White Albumとは、こんなに面白いゲームだったのか。
旧作プレイ済み。
まず、今回の移植にあたり、完全に無意味だったランダム性&体力ゲージシステムを
改変したことは大正解でした。
攻略の成否が運に左右されるという、旧作の最大のガン要素を取り除き、TH2などのように
マップ移動で会いたいキャラに確実に会えるようになったおかげで、ゲームシステムの
ユーザーフレンドリーさが格段に向上しました。
また、もう一つの新要素・モーションポートレートシステムについても、実際にプレイしてみると
意外なほどすんなり馴染みます。
「普通のギャルゲのキャラ立ち絵切り替えをスムーズに表現する」という、ただそれだけの
機能なので、必要以上に身構える必要はありません。
ただ、折角立ち絵を色々動かせるのに、実際に動くのはほとんどが台詞切り替え時のみで、
あとは喋りながら目パチ口パクするくらい。
立ち絵の切り替えという意味では、クロシェットの作品などの方がずっとよく切り替わります。
高度な技術で描写しているのだから、もっと小まめに動かして欲しかったです。
技術を活かしきれていないようで勿体無い。
シナリオについては、旧作をかなり頑張って移植しています。
さすがに直接的なHシーンはカットしているものの、Hシーン前後の絡みなどは
ソニーチェックが心配になるくらいちゃんと描かれており、ストーリー的にも
「セックスを経験した」という前提のシナリオが崩されることはありません。
理奈シナリオ終盤での、理奈の一番の名ゼリフがそのまま収録されているのはマジで感動しました。
あのシーンこそ理奈シナリオの要であり、それをコンシューマ化にあわせて無理やり改悪
したりしなかったスタッフはよくわかってる。
また主人公・藤井冬弥についても、よくヘタレの優柔不断と言われますが、今改めて
プレイしてみると、そんなに悪い主人公ではないと思います。
真面目で人の気持ちを考えたり空気を読んだりもできる、決して受け入れられないほどの
酷い主人公ではありません。
推測ですが、1998年当時には本作のようなスタンスの作品がほとんど無かったので、
そのせいで冬弥は過剰に悪く言われてしまったのではないでしょうか。
現在の基準で見直せば、良主人公ではなくとも、主人公失格とまでは言えません。
BGMは、ほとんど当時の曲を使っています。
ボーカル曲数曲と、新ヒロイン用のテーマ曲を追加した以外は、原曲をちょこっとアレンジしたかな?
くらい原曲そのままです。
しかしながらクオリティは極めて高く、耳に残る名曲も多くあります。
さすがはLeaf黄金期に作曲された曲であり、30曲足らずとやや少なめにもかかわらず
物足りなさはありません。
曲数ばかり増やして一曲一曲のクオリティは低い、なんてゲームが多い昨今ですが、
BGMというものは量より質なのだなぁ、と実感させてくれます。
総評としては、12年前の作品ながら、今の作品と比べても何ら見劣りしない名作です。
正直、自分も当初は「なんで今更ホワバ?」と思っていましたが、プレイ後は
「なるほど、これは今改めてプレイする価値があるな」と考え直しました。
PS3と同時購入してまでプレイする価値はあるか、という点では微妙ですが、PS3を
持っているのなら絶対プレイするべき作品です。
以下、個人的思い出補正について。
自分は丁度Leaf黄金期にエロゲを始めた人間であり、旧作もリアルタイムでプレイしました。
今回PS3でリニューアルされたわけですが、「あの頃の空気」を見事に再現してくれて
いることに一番感激しました。
20世紀末の日本、例えば携帯電話はまだ高級品でほとんど普及していなかったり、
テレビを「ブラウン管」と表現したり、ビデオテープ・カセットテープがまだ現役だったり、等々。
そして、エロゲ業界が今より全然荒削りで、今よりずっとずっと熱い情熱に満ち溢れていた頃。
システムやCGを今風に作り直したとは言え、シナリオ・キャラクター・音楽などのゲームの
根幹部分はほぼベタ移植に近く、それがこれほど完成度が高いというのは、逆に言えば
今のエロゲが12年前のエロゲに負けているということです。
あの時代を知ってる人間は、自分含めもういいオッサンなわけですが、あの時代が
あったからこそ今のエロゲがあり、その空気をもう一度味わわせてくれたというだけで
自分は十分満足です。
「PS3本体ごと買う価値があるかは微妙」と先述しましたが、自分と同じく、あの時代に
郷愁を覚える人間なら、本体ごと買ってでもプレイすべき作品です。
タイトルで流れる「あの頃のように -Remix Version-」を聴くだけで、途方も無く懐かしく
感じることでしょう。
要所要所で流れる「WHITE ALBUM PIANO」を聴くと、名曲はどれほど時間が経とうが
色褪せない、と実感できるでしょう。
12年も前のエロゲを最新コンシューマー機に移植、という大決断を下してくれた
LeafとAQUQPLUSには本当に感謝したい。
White Albumをきちんと作ってくれてありがとう、と。