ErogameScape -エロゲー批評空間-

shiratoriさんの家の彼女の長文感想

ユーザー
shiratori
ゲーム
家の彼女
ブランド
Argonauts
得点
68
参照数
1516

一言コメント

「ピカピカの1年生」「ジャッキー・チェン」「ずうとるび」「あいーん」に郷愁を覚える方々が対象のゲームです。それ以外の方々はターゲット外ですので、いちゃもんつけるだけナンセンスです。そんなことより、私は「うちカノ」シリーズのマーケティング戦略について、考察したいです。(追記:「■その他」に 7/6「MOONSTONEのサポートについて」、7/7,11「興味を引いた文章、お風呂、不具合について」。9/2「■マーケティング面での分析」の最後に「“可処分時間”対策について」。7/16、9/2、1/14「○次回作以降の分析」で「MOONSTONEへの直訴」、『家の妹』と『家の恋人』の発売前コメント)

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

私は、発売前コメントに書きましたが、本作品の内容など実はどうでもよくて、本来はマーケティング戦略に興味があって、それについて考察してみたかったのです。しかし、一通りプレイして思うところもあったので、最初に作品内容の感想を書き、その後に本来書きたかったことを述べたいと思います(まだ初稿なので、感想も含めて荒削りなため、暫く修正や追記の更新をし続けるかもしれません。ただ、如何せん気力が……) ⇒ 一通り修正、追記したので完了です(7/6,7/7,7/11,7/16,9/2,1/14)。

■プレイしてみての感想と分析
○操作性
最初、インストーラーのインストールフォルダ指定にちょっと面食らいました。なんか細かすぎて微妙に分かりづらいです(単に慣れの問題ですけどね)。

ゲーム画面での操作も、画面下側に操作アイコン群(SAVEとかLOADとか)が表示されるのですが、すごく小さいし無音で何のクリック感もないので、操作性は×だなとか思ってしまいました。

しかし、画面上でマウスを右クリックすると、大きな操作アイコン群(システムメニュー)が表示され、そこに「SCREEN」という画面切り替えアイコンがあるのは、個人的に好感触でした。私はプレイメモを書くのに、フルスクリーン表示とウィンドウ表示をよく切り替えるので。

ところが、マウスのスクロールホイールでバックログを表示させようとしたら、テキスト表示がどんどん変わっていくのです。最初Autoが止まらないとか思っていたら、何とテキスト表示枠の中で前の文章が1つずつ遡って表示されていたのでした。とても面食らいました。でも、バックログアイコンでは一覧表示できます。あれれって「?(GUIDE)」で確認してみたら、「ホイール↑、BS、F7は<バックログ表示します>」となっています。しかし「ホイール↑」だけバックログ表示の仕様が他と違っているのです。

何なんでしょうね、この操作性全体のちぐはぐ感は……。まぁ、他社製品と微妙に仕様が違うからなのですが。

(7/6追記:「ホイール↑」の仕様について、他の件でサポートに問い合わせたついでに確認してみたところ、仕様だがコンフィグで設定できるとの回答でした。確かに「簡易バックログの利用」項目で、"一覧"と"簡易"を変更できる仕様でした。何で気がつかなかったんだろうって、「?(GUIDE)」に記載が無かった時点で諦めてしまったからなんですけどね。ただ、デフォルトが"簡易"なのは、既に他社仕様に慣れてしまっている私には、ちょっと受け入れがたいです。というか、"簡易"の方がマイナーなのでは……。大は小を兼ねるのですから)。


