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saint19さんのエルフと暮せば ~憩いの森の2人暮らし~の長文感想

ユーザー
saint19
ゲーム
エルフと暮せば ~憩いの森の2人暮らし~
ブランド
やさにき
得点
100
参照数
865

一言コメント

永遠に存在できることを後悔しないか?相容れない種族の壁を超えたラブストーリー

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

主人公は師匠の下から独立したはいいものの、出来は良くなく、半ば落ちこぼれ気味の魔法薬師。息の長いあの錬金術師のシリーズの主人公を冴えない青年にしたような感じだろうか。
そんな彼の下に一人の旅のエルフが流れ着く。彼女は旅に疲れたこと、主人公の努力はするが報われない姿に同情したことを理由に主人公と同居生活を始める。彼女とたわいない話をしたり、一緒に森や街を歩いたり、働いたり食事を作ったりして生活していくのが当面のゲームの流れであり目標となる。

さて、今作は前作のような淫靡で壊れそうなまでに繊細な背徳感こそないものの、真面目で優しい青年である主人公と一途に主人公だけを見てくれるヒロインとの心温まる物語が展開される上に、ヒロインもまた主人公との共同生活を送るためのパラメータアップに努めてくれるので、共同作業的な意味合いが強くなっているのが特徴だろう。周囲の人々の力も借りながら徐々に実力(と体力・精力)をつけていき、彼女との信頼関係も構築できれば、やがて彼女は主人公を信頼して恋人になってくれるだろう。そこからは性に乏しい彼女を調教・開発し、最初は性生活に及び腰であった彼女を自分だけに向けてくれる性欲の塊に育て上げることも可能なのだ。仕事も順調、美しい恋人も得て順風満帆に見える彼らの生活ではあったが、それは来るべき壁・障害から目を背けていることにほかならなかった。この作品の世界観ではエルフは文字通りの不老不死であり、数十年しか生きられない人間とは根本的に異なる存在である。故に、彼らが結ばれた例は有史を見ても数例しかなかったのだそうだ。しかも、これまた今作の世界観では人間である主人公が生まれ変わってもう一度彼女とめぐり合うといったことは不可能であり、彼の命の灯火が消えてしまえば、永遠の別れとなってしまうのだ。人としての宿命を捨てても彼女と共にあるべきか、それとも人としての生を全うし、運命として受け入れるべきか、主人公はその決断に迫られる。前作でもあったように人の心は移ろいやすいもの、永遠の命を手に入れた後に主人公がヒロインのことを愛せなくなってしまえば、そのことを悔やみながら永遠に生き続けなければならない。それでも尚ヒロインを愛し抜く覚悟はあるか?その覚悟さえできれば、後は永遠の命を得る方法を見つけるだけだ。果たして、その願いと想いを成就することは可能だろうか?これからプレイするユーザーの方は、是非とも彼と共に悩んで欲しい。悩み抜いて彼の人生に相応しい答えを出してあげてはくれないだろうか。すべてを乗り越えた時、主人公とヒロインの間には文字通りの永遠の愛が約束されるのだから。