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shiratoriさんの星織ユメミライの長文感想

ユーザー
shiratori
ゲーム
星織ユメミライ
ブランド
tone work's
得点
86
参照数
6245

一言コメント

殿堂入りです。60点台ストーリーでも磨けば光る。しかし、所詮、泥は泥。金には成りえないことを自覚すべし。(追記 2014/11/05:《備忘録1》立ち絵のおっぱいの魅力の謎について。2015/7/29,12/29:《備忘録2》"そら"のクリエイター発言について。2017/4/09:《備忘録3》tone work's作品での三点リーダー表記について。2017/7/22:《備忘録4》60点台ストーリーの妥当性について。2020/3/28:《本文》人は繋がると宇宙になる。2021/3/20:《備忘録5》『星織ユメミライ Perfect Edition』について)

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

私がこのゲームを購入することにしたのは、ここでの評価コメントが15件くらい出た段階です。そのコメント内容を十分に吟味した結果、即、Amazonでゲットすることにしました(この様な買い方は『遥かに仰ぎ、麗しの』以来かな)。その時点では、まだ6千円台前半で買えたのですが、その数日後には、1万2千円とか法外な値段になっていました。定量的には、これがこのゲームの評価ってことなんでしょうかね。後から通常版が出たので、他の人達も購入しやすくなって、良かったんじゃないのとは思っています。

既に多くの方々が色々な感想を書かれておりますので、今更な感がとても強いのですが、私なりの意見をこれから述べさせて頂きたいと思います。


はじめに、名前って大事ですよね。大概の作品では、その人物の設定を意識して、その設定に由来するキーワードとしての氏名をつけますよね。そこで、今回の6名、それぞれの氏名を検証してみました。

 逢坂そら :これは簡単。星に関連して「そら」ですね
 篠崎真里花:いきなりの超難問。幼馴染かぁ。よく「真」や「花」が使われている気がする
       「花」が幼き日の思い出を象徴し、幼馴染に関連づけられると考えたい
       また、故郷である汐凪市は海が近いので「崎」が関係するのかも
 瀬川夏希 :明朗快活のイメージから「夏」かな
 沖原美砂 :海と魚が大好きで「沖」と「砂」ですね
 鳴沢律佳 :これも簡単。音楽だから「鳴」と「律」です
 雪村透子 :性格から「雪」と「透」かな

半分は簡単でしたが、後の半分、特に"真里花"は?です。

実は、最初、主人公の名前を変更したのですが、これは失敗でした。テキスト上は変更した名前になりますが、当然、名前の部分の音声はなし(1箇所変更前の名前が流れた箇所あり)。ただし、"あなた"と呼ぶように変わっていたところはあった様な。元からそうだったのかは、確かめていないので分かりませんが。これで音声が変更される様な技術革新があったのなら、私の採点方式では98点を付けることになったと思いますが、取り敢えず、"律佳"以外はデフォルトに戻した上で、個別ルートをやりました。


ここで、私の攻略順は「律佳 → 透子 → 美砂 → 夏希 → 真里花 → そら」でした。

最初を"律佳"にしたのは、音楽で姉妹の設定だったので、私にとっては身近な丸戸作品と比較することで、自分なりに評価しやすいのではと考えたからです。結果は、まぁ、あっちは80点台ストーリーを80点台シナリオで書いているのに対し、こっちは60点台ストーリーを普通のシナリオで書いているので、比較するだけ無意味だったという結論に。

それにしても長いなぁ。共通から続けて30時間はやっていた気がする。残り5人もいるのかと思うと、最後まで続けるモチベーションを維持し続けられるのかと、不安に陥ってしまった。これだけ時間を要するのに、制作工数がかかるからか、イベントシーンの絵はことごとくカットされているし、単調すぎるぞ、本当に。メーカーの開発ブログを読んだら、普通に音声を再生して80時間と書いてあった。眩暈がした。

ところで、私は、"律佳"の様な「人に譲る」という日本的な感覚が好きではありません。その様なストーリー設定はとても日本的なのですが、「チャンスがあったら即つかむ」という設定が、私は好きです。日本人の遠慮の精神は、グローバルな活動では致命的な気がします。いくら根性があっても譲っちゃう精神でいたんじゃ、勝負の世界では勝てないと思う。