○本作品のターゲット層
なんか、ライターの歳が分かるような内容がちらほら。
例えば、下記のようなキーワードに反応できたり郷愁を感じる方々は、このライターの文章に共感できる可能性があります。つまり、このゲームをプレイしても良いターゲットになる方々ということになるでしょうね。逆にピンとこない方々は絶対にプレイしてはいけないと思います。まぁ、シナリオ上でも、アラフォー以上がどうとか書いていたような……。
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社長「君もピカピカの1年生ってやつで、若いんだ。仕事帰りに、彼女と会ったりとかしたいでしょう?」
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マスター「どうしたんだい? ジャッキー・チェ×顔負けのアクションで」
啓輔「勝負にならないです」
マスター「サモハ×か」
啓輔「サモハ×……? ああっ、懐かしいなー、子供の頃、テレビの映画でよく見ましたよ~」
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啓輔「はい。ロンドン。いいですよね。あのずうとるびを生んだ街」
絢萌の母親「それはリヴァプール。というか、そのグループは日本のじゃない。啓輔君、ちょっと落ち着いて」
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絢萌「さ・さ・さー、3秒で~、支度しな~♪ チェケラッ♪」
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絢萌「あーん、してもいい?」
啓輔「あいーん?」
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社長「なぁに、早く帰って彼女とにゃんにゃんしたいわけ?」
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○演出面
以下の指摘を低価格作品に求めるなよっていうご意見もあるでしょうが――後で書きますけど――私は本作品が、所謂、低価格作品だとは思っておりません。むしろ、フルプライス作品と同列に扱われるべきだと思っております。見た目の価格設定に騙されてはいけません。だから問題にしているのです。

★目の差分表示が手抜き
他の作品でもよく見かけるのですが、イベント絵での目の差分表示で、髪の毛を覆い隠す場合があります(髪の毛を覆い隠すように目を貼り付ける)。こういうところで、作り手がどれだけ配慮して制作しているかの姿勢が分かると思うのですが、本作品は配慮不足となりますね。

★絵が文章どおりにならない手抜き
・最初のセックス時
啓輔「うんっ……絢萌ちゃんの膣内に出すから……!」
ト書き:僕は彼女の手に導かれるように、体を前に倒した。
ト書き:すると彼女も僕の背中に手を回して、一体感が一気に強まったようだった。
 ⇒当然、体が前に倒れないし、彼女が背中に手を回すこともないし、一体感って何って感じです。でも、世の中にはちゃんと文章どおりに配慮するエロゲーが実際に存在するんですよね。そういう作品の制作者達は本当に凄いし素晴らしいと思います(最近、積んでた『Re:birth colony -Lost azurite-』をプレイしてみて、心底そう思った)。本作はダメダメに分類されますけどね。本当にシナリオライターが不憫でなりません。私は、「全てのシーンには意味がある」と思っていますので、動画にできないのなら、せめて静止画だけでも内容に追随すれよって、いつも思ってしまいます。


○シナリオ
<良い点>
本作のライターは、ストーリー運びが、本当に上手いなと思いました。大概のエロゲーでは、セックスシーンまでのストーリー展開が、無理矢理な場合がとても多いと思います(よく言われる「セックスシーン、いらなくない」ってやつね)。しかし、本作品では、とても丁寧に話が進行するので、何の違和感も無くセックスシーンを迎えられるわけです。

そのためか、セックスシーンは、やたらとねちっこいです。別に貶しているのではなく、褒めているんですけどね。例えば、絶えずキスし続けながら、できるだけ体を密着させてっていう描写が多いのです。実際、いちゃいちゃシーンでは、次のように書いています。
-----------------------------------
絢萌「はぁっ……ちゅっ……こうして、ぎゅってくっついてえっちするのが、一番好きかも……ちゅっ……ちゅ、ちゅっ……」
啓輔「うん……この体勢もいいよね……ちゅ……」
ト書き:一つに繋がったまま、無理なく唇も重ねることができる。
-----------------------------------
本作での、基本的なセックスの考え方は、これにつきます。

また、セックスシーンの描写説明も、できるだけト書きだけですまし、ヒロインにべらべら説明させるなどの手法をとっていないのも、個人的には好感触でした(ただし、予約特典ボイスドラマを除く。そりゃボイスドラマだもの、ヒロインにひたすら説明させるしかないわけで……)。。

本当に、熱々の恋人っぽい雰囲気が、良く出ているシナリオだなと思いました。個人的には、この様なシーンを求めているユーザーは多いと思っているのですが、実際のエロゲーでは、なぜか殆どありません。"まんこ"に"ちんぽ"を突っ込んでればいいだろ的な作品ばっかりなのです。エロければまだ許せるのですが、ぜんぜんですからね。


