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shiratoriさんの人気声優のつくりかたの長文感想

ユーザー
shiratori
ゲーム
人気声優のつくりかた
ブランド
MintCUBE
得点
68
参照数
970

一言コメント

ギャルゲーシナリオの教材としては良いんじゃないの、教材としては……。ただし、多視点での作り込みはいただけません。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

本作品については、これまで他の方々が述べているとおりだと思います。特に70点台のコメント群が、私には的を射ていると感じました。ストーリー的には起伏もなく可もなく不可もなくってところでしょうか。テンプレに則って、きちんと破綻なく作り込みましたっていう作品です。

なので、点数は辛めに付けていますが、別に悪い作品ではないですよ。ストーリーは、ラストまで全く自然で申し分なし。文章のテンポも良いです。エロシーンへの導入も、全く自然。じゃぁ、もっと点数つけろよってなるかと思うのですが、如何せん、私にはインパクトがもの足りませんでした。因みに、現時点でのAmazonの販売価格は、だんだんと下がってきていて29%引きです。これがこの作品の評価ってところでしょうか。

さて、本作品、真実度・78%だと謳っている訳です。裏を返せば、22%は嘘だと言っている訳です。では嘘の22%はどこなのかってことなのですが、私には良く分かりませんでした。もし、これが恋愛とエロシーンを指しているのだとしたら、はっきり言って興醒めです。ストーリーに起伏が無いと言われてしまっても、仕方がないと思います。

本来は、この22%の部分で大法螺でも吹いて、それに78%の真実を散りばめることで、違和感なくさも真実であるかの様に見せられたのなら、私は高評価にしたと思います。別に、ドキュメンタリーを求めているわけではないですからね。嘘も方便ですよ。

私は、"いつみ"、"祐果子"、"小夏"の順に攻略しましたが、"いつみ"の話は良かったと思います。一番、真実っぽい内容をテンプレに従って、違和感なく料理したかなって。ただ、"祐果子"、"小夏"と攻略するに従って、だんだんと話がつまらなくなってしまったと感じたのは、どうしてなんでしょう。たぶん、個別ルートに入ってからはどれも、エロシーンイベントの連荘プロット方式になってしまったからでしょうね。

それで思ったのが、個別ルートをしっかり読ませるシナリオにしないと、普通は、最初の攻略対象以外は共通ルートを端折っちゃいますから、やっぱりつまらなく感じてしまいますよね。だって、個別ルートはストーリー上の中身がなくて、薄っぺらのペラペラ、スカスカなんですもの。エロシーン内容に、何か意味があるのならともかく。

私は、個別ルートでのエロシーン連荘プロット方式は、間違っていると思うのですよね(逆に冒頭で延々とエロシーンとかの作品もありますが、同様です)。その意味では、『まいてつ』のエロシーン外だし方式は、個人的には良かったです(とは言っても、全て外だしはエロゲーとしてどうなのよって思いましたが。コンシューマ化を意識しすぎだろうと)。

『まいてつ』で思い出しましたが、最近、ダッシュ「――」や三点リーダ「……」を多用している文章、多くなっていますよね。私は、『まいてつ』のダッシュだらけの文章を見て、ちょっと影響されてしまいました。因みに本作品では、三点リーダを多用していますよね。これらはラノベでは多用されているという文章を読んだのですが――まぁ、確かに読みやすいとは思うのですが――なんか私の年代だと多少違和感が……(笑)。


ここまでけっこう辛口評価なのですが、萌え文章の書き方教材として考えると、たいへん優れた教材になるのではと感じました。例えば、何気ない仕草だとか、エロシーンでの会話内容だとか、よくある萌えテンプレ文章がふんだんに活用されています。敢えて具体的には書きませんが……。

ところで、シナリオはテンプレに則って最後まできちんと書いているのですが、1点だけどうしても私の嗜好に合わない部分がありました。それは、多視点での記述です。「VIEWPOINT CHANGE」 って帯が、画面の上に出るのですが、最初何か表示されたけど、何だろうって思いました。よくよく帯の内容を見ると、語り手が変わったことを示すアラートらしいと分かりました。

しかし、こんな帯を出してプレイヤーに注意喚起しないといけない様なシナリオは、そもそも良くないのではないかというのが、私の意見です。書き手の都合を読み手に強いるのは、おかしいのではないかと。それだったら、一人称視点ではなく最初から三人称視点で書いた方が、良かったのではと思ってしまいます。

実際問題、読み手が混乱するだろうと制作者側が判断したから、「VIEWPOINT CHANGE」を表示させる様にした訳でしょう。それなら最初から、読み手が混乱する様なシナリオを、書かなければ良かったのではと思いました。