実際問題、この精神が作品全体に反映されている気がして、その結果、各々の話が、こぢんまりとまとまってしまうことになっている様に思います。


次は"透子"にしました。これは、主人公名の戻しも兼ねて、共通での未選択肢側を選択するとどうなるのかを確認し続けていたら、"透子"の見ていない話があったからです。フラグの変化とか万が一にもあったら困ると思って、悩んだ末に"透子"に。ただ、スクール編があまりにも変化がなさ過ぎて、早くもここでギブアップしかけました。作り手側も意識したのでしょう。対策として、Hシーンでの選択肢追加で変化をつけようと試みていますが、その様な小手先の対策より、もうちょっとシナリオに変化を付けられなかったのかと。ここのライターさん、あまりにも変化のない設定を担当させられて、ちょっと可哀想とか思ってしまった。


なんとか"透子"をクリアした後、少しでも楽しい雰囲気が欲しいなと思い、次は"夏希"にするべきか、それとも年上の包容力での癒しを期待して"美砂"にするべきかで悩みました。ただ、ここで"夏希"の明るさに浸ってしまっては、後の攻略対象の話が滑った時にフォローが効かなくなると思い、"美砂"にすることにしました。結果、意外と面白かったです。というより、"透子"の後では、他はまだストーリー性があったというべきでしょうか。

一点、気になったのは、海中に潜っているシーンの絵。どうしても、"美砂"が海の中にいる様に見えず、水槽のガラス手前の空中を泳いでいる様に見えてしまった点です。この違和感はついに拭えませんでした。


次に、ここらあたりでパッと明るくと思い、やっと"夏希"を攻略。意外とシリアスな面もあったりして。まぁ、このゲーム自体が全体的に平坦な味付けなので、深刻さなんて微塵もないのですが。「今川焼き、回転焼き、お焼き」のシーン、私の出身地では「お焼き」と言っていたので、東京に来た時「今川焼き」とは煎餅のことだと勝手に解釈して、お土産にしようと買いに行ったことがあったのを思い出してしまいました。無知とは怖い。

「自分が撮った写真で誰かが笑顔になってくれるのって、すごくうれしいって思ったの」って言葉、この作品全体の精神でもあるよね。「他の人が幸せなら、自分も幸せ」って考え方ね。


さて、残りの2人、どちらにするかでまたまた悩む。それにしても、誰を選択するかで、やたらと悩むゲームだなぁ。ここらあたりの作りが上手いのかも。悩んだ末に、"そら"はタイトルとの相関が高そうでテーマ性があるのではと判断。最初から気になっていた(既に裸で一緒に風呂に入っていた)"真里花"にすることに。スクール編、頑張っていたかも。意外と他ルートよりイベントシーンのドラマ性もあったと思うし。ただ、一番、普通の出来だったので、実はあまり感想がない。


最後に取りで、"そら"。やっぱり、テーマはここにありましたね。

「星は、それ1つでは星座になりません。他の星と結ばれることによって、星座として、様々な物語を私たちに語りかけてきます」
「私たち人間もそう…1人では何もできなくても、他の人たちとつながることで、様々な物語を生むことができるのです…」
「星は、出会いをくれます…たくさんの素晴らしい出会いと思い出をくれます」
-------------------------
「なるほどな…。このコンペをおまえが取った理由がわかった」
「おまえはこの街の人と人の絆を大切にして、過去から未来へと繋がりを作ろうとしていた。大したもんだ」
-------------------------
「星に願いを。あなたとずっといられますように」

これらが、主題の『星織ユメミライ』と、副題の
  The memories of that day, memories of you, I wish upon a star to be always with you.
に集約され、結果、様々な物語が生まれて、この作品ができたと。

非常にシンプルなコンセプトに基づいていて、良いと思います。

(2020/03/28追記)
・人は繋がると宇宙になる
アニメ『恋する小惑星(アステロイド)』の最終回を見ていたら、ラストで別の解釈をしていました。
 「みんな、好きなものや得意なもの、その人の世界を持ってる。
  一人でいたら世界は一つだけど、それが繋がったら沢山の可能性がどんどん広がって、
  大きくて未知数で、宇宙みたい」
なるほど「他の人たちと繋がると、宇宙になる」のか。こちらの解釈の方が、本作にぴったりのような気がします。実のところ、「他の人たちと繋がること」と「星」との因果関係が、「物語を生む」という共通項があるだけで、実際、何の関係もないよなとは個人的には思っていて、ずっともやもやとした感慨を抱いていたのですが、やっと文字どおり繋がりましたよ(笑)。

ところで、"そら"が「…クリエイターは、次の世代を創る人のことを言うと思う」と語っていたのですが、そうすると、世の中のクリエイターと呼ばれる人達は、その殆どが"自称クリエイター"にランク替えした方が良いのではないかと思ってしまいました。
(クリエイターの定義について、備忘録2として追記)


