たぶん、恐らく、もしかしたら傑作かも。『猫への扉』に即反応SF好きはプレイすべき。<追記:7/8, 7/14, 7/16, 7/20, 7/21, 7/27, 8/12>
※個別ルート追記完了(6/30:灯華、7/8:うぐいす、7/14:雨音、7/16:聖衣良、7/20:栞菜、霧子、きらり)
※「はじめに」を書き直し(7/21)
◎はじめに
全ルートをやりおえたので、予定どおり「はじめに」を書き直します。私は最初、灯華ルートをやり終えた時点で、この感想を投稿しました。また、事前のリサーチを何もしないで、殆どまっさら状態でやり始めたので、一言感想の冒頭は「たぶん、恐らく、もしかしたら」だったのですが、全ルートをやりおえた今、傑作かどうかはともかく、全体を通しても面白かったです。
私は、灯華ルートだけやり終えた時点では、「解放後のエクストラをみたら、後、6人も攻略対象がいるじゃないですか。私のプレイスタイルでは、後、一箇月は楽しめそうです」と、最初の「はじめに」に書いたのですが、前二作の達磨の修行のような忍耐力を要する長文ストーリーとは違って、テンポよく進む(特に社会人三人衆のサブヒロインルート)ので、プレイしてて飽きずに楽しめました。
しかし、タイトルとの相関関係は、大幅に激減していました。7人中4人は、タイトルとは何の関係もないですからね。そう考えると、一つの作品としてのまとまりには、欠けていたのかなって思ってしまいます。そのため、傑作とはいえないが私の最終結論になってしまったのですが、作品としてのまとまりを無視するのなら、面白い作品でした。何も考えずにプレイするのが、一番良いというのが、嘘偽りのない感想です。
◇個別ルート毎の感想
私は、エクストラの並び順(左から右)に従って攻略するのを、基本としています。理由は、まともな制作者なら、並び順には意味を持たせている筈であって、並び順に攻略するのが、作品全体を通して、一番まとまりのある楽しみ方ができると考えているからです。
2019年6月30日
◎灯華ルートのみやった時点での感想
ここでは、システムまわりについて、書いてみたいと思います。
・良い点
現時点で、全ルートをやった上での感想を書けた人は、尊敬に値します。私なんて、他の人達が数日で終えるかもしれないゲームを、これから一箇月かけてプレイするわけですからね。なんでこんな前振りしてるのかというと、今回90点(私の90点は、私に初体験インパクトを与えた事柄があった場合につける点数。内容評価は1の位で提示)をつける原因となったのが、AUTO機能です。
実は、私はAUTOで流すことがよくあるのですが、これまでプレイしたゲームでは、デフォルト設定では速すぎる(遅い場合も稀にありますが)ので、自分の読むペースに合うように、調整することになります。それがなんと本作では、何も調整しないで、私の読む速度にピッタリだったのです。
実は、これは凄いことなんです。なぜかというと、私は文章を読むリズムを最重視しているので、文体や句読点の位置、文章の長さを特に気にします。まぁ、大概の場合、赤の他人が書いているので、そうそう自分の読むリズムに合う文章に巡りあうことなど殆どないわけです。
そんな中、少なくともAUTOでの文章切り替え時間のデフォルトが、ピッタリ合うってことが、どれだけ凄いことなのか。つまり、本作の制作側が本来求めるスピードやリズムに、私は最初から適合しているということなのです。これは、なんの違和感やストレスなくプレイできるっていうことを意味するのです。これだけで、プレイヤーの作品評価は向上することになるでしょう。
逆にいうと、私は殆どの人達より、読むスピードが遅いと自覚しているので(共通と灯華ルートだけで既に20時間経過)、本作は、大概の人達からは、合わないと思われる可能性もあるということを意味します。
・悪い点
これは本当に最悪なのですが、私は、テキストウィンドウの背景を、完全に透明にするのが好みです。それなのに本作では、白背景の演出が多いのに、文字が白のままで文字の輪郭すら表示しないので、文章が何も見えなくなるのです。ときたま、その様な仕様の作品はあるのですが、私は欠陥仕様だと思っています。大手の VisualArt's が、こんな欠陥仕様を容認してどうするんだと、本当に怒り心頭に発します。
(※ 訂正とお詫び:downer 様からTEXT設定に『フォント変更』があるとのご指摘をいただきました(^^;)。謹んでお詫び申し上げます。ごめんなさい m(_ _)m でも、レイアウトが変だと主張したい。それに、飽くまでメッセージのフォントが変更対象であって、白背景だと、メッセージ以外の文字――例えば画面下やバックログでの操作ボタンの表示文字――はただの白文字のままだから、見えない。結局、透明時の配慮不足による不具合がまだまだありますね)
また、今回は各イベントに追随する枚数は揃えて来ましたが、他の大多数のエロゲーも同じですが、相変わらず文章の動きの内容に絵が追随しないのには、本当に閉口してしまいます。例えば、次のエロシーン。
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灯華「はぁぁっ…そばにいて、奏汰ぁっ!」
ト書き:灯華が足を強く絡めてきた。
⇒ぜんぜん足を絡めてくれないし。
ト書き:体を倒して唇にキスをする。
灯華「んっ…ちゅっ…ちゅむぅっ…んんふっ…んくぅっ…」
ト書き:涙と涎の混じったキス。
⇒ぜんぜん絵はキスなんかしないし(顔の表情だけは変化)。
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更に、これも大多数のエロゲーにいえる手抜きだと思うのですが、もっと、服装のバリエーション、増やして欲しい。女性が着た切り雀でどうする、本当に! ついでに書くと、清水寺シーンで、灯華が右肩から背中にかけてショルダーバックをかけているのですが、正面の立ち絵では、それが反映されていないという、立ち絵とイベント絵の不整合もあります。
なんか、これ以上不具合を書き続けると、だんだん一言感想や暫定点数との乖離が大きくなるので止めますが、まぁ、それでも何か持ってそうな気はするんですよね。後、6人攻略対象がいるのですから、全体を通したら、きっと、傑作になってくれるに違いないと期待しています(一箇月後の自分の感想結果が怖い)。
・灯華ルートだけやってみて
現時点では、システムまわりのことしか書けないのですが、共通と灯華ルートをやった限りでは、BGMなんかから私が大好きな『俺たちに翼はない』の雰囲気も文字どおり"ちょびっと"だけ感じました。前二作の良くない点をうまく昇華したのではとも感じています。なんか期待できそうな気はするのです。
