作者の主義主張が前面に押し出され、社会の暗部を鋭く抉るストーリーでありながら、純粋な物語としても極めて面白い。
「鬼才」という言葉があります。
一般的な「天才」という言葉と対比して用いられる言葉であり、
「人間離れした非凡な才能を持っているが、一般的には受け入れがたい」といったニュアンスを
持つ言葉です。
本作にはまさにこの言葉が相応しい。
一般的に薦められる「名作」「傑作」は数あれど、「鬼作」という形容を使いたくなる
ような作品は、寡聞ながら自分は他に知りません。
作者の思想がはっきり描かれており、それに啓蒙され、下手をすれば洗脳さえ
されかねない作品は、まさしく「悪の教科書」です。
そのようなテーマでありながら、キャラクターの立ち絵は普通の萌え絵。
二章以降に登場するヒロインは皆可愛く描かれており、
殺伐としすぎず萌えに走りすぎずの絶妙なバランスとなっています。
ゲーム全体でのプレイ時間は8時間ほど、数字だけ見れば大したことはありませんが、
非常に密度の濃い内容であり、ボリュームの無さなど全く感じさせません。
社会批判という尖ったテーマの作品ですが、作者の意向による無料配布が許可されている
こともあり、PCでノベルゲーをする人間なら絶対遊んでおくべき意欲作です。
公式ページでの配布は終了していますが、配布しているサイトはちょっと探せば
すぐ見つかりますので、是非プレイを。