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shiratoriさんのきまぐれテンプテーションの長文感想

ユーザー
shiratori
ゲーム
きまぐれテンプテーション
ブランド
シルキーズプラスWASABI
得点
79
参照数
1735

一言コメント

冒頭の馬鹿面アンネリーゼが、実は馬鹿じゃないと悟った時、諸行無常を感じてしまいました(笑)――かずきふみ考を含む

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

○はじめに

本作をプレイしてみて、一つはゲームスタイルについて、もう一つはライターのかずきふみ氏について興味を持ったので、それぞれについて書いてみようかなって思い立ちました。そのため、最初に本作の内容について、次にかずきふみ氏について書いてみようと思います。


○本作『きまテン』について

発売後、4か月以上も積んでいた本作、やっとプレイしました。でも、これは積んでて正解でしたね。なぜなら、発売後3か月たって、Ver1.04『Hシーンアニメパック おまけだから許してね♡』が、修正パッチとして提供されたからです(本サイトでは、独立した作品として登録されていますが、単なる機能アップの修正パッチでしかないので、新規作品としての登録は変じゃないのって思います)。

Ver1.04で、HシーンにE-moteアニメーションが追加されて、静止画だったものが、動く動く(もっとも、私は静止画状態を知らないのですけどネ!)。そのため、Ver1.04を適用しないでプレイした人達よりも、お得感満載で、より楽しめたと思います。

ところで、E-moteって進化し続けていたのですね。私が初めてE-moteを体験したのは、2012年の"ういんどみるOasis"の『ウィッチズガーデン』でしたが、その時は、立ち絵がちょっと動く程度だった気がします(確か動きの度合いを制御する大中小の設定があったような)。それが、今や一枚絵上の人物すらぐるぐる動かせるのですから……。ただ、E-moteの初導入はエロゲーからってのが、なんとも。ちょっと公式サイトを覗いてみたら、2020年1月31日付で「今年度の冬に提供を予定しておりましたE-mote4.0につきまして、製品クオリティの向上のため、提供時期を「来年度春~初夏」へ延期させていただくこととなりました」とか。やっぱりエロゲー品質管理だったのか(笑)。そりゃ、エロゲーと相性が良い筈だわ。たぶん、製品版はE-mote4.1になっていることでしょう。
(2020/9/8追記:その後、2020年4月17日付で「昨今の新型コロナウイルスの影響により、本年初夏に提供を予定しておりました『E-mote4.0』の提供開始時期を見直しさせていただきます」との発表が。新型コロナにかこつけて、実質、無期限延期。とは言え、決算の関係で来年3月までには提供せざるをえないだろうけど)
(2021/4/14追記:結局、前年度中に発売されませんでしたね。これは相当に問題が深刻なような気がします。下記のようなことを書かれてしまう事態に、エムツーはどう対処するのか興味津々です。
「E-Ken @e_ken@pawoo.net 2020年12月20日 20:20 ·Web
 えもふり公式がすっかりえもふりの話題をツイートしなくなって、不穏なものを感じる。
 E-mote4.0の続報も出てこないし、このままフェードアウトしそうで怖い…
 Live2Dにも手を出しておくべきか…」)

さて、ゲーム感覚のADV作品は本当に久しぶり。私にとっては、本作のような背景のオブジェクトをクリックしてフラグを回収する探索スタイル(選択肢での「行動選択」を実装)のADVをプレイしたのは、2017年に解散してしまった老舗エルフ(élf)が、2008年に制作した『媚肉の香り ~ネトリネトラレヤリヤラレ~』以来です。まぁ、シルキーズプラス(SILKY'S PLUS)発足の経緯を考えたら、同じスタイルのゲームが開発されるに至ったとしても、むべなるかな。

これについては、本作の公式Webページのクリエイターズファイルで、かずきふみ氏が、「こういうアドベンチャー+αのシステムは実現がなかなか難しくおいそれと提案できないのですが、シルキーズプラスさんは実績のあるプログラマーさんが在籍されていますので、あっさりオッケーしていただけました」と書いてありました。私は、「そりゃ、いるだろ。旧エルフ(élf)の開発陣が……」って思ってしまったものでした。