私は、前作『銀色、遥か』は、tone work's ブランドとしては失敗作だと感じているのですが、本作では、それを教訓に相当、勉強したみたいですね。ブランドコンセプトの原点、
・リアリティある恋愛像
・ヒロインをより身近に描く
に返りつつも、新しいチャレンジを試みたように思います。良いですねぇ、ブランドとしての進歩が感じられます。本当に残り6人の攻略が楽しみで仕方がありません。
因みに、灯華ルートをやった限りでは、エロシーンが本当に蛇足(つまりストーリーに直結しない、エロゲーにするためだけに付加しただけ)でしかないので、ストーリー進行の邪魔以外の何物でもありません。そのため、純粋にストーリーを楽しみたいのなら、エロシーンは強制スキップした方が無難であると進言します。そもそもエロくないし、文章も声優さんも下手だし、読む価値なしだと思います(飽くまで灯華ルートの場合)。
・気になった点、あれこれ1
★模型飛行機
奏汰の家のダイニングキッチンの天井照明からぶら下がっている複数の模型飛行機、すごく気になりました。何の意味があるのだろうかと……。
★電波娘
雨音「すべての物事には、明確な理由が存在する」
⇒私は「すべてのシーンには意味がある」を唱えているのですが、それと同類ですかね。
雨音「アルフレッド・アドラーも目的論で、どこから来るのかではなく、
どこへ向かうのかを提唱してる」
:
雨音「当事者の意識、無意識にかかわらず、そこには必ず目的があるということ」
⇒電波系の会話は、個人的にやっぱり好きだな。会話を読み解くのが面白い。
★ネクロノミコン
奏汰「いや、これは…京都旅行の紹介コーナーを作ろうかと…」
雨音「そんなもの作っても面白くない。他の店との差別化を
はかるべき。ネクロノミコンとか」
⇒電波系とネクロノミコンは相性が良いのだろうかと思ってしまいます。
★灯華との京都旅行
奏汰「…『未来メールサービス』?」
土産物屋店員「アドレスと日時を登録してメールを送ると、送ったメールが
登録した日にそのアドレスに届くんだって」
ト書き:未来の自分や友達に向けてメールを送る…
タイムカプセルみたいなものか。
⇒会社の研修で、研修後の自分宛に手紙を出すっていうのがあって、「過去の私より」って送り主欄に書いたのが郵送で届いた時、その手紙を持ってきた同僚から「誰だよ!?」って意味深に言われてしまったことを思い出してしまいました。
★文学の引き出し
ト書き:店を出ると、夜空には巨大な満月が浮かんでいた。
奏汰「今日は月が綺麗ですね」
うぐいす「ふむ…それは夏目漱石のアレかな?」
奏汰「え…」
うぐいす「だとすれば、私は『死んでもいいわ』と答えるべきかな?」
⇒文学の引き出しがない私は、こういう内容をすらすら書けるライターを、本当に尊敬してしまいます。
★ギャグ
奏汰「一杯だけって約束したじゃないですか…!」
栞菜「約束なら守ってるじゃないですかー」
栞菜「ちゃんと、いーっぱい飲んでまーすよー♪」
⇒壺にはまってしまった。
□以下、各ルートの感想を適宜追記
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2019年7月8日
◎うぐいすルートの感想
・総評
ラストのストーリー展開が、ぜんぜんすっきりしませんでした。少なくとも、私の望んでいた展開とは全く違っていました。意外です。ちょっと、ビックリしました。というより、納得できません。これは、多くのプレイヤーの期待を裏切ったストーリーではないでしょうか。
そもそも私は、『星織ユメミライ』でも、tone work's 作品は、予定調和(多くの人がこうなるであろうストーリーを全うすること)が原則だと感じていました。それが、意外性を追求するだなんて、想定外です。しかも、成功しているとはとても思えない。単にプレイヤーに、不快感を残しただけです。
本ルートの場合、ドイツの製薬会社の手紙の内容に意味があって、てっきりその手紙の時点にタイムリープの仕掛けをするものだとばかり思っていたのですが、まさかリセットして、全て無かったことに解決策を見いだすだなんて……。製薬会社の手紙の伏線の使い方、なんか変じゃありませんか? 一体、手紙はなぜ送られて来たのか、内容はなんだったのか、そこからストーリーが生まれるべきだったと思います。ていうか、普通、そういう展開にするだろう、本来は!
灯華ルートと違って、本来のブランドコンセプトに忠実なギャルゲーストーリーだと思っていたのに、とんだ食わせ物でした。現段階では、内容評価は70点台に下方修正が妥当かな。
まぁ、良かった点は、セックスシーンが灯華ルートよりはマシだったことでしょうか。エキストラのSCENE表示で確認すると、うぐいすルートは一番エロシーンが多いことが確認できます。つまり、エロ担当ってわけですね。
・気になった点、あれこれ2
★カウパー氏線液
うぐいす「カウパー氏線液…というやつだろうか?」
⇒正式名称、いただきました(笑)。
★セックスシーンの構図
うぐいす「おっと、垂れてきたね……」
ト書き:うぐいすさんが口を開けたかと思うと、真っ赤な舌が外に伸びた。
舌はそのままペニスの鈴口へと向かい…
⇒フェラチオシーンの絵、なかなか見ない構図で新鮮。
★うぐいすルートの主人公は鬼畜
奏汰「つ、次は…今、自分がされていることを、口で説明してくれませんか?」
うぐいす「え…」
奏汰「もちろんしゃぶりながらです。
自分が今何をさせられているのか、言ってみてください」
奏汰「いいですよ…飲ませてあげます。
そのかわり、俺が射精できるように、激しくしゃぶりついてください」
ト書き:反射的というか、無意識にというか…
射精の直前、俺はうぐいすさんの頭を両手で掴んで、
腰を前に突き出した。
ト書き:頭を掴まれ、逃げられないうぐいすさんの口…喉奥へ向けて、
俺は思いきり精液を放出した。
★うぐいすとの最初のセックス
①血の対処準備がどうのとさんざん煽っておきながら、破瓜の血が出ないんですけど、なんで? 文章でも何も記述がないし。
②2回戦での後背位セックスシーン
ト書き:そう言いながら、手を前に回して、うぐいすさんの乳房を掴んだ。
⇒文章内容に絵がちゃんと追随してますね。他のシーンもこうであるべき。エロ担当だからですかね。
★夢は叶う
賢斗「夢ってのは本当に叶うんだって、近くで見せてくれたからな。
それがなけりゃ、夢が叶うってことすら信じられなかったかも」
⇒『星織ユメミライ』以来の tone work's のテーマだよネ! こういうところは、本来の tone work's の考え方に忠実なんですけどね。でもラストが……。
★街路の背景画
