ちゅっちゅ、ん……好きで舐めてるんだもん……んっ……ごんくっ」
修史「はっ……唾液、飲んだのか?」
⇒「ごんくっ」って、わざと書いたというよりは、たぶんオノマトペとしての「ごくんっ」の打ち間違いだと思われます。


<有里編>(2021/2/18追記)
本作のコンセプトって、簡単にいうと、
 「庶民階級の主人公が、上流階級のお嬢様を護り、めでたく結ばれる」
という、ぶっちゃけ成り上がり(ここでは「逆玉の輿(逆玉)」)ストーリーなのです。従って、このコンセプトから外れたストーリーって、サブストーリーにしかなりません。

翻って有里ルートの話って、
 「庶民階級の主人公が、庶民階級の同僚を護り、めでたく結ばれる」
という、そんなの普通の恋愛話じゃんで済んでしまう正しくサブストーリーにしかならない話なのです。つまり、本作のコンセプト上、メインから全く外れているわけです。それを、メインストーリーに格上げって、そもそも本来のコンセプトと合っていないのだから、土台無理があったと言わざるをえません。

実際、有里の個別ルートに入ってからの序盤は、ストーリー的に停滞していたかと思います。それでも、後半はそれなりに帳尻を合わせてきましたね。その努力は認めるのですが、何しろ、成り上がり度がそもそもゼロです。いくら努力したって、本作のコンセプト基準を満たしていないのですから、私にとっては、評価しようがありません。はっきり言えば「論外」の一言で済んでしまうルートなのです。

そのため、メインストーリーとするためには、この逆境を覆すだけのプラスアルファ(なんと有里は……、みたいな展開)が有里ルートには求められるわけですが、現実には、残念ながらそのような追加要素は無かったと思います。

さて、早速いちゃもんをつけてしまいましたが、そんな有里ルートでも、私には一点だけどっぷりと思索に耽ってしまった事柄がありました。それは何かと言いますと、会話文でのオノマトペ使用の是非というテーマです。


★会話文でのオノマトペを考察
<鞠奈編>の感想で、声優さんのオノマトペではない喘ぎ声文章の演技についてちらっと書いたのですが、オノマトペ自体を声優さんがどう解釈して表現するのかってことが、<有里編>では考えさせられてしまいました。例えば、次の会話文。

 有里「けど、こんな格好でホノボノしてるわたし達って、なんかおかしいよね……くすくす」

擬音語というよりは擬態語である「くすくす」を声優さんはどう演技するのかですが、普通は「なんとなくクスクスと聞こえるような含んだ笑い方をする」らしいのです。ネット上には、本当に「くすくす」とそのまま読んだ場面が晒されて馬鹿にされている映像とかもありますが、有里の声優さんは、自嘲気味に「いひひ」みたいな感じで発声していましたけどね。もう一つ例として挙げるとすると、

 有里「修史がわたしを愛してくれるなんて、くすん、考えてみると涙がでるくらい嬉しい」

この場合「くすん」をどう発声するのかですが、有里の声優さんは鼻を啜りながら「ふぅふん」みたいな感じで演技しておりました。

アドリブで、オノマトペを具体的な文章として読み上げる声優さんもいますが、そんな文章どこにも書いてないだろみたいな(笑)。勝手に文章を紡いでいるのだから、もう声優じゃなくて、ライターだろって感じですけどね。

さて、それで私が疑問に思ったのが、そもそも会話文中のオノマトペを書いてあるとおりに発音しないのは、会話文の読み方ルールに違反してはいないのだろうかってことなのです。これが、説明である地の文にオノマトペが書いてあったのだとしたら、読み手は書いてあるとおりに発音して読むことでしょう。同じように、会話文でも書いた言葉どおりに発声するのが、そもそものルールなのではないのかと。

例えば、「戸がカタカタと鳴ったんですよ」との会話文があったとしたのなら、「カタカタ」を実際にその場面で鳴ったと思われる音で発音して読むのだろうか。そう考えると、会話文で「くすくす」と書かれたら、本来は「くすくす」と発音しろと指定したことと同じなのではないかと。

例えば、コントの会話文として「くすくす」と台本に書いてあったとしたら、恐らくコメディアンは「くすくす」と書いてあるとおりに発音して笑いをとる会話文だと判断するのではないかと。

そんなこんなをいろいろと考えていくと、会話文でのオノマトペの発声は、どう考えるべきなのだろうかと思い悩んでしまったのでした。もしかすると、オノマトペには見えないルビが存在すると考え、見えないのだから文脈から適宜考えろってことなんですかね。小説では、文章内容の解釈を読み手に委ねることを是とする場合もありますが、会話文の読み方まで読み手に委ねる人任せな文章を書くことは、果たして文筆家の行為として正しいことなのだろうかって思ってしまったのでした。