そもそもADVって、本来こういうのじゃなかったっけ?って思ったりもしてしまいます。たぶんに、このスタイルが昔風の本来のADVらしい気がするのですが、現在の受動的なADVよりも、今となっては能動的で新鮮な気がします。ゲームに参加しているって気になります。本作のような謎解きゲームには、このような探索アドベンチャー形式が適しているのかなって、改めて思ったのでした。

それにしても、本作と『媚肉の香り』を比較してみると、製品クオリティって観点では、12年前と大して違いはないなって気がします。むしろ、E-moteがなくたって最初からHシーンが動画だった『媚肉の香り』の方が、製品クオリティが高かったんじゃないかとさえ思えるのです。探索部分も、三階建ての屋敷を廊下や階段、更には何とトイレまでをも含めて、屋敷の中を隅々まで移動し探索できた『媚肉の香り』の方が、ゲーム性が高かった気がします。やっぱり腐っても鯛、エルフ(élf)は凄かった。それよりも、日進月歩で進化驀進中のコンピューターを利用しているのに――立ち絵が少しは動くようにはなりましたが――12年たっても見た目の技術的進歩が余り見られないエロゲーに、改めて逆に驚いてしまいました。もしかして、エロゲーって、シーラカンス化している?

ところでエロゲーって、起動直後のタイトル画面が、単に絵と操作ボタンだけ配置しただけで何の動きもないものから、いろいろな動きを入れて飽きさせない努力をしているものまで様々ですよね。翻って本作、起動直後のタイトル画面で、薄い白色の大小様々な六角形が、左下から右上に向かって、シャボン玉のように移動しては消える動きを入れているのですが、画面をジッと見ていたら、なんと、アンネリーゼの顔の表情が、BGMのリズムに合わせて4パターンに変化していたのでした。少しでも、細かな所に気を配って拘るその姿勢は、とても評価できると思います。

最後に、本作最大の売りと魅力は、開始早々、事件現場のマンションの閉鎖ベランダの窓に、ナメクジのように張り付いていたアンネリーゼの馬鹿面と、ラストの「最大の敵は身近な人」を体現した住人の臓器を喰らって生まれた天使(悪魔?)アンネリーゼの姿との、対比構造設定とその絵にあることは間違いありません(笑)。アンネリーゼって、馬鹿っぽい出だしからは想像もできないほど賢いし機転が利くので、序盤はちょっと戸惑ったのだけれど、それにしても、アンネリーゼの名前の由来は、ドイツ・バイエルン州出身の悪魔に取り憑かれた女性アンネリーゼ・ミシェルからなのでしょうか? とても気になりました。


○本作品内で気になった事柄

★ダーリン
アンネリーゼ「それにさ。言ったじゃん。あたしはダーリンのもので、ダーリンはあたしのものって。ね?」
 ⇒このフレーズ、最近、エロゲーのシナリオで良く見ますよね。調べてみると、ルーツは16世紀末の劇作家シェイクスピア作品『尺には尺を』で、「オレの物はあんたの物。あんたの物はオレの物」という台詞に始まり、それを『ガリバー旅行記』などで有名な作家ジョナサン・スウィフトが、『上品な対話』という作品の中で「お前の物はオレの物、オレの物はオレの物」に変えて使ったのが、『ドラえもん』に登場するガキ大将ジャイアンに引き継がれ、ジャイアニズムなどと呼ばれるようになったとか。ここでは、オリジナルのシェイクスピア作品の台詞からの引用ですね。

★2回目のセックス(会話が面白い)
ト書き:二回目の射精。
ト書き:アンネにとって、本当の絶頂。
ト書き:ぎゅっと抱きしめ、体をぴたりと密着させて、共有する。 
 :
アンネリーゼ「よだれ、ダラダラで……、見せられない、顔になってる……」
悠久「下の口もダラダラだよ」
アンネリーゼ「うわ……なにそれ。おっさん臭くて引くわ……」
 :
アンネリーゼ「ふ~……汗かいちゃった。ちゃんと流さないとね」
悠久「だね」
ト書き:同意し、アンネを抱きしめて。
ト書き:汗の浮いた首筋に、口づけをした。
 ⇒抱きしめで始まり、抱きしめで終わる。最後の締め文章が、また最高!

