【全√クリア】【ネタバレ有り】月九とか巷で言われるトレンディドラマが好きな人なら、多分楽しめるだろう。エロゲと思ってプレイするとガッカリするかも?
※※※ 重要なネタバレあります、見たくない方、ここまでにして下さい ※※※
一応、改行入れておきます。
エロゲーというより心理描写の妙を楽しむ、シナリオ志向な方向けの「物語」だと思います。
各登場人物をザッピングビューを使い、上手に心理描写の揺れ動きを比較丁寧に描いていました。
ただ、公式ホームページにも書いてあったようにあくまでも”主人公”は典史と祐未のスタンスは最初から最後まで
変わらない為、二人以外の登場人物の心理描写が得てして中途半端にまとめられてしまい、個人的には勿体なく感じました。
特に物語全般の重要なキーマンである扶の心理描写の描き方はかなり勿体なく感じます。
※それに絡んで好佳の心理描写ももっと深く掘り下げて描くべきだったと思います。
本作はグランドルートを含めて大きく4つのシナリオがあります。
どのルートでも祐未の気持ちは一貫して典史に向いており、扶は当然その事に気が付いています。
しかし、祐未を心から愛しているので何とか自分に気持ちを向けて欲しいと行動するわけですが・・・。
ここからは主観が相当入った書き込みになりますが、好きで好きで溜まらない女が自分の物にならず、他の男に取られるのは
正直、かなりきついです(実際に経験ありますので・・・)
「扶 編」(グランドルートも少しだけ)では、その悔しくて悔しくて溜まらない想いが無茶苦茶、こちらに伝わって
きましたし、どれだけ扶が祐未を想っていたのかもよく分かります。
また、その場面での好佳の心情もよく描かれていて、その後の二人の展開も十分に理解出来るんですよね。
恐らくあの後、扶と好佳は付き合うようになったんだと思いますが、その為にもう1エピソード入れて欲しかった気がします。
そういった意味では「扶 編」の出来は個人的にはかなり満足度の高い物でした。
しかし、逆に「扶 編」以外では、祐未に振られた後、余りにあっさりと祐未を諦める扶に違和感を覚えました。
特に「亮輔 編」では告白すらせずに好佳に流れていくのを見て唖然としました。
「扶 編」で見せた祐未への想いはそんなもんじゃないだろう!?と、どれだけ突っ込みたかったか・・・。
グランドルートでは典史と祐未の結末が形になりはじめるときに、3つのカップルが出来上がります。
その3つとも(前述の扶含む)、そこに至る過程が中途半端に描かれていて非常に残念に思います。
きちんと描かれれば、多分恋愛物の金字塔になりうる作品になったと思います。
※まあ、ぶっちゃけそれをやると多分、ボリュームが1.5倍くらい膨らみそうですが・・・。
以下、各ルート毎の突っ込んだ感想。
■扶 編
お約束な展開、といえなくもないが非常に良いシナリオだったと思います。
扶の典史への独白から展開はある程度、想像が付きましたが。
また、早い段階から扶を選ばない事を祐未が明言していたので寝取り展開の嫌いな自分も比較的安心して
読むことが出来たシナリオでした。
・扶からの祐未への想いの深さ
・典史と祐未の過去のわだかまり
この2点がイヤでも脳裏に焼き付くシナリオで「恋ではなく」の題名を地でいくストーリでした。
ありがちな話ではありましたが、心理描写が実に丁寧に描かれていたので飽きる事なく楽しめました。
ただ、ラストあたりでの公園で典史が扶に祐未の答えを祐未より先に伝えようとした考え方が
自分にはよくわかりませんでした。
扶に祐未が嫌われるのを回避する為にと典史は言っていましたが、結局怒りの矛先は祐未にも向かうんじゃ?