「HEYSEI SUSHI」は「REIWA SUSHI」にしてくれたら良かったのにとは思った。ちょうど元号変更時期の作品かぁって思えるので。
★誓いのキス
うぐいす「誓いのキスは、宣誓の言葉を封印するためにするんだよ」
聖衣良「そうなの? ただの愛情表現じゃなかったんだ」
うぐいす「口を塞ぐことで、その言葉を身体に留め続けるんだ」
聖衣良「なるほど」
⇒本当に「なるほど」だよ。また、エロゲーで薀蓄を学んでしまった(笑)。
★ありがとう
ト書き:初めて書いた小説も、終わりの言葉にとても悩んだ。
ト書き:だから、簡潔な言葉で締め括りたいと思う。
ト書き:私という物語を締め括るに最もふさわしい言葉はこれしか
ないだろう。
ト書き:私は、本当に幸せでした。
ト書き:本当の最後まで、あなたを愛していました。
ト書き:ありがとう。
⇒最後の言葉は「ありがとう」だろうなと思っていたら、やっぱりそうだった。ここまでは、書き手の思考にきちんとシンクロしてトレースできている自分を、褒めてあげたいと思った。まぁ、その前の「幸せ」と「愛して」を含む2行の文章は、余計だと思ったのだけれど。ギャルゲーのテンプレ言葉を意識しすぎだろうって。これらの言葉を書かなければいけないという呪縛から逃れられなかったのが、このライターの弱点かな。「簡潔な言葉で締め括り」と先に書いているのだから、素直に「ありがとう」の一文だけで良かったと思います。本当に、この時点までのシナリオは、本当に良かったのだが、ラストが……。もう、何も言うまい。
2019年7月14日
◎雨音ルートの感想
・総評
一言でいうと「ツンデレ中二病“雨音”の更生物語」です。ただ、中二病不思議ちゃんは、そのスタンスを貫いて欲しかったです。雨音がだんだんまともになってしまい、最後は単なるギャルゲーになってしまったのが、残念なところですかね。
雨音ルートって、これまでの三人のヒロインの中では、一番タイトルにリンクしている話だと思うのです。それは、主人公も含めて名前へのこだわりとしても、現れています。また、うぐいすルートのストーリー展開に対するアンチテーゼと捉えることもできます。それは、次のシーンで明確になります。
ト書き:…もし過去を変えることができたら。
それは、今までの積み重ねをリセットすることでもある。
過去の俺にアドバイスをして、もし小説家になれたとしたら…
俺は、嬉しいんだろうか?
それは、ほんとに俺のやりたかったことなんだろうか?
俺の書きたかった小説なんだろうか?
奏汰「……」
ト書き:…ちがう。
そうじゃない。
過去の俺にアドバイスすることに、意味はない。
俺はあれから、なにもしてこなかったわけじゃない。
雨音と暮らして、未だに友だちと馬鹿やって、編集者として
培ってきたものがある。
それはあの頃の俺にはなかった…今の俺だから持っているものだ。
今の俺にしか書けない文章…物語が、絶対にあるはずなんだ。
うぐいすルート失敗の原因が、図らずも雨音ルートで明らかにされたのでした、アーメン。そう考えると、ライター間の確執や駆け引きも感じられて、たいへん面白いです。そういう意味で、雨音ルートは普通のストーリー展開ではあるのだけれど、雨音自体が成長するに伴い普通に成り下がってしまったのが、唯一の残念な点ですかね。素材は良かったのですが、成長のベクトルを間違えて、デレすぎです。それがなかったら、もっと面白い違ったストーリー展開も可能だったと思うのです。灯華、うぐいす、雨音の順に、だんだんストーリーがしょぼくなってしまったのは否めません。もっと、スカッとするストーリー展開を今後の攻略ヒロインには期待したいものです。
それにしても、1週間で1ルートやるのが、やっとの状況。これは、一箇月じゃ完了できないかも。
・気になった点、あれこれ3
★クシャミするときのマナー
雨音「ちゅんっ」
⇒声優さんは、「へきちゅっ」ってクシャミをしていましたが、そんなことはどうでもよくて、イベント絵では右手がスマフォ、左手が奏汰から渡されたタオルで塞がっているので、クシャミの時、手で口を塞ぎませんでした。でも、普通だったら、どちらかの手を口元に持ってきて、覆うと思うんですけどね。でも、実際の世の中でも、口を手の平で覆わない人は、男女ともけっこういます。ですが私は、雨音には口を塞いで欲しかったです。
★ドローン
奏汰「…ドローン?」
ト書き:俺の横を、ドローンが低空飛行していた。
⇒ドローンって、飛ばす場所、限定されていると思うのですが。
★無駄な薀蓄2
奏汰「Gはフェロモンで仲間と情報共有するらしい。
だからああやってビビらせておくと、仲間にもこの家が危険だって
伝わるらしいんだ」
⇒また、エロゲーで薀蓄を学んでしまった。今や私の唯一の学習教材がエロゲー。こんなことで良いのだろうか、いいや良くない。
★雨音との最初のセックス
ト書き:天音が処女だった証が、ジワリとにじんで、零れ落ちた。
⇒絵はそうならない。どうも、血はNGらしいってことに、今さら気がつきました。
★ギャルゲーとは
雨音「ダーリンが一緒にいてくれて、ワタシは“楽しい”を知った」
雨音「ダーリンが告白してくれて、ワタシは“幸せ”に気づいた」
雨音「ダーリンとエッチをして、ワタシは“勇気”をもらった」
⇒エッチと“勇気”の関連性に言及したエロシーンは初めて。なんか面白い言葉の組み合わせを知りました。
★状態遷移
雨音「ほんとは、ずっとずっと、寂しかった。
グランマがいなくなって、大佐といつも2人だったから」
雨音「だから、最初はダーリンを面倒くさいと思いながらも、かまってくれることが
嬉しかった」
雨音「嬉しいは…好きって気持ちに変わって、その間も、ダーリンは隣にいてくれた」
⇒「寂しい→嬉しい→好き」っていう変化が分かりやすいです。
★ピロートーク
奏汰「本番は明日だろ?」
雨音「ふふ、そうだった」
奏汰「明日、終わったらまた祝勝会をやろう。大佐と3人で」
⇒雨音ルートは、セックス後のピロートークで話に復帰させる手法ですね。ただ、まぁ、セックスシーン自体は話しにリンクしていないから、ストーリーの進行上、セックスシーンが邪魔なことは解消できていないのですが……。
★★会話が成立
ダーナー「一応、はじめまして、と挨拶しておこうか。
私はシトロン社のCEOを勤める、フィリップ・ダーナーだ」
:
奏汰「…残念でしたね。もう手遅れです」
⇒実は、会話が成立しているのが、不思議です。奏汰って英語、しゃべれたんだっけ? 英語の文章を見て、こんなこと言ってるらしいみたいな文章を見た気はするので、とても英語ができたとは思えないのですが。しかし、社会人になって、アメリカ取材とかしていたし、もともと英会話はできたという設定なのだろうか。
★授乳手コキ
