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shiratoriさんの美少女万華鏡 -理と迷宮の少女-の長文感想

ユーザー
shiratori
ゲーム
美少女万華鏡 -理と迷宮の少女-
ブランド
ωstar
得点
72
参照数
619

一言コメント

まあ、その、なんだ、これは井上陽水の『夢の中へ』の世界だナ!

長文感想

履歴
6/26:初稿「○はじめに、○『夢の中へ』の世界観、○頻繁に使われる言葉と作品との関係、○ソフ倫の倫理規定と本作の評価)」  ※もっとも書きたかったことを、最初に記述。他の事柄は、おいおい追記予定
6/27:「○演出は素晴らしい、○コンセプトを考察、○小ネタ、○絶対領域、○その他、気になった事柄」を追記
6/30:「○フォントについて」を追記

○はじめに
2万5千字もメモったのだけれど、感想を書くべきかちょっと悩んでしまいました。なぜなら、私にはシナリオが合わないというか、つまらないと感じてしまったからです。

私には、「POV/属性/タグ」における「シナリオ評価:シナリオがいい(8)、つじつまがあっている(5)、テキストがいい(4)、ゴールが一つだけ(3)、ザッピング」よりも、「ネガティブ評価:個別ルートNG(2)、期待はずれ、テンポ悪い、特定キャラ不快、ご都合主義、システムに不満」の方が、的を射ていると思いました。特に「テンポ悪い」はどうしようもなかったですね、私には。

更に追い討ちをかけるように、セックスシーンが連続して何回も続くのもけっこう辛くて、ストーリーがそこで停滞してしまい先に進まなくなって続けるのが否になってしまい、私は、暫くWeb小説を読むのに逃げてしまいましたよ。

ゲームの起動/終了を20回繰り返して、やっと完了しました。本当に辛かったです。そのため、内容はともかく、「シナリオがいい」とは決して言えないと思いました。

そもそも、「プレイ時間中央値:11時間」って、これセックスシーンを含めて、全体を普通に再生していたら、その倍以上はかかるのではないかと思われます。私なんか、54時間もかけてしまいましたよ(まぁ、私の場合、メモりながら調査/考察している時間も相当に含まれているのですが……)。

上記の理由で、私の感覚的には、ぜんぜん熱中できず、プレイするのも辛く、シナリオだけ考えたら60点台がせいぜいってところでした。つまり、シリーズ完結としての有終の美は飾れなかったってことですね。ただし、シナリオ以外の絵や演出には見るべきものがあったため、価格的なことも考慮して、総合評価としては、72点としました。


○『夢の中へ』の世界観
私は、「もよかを選択しない(踏みとどまる)」を選択後の以下の地の文で、
 ト書き:神社に続く山道を覚えていたのも、何かを探す夢を見ていたのも、
     其れも此れも全部、この前世の記憶から起因された出来事だった。
 ト書き:僕はずっと捜していた。
 ト書き:前世の記憶を捜していたんだ。
 ト書き:だから、この町に来てから、あの人を捜して、毎夜彷徨って……。
 ト書き:そして遂に、全てを思い出したのだった……。
に遭遇した時に、「探し物は何ですか。見つけにくいものですか」のフレーズが、頭の中に木霊してしまいました。本作品は、正しく、井上陽水の『夢の中へ』の歌詞をそのまんまなぞったストーリーだったのです。

因みに『夢の中へ』の歌詞は、次のとおりです。
---------------------------------
探しものは何ですか?
見つけにくいものですか?
カバンの中も つくえの中も
探したけれど見つからないのに

まだまだ探す気ですか?
それより僕と踊りませんか?
夢の中へ 夢の中へ
行ってみたいと思いませんか?

Ooh, ooh, ooh さぁ

休む事も許されず
笑う事は止められて
はいつくばって はいつくばって
いったい何を探しているのか

探すのをやめた時
見つかる事もよくある話で
踊りましょう 夢の中へ
行ってみたいと思いませんか?

Ooh, ooh, ooh さぁ

探しものは何ですか?
まだまだ探す気ですか?
夢の中へ 夢の中へ
行ってみたいと思いませんか?