とか思うんですけど・・・。
前述していますが、祐未への想いが爆発し、号泣する扶と好佳の行動はすごく自然で、ストーリーと
しては一番好きだったかもしれません。
あの後の二人だけで結構良いドラマな展開が作れそうな感じでしたので、もしファンディスクを
作るような事があれば、あの後を描いて欲しいところ。
典史と祐未の結末も結構好みでした。
■亮輔 編
正直、扶 編とあまりの展開の違いに驚きました。
なんというか、扶の引き際が余りにあっさりしすぎじゃないの?とか思ったり。
扶 編が伏線といえ無くないので扶×好佳の組み合わせは悪くないと私も思いはしますが
扶の気持ちをぶつ切りにしたこの展開は正直、ちょっと気になりました。
また、典史と祐未の距離感が何故あそこまで急速に縮まったのかも、説明不足な気がします。
扶 編を先にやってしまったのがいけなかったのかなあ・・・。
ただ、プレイ中のハラハラ感としては扶 編よりも数段上で、典史も祐未も徐々に林兄妹に
追いつめられていく様子・心理描写はお見事、と言わざるおえない。
追いつめられた状態だからこそ、結ばれたときの二人の気持ちの結びつきが濃く描かれていて
H後のピロトーク?が個人的にはかなり好きな感じでした。
正直これだけでお腹いっぱい。払ったお金の元は取ったかなあといったところ。
あと、綺麗にまとめたいとライターの方が考えたのか、まとめがかなりお粗末に感じられた。
「やっぱり典史(祐未)を忘れる事なんて出来ない!」という強い意志でお互いが林兄妹を
ふりほどいて、ドラマティクに映画で使われていたあの橋の上で再会し、抱きしめ合うような
展開が見たかったなあ。
林兄妹、余りにあっさりと引きすぎじゃないかい?
もう少し、生の感情というか各登場人物が吐き出すべきだと思う。
■扶 編2(尚人?)
やはりキーマンは扶。
しかし、ここまで築き上げてきた扶のイメージをブチ壊すお話。
気持ちは分からないでもありませんでしたが、ちょっと扶のあの行動はいただけないですね。
”頼りになる先輩”をずっと実践してきて、典史と祐未の中では絶対的な存在なだけに
あの行動は典史と祐未だけでは無くプレイヤーにとっても裏切りっぽく感じました。
また、尚人が恋敵として絡んでくるかと思っていましたが、裏も何も無く、結局「良い人」で終わって
しまっていたのも、少し肩すかし気味だったかも。
展開自体は悪くは無いシナリオでしたが、前半部の扶が全てをぶち壊してしまっている気がします。
キーポイントの尚人が祐未をさらって(いくように見せる)いく場面から、典史と結ばれるまでの展開は
かなり好きでした。
そして、ラストの扶と好佳のやり取りですが、悪くは無かったし、ハッキリとした結果が出たという
意味合いでは評価出来ると思いますが、個人的には『扶 編』のみっともなくも感情を吐き出す扶を
抱きしめる好佳の方が好みではありました。
■グランドルート
シナリオは良く纏まっていると思いました。
救われなかった亮輔と朋子、そして扶にも無二のパートナが得られた展開はホッと出来る物でした。
ただ、あのラストはどうかなあ・・・。
Hシーンってエロゲ的な意味では無く”二人の気持ちの確かめあい”という意味で大事だと思うんですよね。
気持ちの区切りみたいな物でしょうか。
それが無く、あの展開・・・。
纏まってるとは思いますが、個人的には余り好きではありませんね。
■総 括
良い意味でも悪い意味でも”祐未”の為だけのゲームです。
祐未が気に入らない方に取っては多分、地雷じゃないでしょうか?
祐未以外にも「美月」「好佳」「朋子」「梨枝」といった魅力的なヒロインが登場するだけに
歯がゆく感じてしまうと思います。
私的には祐未は好きなタイプでしたので、非常に楽しめましたが、上記に述べたヒロイン達との
√が無いのは正直勿体無く感じます。
個人的に本来は「寝取られ」は嫌いなので、主人公以外とヒロインの組み合わせは考えないのですが
・扶&好佳
・孝一&美月
・省吾&朋子
・典史&梨枝
こんな組み合わせで、それなりの尺のあるシナリオを描いてもらいたいな、と思っちゃいます。
色々書きましたが、個人的にはかなりの良作に部類する作品で、購入して良かったと思います。
万人にお勧め出来る作品では無いので購入を考えている方は色々調べてから買った方がいいでしょうね。