★★★変身着替えシーンの演出が秀逸
悠久「……隠しなよ。さすがに」
アンネリーゼ「あ、恥らった方が萌えるタイプ?」
ト書き:すぐにクスッと破顔して、マントを払うように腕を開く。
ト書き:――と。
アンネリーゼ「これでいい?」
ト書き:魔法少女が変身するみたいに、一瞬で着替えが完了。
 ⇒ちゃんと文章どおりに、立ち絵のアンネリーゼが一瞬で着替えをする演出が良いよね。

★★★デート
アンネリーゼ「せっかく可愛い服着てもな~。自由に外出られたら、気晴らしにデートできるのにね」
悠久「たぶん、俺、喋んないよ」
悠久「可愛い女の子とデートなんて、俺にはハードルが高すぎる……」
アンネリーゼ「お前ほんとヘタレだな……」
 ⇒「喋んない」って、アンネリーゼが他の人に見えず、周りの人達から独り言に見られるのが嫌だからっていう理由なのかと思ったら、ヘタレだからかよ。


○不具合(Ver1.04適用後)

・BAD END後のSCENE達成率計算が変
全8マスのうち7マス開放時点で、なぜか達成率が100%になっていました。Ver1.01で、
 ・シーンモード画面で「解放」ボタンを使用し全シーンを解放した際に、
  達成率の数字が正確ではなくなる不具合の修正
というのがありましたが、SCENE達成率の計算自体は、きちんと直っていないみたいですね。

・開放ボタン押下後の説明文が変
誰も気がついていないと思われますが、CG、SCENE、MUSICの各モードに、ハートマークの開放ボタンがあります。それぞれのモード時に、その開放ボタンを押下すると表示されるYES/NO確認画面上の説明文が、3つとも間違っています。
 CGMODE  :全てのシーンが開放されます。  ★正しくは「CG」
 SCENEMODE:全てのCGが開放されます。   ★正しくは「シーン」
 MUSICMODE:全ての操作項目が開放されます。 ★正しくは「ミュージック or 音楽」

・演出が変
★三回目のセックス
アンネリーゼが、セックス前後は通常の魔族の格好なのに、なぜかセックス時の絵は角と背中の翼がないんですけど、何故?

・誤字脱字
(二回目のセックスで精気を吸わなかったことに対しての会話)
アンネリーゼ「ふふ~、すっかりあたしの色香にやられおって。このポンコツオンミョージめ」
悠久「や、まぁ……。……。うん。否定はできないけど」
アンネリーゼ「男の子だし……性欲には、勝てないよね~」
悠久「こんな美少女に迫られて耐えられるやついないでしょ。どこかおかしいって」
アンネリーゼ「うわ、開き直ってやがる。駄目なやつ~」
 ⇒話の流れから「どこかおかしい」ではなく「どこがおかしい」の方がフィットする気がします。

アンネリーゼ「適当なこと言って」
悠久「本当に。いつもヘラヘラしてくらいがいいんだ。笑う門には福来るってね」
 ⇒「へらへらしてる」or「へらへらしている」が普通の言葉かなって気がするのですが、
  「『いつもへらへらして』くらいがいいんだ」だと解釈するなら正しいのかも……。

ロゥジィ「ヤダ、ヤダ、ヤダッ! ヤダァアアア!
     叩カナイデ! 蹴ケラナイデ!
     痛イコトッ! シナイデッ!」
 ⇒「蹴ラナイデ」が正しい。「ケ」が余分。衍字

・声優さんの読み間違い
アンネリーゼ「貼り直したから、もうしばらく大丈夫?」
 ⇒声優さんは「もう、しばらく大丈夫?」と読んだ。普通は「もうしばらく、大丈夫?」だよね。私、思うのですが、この手の通常とは違う息継ぎの読み方を是とする声優さん達は、芸術化タイプなのか、それとも単なる馬鹿なのかと、いつも熟考してしまいます。

晶「あンたモッ! パパとママと、一緒ダ! ウちのこトナンて、どうデも、ドウデも、ドウデモッ!」
 ⇒「パパとママも」と読んだ。

アンネリーゼ「ん……? なんか、隅っこにくっちゃくちゃの袋ある。ビニールの」
 ⇒「隅っこ」を「はしっこ」と読んだ。正しくは「すみっこ」。
アンネリーゼ「うち、あっちの端っこから調べるね」
 ⇒でも、「端っこ」は「はしっこ」と正しく読んでいます。そのため、「端っこ」と「隅っこ」の区別がそもそもつけられないのか、「端っこ」の方を最初に収録して、引きずられたかのどちらかだとは思うのですが……どうなんでしょう。