Ooh, ooh, ooh さぁ
Ah, ooh 夢の中へ ooh 夢の中へ ooh さぁ
---------------------------------

どうです。プレイした方ならお分かりかと思いますが、そのまんまでしょう(`^´) ドヤッ!  私は、凄く合点がいったのですが……。


○頻繁に使われる言葉と作品との関係
「一寸」と「畢意」がとても目につく作品でした。「一寸」なんて、数十回は使われていたような。「畢意」でさえ少なくとも十回は使われていました。念のために、それぞれの意味は、次のとおりです。
 一寸(ちょっと) :すこし
 畢竟(ひっきょう):つまるところ。結局

本作では、次のように使われています。
(一寸)
深見「コラボなんて……其れは一寸僕を買い被り過ぎですよ。単なるオマケですから」
 ⇒ここに限らず、「一寸」に「ちょっと」とルビを振るのは何でかな、なんて。そういえば、昔、他の作品で声優さんが、「一寸」を「いっすん」と読んでいて笑ってしまったことがあったことを思い出しました。長さを示す場面じゃないのに、まぁ、たぶん「ちょっと」っていう読みがあることを、そもそも知らなかったからだとは思うのですけどね。
(畢竟)
ト書き:畢竟……アニメとゲームの話で、僕の持ち時間は消費し尽くされてしまったのだった。
ト書き:畢竟、弄ばれるのは蓮華ではなく、僕のようだった。
 ⇒「畢竟」は「一寸」とは逆に、殆ど、深見視点の地の文で使われていました。

それで思ったのですが、「一寸」と「畢意」の言葉を好んで使う割には、作品は「テンポ悪い」なのです。これが、私にはどうしても納得できませんでしたね。そもそも、主人公の深見は、歯切れの悪い性格の設定だと思われるのに、「一寸」と「畢意」の言葉を好むのが、どうにも不可思議というか、何なんでしょうね、まったく。


○演出は素晴らしい
冒頭での胡蝶の夢シーンから電柱を見上げる構図への移行描写が秀逸。いつもながら、低価格にも拘らず演出は素晴らしいの一言。電柱を見上げた場合の電線が伸びている描写は、演出上、よく使われたりするのだけれど、制作者はこの描写に何を求めているのかなって、いつも考えてしまいます。その後、

 ト書き:今日は9月29日、日曜日
 ト書き:僕は此れからI県T市阿紫町薬岳郷にある阿紫旅館に向かう。
 ト書き:そう、彼女……蓮華のいる、あの旅館である。

と目的地へ誘う場面転化も、本当に秀逸だと思いました。ただ、この後の展開がだらだらというか、「テンポ悪い」となってしまったのが、とても残念としか言いようがありません。
それでも、要所要所で、見るべき演出は多く、例えば、
 ・階段に連なった鳥居の描写からの荘厳な神社への描写への場面展開
 ・川の水面(みなも)の描写
などは、本当に素晴らしいと感じました。神社の本殿に対する記述では、

 ト書き:深山幽谷の趣のある開けた場所に出ると、足元には大きな湖……其処
     にぽっかりと浮かんでいるような境内があり……架け橋を渡っていく
     と、双方を狐の像に守られた本殿がある。
 ト書き:この場所は、ただ只管に荘厳で、神聖で、清浄で……まさに神がおわ
     すにはふさわしい場所のようだった。

となっているのですが、この情景描写の絵はvery goodです。また、川の水の描写表現も秀逸で、例えば次のシーン、薄気味の悪い黒々とした色の川の3Dアニメーション描写は、とても良くできていました。

 ト書き:視界は白一色であるが、彼女が大きな川の前に立っているのは、何故
     か分かる。
 ト書き:豊かな水を湛えた川だ。淙淙と流れる川の音が耳に聞こえるようだ。
 ト書き:しかし、その水は薄気味の悪い黒々とした色をしていて、僕はとても
     不安な気持ちになって、彼女を呼ぶ。