<悪い点>
ストーリーが、はっきり言って、つまらないです。本当につまらない日常が淡々と進行するだけなのです。嘘偽りなく、ストーリーコンセプト(「本作では、特別な出来事は起こりません。恋人との普通の日常を、大事に、丁寧に描きました」)どおりなのです。

勿論、退屈な日常を何とか乗り切るために、それを回避する対策を打ってはいるのですがね……。
 対策1:シモネタ社長で場をつなぐ⇒ターゲット外の方々から非難轟々。私は個人的に好き
 対策2:エロシーンで中だし、外だし選択⇒一箇所だけあり。私は効果には大疑問
やはり、こんなギミックに頼らないで、根本的には、ストーリーで読ませる対策をするべきです。

本作は、恐らく『星織ユメミライ』をオマージュして企画されたと思われます。対策2なんて透子ルートと同じだし、そんなとこまで真似るなよって思ってプレイし続けていたら、案の定、ラストあたりの初詣シーンで、絵馬に「ずっと一緒にいられますように。」って書いてあったので、確信に変わりました。

ただ残念なことに、『星織ユメミライ』はアフター編が充実していたから、曲がりなりにも名作扱いになったのかもしれませんが、本作の「After Days」は、お世辞にも中身があるとは言えないので、『星織ユメミライ』の下位互換にすらなっていないのです。もっと「After Days」で、その後の人生を熱く語ってくれたのなら高評価できたのに、本当にもったいないです。本作の想定ターゲット層を考慮するなら、本来は、アフター編こそ充実させなければならなかった筈なのにもかかわらず。

また、本作の恋人は「幼馴染」(本作では「幼馴染み」と表記)なのですが、それがぜんぜんストーリーに活かされておりません。「幼馴染」という言葉だけを、次の二点の理由付けに利用しただけなのです。
 (1)主人公と同居生活させるため
 (2)最初から主人公への好感度を上げておくため
その結果、「幼馴染」エピソードなど皆無です。「幼馴染」だからこそのストーリー展開も全くありません。結論から言うと、本作のテーマ上「幼馴染」である必要性も必然性もないのです。単に、(1)と(2)の説明を端折るのに便利だったから、ヒロインを「幼馴染」設定にしただけなのです。

これ、やっぱり、『星織ユメミライ』と違って「After Days」が貧弱なのは、致命的な欠陥だと思えてきました。こんな中途半端な作品、制作しちゃいけなかったんじゃないでしょうか。今のままだと、次回作以降も何らかの対策をしない限り、同じでしょうからね、きっと。


○ライターの性に関する感性について
★保健体育の教科書
絢萌「実は、保健体育の教科書をちょっと読み直しちゃったんだ」
 ⇒Web検索全盛の時代で、初心を演じるシナリオを書かれても無意味だって、いい加減、ライター達は気がついて欲しいものです。今となっては浮世離れした設定に違和感がありすぎて、本当に萎えます。男の願望を書きたいのは分かるけれど、座敷牢にでも閉じ込められた箱入り娘などの極端な情報制限環境下設定にでもしない限り、わたし馬鹿で~すみたいな話は、本当にうんざりです。昔、渋谷の本屋に寄った時に、制服姿の女子学生がセックス教本をガン見しているのを目撃して以来、そう思っています。

★におい①(最初のセックス)
ト書き:途中、ふと気がついたのだが、絢萌ちゃんの歩調が、普段と少し違っているようだった。
  :
絢萌(さっきのことなんだけど……まだちょっと、ひりひりするの。お股のところ……)
  :
絢萌(うーん……ただ、ああいうデリケートなところに、無闇に薬を塗ってもいいのかな? って気が……)
  :
絢萌「何日かすれば、自然と治ると思うから」
  :
絢萌「自分でもそれと分かるくらい内股気味になっていたし……、一応、言っておいたほうがいいのかなと思って」
 ⇒このライター、セックス前後のストーリー進行が本当に違和感無く書いていて素晴らしいと思うのですが、それでも、私、他の作品でもよく思うのですが、初めての射精シーンで、恋人の匂いには敏感なのに、セックス時の淫臭や精液の臭いに言及した描写がないのは、なんか変だなっていつも思ってしまいます。正しく、臭い物には蓋をする感覚そのものですからね。まぁ、エロ小説でも同じですが、大半の作品ではお花畑の匂いが漂っているのが暗黙の了解事項みたいです(笑)。