授乳手コキって、赤ちゃんプレイの一種なのですが、以前私は、『いちゃラブ同棲せ~かつ 幼馴染みと朝から晩までいちゃいちゃいちゃいちゃ』という作品の感想で、授乳手コキについて少し考察してみました。私はその時、手コキに関して、「単に竿を握っていれば良いってもんじゃなく、亀頭のカリ、裏筋、鈴口(外尿道口)あたりへのそれぞれの指のあてがい方の機微や拘りが重要」だと考えました。
また、彼女が微笑んでいる描写になるのが定番で、「おっぱいにかぶりつく男性に母性本能をくすぐられて手コキする乙女の図」ってことなのだろうとも考えました。
では、今回の絵はどうなのか。指を揃えて単に亀頭を握っているだけですから、「指のあてがい方の機微や拘り」はないですよね。文章も、次のとおり。
雨音「ダーリンは好きなだけおっぱいをちゅうちゅうしてて?
オチンポのお世話は、ワタシがする」
ト書き:ペニスに添えられていた小さな腕が、亀頭を優しく撫で付けるように動き出す。
腕の動きに焦点を当てています。でも、絵は腕の動きを反映しないので、全くの無視状態ですね。ただ、次の記述はあります。
雨音「おっぱいもそんなに吸って…くすっ、赤ちゃんみたい」
雨音「雨音ママって呼んでくれてもいい」
奏汰「れ、雨音ママ…?」
雨音「なぁに?」
ト書き:とびっきり優しい笑顔が返ってくる。
一応、赤ちゃんプレイで母性本能をくすぐる描写であることをライターは意識していて、最後は「笑顔」。でも、絵はライターの意向をきちんと反映させていないですよね。「とびっきり優しい笑顔」に対し、ちょっと微笑むくらいですから……。
総じて、ライターは基本線を押さえてはいますが、"おっぱい" や "おちんぽ" の扱いに対する思い入れは希薄。また、絵師は更に拘りがなくて、シナリオの記述の反映もおざなりって感じですかね。ある意味、手抜き感丸出しのシーンです。
以前も思いましたが、私だったら「もっと色んな構図と顔パターンでの連続、連射で立体的に描写する演出(モンタージュでも可)にしたいところです。このシーンに命かけましたみたいな感じで」って、今でも思っています。無限のリビドーを貫く同人作品なら、あっても不思議じゃないのだけれど……。ストーリーにリンクしないエッチシーンを出すなら、せめてエッチ描写に対する拘りくらいは見せて欲しいものです、本当に。
★北海道への取材旅行
ライターは、北海道をちゃんと意識して書いてますね。
ト書き:正直、北海道をナメてた。もう1枚くらい厚着をしてくればよかった。
因みに前作『銀色、遥か』は、「いろいろと北海道の冬でのおかしな演出が一杯。というより、手抜きなんだと思う」って自分の長文感想で書いたくらい、いい加減でしたからね。「雪も殆ど降らない様な地方でゲームを作っているから、感覚が麻痺しているんでしょうね」って批判したくらいですから、少しはまともになって良かったです。
背景画もちゃんと北海道してました。信号機を見ればすぐ分かるんですけどね。北海道の車道の信号機、横じゃなくて縦だから(昔は横だったんですけどね)。絵を良く見たら、『湯の川温泉 足湯』って書いてありますね。函館にある実際の湯の川温泉足湯「湯巡り舞台」を背景画にしたみたいです。横断歩道に面した足湯の建物近辺以外の風景は、建物と道路を含めて大幅に改ざんしているみたいです。因みに、この後で場所が函館だって書いてありました。
ト書き:その後、函館の市内をぶらっと巡って、旅館へとたどり着く。
★格言
奏汰「人生に無駄なことなんて1つもないんだなって、色々経験して、
積み重ねてきてよかったなって…」
⇒私も本当にそう思います。ただし、成功した場合に限る。
★AI
雨音「この新型スマホに搭載しているAIです」
雨音「このスマホによって、従来のスマホの時代は終わり、
新しいメディアの時代がはじまります」
雨音「AIは、ただのツールではなく、ユーザーと共に歩む人生のパートナーです」
雨音「検索した内容、インストールしたアプリ、AIとの対話などによって学習し、
自己進化していきます」
雨音「それらにより、ネットの世界で世界中の人々と繋がり合うことができます」
雨音「そのために、今までで最多言語の翻訳に対応させました。
ゆくゆくは全言語翻訳対応を目指します」
雨音「またAIのデータはクラウド上にバックアップされて、
機種変更の際にも容易に対応でき…」
雨音「例えば、故人のAIと交流する…ということもできます」
⇒最近の第3次AIブームにおける、機械学習、ディープラーニング、シンギュラリティ、チャットボットとかの言葉を聞いても、今一つAIがどう役に立つのかピンと来なかったのですが、雨音のこの説明に、なるほどって思ってしまう私は、駄目な人間なのでしょうか。
★新スマホ発表会後
ト書き:会場の外に出ると、雨上がりの匂いがあたりを満たしていた。
雨音「…………」
ト書き:彼女は、欄干に手を乗せて、月を見上げていた。
そこは大半が雲に覆われている。
⇒背景画、満天の星空なんですけど……。手抜きです。
2019年7月16日
◎聖衣良ルートの感想
・総評
単なるギャルゲーとして、低価格作品として単体で売り出すのなら、それなりに評価できる作品となると思います。なんでこんなことを書いたのかというと、一体、このルートと本作のタイトルに、何の関係があるのか、さっぱり理解できなかったからです。
公式Webサイトのストーリー説明では、「本作は『運命の選択』をテーマにしている」となっています。しかし、アドベンチャーゲームは、ゲームの仕様上、『運命の選択』で成り立っていると言っても過言ではないでしょうから、これがテーマならちゃんちゃらおかしいのですが、ここでは選択肢とは別に、ストーリー上の主人公の行動で、話がどう転ぶか分からないことを問題にしているのかもしれません。そのため、個別ルート毎に評価ではなく、作品全体の中での各個別ルートの位置づけや役割から、総合的に評価する必要がある作品なのかもしれません。
そうはいっても、『運命の選択』がテーマだというのなら、タイトルの『月の彼方で逢いましょう(See you at the other side of the moon.)』は何を意味しているのでしょうか。灯華、うぐいす、雨音の三人は、「時間をまたいだストーリーが展開」に合致して、その原因がタイトルで示されていると考えることはできるのでしょうが、聖衣良ルートなど、その存在自体が意味不明です。本当に、このルートの本作でのレーゾンデートルは何なのでしょうね。
そのため私は、単体作品として考えるのなら出来は悪くないと思ったので、最初に「低価格作品として単体で売り出すのであれば、それなりに評価できる」としたのでした。
もしかすると、タイトルに添えられている英語の文章にこの謎を解く鍵があるのでしょうか?