・番外
公式Webページに、クリエイターズファイルとして、「シナリオ」「原画」「声優の皆様」の3つが掲載されています。その中の「声優の皆様」の最初が歩サラ(アンネリーゼ役)さんで、「自己紹介」と「発売に寄せて」の文章が書かれています。その「発売に寄せて」で、
 是非! 詰 ま ず に ! !
 即 プ レ イ し て 欲 し い ! !
と太字で強調して書かれていました。その時、私は思ったのでした。「ごめんなさい。積んでました」と。でも、次のようにも思ったのです。「詰む」とは、ゲームにおいて敗北の確定や行き詰まった状況に陥ることです。ここは、購入したがプレイしていないことを示す「積む」が正しいのではないかと……。クリエイターズファイルを担当したスタッフ、太字で強調する前に、ちゃんと校正してやれよ。ずっと誤字で掲載され続けて馬鹿丸出しじゃないですか。全くアンネリーゼかよ!?(笑)


○かずきふみ氏について

今回、実は本作自体の感想より、かずきふみ氏のことを書きたくて、長文感想を書こうと思い立ちました。改めて、かずきふみ氏のプロフィールを調べてみたら、かずきふみ氏は、2013年にCandySoftの専属シナリオライターを離れて、現在はフリーランスとのことでした。

私が、かずきふみ氏のシナリオに最初に触れたのは、CandySoft時代の『ガンナイトガール』でした。なんか凄い作品でした。「文章は簡潔で上手い。でも、最終的には内容が鬼畜」というのが当時の私の所感でしたが、『なないろリンカネーション』『あけいろ怪奇譚』そして本作と、その作風と基調は一貫しているように感じています。

氏の文章については、以前、自分の『ハロー・レディ! -New Division-』の長文感想で、「『なないろリンカネーション』のライターの簡潔で読みやすい文章と比較すると、正反対ですよね。ななリンのライター、文章の書き方をきちんと勉強しました的な感がありありなのに対して、本作のライターは、色々な小説を読み耽った結果、ライターになったって感じですよね」って書きました。本作の文章を読んでも、本当に一つの句をできるだけ短く簡潔にってことを心がけていて、本当に感心してしまいます。ビジネス文章の推奨書き方かよって(笑)。そのため、個性的な文章や文体にはならないので、小説には不向きなのかもなんて思ったりもします。

因みに、私が個人的にかずきふみ氏の文章の書き方で一番感心しているのは、ひらがなでは、長音符として「ー」は使わず、波線(波ダッシュ)「~」を必ず使うことかな。これは、日本語では、長音の表記はひらがなは母音で、カタカナは「ー」を使うという(小学校で学ぶ)基本的なルール(“暗黙”ではなく“正式”な)があるため、ひらがなに対する長音は「~」を使うことにしているのだと思います。まぁ、かずきふみ氏の文章は、日本語の書き方の基本に忠実ですから、ある意味、安心して読めますよね。
(2024年11月29日追記)
 本日発売された『きまぐれテンプテーション2 ゆうやみ廻奇譚』をプレイしたら、ひらがなに対する長音で「ー」を使っていましたし、シナリオ以外の書き物でも使っていることを確認。ということで普通に使用していたため、訂正します。

ただ、本当に原理原則に忠実なので、例えば「疑問符(?)や感嘆符(!)の直後にはスペ-スを入れる」に従って、次のようにスペースを入れるのは、私の感性とは相容れません。
 ト書き:その人たちの前で迂闊に加賀見家の名前を出すと、
     汚れた連中の話などするなっ! と烈火の如く怒り出すそうだ。
この場合、一つの句の途中(感嘆符・疑問符で文が切れない)なのですから、私だったら、スペースを入れない三種類の例外の一つ「文脈上、アキを入れると不自然な場合」を適用したいところです(因みに、残りの例外の二つは「直後に終り括弧類が来る場合」と「直後にダーシや三点リーダが来る場合」)。まぁ、結局は好みの問題でしかないのですけどね。

