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rolling15さんのFate/stay night [Realta Nua]の長文感想

ユーザー
rolling15
ゲーム
Fate/stay night [Realta Nua]
ブランド
角川書店
得点
96
参照数
0

一言コメント

テキスト表現のクドさが素晴らしすぎる。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

個人的にはいちばん好きなギャルゲーのノベルであり、いまだに読み込んでいるバイブルである。

全体の文章について

難しい衒学的言い回しとくどい表現(例:アーチャーの赤い外套の背中が告げていたetc.)が多く見受ける。
しかし、これがきのこ氏の持ち味で且つそれを遺憾なく発揮しているこの作品は文句無い仕上がりであり、期待に応えている。
ですがこのくどさは中だるみを生みやすいことも事実であり、耐えられない人ははっきりいってウザさを感じるレベルだろう。

そういう点では、意外とプレイヤーの2極性が強いかもしれない。(自分は一切中弛みしなかったタイプの方ですが・・・)

一方日常描写であるが、前作の月姫同様に一般人と同じである学園での生活と、
士郎、凛、桜の魔術師キャラ3人とも料理がみな上手になっていてそれを活かし、
その3人にセイバー、大河の5人で食事をしながら会話という手法がメイン。
基本的に面白いけど、あまり料理の話が好きじゃない人は弛みやすいかもしれない。

あと、PS2移植の際にフルボイスになっている点は、本質がキャラゲーなので大きくプラスに働いている感じである。
ただし、さくさく読めないのでテンポは著しく悪くなる欠点が出てくるが・・・・。

各ルートについて

Fateルートですが、衛宮士郎はセイバーとともに聖杯戦争を勝ち抜きながら
セイバーの聖杯戦争で勝ち抜いて王の選定をし直したいと思い続けたアーサー王としての責務に対しての、
未練の問題が衛宮士郎によって清算されるまでを上手に書ききっていて、まとまりはこのルートが一番。
活躍するキャラも、士郎、セイバー、凛の3人と言峰がメイン(見せ場だけならアーチャーも負けない)である。

戦闘描写は、セイバーVSバーサーカーが一番かな。カリバーンの投影シーンは格好いい。

ただし、聖杯戦争のことや裏事情はあまり明かされないので、このルートだけが終わった段階では分からない所が多く残る。


Unlimited Blade Worksルートは、あくまでも、衛宮士郎の理想は「正義の味方」であり、
どんなことがあろうともその信念を曲げずに「正義の味方」の道をを突き進んでいくというものを書いている。
ちなみに個人的にはこのルートこそFateの真ルートだと思っている。

このルートは、ヒロイン的に遠坂凛のルートなのですが、
肝心の凛よりも士郎やアーチャー、キャスター、アサシン(小次郎)の活躍が目立つなど、
キャラゲーの真骨頂と言っても過言ではないくらい、各キャラの個性が前面に押し出されている感じの強いルートといえる。


あと、エンディングはトゥルーとグッドの2種類あるが、明らかにトゥルーのほうが話に整合性がある。
一方、グッドエンドの「Sunny Day」はハッピーすぎて蛇足感が否めない印象が個人的に強い。

戦闘描写はやはり士郎VSアーチャーだろう。文章とエフェクトがバランスよく絡んでいてかなり燃える。


Heavens Feelルートですが、間桐家の人々が活躍しながら、聖杯戦争の裏側的なものを見ていくルート。
以前のルートまでの回収していない部分の伏線などもしっかり回収して理解を深める側面も有する。
そして、話の色合いが前2つと大分違っていて、描写がダークで表現も3ルートで一番生々しい感じ。
でも、これはこれで非常に面白かったと感じている(信者補正がかかっているのであしからず・・・)。
士郎が桜だけの味方になるという180度信念を転換してしまう、
イリヤが、何故、Fateルートの時は士郎とアーチャーの関係を知らないような描写があったはずなのに、
このルートでは士郎とアーチャーの関係を完全に知っている理由が分からないなどの欠点も有する。
(最後のイリヤのことは、本当はHeavens Feel内に書いてあるかも知れないのであまり信用しないでね・・・)

エンディングはトゥルーとノーマルの2種類。
話の整合性を取るならノーマルエンドの方であるかなと個人的には感じられた。
一方、トゥルーは普通に大団円エンドでご都合最高みたいな感じにも受け取れますが、
オーラスシナリオにふさわしいともいえるので悪いなとは個人的に思わなかった。

戦闘描写は、ライダー&士郎VSセイバーオルタ、凛VS黒桜、言峰VS士郎のラスト3つが印象的で、Fateで最高の名演。
特に凛と桜の邂逅の部分は、個人的にはFateでいちばん感動できたシーン。

Last Episordですが、PS2版で追加されたお話。
内容は、30~40分程度で終わるセイバールート終了後の後日談的短編である。
個人的な感想は、蛇足感を多少感じるものの、内容自体は良い按配にまとまっている。

BGMのコーラスが心地よい響きで、個人的に良い。


CG関連

背景などですが、一枚絵も含めでCGの塗りは綺麗に仕上がっていて、質としては十分なレベルである。

そして注目すべきは戦闘シーンで、エフェクトと挿絵の出すスピードの速さを駆使して、戦闘の臨場感をしっかりと演出している。
これは、静止画での戦闘表現としては最高レベルの技術で構成していて、出来のよさは相当なもの。
Fateの評判を押し上げることになった一因として絶対に外せない部分であり、これは誉める以外ないだろう。
ただしそればかりが目に入ってしまい、話の本質から目が逸れやすい欠点も有している。
実際、これだけで高評価をつけている人は結構いるでしょう。

BGM(音楽)関連

PC版に比べてかなりBGM音源を追加している。
その影響で戦闘シーンの臨場感がアップしていて、文章をしっかり引き立てている。
追加音源では個人的に、「Sonic Barrage」や「約束された勝利の剣(ブラックセイバーVer.)」などは非常に良い。

一方、Vocal曲は新曲を用意したのにもかかわらず、PC版の方が出来がよく感じてしまった・・・。


システム周り

これも、PS2では十分なものがそろっていて使い勝手も良いし、文句は無い。
ただし、セーブデータ数がPC版より減少しているのが少し残念なところ。


総評

奈須きのこ氏の独特のクドい言い回しが大好きな人、戦闘描写(ここではエフェクト等の演出関連)の良さが魅力に感じる人、
各キャラの個性が光るキャラゲームが大好きな人などに大手を奮って勧められる内容。
特にテキストに関しては業界屈指の独特さで惹き付けるものがあるので、
戦闘等のエフェクト演出のよさに目をとらわれ過ぎずに、しっかり文章を目通しして欲しいと思う。
これで文章からの戦闘描写で味わえれば、きのこ氏の過去作品もより造詣深く読むことが出来るだろう。

PS2しかなくて声が邪魔な方は、ボイスOFFでプレイしてきのこ節を存分に堪能しましょう(笑)

一方、空の境界(小説)や月姫と比較してトゥルーシナリオの良さが落ちているので物語を重視する方は物足りなさは残るかも。
なんか、作品を追うごとにシナリオが落ちているのがちょっと気がかり・・・。