でも、次の様な描写はしているんですよね。

★におい②(クンニ)
ト書き:生々しい匂いも強まったようだけど、絢萌ちゃんのものだと思うと、全く嫌な感じはしない……。
ト書き:粘膜に優しく吸い付き、舌先を使うと、絢萌ちゃんの匂いが、むわっと口の中に広がった。
 ⇒匂いの言及はあるじゃん。これより前にも、すっぱいって表現もしてあった様な気がします。匂いだから良いにおいってことですよね(?な方々のために敢えて解説すると、においには「匂い」と「臭い」の二種類があって、ライターは「匂い」には言及するけど「臭い」には触れないってことです)。


○次回作以降の分析
さて、そもそも次回作もコンセプトは同一なわけですから、「妹」設定が(1)と(2)の理由に利用されるだけで、「妹」エピソードなど皆無で、「妹」だからこそのストーリー展開など全くないことが、十分想定できます。

それ以前に、私は本作のプレイ直前まで、積みゲー崩しの一環で『月に寄りそう乙女の作法2.1 E×S×PAR!!』をプレイしていて、「パル子」と本作の「妹」が同じ声なので、「妹」が「パル子」にしか思えず、「パル子」じゃ甘い同居生活は無理だろみたいな。声優さん、チェンジとか本気で思ってしまいました。声優さんには、何の罪もありませんが……。

なぜなら、本作のシナリオで、社長は喫茶店マスターが元旦那である可能性を匂わせており、その喫茶店でアルバイトしているヒロイン二名は、設定不詳です。つまり、『家の恋人』の場合、上記の(1)と(2)を実現させるためのストーリーを、「幼馴染」や「妹」とは違って、創り込まなくてはならないわけですし、設定不詳のヒロインが二人もいるので、それをどう料理するのかも、興味津々です。更に、社長と喫茶店マスターに関するネタばらしエピソードなんかも期待できそうですし、退屈しなくてすみそうな予感がします。

また、本作のシナリオでは、理帆が「でも、これが見知らぬ女なら、ちょっとイヤ~な気持ちになったところだけど……絢萌ちゃんなら、祝福できるな」と言っているので、『家の恋人』では、姑的立ち位置になるであろう理帆が、どういった態度に出るのかにも、非常に興味があるのです。

そのため、次回作の『家の妹』は、上記の分析どおりストーリーとプロットが想定できてしまったのでどうでもよいのですが、『家の恋人』だけは是非やってみたいですね。期待度だけはMAXです(笑)。とはいっても、同居以降のコンセプトは同じなので、ストーリー上の違いは何もなくなるわけですけどね。本当に、「After Days」さえまともだったら、秀作になっただろうに、返す返すも残念です。まだ、発売もされていないけれど、未来予知しました(笑)。

開発日記 第1回に、「本シリーズはこれから1年超の長きに渡って展開」となっていたので、もし制作側がこれを読むことがあったのなら、次回作以降は、私の未来予知を覆して欲しいものですね。

★2018/07/16追記
私、恐らく買うであろう『家の恋人』だけでも少しは改善して欲しいので、MOONSTONE公式ユーザー登録フォームの感想欄に、このページに全て書いたと記載してしまいましたよ。こんな所で感想書いてゴネてても、何ら改善なんか期待できないし、メーカーに直接意見して改善を求める努力はしないとと思って。まぁ、実際に読んでもらえる確率は低いでしょうが、行動しないで文句ばっかり言ってても、何も始まらないですしね。

