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searcherさんの時計台のジャンヌ ~Jeanne à la tour d'horloge~の長文感想

ユーザー
searcher
ゲーム
時計台のジャンヌ ~Jeanne à la tour d'horloge~
ブランド
Liar-soft(ビジネスパートナー)
得点
75
参照数
2994

一言コメント

ある程度の面白さはあるが、惜しい

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

まず、駄作ではありません。凡作でもないと思います。
ですが良作かと問われると言葉に詰まります。凡作と良作の中間ぐらいでしょうか。惜しい作品であり、言ってしまえば物足りなかった。

大まかなストーリーは、主人公ロランが異形世界(アンヌン)に迷い込み、はぐれた親友オリヴィエを探すため、元の世界に変えるために乙女ジャンヌと共に世界を旅していくというもの。
主人公ロランもメインヒロインの乙女ジャンヌも終始キャラがぶれておらず、ストーリー自体も骨子が整っていました。話の展開はどこも破綻しておらず、最後で明かされた世界の謎も納得できるものでした(世界が出来上がった理由はさておいて)。

ただし骨子が整っている一方、肉付けがあまりされていなかったのが残念でなりませんでした。具体的には乙女ジャンヌと魔女ジャンヌ、すなわち火刑に処されたジャンヌ・ダルクを除き、多くのキャラクターに掘り下げるようなエピソードがなかった、もしくは薄かったことです。

例えば主人公ロランにしてみても、行く先々で巻き込まれる戦いへの参戦の動機が(世界の住人ではないのに)自分の中の正義に基づいてという浅い理由で、納得も共感もできませんでした。乙女ジャンヌに寄せる思いも、はっきりとした恋愛描写(守らなくてはならないという感情はあっても、恋心が芽生えたようなシーンは特にない)もなく、ジャンヌの騎士として名乗りを上げるシーンもただ聖剣を渡されて乗せられているようにしか見えませんでした。

そしてこれが最も首をひねったものですが、異形世界というのはその実、死者の世界であり、主人公ロランと他1・2名を除き、すでに死んだ人間しかいない世界なのです(住人達も自覚あり)。それなのにかつて英国や仏国で名を上げた人物たちが覇権を巡って争っているというのは、主観ですが滑稽にしか見えず、ミレディやモレー、コーションなどのそれ以外の理由で動いている人物たち以外にあまり共感はできませんでした。

まとめると、世界観や設定がよくできているのに対し、ユーザーを惹きこむだけの中身を作れていなかったことがもったいなかったです。キャラ絵も音楽も好みで、テキストも地に足のついている印象があり、体験版の時点では割と期待していたのですが、期待を超えてくれなかったことや、フルプライス越えの値段設定の割にストーリーがあまり長くなかったのは残念でした。


ただ、ミレディとオンディーヌのHシーンはそれなりにエロかったので、その部分では満足です。もっとも、百合シーンを入れるくらいなら普通のシーンを増やせとは思いましたが。