さて、今回は、改めてかずきふみ氏のことを考えてみる、良い機会になったと思っています。ただし、考えるといっても、考える材料がないと考えようがないので、ちょっと調べてみたところ、「PIXIV FANBOX」に、氏自身がいろいろ書いていることが分かりました。その中で、「近況報告その2」(2019年8月31日)の内容が面白かったです。

「ゆずソフトさんの新作『喫茶ステラと死神の蝶』のシナリオのお手伝い」とのことで、「ご依頼のメールをいただいた際、(ドッキリか……?)と思ったくらいに動揺」って書いてありました(因みに、ゆずソフトって、そんなに凄いメーカーさんなんですかね。私など『のーぶる☆わーくす』と『サノバウィッチ』しかプレイしたことがありませんが……)。更にダメ押しで、「『もしかして○○な展開が……』的な心配をされていた方も結構いました」ってのが、いとおかし。これについては、「シナリオに関しましてはしっかりと監修していただいておりますので、ご安心くださいませ」って書いてありました。これに関する補足情報としては、氏の「自分語り」(2018年6月14日)において、

 「僕はシナリオのみ担当の場合は、プロデューサーさんやディレクターさんの指示に全面的に従って作業を進めます。意見は出しますが、それを押し通すことはしません。 反面、企画から任せていただいたときは、本当に好き放題します」

って書いてありました。つまり、好き放題にしたのが、鬼畜バージョン作品群というわけですね(笑)。因みに、「近況報告その2」の中で一番面白かったのが、次の文章です。

 「余談ですが、打ち合わせの際に『多少のことは大丈夫ですけど、寝取られと四肢切断はNGで……』と言われることが増えました。 僕のイメージ、大丈夫でしょうか」

まぁ、ゆずソフトのことはこの際置いといて、「自分語りその2:ライトノベルは難しかった。」(2018年11月18日)が、更に面白かったですね。私の知らない、ラノベの裏事情がいろいろ書かれておりました。かずきふみ氏は、2017年に『機巧銃と魔導書』を上梓しましたが、二作目以降は出版されませんでした。その辺りの事情が語られているのですが、ラノベの内容が決まるまでの紆余曲折は、次のとおりです。

 ①ライトノベルで戦うには「広い世界で/才能溢れる主人公が/周りを助けながら/世界を揺るがす脅威と戦う」みたいな話が好ましい、特に「読者が憧れるような主人公」が大事
 ②魔王はもう時代遅れの題材になってしまっている
 ③シリアス方向に傾いてしまい、「内容が政治的になってきている。ライトノベル向けじゃない」とのことでやっぱり没
 ④美少女ゲームのライターなのだからエロ要素入れようぜ。可愛い子が酷い目に会いながら健気にがんばるのいいよね。みたいなノリの案でしたが、「女性主人公は売れないです」「ダーク過ぎます」ということで没
 ⑤編集さん曰く、「メカ・SF・オカルト・ダーク系」は売れない

まぁ、現状のラノベの実態がそうなのでしょうけれど、結局、作品のジャンルがどうのこうのよりも、最終的に読者にとっては、面白いか面白くないかの二択でしかありません。そもそも、④の「女性主人公は売れない」っていうのも、最近放送されているアニメ、女性主人公ものが多い気もしますし、⑤なんか、現在は、単にラノベを書く人材に、それらのジャンルの作品を書く優秀なライターがいないだけなんじゃないのかって思ってしまいます。結局、担当された編集さんが、先見の明がない三流だっただけなんじゃないのって気もします――魔王じゃなくてアンタが時代遅れなんじゃないかみたいな。恐らく、この編集さんの意見に従うと、今、NHKで放送中のTVアニメ『映像研には手を出すな!』なんて、即行で没にされる作品となるでしょうね。

ただし、③はかずきふみ氏の欠点になりそうな気はしますね。『ガンナイトガール』をプレイした時も、その傾向があることは、私も薄々感じてはいました。

ところで、一番興味を引いた内容が、広報についてでした。

 ・美少女ゲームでは、広報はメーカーさん中心で行います。
 ・でもライトノベルは、基本的に自分で情報拡散を行わないといけないんです。
  打ち合わせの席で編集さんに、
   「もっと積極的にツイッターとかで呟いた方がいい」
   「バズらせないと売れない」
  とアドバイスをいただきました。