★2018/9/02追記
『家の妹』の販促用ダイレクトメールが送られてきたので、作品HPを見てみたのですが、上記で述べた想定内どおりですかね。唯一、興味があるとすれば、7/23にツイートされた、
「【家の妹・小ネタ話】妹に対してはちょっと甘いくらいなところのある主人公。そのあたりの背景は、第一作『家の彼女』では全く触れられませんが、『家の妹』では明らかになります」
くらいでしょうか。逆にいうと、妹ネタはこれしかないとも解釈できるわけですが……。
8/31にツイートされた、
「初めてのHでは感動の涙… これも妹ものの大切にしたいポイントです」
ってのも、別に妹ものでないといけない制約事項でもないような気がします。
そもそも、開発日記その3で「兄妹で付き合う葛藤はほどほどに、イチャラブがメイン」って宣言しているくらいですからね。妹である必要性が一体どこに……。

★2019/01/14追記
1/11にシリーズ最終作『家の恋人』の公式サイトがオープンしました。キャッチコピーが「うちカノシリーズ有終のラスト! 恋人が、二人!?」となっていますので、私の指摘事項が、悉く改善されている作品を期待したいところですが、まぁ、たぶん無理でしょう。諦めています。なぜなら、公開された情報では、
 同居理由:主人公が「ひょんなことから腕を怪我してしまった」ことがきっかけ
となっています。この理由だったら、幼馴染や妹との同居の方が、ずっとしっくりきます。まぁ、怪我をした状況と理由が問題なのでしょうけどね。

また、開発日記その4(最終回)では、設定不詳の二人について
 <二人に似ているような…?>
って、大盤振る舞い過ぎるだろう。この一言で、人間関係がほぼ解明されてしまいました。後は、二ひねり、三ひねりくらいの大どんでん返しのドラマを期待するしかありませんが、そもそものコンセプトが、「本作では、特別な出来事は起こりません」ですからね。ただし、妹や二人の恋人とのエッチが、特別な出来事ではないとして良いのかどうか……。

「<夜はもちろん3人で…> あらかじめご理解ください」って、いきなりの3P設定って、理解できないです。ホップ、ステップ、ジャンプと、このシリーズ、回を重ねるごとに、どんどん不道徳・非倫理的な方向に進んでいません? 恐らく、負の部分は無視で話が進行するのでしょうけれど。もしかして、それが狙いなのでしょうか? だったら、基本コンセプトを「不道徳・非倫理」と設定し直すべきだと思うのですが……。

妹のボイスサンプルを聴くと、
「もう、お兄ちゃんは、ああいうデーハーだったり可愛げのない女よりも、もっと身近なところから相手を見つけたほうがいいって思うわけよっ。わたしとかさー」
って言っています。もう、後は、妹の恋人いびりに期待するしかありませんね(笑)。

もし、ファンディスクが出るとすると、内容は想像できるのですが、各ヒロインのアフターストーリーとハーレムルートになるでしょうね。


■マーケティング面での分析
さて、やっと、本来書きたかった事を記述します。

私は、駄々下がりのエロゲー市場で、どうやったら売り上げを伸ばせるのかを考えた施策に注目しています。今回の場合、アルゴノーツの開発日記によれば、アルゴノーツは「低価格・連作」に特化したブランドであり、そうした理由は、次のとおりだと書いてありました。

★低価格の理由
 「言うまでもない」
だそうです(笑)。そりゃ安いにこしたことはないですが、次の事柄が書いてありました。
 (1)“可処分時間”対策として、長時間プレイなどできないユーザーに「サクッと楽しめ、サクッとヌける」作品を提供するため
  ・攻略対象ヒロインは(基本)1人
  ・その作品のパラメータを、その1人に全振り
  ・テキスト分量はほどほどに
 (2)プレイ時間は短めでも、ギュッと濃縮された楽しい時間を過ごせるようにするため
その結果として、低価格になったみたいですね。
(7/16追記:開発日記には書かれていませんが、実際には、中古対策ってのもあると思います。中古市場が成り立つ理由の1つとして、新品と中古の価格差が大きいことが挙げられると思います。つまり、低価格になればなるほど、新品と中古の販売価格差がなくなり、中古の売買に旨味がなくなるわけです。ユーザーと中古販売業者の双方にそう思わせられれば、メーカーにとっては大成功ってわけです)