The summer days ended full of regrets.
Looking up to the sky i wish i could turn back time.
She was more whimsical, mysterious and beautiful than any else.
夏の日々は後悔でいっぱいだった
空を見上げて時間を戻せたらいいのに
彼女は、他の誰よりも気まぐれで、神秘的で、美しかった
"She"は、やっぱり灯華なんですかね。実のところ、ゲーム冒頭の灯華の件も良く分かっていませんし、そもそも灯華ルートの話も忘れつつあります(^^;)。あれこれ考えると、じっくり検証してみないと、簡単にはこの作品の神髄は理解できない気がしてきましたが、検証のために再プレイする気力もないし。残りの社会人三人のルートをやれば、何か分かるのでしょうか?
最後に、エンディングムービーの見せ方が、他のルートと違って、新鮮だったことは記しておこうと思います。
・気になった点、あれこれ4
★ずっと一緒に
聖衣良「――『かな兄ちゃんとこれからも、ずっと一緒にいれますように』」
⇒「ずっと一緒にいれますように」は、tone work's ブランドの証だよね。
★薀蓄3
奏汰「あぁ…かき氷のシロップの味は、色以外全部一緒だぞ」
⇒この薀蓄は私も知ってた。勿論、エロゲーで知ったんですけど。
2019年7月20日
□サブヒロイン(社会人三人衆)ルートの感想
・総評
サブヒロインルートは、どれも短めなので、当初はプレイし終えるまでに一箇月はかかると思っていたのに、あっという間にプレイし終えてしまいました。どれも、本来の tone work's らしさが出ていて面白かったです。つまり、予定調和の予測を裏切らない結末ってことです。
私は、以前から主張しているのですが、現状の駄々下がりエロゲー市場の中で生き残っていきたいのなら、社会人を主人公(ヒーローでもヒロインでも)に据えたエロゲーを作れよって思っています。しかし現実は、社会人主人公作品など、陵辱、寝取られ、痴漢ジャンルの作品くらいしかありません。もっと、和姦の普通の作品、出してよって思っているのに、出ない。たまに出たと思ったら、『働くオトナの恋愛事情』のような、似非"おとな"作品ときたもんだ("大人"ではなく"オトナ"ってこと)。
私は、『赤ちゃんほしいな ~今日からはじまる妊活えっち~』の感想でも書いたのですが、日本の年齢別人口構成比から大人な作品が増えて当然な状況なのに、学園ものばかり出るのは如何なものか。この空白市場を獲りにいって独占する気概のあるメーカー、出てきて欲しいです、本当に。
本作を見れば分かりますが、今はまだリサーチ段階ってことですかね。それでも、VisualArt's としては、この空白市場を取りにいこうと考えていることは分かりました。何しろ、本作でさえ、発売三週間時点で、登録データ数は 91 です。10年前までだったら、400~500 はいっていたでしょう。つまり、エロゲーの市場規模が 1/4~1/5 くらいになっている気がします。
まぁ、こうなってしまったのは、どこぞの通信会社らが湯水の如くお金を巻き上げているから、他のコンシューマー市場に、お金が回らなくなったからだと個人的には思っているのですが、だとするなら、少しでも隙間市場があるのなら、そこに切り込むべきだと思います。まぁ単に、私がそういう作品を望んでいるだけなのですがね。それでも「アフリカに靴を売りに行った二人の営業マンの話」、もう一度、思い出して欲しいです。
ということで、社会人ルート、個別に感想を書きたいと思います。因みに、社会人ルートの内容、もうタイトルとは何の関係もございません。純粋に、社会人話を楽しむルートです。まぁ、既視感、というより少女漫画とかで既にさんざん書き尽くされた話ばかりだとは思うのですけどね……。でも、腐っても鯛、王道はやはり王道、どのルートも面白いです。
◎栞菜ルート
「売れない漫画家、栞菜再生計画」の話です。このキャッチだけで貴方が思い描くストーリーが、そのまんま作品になっていると考えていただければ、間違いありません。なんの捻りもありませんから。でも、 tone work's 作品はそれで良いと思うのです。間違って捻ったりすると、うぐいすルートみたくなって、禍根を残すことになるのですから。
そういえば、雨音ルートの感想で、北海道への取材旅行について言及したのですが、実は、湯の川温泉、栞菜ルートで本来使われている設定であって、雨音ルートはそのシーンを拝借しただけだったことが分かりました(良く言えばリソースの共有、悪く言えば経費削減)。
栞菜、今回のヒロインの中では、なんかいいなって個人的に思っていたのですが、そっか、道民だったんだ……。でも、私の感覚では、函館は北海道ではないのですがね。あそこは、北海道ではなく、飽くまで「函館」なのです。
ライターの思い描く北海道女が、栞菜だってことだけは分かった気がするルートでした。
・気になった点、あれこれ5
★お姫さま抱っこ
ト書き:あまり意識しないようにしながら、先生をベッドに横たえる。
⇒原稿完成後に疲れて眠ってしまった栞菜を、仕事場からお姫さま抱っこで寝室のベットに運ぶシーンです。ですが、お姫様抱っこのイベント絵はあるのに、その後、ベットに寝かすシーンのイベント絵がないので、そこを仕事場での立ち絵で誤魔化すという手抜き。興醒めです。
★新人
迫田「そんなことないっす!
