一昔前の映画やドラマの様な懐かしさの雰囲気に包まれている様。BGMや夏祭りの演出が醸し出す哀愁が心地良い。主人公は秀才イケメンながらも恋愛のトラウマを抱え、どのルートでも女性の好意に甘えながら克服しようとするも見事に相手の女性を傷つけていく様が正にヘタレ系。しかしそれが恋愛模様に光と影のドラマを映し、陰鬱な感情に終着点を見つける一人の純粋なリア充の物語。
スワローテイルの名は作中登場するタイムマシンの名称であり、この作品は青春SF物語であると最後までプレイすると分かります。SF部分についてはタイムマシンがあるという一点のみであり、詳しい理論などが説明される事は一切ありません。過去と現在の時間軸にいる同一人物は干渉出来るようで出来なかったりと曖昧なシーンもあるので、作品毎に設定の違う時間遡行は辻褄合わせの演出に留まっています。主人公は好意を聞き取れない耳を持ちモテモテで何でも卒なくこなすタイプ。
青春時代の恋愛がメインとしてあり、SFはクライマックスの要素という設定を踏まえた上で、この作品の魅力について少し語ります。
一番の魅力はCGとサントラにあり、この2つが作品の雰囲気を底上げしています。恐らくフルHDか準拠する程の美麗なCGは、服や肌の質感、遠近の使い方や背景のディティールに優れており演出面での貢献度は計り知れません。エロシーンは流石に個人の趣向があるので100点満点で誰にでも実用性があるとは断言しませんが、特にバックでの体位は体全体の肉付きがリアルに描写してあり背中や尻、尻穴にフェチズムを感じない紳士の方にも見るだけの価値はあると感じます。全てでは無いですが、加えてカットインの様に顔や陰部が映し出され、テキストを送る毎に体はピストン運動し結合部が動きヒロインの表情も変化します。この辺りは抜きゲーでの演出と同等の認識で構いません。
BGMはタイトル画面で流れる「空」が作品の雰囲気を現したような哀愁を漂わせています。OP2の「ナツノヒ」は「空」ベースに使われており、掘り下げた歌詞と後半のメロの盛り上がりがBGMと違った良さを与えてくれます。この歌はEDにも使われているので、エンドロールの余韻に浸れればエンド後の唐突なエロシーンを実用性関係なしで高揚感を与えてくれるでしょう。OP1も疾走感あるリズムで相応しい出来になってます。
シナリオは序盤と後半のミステリ感が強く、神隠しが発生する序盤は告白やOP1の手前など魅せる演出が特に映えるシーンが印象的です。特にOPまでのドラマ感が好みならば最後まで駆け抜けられるでしょう。後半はSF要素を含めたドラマ感が魅せてくれます。全てのルートを終えて感じる事は、やはりメインヒロインは優奈だったという事。避けては通れません。これはラストに至るまでのシナリオ量で鑑みればですので、どのヒロイン推しでも満足出来るエンド…だと思います。残念な事に有華エンドだけイベントCGが無くあっさり終了します。このルートだけライターが違い、悪い意味で他ルートと差異が生じていますので有華推しは不満、推しでなくても至って不満な仕様です。
中盤の内容としては、選択肢でのヒロイン脱落式であり必ず対象ヒロインが画面に収まっていますので難易度は全くありません。過去に何があったのかが段々と明かされていく中で、次々とヒロインとフラグを立てるモテ男の日常と言う感じでしょうか。単に好きなだけでは幸せになれない、主人公のトラウマがもたらす少しドロッとしたルートへと分岐しますので、それを楽しみながら選択肢毎にエンド回収する攻略順で問題無いと思います。
ラストはタイムマシン登場で完全に都合の良い形ですが、そこに期待してプレイしても大半は関係ないので完走するのは難しいと感じます。主人公の趣味として宇宙理論などは出てきますが単にそれだけ、伏線の一つと言うだけです。脱落形式で最後に残る優奈と理恵、どちらもハッピーエンドで良かったです。エンド自体は。本当は世界線の違いでどちらかは確実に報われてないのですが…。良い所だけ見れる設定の強みですね。
一風変わった恋愛作品を楽しむ、魅せる雰囲気ゲーとして気に入りました。
最後に不満点としては有華ルートの締りと、 紗江子ルートの乳首舐め手コキシーンにて射精カウント前のボイスに謎の男の声が入っている事。アッ!て言います笑。公式でのパッチ配布はパケ版、現在ブランド休止中ですので修正パッチの有無は不明ですが、この作品ページに掲載されているリンクから取得すると良いのかもしれません。今回は適応させてないのでその部分の修正があるか分かりません。
それとこれからプレイされる方は、一応なのですがキャラの中の人などいない!と念頭に置いておくと良いかもしれません。