「バズ」って何?って思ったら、バズマーケティングのことなのかよ。そういえば、アニメの『ビジネスフィッシュ』で、「バズッてる」連呼の回があったことを思い出しました。それにしても、作家自らが率先して営業、宣伝活動をしないといけない時代。私は、「作家=引きこもり、根暗」のイメージがあると思っていたので、従来のスタイルの作家達は、これからの時代、根絶されちゃうんですかね。出版社の編集さんって、今や楽な時代なんだなあって思ってしまいました。私は最近、WebでFUNAさんの作品を愛読しているのでが、FUNAさん、毎回、宣伝活動文章を書くので、マメな人だなぁ(どちらかというとうざい)なんて思っていたのですが、そういう裏事情があったのか。世の中、知らないことだらけだなぁ。

因みに、かずきふみ氏は「PIXIV FANBOX」に、「きまぐれテンプテーションの世界観と時系列」(2019年9月30日)というのも書かれていて、「過去作プレイ済みの方は『世界観と時系列どうなってるの?』と混乱してしまったかもしれません。ツイッターで軽く触れたのですが、改めてそのあたりをまとめさせていただきます」とした上で時系列の流れを説明し、「繰り返しになりますが完全なパラレルワールドですので、一巡した世界とか、とある赤ん坊が成長した姿とかではなく、『きまぐれテンプテーション』に登場しているのは『旧姓:滝川琴莉』本人です」と書いてありました。

最後に、かずきふみ氏は「PIXIV FANBOX」の「自分語り」の最後で、次のように書かれています。
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 たぶん僕には大多数のユーザーさんから熱狂的に支持されるような名作は作れないし、第一線で活躍されているライターさんのようにもなれないでしょう。

 幸い、僕のことを評価してくださっているとある編集さんのおかげで仕事にはありつけていますが、新規の依頼というのはほとんどありません。
 たまにあっても、僕の得意分野がニッチ過ぎるために話がまとまらなかったり、途中で手を引かざるを得なくなることがほとんどです。

 僕は業界的にかなり使い勝手の悪いライターで、いつ消えてもおかしくありません。

 でもありがたいことに、そんな僕の作品に期待を寄せてくださる方々がいます。
 FANBOXで支援してくださる方々がいます。

 半分の楽しんでくれる人がいる限り、自分の「好き」を研鑽し、物語を書き続けて行こうと思います。
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「新規の依頼というのはほとんどありません」と書いてはいますが、この後、ゆずソフトさんから依頼があったのですから、エロゲー業界的には、やっぱり出来るライターの一人であると認知されていることは、間違いないと思った次第です。それにしても、ちゃんと自己宣伝できているじゃないですか(笑)。


○おわりに
今回、本作において、肝心の【約束】と【解決】の二つのエンドだけ、なかなか辿り着けず、ちょっと焦ってしまいました。説得の選択肢パターンも、やり直す度に、いろいろな選択パターンに変化してしまって、一貫性がないし、とても困りました――事件が解決できなくて(笑)。もう、迷宮入りするかと思っちゃいましたよ。どうも、アンネリーゼの好感度数に応じて、選択パターンが色々と変化するらしいですね。

それにしても、SCENE達成率が変だと書きましたが、CG達成率もどういった計算をしているのか、実はよく分かっておりません。私の場合、最初に一つのルートを完了した時点でのCG達成率は、66%でした。この時は、32マス中21マス開放(但し差分が全部開放できていないマスがいくつかあり)だったため、最初は、マス目の開放だけに依存しているのかもと思って、「21/32≒0.656」でCG達成率66%なんて単純に考えたのでした。しかし、その他のルートを完了していくと、そんな単純な計算じゃなくて、どうも差分枚数に依存した計算になっているのかもしれないと、思い直しました。

私は、これまで他のゲームでは、達成率の計算がどうなっているのかなんて、全く気にしたことがなかったのですが、今回はSCENE達成率の数値が明らかに変でしたからね。CG達成率も正しいのだろうかと疑問に思った次第です。

いつもゲームをしながら、こんなことに頭を悩ませているから、普通の人の3倍もプレイ時間を要してしまうのですが、これはこれでゲームの楽しみ方の一つの形態だと、開き直ることにしています。

以上、ここまで読んでくれてありがとうございます。

That's the long impression of shiratori.