星空文庫の『初心者のための小説講座(小説の書き方)』には、「一般的な小説では、オノマトペを使う事はありませんが、ライトノベルの場合は、読みやすさを優先しているため、直感的にわかりやすいオノマトペを使用する事もあります。ただし、あまり使いすぎると文章が稚拙になってしまうため、バランスを考えて使いましょう」と書いてありました。

普通の小説では、オノマトペって使わないのですね。なんか納得してしまいました。私が思うに、文章が稚拙になる以前に、会話文に使ったら、これまで書いたとおり、どう読むんだって話しになってしまいますからね。そもそも、書いてある文字の音と違う読み方をしなければならず、しかも読み方はアドリブでの人任せって、やっぱり問題があるような気がしますから。

そのため、私の個人的な結論としては、地の文に使う分には――そのままの字句どおりに読めばよいと思うので――十分許容できる範囲となりますが、会話文に使うには相当な配慮が必要だとなります。


・その他、気になった事柄
★有里の仕事評価
鞠奈ルートで、有里が減俸されて云々という話がちらっとあったのですが、まさかその内幕をこのルートで膨らませるとは思いませんでした。これはこれで面白かったです。

★遠景
学院屋上の絵で、遠くの景色を見ると、何らかの高い建築物が蜃気楼のようにぼやけて見えるのですが、とても気になりました。工場なのかビルなのか、私には高炉のようにも見えるのですが……。

★有里のコールサイン
有里が探偵社を辞めて、研修期間が終わるまでアイギスとのフリー契約になっても、コールサインは探偵社時代のホーリー7のまま。これは普通のことなのだろうか?
 オペレーター「神埼課長が不在中の対応は、私もしくは、シールド3へお願い致します」
 ト書き:まぁ、何かあったら宗像先輩に連絡を取ればいいか。
 修史「了解した、シールド9、ホーリー7共に、本日は異常なし。次からはシールド3へ繋ぐ事にする」

★淫蕾
このライターさんは、「淫蕾」ということばをよく使います。例としては次のとおり。

 ト書き:淫蕾は剛直の根元をしっかりと咥え込み、子宮口が降りて亀頭をこりこりと刺激してくる。
 ト書き:淫蕾でぐいぐいと剛直を握り締めながら、有里が絶頂の兆しを口にした。
 ト書き:有里の淫蕾は、何度も脈動して俺を締め付け、ありったけの精を絞りとってゆく。

文章内容から考えると、このライターさんは「淫蕾」を「膣(ヴァギナ)」と捉えているようなのですが、蕾は「つぼみ」を意味するのですから、硬くて尖っているものを想像し、普通なら「クリトリス(またはクリトリス包皮)」をイメージすると思うのです。どうやったら、蕾から膣が連想できるのでしょうか?

ライターさんと読み手の言葉から受けるイメージに齟齬があると、読み手にとっては辛い状態になってしまいます。読み手がライターさんに合わせろってことなんですかね。ですが、そのためには「淫蕾」から「膣」へのイメージが読み手に納得できるレベルの説明をして欲しいところです。なぜなら、私にはイメージできないんですもの。私も、エロゲーでいろいろな女性性器にまつわる表現に遭遇しましたが、書き手が使う言葉のイメージとその言葉から自分がいだくイメージに、これほどのギャップを覚えたのは、今回が初めてです。

・アフター
有里のアフターは「ごっこ」ではなくて普通のエロシーンですね。そのため、ちょっとつまんなかったかな。やはり、本作のコンセプトから外れた庶民ルートでは、普通のエロシーンにしかならないわけですかね。アフターストーリーにまで影響を及ぼすとか、やはりコンセプトの堅持って、重要なんだなと改めて思い知ったのでした。

・間違い
誤字脱字
修史「くーっ! 信じらんねー! もう何かも信じられんっ!」
 ⇒恐らく「何かも」ではなく「何もかも」だと思う。
誤字脱字
年頃で好奇が心旺盛なのは結構だけど、他の事にその行動力を使って欲しい。
 ⇒好奇心が旺盛。
声優さんの読み間違い
有里「嫌がらせにしても、日を追って酷くなってきてますよね」
 ⇒「酷くなってきますよね」と読んだ。「きます」と「きてます」では微妙に意味が違うかな。
声優さんの読み間違い?
有里「ふあぁっ、くすぐったくてジンジンするっ、あんっ」
 ⇒最後の「あんっ」を「ねっ」と読んだ。これは何かの指示? 私、あまりエロ会話での読み間違いって見つけられないのだけれどね(あまり真剣に読んでいないし、声優さんの喘ぎ声なんてアドリブっぽい読みもあって、微妙にテキストどおりでない場合もよくあるし)。