実話NOWほど実用性と娯楽性を兼ね備えた雑誌は他にないっす!」
編集長「そうそう、こいつ東大の文科一類だったらしい」
⇒東大に入学した人が、「ないっす!」みたいな言葉使いをするとは、到底思えないのですが……。
★栞菜との最初のセックス
童貞と処女が、いきなり最初の体位が69で口内発射とか、いくら大人だからって、ハードル高すぎだろ! 因みに、これまでのルートの経緯から、処女喪失は血がNGだと思っていたら、ここはちゃんと血が流れる演出がされていますね。tone work's のポリシーが分からん。
◎霧子ルート
作中での本のタイトル『ガチ婚活』がそのままテーマになっている話です。三つの社会人ルートの中で、一番、大人な王道ストーリーって感じです。カウンセラー"きらり"、ここに見参ってシーンがなんとも。ビリヤード対決も、王道展開そのまんま。二転三転しても、きちんと予定調和でストーリーが進行していきます。例えば、カウンセラー"きらり"のシーン。
きらり「あなたはどうしたいの? このままあきらめちゃうの?」
奏汰「諦めたくないです」
:
きらり「苦しい?」
きらり「だったら…その苦しみを呑み込むのよ」
奏汰「苦しみを…飲み込む?」
きらり「ん。呑み込んで、苦しんで、そして盛大に吐き出すの」
きらり「丸裸の自分を見せるのよ」
きらり「そうしないと、相手の心を動かすことなんてできない」
:
奏汰(もう一度真正面から告白する…)
奏汰「でも、それだときっと霧子さんの心には届かない」
奏汰(俺にしかできない、俺の気持ちを伝える方法…)
ト書き:気付いた瞬間、俺は鞄から一冊のノートを取り出していた…
予定調和のシナリオですから、ここまでプレイして、その後の展開が読めない人はまずいないと思います。つまり『ガチ婚活』ですね。それにしても、このシーンの構成、良く考えられていますよね。つまり、作家であるきらりが、作家が作品を生み出すクリエーター魂について、そのまま『ガチ婚活』を上梓しようとしている奏汰に向かってアドバイスすることによって、作家としての登場人物、道具としての本の使い方、それらを最終的に『ガチ婚活』に収束させていく、見事なまでの構成力とストーリー展開。
単にストーリーを追っているだけなら、普通の展開でしかないのだけれど、ここで注目するのはそこじゃないよね。なぜ、登場人物がきらりでなければならないのかという本質を理解することが重要です。作家であるきらりだから意味があるのです。仮にきらりが作家でなくて絵描きだったら、話としては何の不都合もなく進行できるでしょうが、本である『ガチ婚活』への結びつきと意義は、大幅に減退したでしょうね。
・気になった点、あれこれ6
★聖地巡礼
奏汰「俺も読んだ小説の舞台になった場所に、足を運んでみたこと
ありますから」
霧子「聖地巡礼ってやつね」
⇒私、自分の『真剣で私に恋しなさい!』の感想のほぼ全部を使って、この聖地巡礼の重要性について考察してみたのですが、ライターが聖地巡礼について書いているのを見て、ちょっと溜飲を下げました。
★最初から最後まで
奏汰「ああ、そういうのはありますよね。すごく期待して
読んでたのに、最後はガックリくるような…」
霧子「最初から最後まで期待通りだったっていう作品は、
実はそんなにないのよね」
⇒私も本当にそう思います。私は『ChronoBox -クロノボックス-』の感想で、もっと具体的に「『夢から醒めた現実』構成のストーリー作品は、ラスト50ページでコケる」の法則を唱えていると書いたのですが、本質は同じですよね。最後まで同じ質を保ってストーリーを維持できる作品は、本当に少ないと思います。
霧子ルートを担当したライターは、これを敢えて書いたということは、暗に、自分の作品は違うゾって言っているわけですよね。これはユーザーに対する挑戦ですかね(笑)。それでは、霧子ルートは実際どうだったのか。分析してみても良いのですが、止めておきましょう。人、それぞれだし、各人が考えてみれば良いのでは……。
★しらす
霧子「そういえば知ってた? しらすってなんの魚のことか」
霧子「白魚とよく混同されるみたいだけど、しらすなんて種類の
魚はいないのよ」
奏汰「じゃあ、成長段階で呼び方が変わる魚ですか?
確かそういうのがいましたよね」
霧子「そうね。そんな感じよ」
霧子「弱い魚よ」
奏汰「あ、鰯ですか」
霧子「そう。正確には、うなぎとあゆとかの稚魚の総称だそうよ」
⇒私も昔、調べたことがあったのを思い出しました。その後、しらすに関する会話があった時に、うなぎの稚魚だって言ったら、皆に馬鹿にされたのですが……。ただ冷静に考えると、しらすくらい稚魚がいるのなら、うなぎが高い筈ないよなって思ったのも事実です。
★知識
霧子「私の持ってる知識なんて、ほとんどが本からよ」
⇒私は最近、エロゲーからしか知識を得ていないんですけどね。本当にやばいです。ベーグル大佐が必要なんです。
★服の素材の相違
霧子さんの、江ノ島の花火大会での立ち絵が羽織っている服の素材が、その後のバーのカウンターイベント絵での霧子さんが羽織っている服の素材と違うのが、気になってしまいます。
★女友達
霧子「…前から気になっていたんだけど、奏汰くんって仲のいい
女友達はいないの?」
奏汰「昔はいましたが…最近はほとんど会ってませんね」
霧子「その子といい雰囲気にはならなかったの?」
奏汰「あー…どうでしょう」
奏汰「あの時、ああしてれば、今とは違う人生を歩んだのかなって、
そういうのはありますけど…」
⇒これが、今回のテーマ『運命の選択』ってやつなのかナ!