私は、前作『美少女万華鏡―罪と罰の少女』での感想にも「商業作品の殆どは、3D部分については、同人作品以下の出来でしかないと思いました。あぁ、でも、本作の水の描写部分だけは、凄いなって思いましたけどね。商業作品も、本気を出せば侮れない」と書いたのだけれど、水の3D描写表現だけは秀逸だと、今回もそう思いました。今回も敢えて表現したってことは、自信があるってことなのでしょうね。

また、18禁なのでエッチシーンの描写も気になるところです。これも、例えば、月丘女子のフェラチオ三連発のシーン、魔羅を握る手の表現が秀逸です。私が求めている絵って、こういうのです。薬指を伸ばし、親指が亀頭のカリ首にあてがっているところが、特に。私、中学の美術で手のデッサン授業があった時、普通に手を握った拳を描いてしまって、自分の才能の無さに愕然としたのを思い出してしまいました。才能のある人って、絵が上手い下手以前に、そもそも普通じゃない発想の構図の手を描こうとするんですよね。

今回は、エッチシーンでのアニメーションはいつもより少なかったのですが(背景の3D描写に時間を割かれてしまったのでしょう)、それでも、蓮華との男女性器同士の擦りエッチのアニメーションはとても良かったです。良かったのですが、

 ト書き:僕は蓮華の薄い胸を鷲掴んだ。
 ト書き:もみもみっ……
 ト書き:僕は蓮華の胸を揉みしだき、下から腰を突き上げた。
 ト書き:僕は蓮華の乳首を両手で摘む。ぷにぷにとした乳首は弾けそうな程勃
     ち上がって、僕の指先を跳ね返す。
 ト書き:僕は蓮華のおっぱいをもみくちゃにし、外陰部をいいように擦りまく
     る。蓮華は、もう喘ぐことしか出来なかった。

でも、胸は揉んでくれない。大幅に減点です(笑)。エッチシーン、私は、文章の内容に追随する描写を最も評価します。そのため、例えば、月丘女史とのフェラチオ三連発からのセックス二回のシーンにおける、次の様な演出は、手抜きだと評価します。
 ト書き:月丘女史は僕の手を取ると、ぎゅむっと自分の胸に押し付けてきた。
 深見「!」
 ト書き:手のひらに、月丘女史の胸の膨らみと、何時の間にか硬く凝った乳首
     の感触を感じる。
この後、暫くの間、胸を揉むシーンが続くのですが、ぜんぜん揉んでくれない。単に両乳房を見せているだけ。萎えます。


○フォントについて
前項で演出について書いたので、ついでにフォントと演出効果について考察したいと思います。

本作では、テキスト表示で使われるフォントを選択できます。本作のジャンルは和風伝奇だと思うのですが、それを意識してかデフォルトのフォント設定は「MS明朝」でした。やはり、日本的なわび・さびを醸しだすためのフォントは、明朝体だよねって、私は思ってしまいます。

ただし、私には「MS明朝」は美しくは思えないので、せっかくフォント変更が可能な仕様だったので、明朝体で良さげなフォントを捜してしまいました。その結果、「HGS平成明朝体W3」を選択しました。理由は次の三点です。

 ・HGだから(そもそも、HGは High Grade を意味するので)
 ・W3だから(わび・さびを目指すのなら、フォントは細めで。つまり Weight は小さめ)
 ・大きいフォントだから(目、悪いので、できるだけ見やすいのがベスト)

自分でも満足のいく選択だったと思います。皆さんは、何を選択したんですかね。とても興味があります。

私は、テキストのフォントでさえ、表示されて目に見えるのだから、作品の一部だと思っています。そのため、作品の雰囲気を壊さない拘りを持ちたいです。でも、実利的な合理性も求めてしまいます。見た目重視で読みづらいフォントだったら、本来の目的を満たせないので、お話になりませんからね。そのため、書体は大事だよねっていつも思ってしまいます。

以上から、私は、デフォルトのフォントで何を設定しているのかで、制作者の作品に対する拘り具合が、ある程度、見えてくると思っています。本作で、もしデフォルトがゴシック体だったら、制作者を相当に軽蔑してしまったでしょうね、私としては……。