<設子編>(2021/2/20追記)
設子さんって、なかなかネタバレしないで感想を書くのが難しいキャラクターです。公開されているキャラクター設定では、「物腰柔らかな大和撫子で、世間知らずのお嬢様」となっています。そのため、<有里編>で書いたとおり、他の護衛対象お嬢様の三人と同じく、「庶民階級の主人公が、上流階級のお嬢様を護り、めでたく結ばれる」に本来なら該当する筈なのですが、そうは問屋が卸さない。結局、最終的には<有里編>と変わらないことに……。

敢えて<有里編>との相違点を考えるとすると、最初から本来のコンセプトに抗っているのではなくて、途中から抗っているという点ですかね。しかも成り上がり度ゼロどころかマイナスです。ある意味、天晴れなルートといえるでしょうね。ただし、天晴れ過ぎて、無理ありすぎルートともいえます。

良く分からない点もあるんですよね。個別ルート最初の学院屋上での戦闘とか、どうやって凌いで助かったのか、まったくもって不明です。設子さんが何とかしたんでしょうか? また、どのルートでも暗殺者に対する最終的な処遇が大らか過ぎて目が点になってしまいますが、そういう世界観なのだと納得するしかない作品なのでしょう。納得しないと、この作品自体が成り立たなくなってしまいますから。

そんなこんなで、<有里編>と同様、サブストーリーとしてはありかな程度のルートといえるかと思います。結局のところ、原作のサブストーリーをいくら大幅加筆したところで、サブストーリーはサブストーリーでしかなかったということなのでしょう。

因みに、本作と原作での相違点の中に「シナリオでの時事描写を修正」というのがあるのですが、次の手抜きマンション記述は、時代の流れを感じてしまいました。

 修史「今の地震……校舎の方は大丈夫かな? 平地のここがあれだけ
    揺れたんだから、向こうはもっと派手に揺れたんじゃ……」
 設子「見た目は古いが、あの校舎は耐震補強されている。セキュリティも万全」
 設子「昨今の手抜きマンションより、よぼど安全だ」

本作のオリジナルが発売されたのは2007年ですが、これ、2005年末頃に発覚した構造計算書偽造問題(俗に言う姉歯事件)に引っ掛けていますよね。本作のオリジナル制作時期を考えると、とても興味深いのですが、2021年時点の本作で考えると、「手抜きマンション」は例えとして昨今に当たるのかっていうことを、ちらっと考えてしまいました。もっとも、私は原作をプレイしたことがないので、上記の文章が原作にあったのかどうかすら、分かっていないのですが……。


・その他、気になった事柄
★金平糖
ところで、設子さんといえば金平糖。金平糖って、よく物語では小道具として使われたりしますよね。本作の序盤で、
 設子「わたくし、落ち込んだり疲れたときは、とっておきの物を使うんです」
とパステルカラーの金平糖が入った小瓶を鞄の中から取り出すのですが、この金平糖、要所要所で効果的に使っていますよね。例えば、次の文章。

 ト書き:ガリ……
 ト書き:ガリリ……
 ***「………………」
 ???B『おい、聞いているのか? おい』
 ***「……????を消せばいいんだな」
 ???B『そうだ。やれそうか?』
 ***「……ああ」
 ???B『そうか。頼りにしている。では』
 ***「……」
 ***「………………」
 ト書き:ガリ……
 ト書き:ガリリ……
 ***「まあいい……」
 ト書き:小瓶を逆さまにすると、星屑が花園へ落ちていく。
 ト書き:銀の光に照らされて……
 ト書き:キラキラと……
 ト書き:大切なものがこぼれ落ちるように。

一部「?」で伏字にしましたが、これ、金平糖を齧った後に残りの金平糖を捨てた場面です、たぶん。私は、最初に雪乃を攻略した時には、この文章内容をぜんぜん気にしていなかったのですが、後から振り返ってみると、なかなかどうして、良い文章ですよね。特に、一言も「金平糖」という言葉を使わない上に、全体を暗喩で表現しているところが……(まあ「***」が誰だか分からないようにするためですけどね)。