★文藝部の編集長に誘われて
霧子「その…確かに、文藝部に戻れるのは、個人的にはとても
嬉しいお話です」
霧子「ただ、漫画部に来てまだ1年ですし、まだまだ学べることが
あるのではないかと思って…」
⇒漫画部に来てまだ1年だったのか。もっと長くいるのだと思っていました。
★ビリヤード対決
ト書き:残りは4つ。
霧子「4、6、8、9」
⇒このシーン、絵の右下の的球が5番、右上の的球が8番になっています。このシーンの絵は最初から同じなのですが、だとするなら、後々の展開も考慮した番号描写(本当なら最後まで残る9番のみ番号を見せる)にするべきでした。まぁ、絵全体の構図と配色から見て、的球の色とか番号の見せ方を考慮した結果なのでしょうけれど、シナリオとの整合性という点で、配慮不足であることには変わりありません。つまり、気配りが足りていないわけです。こういうのが積み重なると、だんだん不満が溜まってくるわけですが……。
◎きらりルート
実は、社会人3ルートの中では、ライターの文章力が一番高いのではないかと、密かに思っています。特にエロシーン(これは褒めていることになるのかナ?)。
私は、これまでも他作品の感想で、大概のエロゲーのエロシーンって、ストーリーに連動しない、エロゲーにするためだけに存在していることが多く、その結果、「喘ぎ声と彼女の説明過多な解説」で成り立つ、実際のセックスとは似ても似つかない作り物セックスに成り果てていることを指摘してきましただからストーリーを追い求めて、強制スキップする人が続出することになるのですが……。でもそうすると、そもそも、エロシーンをスキップしても構わないような作品が、果たしてエロゲーといえるのだろうか?
一般的なエロゲーでのエロシーンは、男が主導権を握っているので、男が解説する分には違和感がないかなとは思うのですが、それだとサービスにならないから女に解説させるため、おかしなことになっていると思うのです。
しかし、きらりルートでは、通常のエロシーンとは逆に、きらりが奏汰を、つまり女が男を嫐る凌辱シチュエーションとすることで、「喘ぎ声と彼女の説明過多な解説」であることに必然性を持たせ、この問題をクリアしていました。
実際、このライターの文章は巧いです。また、きらりの設定が痴女であることも、エロシーンがストーリーの一部となっていることを、後押ししているように思います。きらりのペコちゃんスマイルもいい味出してるし(笑)。因みに、最近 milky のアメをいただいたのですが、アメの包みのペコちゃんを見たら、舌の位置が、きらりと違っていました。そのため調べてみたら、「ほっぺに出している舌。向きはポーズによって違う」となっていました。つまり、ほっぺの左右、どちらでも可ってことですね。
さて、二回目のエロシーンでは、上記の問題をどう解決するのか、興味津々です。このライターが本物かどうか、ライターの力量が赤裸々になりますね。二回目のエロシーン感想に続く……。
(すみません。いつの間にか眠ってしまって、AUTOで流していたので、気がついたらゲームが終わっていました(笑)。再プレイするのが面倒くさいです)
・気になった点、あれこれ7
★文章のリズム
奏汰「もっと頼ってくれていいんですよ?」
きらり「ふふっ、なら頼っちゃおうかしら。
実はね、このあたりに物足りなさを感じてたのよ」
奏汰「どこですか?」
きらり「ここよ。さっきの豆知識みたいなものがあれば、いい感じで
文章のリズムができると思うのよね」
奏汰「文章のリズム、ですか」
⇒できる作家は、文章のリズムを気にするってことですね。私と同じだ――ただの一般人で、しかもできないけど(笑)。
★格言?
奏汰「あまり気にしないんですね」
きらり「他人がどう思ってるかじゃなくて、自分がどう感じたか
が大切だからよ」
★★★おじいちゃんの十三回忌の墓参り
きらり「おじいちゃん…」
奏汰「…………」
きらり「あたしの婚約者を連れてきたわ」
奏汰「なんの話ですかっ!?」
ト書き:急に何を言い出すんだ、この人は…
きらり「ちょっとした冗談よ」
:
きらり「あたしはあたしなりに頑張ってるから…おじいちゃん、
見守っててね」
ト書き:もう一度、きらりさんが墓前に手を合わせる。
俺も同じようにして、もう一度お墓参りをした。
きらり「…………」
奏汰「…………」
⇒ストレートな伏線には、拍手したい。正しく tone work's らしい予定調和。きらりの「…………」も決まっているよね。
★ギャップ萌え?
ト書き:いったい何を作ってくれるんだろう。
きらりさんのイメージからすると、フランス料理とか
イタリア料理なんだけど…
きらり「さっ、召し上がれ」
奏汰「すごい…」
ト書き:食卓に並んだのは、お刺身、あら汁、肉じゃが、だし巻き卵、
ほうれん草のお浸し、かぼちゃの煮物に天ぷらまで…
⇒見た目は「都会派、派手、欧米風」なのに、実態は「田舎、お年寄り趣味、和風」。ちょっとずつ小出しに伏線を張っていましたが、ここでドカーンと予定調和。
★写真週刊誌にすっぱ抜かれたシーン
常務「この写真に写っている男は、君で間違いはないかね?」
奏汰「い、いえ、これは…」
常務「間違いじゃないかどうかを聞いてるんだ」
⇒ここの展開はなかなか良いですね。
2019年8月12日
◎不具合
主に「誤字脱字」と「声優さんの読みとテキストの相異」について記します。最近のエロゲーは、共通ルートの品質管理は頑張るのだけれど、その後の個別ルートの品質管理までは行き届かない傾向があります。では、本作ではどうだったかというと、各ルート毎での数は、次のとおりです。
・誤字脱字
0:共通
1:灯華
3:うぐいす
3:雨音
4:聖衣良
1:栞菜
1:霧子
0:きらり
・声優さんの読みとテキストの相異
0:共通
2:灯華
5:うぐいす
7:雨音
6:聖衣良
1:栞菜
3:霧子
3:きらり
これらの指標からでも、得られたデータから、実は色々なことが見えてきたりするのです。例えば本作だと、灯華ルートは一番のメインルートともいえるので、恐らく最初に書いたために、テキストのチェックを入念に行ったと思われます。ただ、その他のルートは、ストーリーの長短を考慮すると、どれも、似たようなレベルの品質管理状態だったことが類推されます。その中では、聖衣良ルートは、ちょっとチェック不足だったみたいですね。つまり、聖衣良ルートの全体の中での扱いは、その程度だったというわけですね。分かりやすい。