今回、デフォルトが「MS明朝」だったのは、味も素っ気もない、素の明朝体だからってことですかね。制作者としては、押し付けの色を付けたくなかったってことでしょうか。でも、明朝体は譲れないゾ!っと。私としては、制作者の拘り、しかと受け取めました。


最後に、フォントのデコレーションについて。ベースのフォントに対する私の拘りは上記のとおりなのですが、それだけだと、やはり味気なく感じてしまいます。また、背景色の関係で、ベースのフォントだけだと、見づらくなったりする場合もあります。そのため、ある程度のデコレーションは必須だと思っています。本作の場合はスタイルとして、
 ①太字
 ②ドロップシャドウ
 ③境界線
 ④境界線の強調
が選択できました。私は、①、③、④を選択しました。W3選択で、太字ってなんだよって感じですが、まぁ、好みの太さを追求した結果だと思ってください。スタイル色は、デフォルトの黒のままとしました。こうやって見ると、フォントに限らず、私のデコレーション能力は、多分に低いみたいですね(笑)。


○ソフ倫の倫理規定と本作の評価
私は前項でも述べたとおり、文章の内容に絵の差分が追随する演出を高評価します。何のために、コンピューターを使っているんだよって、いつも思ってしまいます。だから、次の描写の絵は、手抜きだと断罪します。

 ト書き:彼女の荒々しさに戸惑い、一瞬本当に初めてなのかな、と疑問を抱くが……。
 ト書き:僕らが繋がった部分から、鮮血が流れているのを目の当たりにし、そんな
     疑問を持った自分を恥じた。

このシーンの絵では、鮮血などありません。私には、記述のない陰毛を描くリアルさを追求するくらいなら、記述のある鮮血をまず描けよと思ってしまいます。これは、所属しているコンピュータソフトウェア倫理機構の倫理規程に抵触するからなのですかね(血の描写はダメとか)。

試しに倫理規程(平成23年10月1日施行版)を読んでみたら、「制作基準」の項には、とても素晴らしいことが書かれておりました。
---------------------------------------------------
(1)いたずらに性描写のみを表現し、ストーリー、テーマ、展開、ゲーム的駆引き等の要素に欠けるものは極力制作しない。
(2)作品の制作に於いては裸体、セックスシーン描写に必要な場面の設定を工夫し性描写の必然性と展開方法、長さ、頻度、その累積効果等構成上のバランスには特に注意する。
(3)コンピュータソフトウェア等の特異性に留意しシステム、シナリオ、テーマ、展開、ゲーム的駆引き、音響等創意工夫に努め、作品内容の充実と向上に努める。
---------------------------------------------------
倫理規定での個別の性的表現規定「(18才未満者への販売禁止ソフト作品(18禁)の注意事項)」はクソですけど((1)~(9)は不要で「(10)公序良俗に反しない作品制作をする」だけで良いだろって思う)、前提条件である「制作基準」の内容は素晴らしいです。

これを踏まえると、本当におかしい――これを満たしているエロゲー作品が殆どないことが(笑)。なんで、審査を通っているんですかね。エロ表現と描写が凄すぎて違反しているっていうのなら逆の意味で良かったのですが、それ以前にシナリオからしてストーリーどこいっちゃったの作品ばかりなんですけど。真面目に審査をしているんでしょうか。エロシーン以前に、ストーリーの有無を審査しろよって、本当に思ってしまいます。

私には、ソフ倫が認可している殆どのエロゲーが、「ストーリー、テーマ、展開、ゲーム的駆引き等の要素」に欠けて、かつ「裸体、セックスシーン描写に必要な場面の設定を工夫し性描写の必然性と展開方法、長さ、頻度、その累積効果等構成上のバランス」を考慮していない作品ばかりに見えてしまうので、本当に不思議です(笑)。制作者たちは、この基準を毎日唱和して、自分達の作品がこの基準を満たしているのかどうか、自問自答すべきなんじゃないでしょうか。

翻って、本作品ではどうなのかを検証してみましょうか。私は、次のように感じました。

(1)について
「いたずらに性描写のみを表現」に該当するでしょうね。特に、セックスシーンの連打には、私の過去作の感想でも指摘していますが、本当にいい加減にして欲しい。ただし、テーマだけは、良く練られていると思いました。今回は、和風伝奇作品だと思うのですが、「赤色、曼珠沙華、狐、コックリ(狐狗狸)さん」という関連性を持たせた所など、特に。