総評
60点台ストーリーでも、丁寧に作りこんだら、見た目は80点台になってしまったというところでしょうか。泥団子でも磨けば光るってことですかね。光る泥団子、実際、見た目は凄いですもんね。しかし、泥は所詮泥、金には成りえないことを自覚する必要があります。

丁寧な描写というのは正しいと思います。そのため、他のエロゲーみたく、コンシューマ版への移植を意識して簡単に取り外せる様に、取って付けたようなエロシーン突入ということはないです。今回は私もちゃんとスキップしないで、付き合いましたよ。

話も何の違和感もなく追うことができました。何しろ、大概の人がこうなるだろうという展開どおりに話が進むのです。先の話が読めることに、いちゃもんをつける人も中にはいるでしょうけど、この作品は、先の展開が読めて違和感が起きないことが、重要なんじゃないかと思います。

ただ、そのために、どのルートも構成は全く同じなので、最初の一人を攻略すると、特にスクール編は個別毎の変化が希薄なため、だれ気味になります。制作する方は、どのルートもプロットが同じ方が、複数のライターを使って書き分ける場合は管理がしやすいだろうし、品質のばらつきも防ぎやすく、制作時間も制作費も安くて済むとは思います。実際、そういう作品は本当に多いと思うし。もしかすると、一文章の字数制限とかして、ライター毎の個性が出ない様にしたりもするのでしょうか。

でも、そのため、本当に単調です。つまらないです。はっきり言って、個別のアフター編が無かったら、このゲームに価値は無いと言ってもいいくらいです。アフター編があったから、まがりなりにも殿堂入りと評価しました。

実際問題、もう私の年齢では、学生時代の話とかしんどいです。もっと、社会人の話が読みたいのです。本当にアニメとかもそうですが、いつまでジュブナイルに固執するのか。日本の年齢別人口構成を、そろそろ考えた方が良いのではと思います。あと、どの年齢層が、中古ではなく新品を買えるだけのお金を持っているのかとか。

そのため、私は次回作に期待したいです。その意味も込めて、殿堂入りの評価をしました。次回作で、このブランドの将来が見えてくると思います。通常、ある程度、完成された作品を制作してしまうと、次回作の重圧はすごいと思います。大概、何故か無駄な箇所を頑張って、こけます。そして、そんなブランド、あったよね扱いに。

それに比べて、今回は運が良いです。何しろ、ストーリーは本質的に60点台なのです。つまり、次は70点台ストーリーを目指せば良いのです。何も80点台を目指す必要なんてありません。そんなシナリオ書ける人達は、ごく一握りだけですからね。
(60点台ストーリーの妥当性について、備忘録4として最後に追記)

次回作が期待値を超えれば、固定客がついて、次の作品への十分な制作費を確保でき、うまく循環していけると思います。まぁ、現実には、十中八九、そうならないのですが。

ところで、修正パッチの「誤字脱字、演出の修正」ってどこ直したんですかね。おかしなところ、まだまだ沢山あるんですけど。せめて、誤字脱字くらい、殆ど刈り取って欲しいものです。そんなにテキスト修正って大変な作業なんでしょうか。
(2014/11/30追記:8/8のv1.01の後、10/1にv1.02<誤字・脱字と音声再生不具合の修正>が出ていた。ますます好感のもてるメーカーです。発売後、1ヵ月間しか修正パッチを出さないと決めていた節がある BALDR SKY Zero の戯画、見習いなさいと言いたい)

最後に、私は、パッケージを含めて、作品だと思っています。最近、パッケージの材質が、本当に落ちたなぁと思うことが多々あります。そんな中、今回の初回版は、頑張ってお金をかけた部類ではないでしょうか。攻略対象もちゃんと6人いるし、後で、ファンディスクや分割販売で対処すればいいやみたいな、最近の安易な風潮に真っ向勝負したところも、私はとても高く評価したいです。


その他
単発IDが~って、一時書かれていましたが、私も今回で4作品目のコメントです。たぶんシングルと同列ですよね。ということは、世間一般的には、私のコメントも騙されるな扱いの駄文なんだろうなぁ。2桁にするのに、後何年かかるのやら。永久に達成できないかもしれないし。実際問題、私の場合、それなりの衝動がおきないと、書けないです。書くのに、相当のパワーと時間を費やす必要があるし。そんな訳で、そんな私に本作品を買うきっかけをくれた単発IDの人達に大感謝です。ブラボー!!


