(たぶん)史上初のサイズフェチを主題にしたエロゲと言うだけでも意義がある。
このゲームの元ネタ(?)は大昔に今は無き月刊少年ジャンプで連載していた『どっきりマイクローン』と言う漫画である。
と言うのは前作『OH!! ステルス紳士』が競合誌の月刊少年マガジンで連載していた『Oh! 透明人間』をインスパイアしていると
言うことを知っていれば当然わかるネタだが、ゲームとしての方向性もおかずに使えるかどうかよりも1980年代のお色気漫画的
テイストをいかにゲームで再現するかに重点が置かれているように感じた。
『どっきりマイクローン』では宇宙人からもらったビスケットを食べると小さくなるのに対し、このゲームでは主人公が縮小能力を
手に入れた理由は最初から最後までわからずじまい。そのあたりの理屈をいちいち説明すると勢いを削いでしまうからバッサリ
捨てたのだろうが、徹頭徹尾バカゲー路線で行くと言う意味において結果的にその判断は正しかったと思える。縮小化した状態で
射精したり排泄したりしたものは元の大きさに戻る(=精子は普通に受精能力を持っている)だの縮小化した状態では踏まれても
身長の数十倍の高さから落下しても死なないなんて理屈の付けようもないご都合主義の極致だが、それらは全て「バカゲーだから」
の一言で済ませれば十分であろう。
女性が巨大、もしくは男性が縮小化した状態で著しく体格差のある者同士(女性の方が小さいシチュエーションもあるがここでは
割愛)の性行為に対するフェティシズム、いわゆる「サイズフェチ」は漫画や映像作品でそれなりに作られて来たのに対し、エロゲでは
部分的にそう言うネタが仕込まれることはあっても直球でそれを主題にしたタイトルはほとんど無いと言っても良い状態だった。
強いて言えば、同人ゲームでA.S.氏ら有志が作成したフリーRPG『縮小学園』が特筆すべき存在として挙げられるぐらいだろうか。
だからMBS Truthがシュリンカー(縮小化)物のエロゲを作ると聞いた時は「ついに勇者が現れた」と小躍りする一方で、この
なかなか理解されづらいフェティシズムを正しく認識している人が開発に関わっているのかどうか不安も抱いていた。しかし、
結果から言うとその不安は杞憂に過ぎなかった。
まず、冒頭で挙げた『どっきりマイクローン』(大浴場でおもちゃを使ってやりたい放題)を始め『マイクロボーイ』(水泳)、
『ドキドキ一寸ボーイ』(授業中に制服の中を探検、スポンジ擬態)、ビデオ映画『超能力ハイスクールH』(サドル)、そして
『ガリバー旅行記』(リリパット国)……とメジャー作品から知る人ぞ知るマイナー作品までサイズフェチを主題にした作品を
追った者なら心当たりのある作品群からのインスパイアが非常に上手い。恐らくシナリオ監修者はガチのサイズフェチ属性で
あろう。そうでなければ、なかなかここまで高度な(文字通りの)小ネタを仕込むことは出来ないはずである。一方で、序盤は
パンツを覗きに行って踏まれるシチュエーションが多かったりあるヒロインに見つかって性具として飼われる破目になったりと
マゾヒズムに訴えるシチュエーションへの目配りもかなり行き届いている。実寸大に戻ってのエロシーンの必要性は賛否両論
ありそうだが、どのヒロインのルートでも流れとしては違和感なく挿入されていたので個人的には許容範囲内だった。
今後もマイクロマンに続くチャレンジャーが出現し、このゲームが透明人間や時間停止と同程度にシチュエーションが
確立される嚆矢になって欲しい。
最後に難を言うと、初回限定特典のパンツ型枕カバーは正直いらなかった。これだったら「谷間ダイバー」のストラップとかの
方が良かったのでは?