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rolling15さんの世界でいちばんNG(ダメ)な恋の長文感想

ユーザー
rolling15
ゲーム
世界でいちばんNG(ダメ)な恋
ブランド
HERMIT
得点
86
参照数
0

一言コメント

この作品こそ、丸戸氏の実力が一番活きている。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

この作品で初めて、丸戸氏のゲームに高得点が付きました。


共通テキスト

今作もテンポ良く読み進められるいつも通りの丸戸テキストですが、
戯画作品のギャルゲーファンに受けることも考えられたテキストと違い、
ままらぶ同様に丸戸氏の持ち味が前面に出ているのでキレがある。
特に今作は、日本の現在メジャーな社会的流通商品やマニア受けする飲料系の題材を、
丸戸流に料理したユーモアあふれるテキストになっていて、非常に楽しめた。
一方、日常は社会人としてのリーマン生活の描写を中心に据えて、
一般的な人生らしい内容に仕上がっていてホームドラマ系としては文句無い。
ただし、丸戸氏の出身である岐阜や名古屋などのご当地ネタが多いのが欠点で、理解できない人は評価が下がるだろう。
共通は総じて戯画作品に比べ、HERMIT作品のほうが良い。


個別ルート

天城 夏夜

夏夜の好きな人に対して非常に積極的であるのに肝心なところはグダグダになっちゃう、
それでも尽くしたいというキャラが活きた内容になっていて、さすがキャラ立てがうまい丸戸氏と思わせる。
個人的な見所ですが、銭湯での美都子への当て付けのシーンとテラスハウス陽の坂一同の一芝居の際のご隠居ですね。
特に前者は、女としての独占欲を前面に出した醜い感情が曝け出されていていいシーン。
主人公の方もいい感じで情けなさと誠実さを発揮していて、良くも悪くもシナリオをきちんと引き立てている。


澤嶋 姫緒

財閥の令嬢であり、ギャルゲーお馴染みツンデレ系。堕ちてからの可愛さは良いですね~。
丸戸氏はパルフェの花鳥玲愛の時も感じたが、ツンデレ系キャラの描写が中々上手い。
ここでは、父の影響力の下でいろいろ行動していた姫緒が、理とともに働くようになってから社会勉強を重ね、
労働の価値の重要性を理解して1人の社会人としての成長の話。
その中に、理を取り巻くヒロイン愛憎溢れる描写を交えながらも、
美都子を守っていきたいという2人の親愛と「理と姫緒」という男女としての愛情を上手に描いている。
個人的には、全ルートで笑いが一番かなと感じる。


香野 麻実

主人公といろいろ複雑な関係を持っている重要なキャラ。
過去作で言うと、パルフェの恵麻、ショコラの翠に属する丸戸作品お馴染みパターンである。
麻実の抱える物の重さは円満な結婚生活を続けるためには痛い。
別れたのも理の事を心から思っているからこその選択だと思える描写もしっかりとしているから強く響いてくるいい出来。
そしてもう一つは、松本先生のデリカシーの無い行動に対し喧嘩の経験の無い理が切れるシーンが印象的。
しかし、理の羞恥に耐える特訓に関する描写がすっぽりと抜け落ちているのはどうかと思う。
いくら元奥さんだとしても、麻実に対する想いの強さが伝わりにくい気がする。
美都子と拮抗するはずの重要キャラなのでもう一押し描写を丁寧にするべきであったと思う。


陽坂 美都子

このゲームのメインヒロインであり、恋愛は一途、嫉妬心は全開というわがままとガキな所を残しつつ、
家事全般なんでもOKという将来の理想の嫁のスキル万全な○学3年生。
保護者として親愛の情を注いでいく理、理に対し恋慕の情を煮えたぎらせる美都子の2人が恋愛へ行き着くまで丁寧に描いている。
トゥルーエンドの方は、2人の愛と、母と婚約者が帰ってきていろいろ(やれば分かります)あるが、
みんなの活躍も見られてハッピー主義の人も納得の大団円へと昇華して締めている。

見所ですが、まず尾関の攻め際と引き際の良さ、そして美都子の気持ちも察しての行動のよさは、
あの年代の男らしさが溢れていてNGの中では光っていた。
2つ目は卒業式での麻実と美都子の最後の会話で、麻実がどんなに心に傷を負っても、
2人が世間で冷たくされていても理のことをいつまでも気に掛け続けてくれるいい女と再認識できる良い場面。
最後に、4回目のHシーンなんかもすごく余韻のあるいい内容になっている。
伏線の張り方も○校3年生のように思わせつつも、バイトは新聞配達など○学生でも出来る物を選んでいるなど、矛盾無く仕上げている。
一方欠点は、美都子が「女」としての恋慕が本気すぎてNGという背徳的なイメージを湧きたてづらいこと。
あとは、理の心境の変化についていけないと冷める点、麻実の方に良い印象を持つとつまらなくなることでしょうか。

総合

丸戸作品の中で一番高水準でまとまっており、他作品でよく見受けるメインルート以外の質ダウンが、
この作品では、一番少なくてどれも高めの品質にまとめているので高い点数を与えられる。
さらにいえば「め○ん一刻」をベースにした、心温かまるホームドラマになっているのがよかった。