(2)について
構成上のバランスが悪いと思いました。特に、性描写の長さ、頻度、その累積効果などは、ぜんぜんダメです。18禁だからエロシーン、てんこ盛りで良いだろ的な発想が見え隠れして、そこが一番気になります。本作は、そもそも抜きゲーなのか。たぶん、抜きゲーよりなのは間違いないので、正しいことをしているとは思いますが、プレイする方は、やはり辛い。「プレイ時間中央値:11時間」が、それを証明していると思います。普通に音声を再生するなら、エロシーンだけで、11時間を超えると思いますから。つまり、エロシーン、スキップしているだろうことが、想定できます。

(3)について
ここは、かなり頑張っていると思いました。低価格なのに、ωstarらしさが十分に発揮されていたと思います。以前からパノラマ的な背景画や、水の3D描写は素晴らしいと思っていましたし、本作でも遺憾なく発揮されていました。

どうでしょうか。勿論、感想など人それぞれなので、正反対の感想の方々も多いとは思いますが、私にとっては、ωstarには、今後、(1)と(2)の改善を望みたいところです。

因みに、倫理規程からは、血の描写がダメなのかどうかは良く分からんかったです。


○コンセプトを考察
上記で、テーマだけは良く練られていると書いたのですが、本作は、美少女万華鏡の本来のコンセプトである「オカルティック官能AVG」に立ち返った仕様だとは思うのです。

オカルティックとしては、当然のように和風伝奇物です。私は以前、『消えた世界と月と少女』の感想で、和風伝奇とは何かを調べてみたのですが、その時は十の要素があると分かりました。ただ、今回の作品で思ったのですが、一つ要素が足りませんでしたね。つまり、色彩として「赤」が。そういえば『Erewhon』でも「狂い咲く「椿」、一足早い「紅」葉、沢山の「赤」い花々」って赤一色でした。

翻って本作、当然の如く、赤色を基調にコンセプトを練り上げています。しかも、「赤色、曼珠沙華(彼岸花)、狐、コックリ(狐狗狸)さん」という関連性を持たせた所が、特に素晴らしい。ちゃんと、なぜ赤色なのかの意味と意義を持たせているのです。

曼珠沙華が赤色なのは明快ですが、狐との関係性を問われて、思い浮かぶ人は少ないと思います。これは、木下利玄の短歌「曼珠沙華 咲く野の日暮れは 何かなしに 狐が出ると思う 大人の今も」(彼岸花とも呼ばれる「曼珠沙華」が咲いている野の夕暮れは、何となく狐が出ると思われるよ、大人になった今でも)でも歌われていたり、地方では狐花(きつねばな)とか狐草(きつねぐさ)と呼ばれるほど、関係性があるのです。

そして、作中での仕掛けとしてのコックリさん。本作の中では、次のように書かれています。
 ト書き:コックリさん、とは確か漢字では『狐狗狸』さん、と書く……。
     其れはキツネ、イヌ、タヌキの事だ。
Wikiによれば、「日本では通常、狐の霊を呼び出す行為(降霊術)と信じられており、そのため「狐狗狸さん」の字が当てられることがある」とのこと。

凄いですねぇ。ここまで綿密に練った上で、本作の世界観を構築していただなんて。ただし、ちょっと残念だったのは、ホラー色は薄かったってところでしょうかね。例えば、神社での肝試しシーン、
 蓮華「肝試しらしいって、どういうものなの」
 深見「そりゃあ、肝の強さを試すのですから、もっと恐怖心が掻き立てられ
    る状態にならないといけないんですよ……」
 ト書き:今回の参加者には、残念ながら大切な緊張感というものが欠如している。
このように、怖くないのが大問題だと思います。緊張感の欠如という理由を地の文で書くよりも、緊張感のある肝試しシーンを書いて欲しかったです。