備忘録1:立ち絵のおっぱいの魅力の謎について
(2014/11/05追記)
エロゲーなのに、エロの観点からは何も書いていなくて、前々から一点、すごく気になっていたことがあったので、追記しておこうと思います。

この作品、立ち絵のおっぱいが気に入っている人は、けっこう多いのではないかと想像しています。かく言う私も、たいへん気に入っています。しかし、具体的になぜ良いのかを言及している記述は少ないのではとも思っています。では、どこが良いのでしょうか? 以下に、私の意見を述べさせて頂きたいと思います。

私も、それなりの数のエロゲーをやってはきましたが、これまでは、あまりおっぱいを気にしたことはありませんでした。せいぜいが「これ、胸、大きすぎるだろ」と突っ込むくらい。つまり、あまりこだわりがない。見た目のバランスが良ければ、OKみたいな。

ところが、この作品で初めて、胸がすごく印象に残りました。ではなぜかについて思考を巡らせて得た結論が、体に対する胸の相対的位置関係です。

私は、常々、日本の漫画やアニメ作品における女性のおっぱいの位置は、実際の人間より高すぎるのではと、漠然と思ってはいました。極端な例を挙げるとすれば、鎖骨の下に、すぐおっぱいがあるみたいな。それはそれで、目を大きく描くのと同じで、見た目が良いからとか、少しはデフォルメして強調したいとかの理由があるのかもしれません。しかし、エロさには繋がっていないのではないかというのが、私の見立てです。

そもそも、実際の女性の胸の位置が現状になっているのは、進化の結果であって、その進化の理由の一つに、男の目を引き付けるベストポジションはどこかが、含まれていない筈がありません。つまり、自然淘汰という長い年月をかけて計算しつくされた結果が、現在の女性の姿だと考えられます。

翻って、今回の作品、立ち絵の胸の位置が、実際の人間の胸の位置に近いのではと思うのです。そのため、目が自然とおっぱいに向くことになり、なんか良いなと思うことになったのではないかと。

以上が、私の個人的な意見です。 嗚呼、もあもあしていたのが吐き出せて、スッキリした。


備忘録2:クリエイターの定義について
(2015/07/29追記)
"そら"の「…クリエイターは、次の世代を創る人のことを言うと思う」発言について考察します。

そもそも私がこの言葉を参照したのは、その前に記述した「様々な物語が生まれて、この作品ができた」を受けて書いてみただけなのですが、実は私、印象に残ったこの文章だけしかメモっていなくて、後から振り返ってみると「次の世代を創るってどういうこと?」みたいな……。そのため、再度、該当箇所の文章全体を読み返してみました。そして納得しました。

"そら"は、クリエイター発言の直前、次の様に語っているのです。
  「クリエイターが創るのは、物だけ?」
  「…モッさんは、作品を通して、リョウを建築士という道に進ませた」
また、それより前には、
  「我妻さんような建築家になるということは、おれ自身も、誰かの目標として、目指されるべき存在になることなのでは…?」とも書かれています。

つまり、例を挙げて説明するのなら、次のとおりになるのではないでしょうか。
  ①『鉄腕アトム』や『ブラック・ジャック』を描いた。
  ②『鉄腕アトム』や『ブラック・ジャック』は多くの人達に読まれ、賞賛された。
  ③これらの作品を読んでインスパイアされた人達の中から漫画家、ロボット技術者、医者を目指す人達が現れた。
  ④実際に漫画家、ロボット技術者、医者になった人達が現れた。
  ⑤漫画家、ロボット技術者、医者になった人達から、賞賛に値する業績を残す人達が現れた。
①②段階はクリエイターとは呼ばない。③段階でクリエイター補。④段階でクリエイター。⑤段階でクリエイター(殿堂入り)となるのではないかと。

それにしても、このクリエイター定義を考えたのがライターさん御自身だとしたら、実は凄い人なのではないだろうか。賞賛に値すると言っても良いです。なぜなら、Web上でクリエイターの定義を検索すると、「デザイナーとクリエイターとアーティストの違い」みたいな説明は見つかったりしますが、それらの中に「次の世代を創る」なんて言葉、どこにも書かれていません。でも私には、このライターさんの記述した定義が、真のクリエイター定義なのではないかとさえ思えるのです。

(2015/12/29追記)
ところで、日経ビジネス(2015.12.28・2016.01.04合併号)の「次代を創る100人」を読んだのですが、今回は上記の定義に当てはまるクリエイターは殆どいないかなって思いました。そもそも記事では「2016年を創る100人」としていたので、仕方がないのかも(つまり「次代」の意味が「次の時代」か「次の世代」のどちらなのかってことネ!)。

あッ、でも、今回"BABYMETAL"の選定だけは、私に訴えかける何かを感じ取りました。センサーがビンビン反応しました。その何かとは、過去も"きゃりーぱみゅぱみゅ"を選定していることから、親父読者世代層を意識したロリペド指向&嗜好&志向がぷんぷんの裏の編集意図が……。陰謀論ならぬ淫棒論が(笑)。真面目な話、私も「ファッションモンスター」や「ギミチョコ!!」は楽曲やPVとして大好きでちょっとした衝撃を受けた口なので、一過性ではなく、ひょっとすると化けるかもネ!