最後に、良い悪い区別なく、気になった点をいくつか。

(1) 遊園地のシーン
 コースターに乗っている場面のイベント絵がなく、その前後を記述しているだけなので、イベント絵が欲しかったです。

(2)このゲームで使われているフォント
 「捗」の"つくり"が「歩」になっている。現状は、点なしが正しい字体とされているので、何か違和感が。どこのフォントなんでしょうかね。因みに、私のエロゲーでのこの漢字の思い出はというと『嫁探しが捗りすぎてヤバい。』のタイトルロゴです。点がついてて、思わず、吹きました。作品の顔、タイトルロゴの漢字の字体、間違えたらいかんだろうと。世間様に、バカ丸出しだと公表している様なものです。一番の問題は、関係者の誰も、字体が間違っていると指摘できなかったことでしょうか。やはり、タイトルに「ヤバい」とか付けている時点で、お察しのとおりなのかも。痛いニュースで「中学校で『やばい』という言葉を使用禁止に 若い世代で意味が多様化」とか書かれていたし。

(3)声優業界事情
 「でもこの業界は、安定して稼ぐことが非常に難しい。急に仕事が混むこともザラだが、急に仕事が無くなることもザラだ。」
 ⇒声優業界も芸能界の一部だと思われている筈なので、恐らく殆どの人がこれに違和感を覚えないでしょう。

(4)格言
 子夏「『無駄を楽しめ、そこにはびっくりする程の価値がある』ってお父さんが言ってたでしょ?」
  ⇒一見、すごいことを言っているようですが、単なる言葉遊びですよね。価値がないから無駄なんです。価値があるのなら、それは無駄ではないということですから。「限界(100%)を超える120%の**」とかの言葉遊びと同じですよね。これらは、何にとっての無駄(or 限界)なのかを先に定義しないから違和感を感じるのですが、まぁ、境界を曖昧模糊にしているから、言葉遊びとして成り立つわけですが……。

(5)声優さんの読みとテキストが合っていない
 声優さんの読みが本当に間違っているのから、声優さんの読みの方が正しいのでは、はたまたテキストが変まで、実はいろいろあるのですが、例として一つ。
 祐果子「はい。なんというかこう……わくわくしちゃいます。そのブースから放送をさせるんですか?」
   ⇒「そのブースから放送」を「校内放送」と読んだ
    こんな読み間違いするわけがないので、声優さんの台本では「校内放送」だったのでしょう。さて、本来はどっちが正しいのですかね。

(6)演出上の手抜き(パンツが濡れていない)
 ・"いつみ"との初めてのセックスシーン
  啓人「いつみ、すごく濡れてるよ」
  パンツ越しでも秘所の形が分かるくらいの濡れ方だ。
   ⇒パンツが全く濡れていない。当然、秘所の形も全く分からない
    脱がしたパジャマのズボンは濡れていたのだが
 ・ラブホでのシーン
  クロッチは、秘所のスジが透けるほど濡れていた。
  いつみ「ええ……がっちがちに勃起したおちんちん舐めて……お姉さんのおまんこも、ぐしょぐしょになっちゃったわ」
   ⇒ここでもパンツ濡れてないし。手抜き過ぎる

(7)文章内容の不整合
・ゲームの妖艶なお姉さんの役作りシーン
 訳も分からず促されるまま階段を下りた先は――異世界だった。
 雑居ビルの階段を上がった先の空間には、見渡す限りの――コンドーム。避妊具だった。
  ⇒「階段を下りた先」なのに次の文章では「階段を上がった先」となっている

(8)誤字脱字
 いろいろあるのですが、例えばこれなんか面白いです。
 ・ラブホでのシーン&啓人の手淫シーンでの回想2回
  いつみの声「んれぇぅ……して欲しいでしょう……? こんなに大きくちゃって、はしたないおちんちん、お姉さんに、気持ち良くして欲しいでしょう?」
    ⇒「大きくちゃって」(単純な誤字脱字)
     二つ目の「欲しいでしょう」(声優さんは「欲しいんでしょう」と読んだ)
     なぜ「欲しいでしょう」が誤字脱字だと断言できるかというと、二回目の回想文章では直っているからです
  録音音声『んれぇぅ……して欲しいでしょう……? こんなに大きくちゃって、はしたないおちんちん、お姉さんに、気持ち良くして欲しいんでしょう?』
    ⇒どうも、「」を『』に書き換えた時に、間違いに気がついて直したみたい。でも、「大きくちゃって」は直ってない

(9)声優さんがすごい
 なんか声優さんってすごいなと思った。ちゃんと書いてあるテキストどおりに読んでいるので
 例)いつみ「はぁぁぁっ……ああっ……んくぅああああああっ!」
    ⇒ちゃんと、「あ」の数とか合ってるし
     これは短いけれど、もっと長いのも合ってるんだろうなと思う
     字の数と合ってないと気にする人いるのかな。私はまったく気にしないですけど。そもそも数えないし

(10)イジメだめ絶対
 徹心「無視はやめろイジメだめ絶対! 俺も仲間に入れてくれ!!」
  ⇒何箇所かでこのフレーズが使われていて、この作品以外でも最近は見たりもするのですが、これは、BABYMETALの『イジメ、ダメ、ゼッタイ』からきているのではと思うのは、私だけ?

(11)『ゆかこけっこー朝ですよらじお』の生放送シーン
 午前3時は深夜業だろうから、労働基準法上、問題ないのだろうかと一瞬思ったのですが、エロゲーの主人公達は、設定上18歳以上だから関係ないのかと、自己完結


以上です。最後まで読んでいただいた方々、貴重なお時間を浪費させてしまい、申し訳ございません。