★連作の理由
 ヒロインが1人では、横の繋がりもなく、作品世界も広がりを欠く弱点を補うため
 (1つ1つの作品はサクッと楽しめ、気に入れば、よりディープに作品世界に入れるようにする)

では、実際、どうなのかを考察してみました。例えば、フルプライス作品(計算しやすくするため、攻略ヒロインは5人とします)と比較してみましょう。高くて1万円くらいでしょうか。そうすると、ヒロイン1人あたり2000円です。本作は2600円です。さらに、フルプライス作品では、複数の攻略ヒロインとの繋がりを束ねるための作品世界を構築するために、けっこうなボリュームがある共通ルートが存在するわけですが、それを端折っているのです。

私が、本作の感想でちらっと書いた「見た目の価格設定に騙されるな」の意味が分かっていただけたと思います。つまるところ分割商法の一種ですからね。メーカー側にしてみたら、制作期間の短縮と短期間での資金回収など、連作のメリットは高いわけです。勿論、毎回、同じ本数以上が売れるのかは不確かというリスクがあるわけですが、それでもフルプライス作品での一発勝負の博打に比べたら、リスク対策にもなるでしょう。(7/16追記:ただし連作の場合、上記で述べた中古対策効果が減ってしまうデメリットも発生します。つまり、ブックオフとかで見るコミックス全巻まとめ売りと同じく、連作まとめ売りが発生してしまうわけですね。この対策としては、まとめたものを廉価版で販売するとかになるのでしょうか。廉価版を出すまでにかかった費用を回収できていることが前提になりますかね。こう考えていくと、なかなか一筋縄ではいかない問題ですね)

ただ本作をプレイして感じたことは、連作の理由に挙げられている「横の繋がりもなく」の対策にはなっているとは思いますが、「作品世界も広がりを欠く」の対策にはなっていない気がします。なぜなら、上記でも書きましたが、フルプライス作品における共通ルートに該当する部分がないのに、1作品毎に独立したストーリー展開としたためです。これでは、いくら世界観が共通でも、元々のボリュームを抑えるコンセプトなので、高々3連作くらいでは、解消しようがありません。

結論としては、アルゴノーツブランドが、Win-Winの関係を築いて今後も成り立っていくのかどうかは、連作の理由対策が課題であり、今後の改善部分となるでしょうね。オメガスターの美少女万華鏡シリーズの状況を分析してみると良いのかもしれません。

2018/09/02 追記
★“可処分時間”対策について
“可処分時間”対策についてじっくり考えてみたのですが、恐らくメーカーの人達は考え違いをしているのではないかと思い至りました。つまり、「長時間プレイ」の解釈の仕方が、ユーザーが求めているものと違うということに。

はっきりいって、シナリオすっかすかの作品なんて、やりたくないわけですよ。これこそ時間の無駄です。問題の本質は、一日でゲームに割ける時間であって、1本のゲームに割く全体時間(期間)の長短ではないのです。そこを勘違いしているから、全体ボリュームを削減して、ストーリーすっかすかの作品ができあがって、評価を落とすわけです。

私、『奴隷との生活 -Teaching Feeling-』が大ヒットした理由がやっと分かりましたよ。一日でゲームに割ける時間は限られているので、止めたいときに簡単に止められる仕様が求められているということに。つまり簡単に言ってしまえば、いつ終わるのかも分からないシーン(例えばエロシーンとか)がある作品を量産し続けていることが、現状のニーズとミスマッチを起こしているわけです。
中身スカスカの作品など誰も求めていないので、本来は全体ボリュームを削減する必要などなくて、もっと一つ一つのシーンのボリュームを短くして、スパッと始められてスパッと止められるもの(止め時の見極めが簡単につく仕様)が求められているのです。


■その他
○MOONSTONEのサポートについて(7/6追記)
実は、予約特典の「エッチなボイスドラマ」をダウンロードしようとしたら、エラーになってダウンロードできませんでした。
 Chromeでは「Not Found The requested URL ******* was not found on this server.」
 IEでは HTTP 404エラー
そのため、ムーンストーンのメールサポートで問い合わせしました。ムーンストーンのメールサポートは自動応答システムですね。自動で受付後、短時間で回答が返ってくる筈です、たぶん(私は夜に問い合わせしたので、翌日の午前10時過ぎでしたけれど、勤務時間内なら90分以内には回答がもらえそうな感じがしました)。たいへん、素晴らしいです。