その割には、
 ト書き:何時にも増して、クトゥルフに呼ばれインスマウスの影が差し混沌が
     這い寄ってきそうな暗さを纏っていた。
って、ホラー色を匂わせたりするのです。でも、和風伝奇にクトゥルフのことを書くのはちょっと違うんじゃないかなって思うんですけどねェ、私は。単に「這い寄る混沌」を書きたかっただけなんですかね。そもそもインスマウス(Innsmouth:インスマス)の住民は、青白い蛙に似た独特の容貌で、色彩的に赤くないだろって思ってしまいます。

次に「官能」としては、シーンの数としては、今回は大盤振る舞いでした。でも、アニメーションの数は激減しておりました。上記の「○演出は素晴らしい」で書いたとおりで、良い部分もあるのですが、如何せん、1シーンが長い、かつ連続し過ぎで、嫌になる部分も多く、更にヒロインが語り部になってしまう陳腐な文章が追い討ちをかけ、本当に困り果ててしまいました。月丘女子なんか、エロ担当なのかどうかは知りませんが、
 香恋「ふああ……❤ こ、これが、精液の味……あなたの……味……❤ は、
    はじめて……❤」
 深見「す、すみません、飲まなくたってよかったんですよ……」
 香恋「う、うれしいっ……❤ 私だけにくれた、あなたからの、贈り物……
    ❤ 美味……❤」
淫乱を通り越して、もうド変態です。名前を「可憐」じゃなくて「香恋」とした理由は、これですね(笑)。

また、蓮華とのセックスシーンも、個人的には子供みたいな体型とはできないよねって感じです。私はロリコンじゃないから、無理だよね、これ。その意味では、もよかもロリで困りました。まぁ、蓮華については、最後に輪廻転生した大人の蓮華?が見られて、ホッとしましたが……。


○小ネタ
このライターさんは、毎回いろいろな小ネタを作中に散りばめるのですが、何がそうさせるのでしょうか。単なる癖なのか、意識して書いているのか、そこが知りたいところですが、一部を紹介しますと、こんな感じです。

★ジョジョの奇妙な冒険&地獄少女
???「蓮華ちゃん、とってもきれいです~~、私……憧れちゃいます~~ぅ!
    そこにシビれる! あこがれるゥ!」
蓮華「貴方、いっぺん、死んでみる……?」
 ⇒ここは、2つの小ネタを重ねてきましたが、蓮華と閻魔あいはキャラ的に被っているので、閻魔あいの決め台詞を蓮華に言わせたいのは分かるのですが……。それにしても、舞斗、ウザイ。

★英雄王
もよか「すっごぃ、イケメン~~……聖杯戦争の英雄王さんみたいですぅ~」
 ⇒これは、キャラ設定の段階で本当に意識したのかどうかが、気になります。

★アソパソマソ
深見「はは……その顔アソパソマソみたいで可愛いですね」
 ⇒何だ「アソパソマソ」って? 思わず本気で調べてしまいました。

★最終兵器彼女
ト書き:否、あれはもう、可愛いなんてもんじゃない、破壊力が半端なさ過ぎ
    る……まさに最終兵器彼女である。
 ⇒『最終兵器彼女』って、例えとして不自然な気がします。あれは、相当に悲惨な話じゃないかと。

★お弁当生涯
舞斗「くふぅっ……蓮華さんにお礼を言われたっ……それだけですべての努
   力が報われるっ……この高瀬舞斗、我がお弁当生涯に一片の悔いなしっ
   ……!」
 ⇒「お弁当生涯」なのかよっ! この参照は、ラオウも泣くゾ!


○絶対領域
蓮華「ふふっ……貴方には、ちょっと目の毒だったかしら? いつもなら着
   物で隠れている、この領域も見えてしまうものね……」
ト書き:スカートの裾をチラと捲る。
深見「えっ……」
ト書き:其れは、かつて一世を風靡した絶対領域の事ではっ!? 蓮華の挑発
    的な言葉に、心臓が跳ね上がる。
 ⇒私は「絶対領域」や「絶対空域(股下デルタ)」より、隠語として遥か昔から使われているデルタゾーンの方が、エロの本質だろうって思ってしまいます。私が高校生の頃、授業中に「デルタ~!」と叫んで、そのまま入院しちゃった先生がいたんですけど、やっぱりデルタゾーンは危険――ゾーンって言ったらSF好きの私にとっては『トワイライト・ゾーン』――人間の精神を犯す闇空間、ホラーやオカルトの本質だったのかと、当時の私は戦慄したものです(笑)。そういえば、小指のない先生もいたっけ。いつもそれを覆い隠すために、教科書を必ず手に持って授業中講義しながら、教室内を歩き回っていたんですけどね。恐怖です。なんちゅう高校に通ってたんだ、私。


