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rolling15さんのG線上の魔王の長文感想

ユーザー
rolling15
ゲーム
G線上の魔王
ブランド
あかべぇそふとつぅ
得点
83
参照数
0

一言コメント

完成度の高さは目立つけど、個人的には車輪の方が好き。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

まず雑感を・・・。

ユーザーの期待と2008年の優秀作確実という感じに話題をかっさらっていたこの作品。
過去作ばかりプレイの自分にして珍しく最新作をリアルタイムでプレイしました。

プレイ後の印象は、十分2008年度で上位を狙える内容であるなと感じられたし、
完成度だけでいえば、車輪(あくまでハルルートのみとの比較)と同等レベルあるいは上でしょう。
それに、るーす氏のシナリオ運びは今回も伏線と演出で引っ張っていく感じで変わっていない。
寧ろ、今回はユーザーがシナリオを読む際にしっかり読むようになったと取れる。
それにより、評価が車輪ほど伸びしろが出ずに良作級に落ち着いてると自分は思う。
あと、出世作である車輪から来るユーザーの過剰な期待感で敷居が高くなり過ぎて、
作品自体が期待感に押し潰されてしまっている部分も否めない・・・・。

自分も例に漏れず純粋な好みはG線より車輪の方が好きであるが、伏線という面より、
活躍しているキャラの造詣(さち、灯花、磯野、賢一)が、G線よりも良かっただけのことである。


個別ルート

ハル(メイン)ルート以外は伏線の回収はおろかシナリオの作り自体が甘いですし終わり方もあっけない。
本当は、一本道で出したかったんじゃないかなと自分は感じた。
そんな普遍的な出来ではありますが、椿姫ルートなんかは個人的にお気に入り。

本命のハルルートですが、こちらはユーザーの期待に沿うように、演出が丁寧に作られていました。
お得意の伏線を張りながら、終盤においてどんでん返しのように回収していくパターンを見せてくれる。
内容もるーす流の純愛シナリオを見せてくれていますし、個人的には満足させていただいた。

個人的に一番の見所は、ゴンドラの中のハルとそれを助けた京介のワンシーンです。
問題点は、最終章の裁判の部分を丁寧に描写して欲しかった(こんなこと言ってるのは自分だけでしょうが)

あと伏線の面ですが、前回の璃々子のようなパターンは無かったのでインパクトにかけるものの、
今回の方が回収の仕方がスマートになっており、安定味が出てきたという印象。


音楽関連

クラシックをアレンジしたものが結構多く使われている。
どれも、いい感じに耳に入ってきて心地よかった。
オリジナル曲の方は、tiko-μ氏のおかげもあって総合して上々なレベルでしょうね。
特にいい曲は「再会の日」、「決着」、「逃げ場なし」の3曲。

イラスト・グラフィック

イラストは有葉氏です。最近は大分安定した絵柄を提供できているので文句をつける必要は無いでしょう。
ただし、いかつい男が元々絵のタッチにあわないのか、権三など多少迫力に欠けるところがあった。
背景などは以前より野暮ったさは取れた印象で、普通レベルでしょう。


システム

普通にノベルゲームを楽しむ際にはあまり不便に感じるような要素は無く、普通にプレイできた。
あと、プレイ後の回想やCG閲覧なども標準装備のレベルです。


総評

なんだかんだ言って、るーすぼーい氏らしい仕上がりの内容であった。
そして、演出とシナリオ運びの巧さで見せるのが上手な人だなと再認識した。
次の作品では伏線重視系の構成ではマンネリで通用しないかも知れないけど、
らしさを無くさない様に作品づくりを頑張って欲しい。