まず、地の文で「ガリ……」「ガリリ……」と擬音語で表現したのが、素晴らしいです。何しろ「落ち込んだり疲れたとき」に使う「とっておき」なものを噛み砕いているのですから、この時の心情と精神状態が分かろうというもの(擬音語としての「ガリガリ」は「硬いものを噛み砕いたり削ったりする音」を表現)。因みに私は、「歯ぎしりですよね!」なんて解釈する無粋な人とは、お近づきになりたくありません(笑)。

また、擬態語としての「キラキラ」も効果を発揮していますよね。何しろ「星屑」なのだから、そりゃあ光り輝きますよね。それが「花園へ落ちていく」のです。

そして最後に「大切なもの」。これが何を指しているのか。なんか国語の試験問題に出そうですが、解答は分かりません。私にそんな国語力があるのなら、今頃エロゲーの感想なんぞ書いておりませんから(笑)。まあ、私の超解釈では「星屑が花園へ落ちていく」とは、

 「星屑=大切なもの」:修史のこと
 「花園」:美しい女性が大勢いる場所のこと
 「落ちていく=こぼれ落ちる」:自分の手元から離れていくこと

であるため、「設子さんにとっては光り輝く存在の修史が、自分の手元から離れ、他の女性達の所に去ってしまう(つまり取られてしまう)」ことを意味し、また「金平糖=星屑=大切なもの=修史」だとすると、ガリガリと噛み砕く行為は単に苛立っていることを示すのではなくて「抹殺」の暗喩、残りを捨て去る行為は「決別」の暗喩であることを意味すると紐解きたいところですネ!


★Another View
実は私、設子ルートをやるまで、ときたま画面の上下にこげ茶色の帯が表示される理由を全く意識していませんでした。画面をシネマスコープ(シネスコ)に見せるための演出なのかと思っていたのですが、よくよく上側の帯の左端を見たら「Another View」と目立たないように表示されていて、やっと修史以外の視点(ここでは設子さん視点)で話が進行することを示しているのだと理解したのでした。

私は、視点変更アラート表示は本作が始めてではなくて、知見はあったのに迂闊でした。初めて体験したエロゲーは『人気声優のつくりかた』ですが、その時も画面の上に「VIEWPOINT CHANGE」と書かれた帯が出ていたのですが、暫く文字が書いてあるのに気づかなかったのでした。

なぜなら、私の場合、普通は画面中央か下のテキスト表示領域を見ていることが多くて、使用している24インチ画面では、フルスクリーン表示での画面上部に多少帯が表示されたところで注意して見ることはなく、まして帯の端に文字が書いてあるなんて、全く意識しないからなのです。

そもそも私は、視点変更アラートを出すシナリオ自体が読み手を惑わす悪魔の手法だと思っているので大嫌いなのですが、それでも視点変更するのであれば、もっとアラート用の警告文字を目立つようにはっきりと明示するか、画面の中央に一旦視点変更アラートを表示するかして、確実に気づけるようにして欲しいです。


★馬のような長さ
設子「男のモノを見たことはあるが、こうなっているのを見るのは、初めてだ」
ト書き:柔らかな指が、優しく陰茎を扱き上げる。
ト書き:淫棒はそれだけで限界まで屹立した。
設子「凄いな……まるで馬のような長さだ」

私は、上記の文章に対して、どんなに大きな人間のペニスでも、馬の勃起したペニスの長さには到底及ぶわけがないじゃんと思ってしまったのでした。なぜなら、テレビ番組で競走馬の交尾動画を見たことがあるのですが、尋常じゃない長さでした。調べてみたら、次のとおりでした。
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 馬並ペニスって何cm?
       勃起時サイズ
 日本人   12cm ※今は13cm前後らしい
 馬(ポニー)約35cm
 馬(中型) 約50cm
 馬(大型) 約70cm
 日本女性の理想 14㎝以上 ※本当かいな?
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現在、人間で世界最大のペニスは、メキシコ在住のカブレラ氏で通常時48cmだとか。たぶん、勃起不能だと思います。勃起なんかしたら、貧血で倒れちゃうでしょう、きっと。因みに少し前までは、米国人のファルコン氏で平常時24cm、勃起時33cmだったらしいです。


・アフター
しいて言うなら、罰ゴッコ。しかしエッチが始まってしまえば、もう罰になっていないじゃないか(笑)。

・間違い
声優さんの読み間違い
ティナ「因果なものデスネェ。暗殺した相手の遺族から、暗殺を依頼される。組織も仕事だからと仲間を殺す命令を下す」
 ⇒「デスナァ」と読んでいるように聞こえる。少なくとも「デスネェ」とは聞こえない。

以上

The above is a long impression of shiratori.