○その他、気になった事柄
★常しなえ
ト書き:遥か彼方の時を超え……僕はあの人と常しなえにこうしていたかのよ
    うだ……。
ト書き:何もかも忘れて……永遠にこうしていられたら……。
 ⇒「常しなえ」って、永遠にってことだと思うのだけれど、次の地の文で「永遠」と書くのは、どうなんだろう。

★もよかの声優さんは上手?
例1)
もよか「でもでもぉ、被害者の子って別に私の友達でも何でもない子ですし…
    …それなのにわざとらしく心配してます~って顔するの、なーんか偽
    善じゃないですかぁ?」
 ⇒この声優さん、かなり上手だと思うのですが、「ます~って」を字面どおりに読んだので、ちょっと新鮮でした。なぜなら、大概の声優さんって、「ます~って」書いてあっても「ま~すって」と読むから。しかもその方が普通に考えると、私には自然な会話文って気がするので、逆にライターさんの文章がおかしいのではとか、長音の位置について何らかの決まりがあるのかとか、今までずっと気になっていました。しかし、ちゃんと文章どおりに読む声優さん、いたんだって、ちょっと安心してしまいました。
例2)
もよか「大丈夫ですよぉ蓮華ちゃん、痛くしませんから❤ ふひひひひひ……」
 ⇒「ふひひひひひ」みたいな言い方の表記、声優さんはどう読むのかなのですが、この声優さんは、きちんと書いてある「ひ」の数だけちゃんと読んでますね。高瀬先生の声優さんは殆どアドリブで読んでますけどね。私は、きっちり書いてある字句どおりに読んで演技する方を評価しますけどね。しかも、もよかの声優さんは、不自然さが全然なくて上手。というか、上手すぎだろ。
例3)
しかし、エッチシーンは下手。というより、もよかのエッチシーンは、シナリオ自体が、全体的に良くない。もよかがべらべらセックスシーンを解説するものだから、本当に興醒めでした。

本サイトで、もよかの声優さんである東シヅさんを検索したら、本作がエロゲーでは最初みたいです。新人さんなんでしょうか。そうすると、例1~例3なのは頷けるかも。ただ、エロシーン以外は、本当に不自然さが全然なくて、上手だと思いました。

★高瀬先生
ト書き:もよかさんにおまじないをしてもらって、その気を浴びるように両手
    を広げる女子学生達……。
蓮華「何かしら、この小芝居……」
舞斗「ヒューヒュー、もよかちゃ~~んっ、かっこいいーーっ!!」
ト書き:高瀬先生だけが、推しを応援するトップオタのようだった。
 ⇒高瀬先生みたいなキャラが、お嬢様学校の讃咲良学園の先生(音楽)でいられる設定が、どうも腑に落ちないのですが……。普通、こんな声優さんのような喋り方をするような先生、クビでしょうに。

★演出の不具合1
ト書き:皇さんから顔を背け、両腕を擦るようにする桜庭さん。
 ⇒桜庭さん、左腕を右手で擦る立ち絵しかないから、文章の説明と合わず、違和感が……。

★演出の不具合2
ト書き:コックリさんの始まりであった。
ト書き:もよかさんが徐に机の上に一枚の紙を乗せる。
ト書き:新しい紙ではない。以外と使い込まれていて、折り目や鉛筆の滲み等
    が在る。
 ⇒絵のコックリさん用の紙が、汚れも折り目もない新しい紙なのが、なんとも。

★演出の不具合3
★バスルームシーン(転生後)
ここの背景画、バスに水が目一杯張ってあって、変。そもそもシャワー浴びるだけのシーンだし。


以上