ErogameScape -エロゲー批評空間-

rolling15さんの車輪の国、悠久の少年少女の長文感想

ユーザー
rolling15
ゲーム
車輪の国、悠久の少年少女
ブランド
あかべぇそふとつぅ
得点
80
参照数
0

一言コメント

いつも思うけど、るーす氏は描写の粗を捻じ伏せてシナリオ運びと演出で見せていくのが上手いねぇ。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

悠久の中身で最大の注目要素であった法月シナリオですが、見事にいつものるーすワールドが展開されていたので安心。

いろんな面で「向日葵の少女」と一緒の構成がとられているので話の内容自体は殆ど同じであり、
最後に将臣がアリィの執拗に心の矜持を折る為の用意周到な責めに最後は屈服してしまうという結末が、
大半の人が分かっていたと思うし、自分もそんな話の流れをどう見せるかに注目していた。

その話の流れですが、個人的には「向日葵」同様にさっと話に引き込まれて楽しむことができた。
相変わらずの伏線も流れるように張っては、半ば強引になろうともすべて回収していくところや、
話の山場の演出もしっかりと強調されてメリハリを利かせるなど、十分に楽しめるようにしている。
純粋な話の中身だけでいえば、「向日葵」よりも好きな内容でしたしね。

話の中でよかったシーンは、後半の序章「姫君」やラストの部分で、演出の良さが光っている。
特に前者のシーンは雑賀みぃなの芯の強さが強調されていて、1、2位を争えるシーンにあると思う。

この話で活躍した人は、アリィ・ルリリアント・法月でしょうか。
見事なまでの悪役っぷりに、自分はツボにはいってしまった。個人的に「向日葵」の将臣よりも良かった。
そのアリィ役の声優さんである篠崎双葉氏の演技も、年齢別の演じ分けやメリハリが非常に上手い。
そして篠崎さんの元々持つ悪役向きの声質の良さも手伝い、キャラ造詣をより良いものにしていた。

続いて南雲えりミニシナリオですが、これは短いながらも本編の補完はされるので上々な仕上がりではないかと思う。
内容は指名手配犯の野島とのささやかな交流からふと芽生えた家族への郷愁の念、
そんな気持ちが湧きつつ野島といろいろある中で、えりの家族への気持ち等が整理され、
法月将臣の待つ最終試験会場に死の覚悟で向かっていったという流れ話が描かれている。

で、最後にヒロイン後日談ですが・・・・完成度は高くない。
自分としては、大音灯花ルート(これは殆どキャラ造詣のおかげである)と
磯野一朗太の独特のノリ位しか良かったところはなかったかな?
おまけ感覚で楽しむ程度の軽い気持ちでプレイしましょう。

音楽ですが、向日葵もよかったのでこれも予想通り良かった。
特に「watch out and run!」、「gallantry~MAY BE NOT~」、「溶解の旋律」の3つは良い。

イラストは有葉氏です、向日葵よりも確実に上手になっている印象。良く女性キャラが描けているかと思う。
背景などのグラフィックは一見綺麗に見えるのだが、じっくりと見てしまうとあまりよくはない。
個人的には塗りが野暮ったい印象でどうも好きにはなれない。もう少し見て気持ちいいと思える爽やかさが欲しいところ。

システムは『向日葵』と違い、世間的に見ればすべての面で及第点が出るレベルに改善されていると思う。
ですが個人的には不満があり、途中からはじめてもテキスト覆歴が読める機能が無くなっていた所は残念。

まとめですが、やはり法月シナリオとえりのミニシナリオは良いけど、ヒロイン編が今一歩。
点数としては多少高い気もするが、法月シナリオとアリィのキャラのよさが光っていたのでその点を評価した。