備忘録3:tone work's作品での三点リーダー表記について
(2017/04/09追記)
私の『銀色、遥か』の長文感想に追記でも良かったのですが、誰も話題にすらしないであろうtone work's作品のシナリオ上での三点リーダー表記について考察します。まぁ、単なる個人的な興味です。

さて、最近は三点リーダー(…)やダッシュ(―)を多用するライターが増えていると思います。これらは通常、二文字分続けて表記する二倍三点リーダー(……)、二倍ダッシュ(――)で使うのが標準とされています。しかし、tone work's作品のシナリオでは、ある特徴があります。それは、三点リーダー(…)は一文字だけ使用することです。

シナリオ担当者は複数人ですから、ライター間で取り決めて、敢えてそうしている訳ですね。勿論、理由なんか分かりません。メインのライターさんの意向かもしれないし、tone work'sブランドとしての意向かもしれません。でも、敢えて標準的な使い方を外したライター陣に、私は拍手を送りたいです。なぜなら、私自身は、少なくとも三点リーダーを二文字連ねるのは、字面的に間延びしている様に感じるからです。そのため、私は本作品のシナリオを読んでも、何も違和感を覚えなかったのですが、世間一般では、この暗黙のルールに従わないのは、嘲笑に値するらしいです。怖いです。村八分です。

なぜ、二文字分としたのかは、活版印刷時代の植字(組版)上の都合のため、カタカナ「ミ」や長音符「ー」との誤植防止のためなど、諸説あるらしいです。新聞や雑誌など字数に制約があるケースでは一文字だけでも良いらしく、つまるところ正式なルールはないが、ルールがあると決めつけている人達がいるので、特に指定がなければ、長い物には巻かれろ方針でいた方が無難らしいです。


備忘録4:60点台ストーリーの妥当性について
(2017/07/22追記)
この内容は、私の『銀色、遥か』の長文感想で、内容評価の比較として考察したものなのですが、転記しておこうと思います。

私は、本作の"律佳"ルートの感想において「80点台ストーリーと60点台ストーリーを比較するのは無意味」としたのですが、実は、理由が明確ではありませんでした。何となくそう思っただけなのです。でも、次作品の『銀色、遥か』をプレイしてみて、やっと分かりました。通常の我々の日常生活が、波乱万丈のイベントだらけである訳がないということに……。

よって、本作のテーマである等身大のリアリティさ――『星織ユメミライ』のWikiによると、
 ・リアリティある恋愛像
 ・ヒロインをより身近に描く
とのことですが――それを追求したら60点台ストーリーになるのは当たり前で、だから本作は違和感がなくて成功したのだと思い知りました。スクール編のイベント内容が殆ど同じなのも、ある意味当たり前だった訳です。つまり、作りこまれた80点台ストーリー(波乱万丈)とリアリティある60点台ストーリー(つまらない日常)を比較して論じたところで、無意味なのだとやっと理解できました。

その意味では、本作の総評で「ストーリーは本質的に60点台。次は70点台ストーリーを目指せば良い」としたのは、間違いだったことを告白しなければなりません。


備忘録5:『星織ユメミライ Perfect Edition』について
(2021/03/20追記)
まさかのPerfect Edition発売(2021年6月25日)。3/19に公開されたオフィシャルサイトによると、「コンシューマ版『星織ユメミライ』で好評だった追加シナリオとイベントCGを移植し、シナリオ量は従来の1.2倍、イベントCG総枚数は139枚にボリュームアップ! アダルト要素はそのままに、律佳ルートアフターアフターや透子新婚旅行編など、数々の新規エピソードもお楽しみいただけます」とのこと。

まあ、原作はテキスト分量から考えると圧倒的にCG枚数が足りていなかったし、テキスト量は膨大なのにスクール編のエピソードがどれも似たり寄ったりで飽きてしまうという問題があったので、コンシューマ版での追加部分を移植したのは良かったんじゃないでしょうか。ただ、もう一度、あの圧倒的なテキスト分量(しかも更に追加あり)をやり直す気力が、現時点の私にはないことが新たな問題ですかね。新規のユーザーさん向けと考えるのなら良いんじゃないでしょうか。