さて回答内容は、先方では再現しないので、指定アドレスより直接ファイルをダウンロードとなりました。firestorageを利用しているみたいですね。指定アドレスにアクセスしたら「ダウンロードページの有効期限は10分」とかなってて、初めて利用したので、慌てました(笑)。

因みに、ちょっと気になった点を挙げると、MOONSTONEサポートメールフォームには「ゲームソフトのタイトル」項目というのがあって、ソフト一覧を表示させて該当ソフトを選択させる仕様なのですが、その一覧に、なんと『家の彼女』がない。もう、MOONSTONEの中でのArgonautsブランドの立場がよ~く分かった出来事でした。そりゃ、ブランド名からもMOONSTONEという冠、外されるよなと。

それで、「なんだよ、サポートメールを出せないじゃないかよ」と思って、一旦、諦めたのですが、数日たってもダウンロード不能のままだし、ソフト名選択は必須項目ではなかったので、実際の障害記載内容の冒頭で、「本サポートメールフォームのゲームソフトのタイトルには、選択項目として存在しないのですが、アルゴノーツブランドの『家の彼女』について、質問します」と書いて送ったところ、ちゃんと受け付けてくれたのでした。

でも、回答メールをもらった後で、MOONSTONEサポートメールフォームの「ゲームソフトのタイトル」項目を確認してみたら、一覧の先頭に、Argonautsブランド名と『家の彼女』が表示される様になったのには、笑ってしまいました(苦笑)。というより、指摘した私に、修正する(した)旨、回答メールに一筆あってしかるべきだったのでは……。私、最初、困って悩んだんだゾっと。こういうところが、エロゲー会社のサポートの駄目なところなんだよなと、他でも同じような目にあった私は、思うのであった。


○興味を引いた文章(7/7追記)
★女の子とは
ト書き:(そもそも、女の子の手料理が初めてだ)
 ⇒母親は違うのかと、一瞬、思ったのだけれど、母親は「女の子」じゃないのか。でも、ちょっと気になったので、ゲームのプレイ途中で調べてみました。
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女の子とは、年齢が若い女性のことを指す。少女と似たような意味を持つが、「少女」に比べ「女の子」の方が対象となる年齢の幅が広い印象を持つ。一般的に「子」が付くことから、未成年の女性のことを女の子と呼ぶことが多いが、成年に達していても女の子と呼ぶこともあるため、一概に定義を決めるのは難しい。
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つまり、母親を女の子の範疇とするのは無理っぽくはあっても駄目でもなさそうです。ところが、2009年7月5日付の京同通信社ニュースで「22歳までを『女子』としそれ以降は『女性』『女』と表記すべきとの中間派の意見が他の意見を押し切り、文部科学大臣に答申された」という記事を見ました。議論内容が面白すぎるのですが、私には、YAHOO!知恵袋の「女、女子、女の子、女性の言葉のニュアンスの違いについて、教えて下さい」におけるベストアンサー「女子(じょし)用トイレには、おばあさんでも入れます。ですから、女子が公共の場での性別用語ではないでしょうか」が、一番納得できました(笑)。

★南米=スペイン語?
絢萌「海外とのやり取りというと……英語?」
啓輔「そうだね。あとはスペイン語。南米はあんまり英語は通じないから」
 ⇒南米最大の国ブラジルはポルトガル語だけどって一応、突っ込んでみる。調べてみると、南米の総人口は422.33(単位:100万人)です。このうち、ブラジルは207.68ですから、南米の49.17%はポルトガル語なのです。メキシコを含む中南米でみると総人口は619.76ですが、それでも33.51%はポルトガル語が占めるのです。

★動物シリーズ
①カピバラ
啓輔「絢萌ちゃんはどういうのが好き?」
絢萌「うーん……カピバラ」
 ⇒エロゲーシナリオでの動物シリーズで、カピバラの出現率は、けっこう高いと思う私であった。

