予想以上に良くできていた。テーマに比べて少し硬すぎるくらい
よく文献で細かいところまでしっかり勉強したという印象。複数のシナリオを用意して練り上げたのがこのループ案だったと分かる。史実に基づいてあくまではっちゃけすぎないように構成したせいかトータルしてもかなり硬めの出来。
テキストにやや癖があり、序盤から最後までいちいち誰構わず名前を疑問系で文頭で呼ぶ。これは書いている段階で誰が誰に話しかけてるか分かりにくいためにこうなったのか?なんでここでいちいち名前を呼ぶ?というシーンが数多あり、ボイスも違和感があるものが多い。
以下各章に対する厳しめな感想
まず5章構成だが、キャラ順を正反対にしてほしかった。物語の要である大石はトリにして、ぶっちゃけうざったい右衛門七などは1章で終わらせて欲しい存在だった。だが比較的マイナーである忠臣蔵をテーマにしているので、読者を引き込むにはまず大石から始めなければならなかったのだろうか。事実ラスト付近で白蛇を討ち取る場面では大石がおいしいところを任されている。この時点で企画も大石を後ろに回すほうが全体的にしっくりくるのは理解できているはずである。
2章では1章で歴史を知った主人公がうまく立ち回れずかなりイライラさせられる。少し問い詰められるとすぐに「そ、それは・・・」という具合に頻繁にキョドってかなり不快にさせられる。たしかに難しいところだが、1部で歴史を知った主人公にどこまで話させるかがカギの2章では少しライターの力量不足を感じた。
3章は正直必要だっかた謎。討ち入りもあじけなく清水も出てこないなど、完全に消化試合。どうせなら主人公を完全に吉良側に入れて正反対の立場にしてみるとか、全く目新しい視点で企画してほしかった。
4章は謎を解明するにあたっての前哨戦と物語整理に当てられている。清水から数ある文献のうんちくを延々聞かされる。読者にいろいろ知識をつけさせた上でラストに繋げたい思惑は見えるのだが、討ち入りも全章で一番あっけなく終わり、ただの説明章のようなもの。3章と合同でいけたのでは。清水をもう少し活躍させたりとか工夫が欲しい。
フィナーレの5章だが、打って変わって序盤から読者への情報量を大幅に規制したため非常に読みにくい。ラストの演出への布石的な処置なんだろうが、進むにつれ頻繁に種明かしを挿入されるのでテンポが悪い。加えて前述したが、とろくさい右衛門七がメインなので、このキャラが合わないとかなりストレス。
この忠臣蔵は頻繁にテレビ等で放送されるものの、一般人はまず大石と吉良の名前くらいしか知らない。その中で読者に歴史認識から始めさせて、ほとんど知られていない臣下のキャラも印象付けさせていかなければならないという難しいものだったが、よくがんばったほうだと思う。
ファンディスクのほうを楽しみにしたい。
あと地元が近所なので、作中少しだけ触れられていたが、吉良は現代でも地元では良く親しまれているのでゲームプレイ後に安易に巡礼しようとしている方は地元の方に失礼のないようご注意を。