因みに、「声優さんの読みとテキストの相異」といっても、漢字の読み方を間違っているとかの本当の間違いは少なくて、どちらかというと、ライターと声優さんの感性の違いからくる微妙な言い回しの相異が主です。例を示すと、次のとおりです。
賢斗「仮に賞獲れて雑誌に載ったとして、形に残る状態になった後、
日紫喜先輩と別れたらどうすんだよ?」
⇒「どうするんだよ?」と読んだ。
ダーナー「日本の将棋や囲碁では、投了は自ら告げるものだよ。
それともキミの見立ては違うのかい?」
⇒「見立てでは」と読んだ。
聖衣良「昔から、かな兄ちゃんラブなんだもん♪」
⇒「ラブだもん♪」と読んだ。
霧子「ごめんなさい。こんな事に付き合わせて」
⇒「ごめんなさいね」と読んだ。
常務「弟子のほうも乗り気で書いてる。きっといいものになるだろう」
⇒「書いている」と読んだ。
これらは、個人的には、声優さんの読みの方がリズム的に適切な気がするのですが、それでも、本当に声優さんの読み間違いもあります。
うぐいす「これは、奏汰くんが、たくさん出してくれたから…
あんぁ…溢れて、もったいない…あぁ…」
⇒「溢れて」を「こぼれて」と読んだ。正しくは「あふれて」。
霧子「わ、結構しっかりしらすの味がするのね」
⇒「しっかり」を読み飛ばした。これは指示があった可能性もあるけど……。
聖衣良「うん、せっかくの学園生最後の夏休みなんだけど…」
⇒「学園生活」と読んだ。どっちもどっちかな。ある意味悩ましい。
でも、看過できない誤字もあって、例えは次のとおり。
霧子「通りでこんな時間まで起きれなかったわけね」
⇒「道理で」。他のエロゲーでもあったんだよね。「どうり」を「どおり」と打って変換したからなのだけれど、声優さんも、馴れっこなんですかね。
また、私には変に思えるものもあって、例えば、次の文章。
雨音「挑んでくる者は、全力で潰す。それがワタシの礼儀」
⇒「礼儀」の使い方が変。「礼儀」とは、人間関係や社会生活の秩序を維持するために人が守るべき行動様式のことで、対人関係での気配りや敬意、慎みの気持ちにもとづく行動規範のことだから、雨音の独善的な意見など礼儀に該当しないと思うのです。恐らく、ここでは「流儀」が最もフィットする言葉だと思います。もっとも、雨音の主観的な礼儀定義と本来の定義との差異の違和感を楽しむ会話文と捉えるべきなのかもしれません。しかし、私には、根本的に言葉の使い方が変で会話文として成り立っていないのではないかと思えるのです。
全体的には、テキスト量から考えると、頑張ってチェックした方かもしれません。ただ、他のエロゲーからも言えるのですが、ライターさんと声優さんの微妙な言葉の言い回しの相異の解消が、今後の課題ってことが見えてきましたね。実際の収録現場では、どうしてるんでしょうね。まぁ、根本的にはチェック漏れってことになるのでしょうけれど、真面目にチェックしていたら収録が終わんないでしょうし、そんなことに金と時間をかけられるかってのが本音ですかね。とはいえ、声優さんを野放しにしていると、ライターさんが怒っちゃう日が来るかもよ、なんて。
・その他の不具合
うぐいすルートで音声が変なのがありました。
うぐいす「ひはぁぁぁっ…!?
はぁっ、あっ…んううぅぅぅぅっ…!」
⇒「んううぅぅぅぅっ…!」の部分の音声が、奥まった音声(遠くの小さい音)になっている。
2019年8月12日
◎口癖
私は、氏名とともに、登場人物の口癖も、作品の世界観や人物そのものをユーザーに認識させる重要な構成要素の一つだと思っているのですが、本作では、次のとおりです。
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灯華:「あーっ!」
うぐいす:「ふむ」
雨音:「はにゃ…!」「クックック…」
聖衣良:「そうとも言うよね」
栞菜:「すみませんっ!」
霧子:「そう」
きらり:「ふ~ん?」
---------------------------------------
私には、灯華の口癖だけは、なんか浮いてる気がしました。もっと別な口癖を用意するべきだったと思いましたが、もしかすると、灯華の声優さんの読み方が、そもそも良くないのかもしれません。灯華が別の声優さんだったら、どういう印象になったのかは、ちょっと興味がありますね。
2019年7月27日
◎番外編(プレイしたゲームに対する私の愛情度<執着度合い>を考える)
発売後、一箇月が経って参照する方々もそろそろいなくなられたので、人知れず、tgl様の幻のレスについて、私の考えを備忘録がわりに記しておこうと思います。
さて、ことの発端は tgl 様の「購入意欲が湧く感想」だとのレスがあって、私の感想のどこにそう思われたのか訊いたところ、ご回答をいただいたのですが、非常に興味深かったです。何回も読み直して頭に叩き込んだ上で、自己分析。回答しようとしたら、半日足らずで削除されてしまわれて、あれれみたいな。
私の場合、削除されるのは今に始まったことではないので、無駄な行為を強いてしまったことに対して申し訳なく思ったりもするのですが、今回は、自分の感想内容を見つめ直す、良い機会だと思いました。
ここで何が興味深かったかですが、どうも、私の文章は、作品に対する「愛」が感じられるらしいのです。私自身は、単に作品の良し悪しを思いつくまま書いているだけだと思っていたのですが、読み手はそう捉えてはいない場合があるということです。
これについては、以前も『恋はそっと咲く花のように』の感想に対する Dain 様のレスで、私は熱く語り過ぎで、更にそれに追い討ちをかけるようにいつも長文だから、作品に対する愛があると思われてしまうきらいがあるらしいことが分かっていました。
それで考えてみました。他の方々の感想も世間に公開しているってことは、目的はどうあれ、読者がいることを想定して書かれているのだと思います。ですが私の場合、想定読者は自分自身なのです。飽くまで、自分が読んで楽しむためであって――自分の文章に酔いしれるために――並々ならぬ愛情をそそいで書いているのです。そのため暇になると、自分が過去に書いた感想をよく読み直していて、自分の書いた内容に問答して、新たな発見なんかがあったりして、密かに文章の修正や追加をしたりもしています(勿論、誰も読まないのですが、想定読者は自分自身ですから、何の問題もありません)。
結論をいうと、自分の書く文章への深い愛情と思い入れが、自分以外の読者には、作品への深い愛情に見えることがあるらしいという、非常に徳のあるお話でした(笑)。
以上