②秋田犬、柴犬、コーギー
 ⇒コーギーって、メジャーなの? よく知らないので調べてみると、コーギーには2種類あり、日本で見かけるのは殆どウェルシュ・コーギー・ペンブロークで、もう一種のウェルシュ・コーギー・カーディガンは、世界では人気なものの日本では希少種とのことでした。

★二重表現(重言)
ト書き:舌と舌が触れると、絢萌ちゃんはまた大きく震えた。まるで落下感を感じたように、僕の体にぎゅっとしがみついてくる。
 ⇒「落下感を感じた」の様な「二重表現(重言)」は、正誤の物議を醸すので、ライターはなるべく使わないほうが無難なのではと思いました。


○お風呂(7/7追記)
何回かお風呂のシーンがあります。部分的な描写が殆どなのですが、それでも何となくこの浴室でかそうとか感じておりました。そうしたら、最後の「After Days」で、浴室全体の描写が1枚あって、普通の浴室の倍はありそうだと判明したのです。浴室でかいなぁとか思っていたら、
啓輔「うん……。たまたまだけど、浴室の広いマンションにして良かったよ。当初は、もしかして無駄に賃料を払っているんじゃないか……とか思ったけど」
という会話が。どんな高級マンションに住んでいるんだよ。というか、浴室だけ他の部屋とバランスが取れていないんですけど。いや、セックスシーンには今後の作品でも重宝するんだろうけどさぁ。
(7/11追記:今、『恋はそっと咲く花のように』をプレイ中なのですが、この作品でも浴室は大きいです。どうも、温泉入浴シーンとかも該当すると思うのですが、「お風呂が大きいは、エロゲーでは正義なのです」ってことになるのでしょうか?)。


○不具合(7/7追記)
最後に、私の恒例、不具合情報を記録して終わりたいと思います。
さすがに短いので少ないのですが、それでもいくつかあります。少ないので、全部書くと、以下のとおりです。
誤字脱字は1つだけでしたね。ライターさんが相当気合を入れてチェックしたのか、はたまたメーカーのスタッフが優秀だったのか。とにかく品質管理は、エロゲーにしては、合格点をつけても良いです。
声優さんには、「さらに日本語を勉強しよう」と「ライターの文章を尊重しよう」をはなむけの言葉として贈りたいと思います。

声優さんの読み間違い
絢萌「それで、この子は実はもう30歳くらいで、動物ってあんまり長生きすると妖怪になるでしょう?」
 ⇒「30歳ぐらい」と読んだ。日本語としては、どちらでも間違いではないと思うのですが、ならばライターのテキストを正とするべきでしょうね。私も「くらい」派かな。

声優さんの読み間違い
絢萌「あっ、ううん。あの、べつに汗臭いくらいならいいかなって。ふ、ふふ……」
 ⇒「汗臭いなら」と読んだ。「くらい」を読み飛ばした。読みづらいのは分かりますが、もしかしたらライターは、意識して韻を踏みたかったかもしれないだろって、そんなわけないか。まぁ、ライターのテキストは尊重しないとね。

声優さんの読み間違い
絢萌「くすくす……お大事に。でも私は楽だから、続けてして欲しいな……?」
 ⇒「続けて欲しいな」と読んだ。この声優さん、韻を踏むような言葉の運びが嫌いみたいですね。ラップとか駄目だろうな、きっと。

声優さんの読み間違い
絢萌「えっと、13日と14日。土日」
 ⇒センター試験日の14日を「じゅうよんにち」と読んだ。普通は「じゅうよっか」じゃない? 調べてみると、4日、14日、24日は「よっか」、「じゅうよっか」、「にじゅうよっか」と読むのが慣例みたいですね。しかし、一箇月を過ぎると、34日間は「さんじゅうよんにちかん」、104日間は「ひゃくよんにちかん」、1014日間は「せんじゅうよんにちかん」、10024日間は「いちまんにじゅうよんにちかん」と読むらしいです。知りませんでした。

誤字脱字
啓輔「肌なんかもうつやっつやです。これが若さってやつですかね、あはは」」
 ⇒最後の閉じカッコが1つ余分


以上です。