ADV(デジタルノベル形式)としての完成度の高さは最高レベル
この作品は麻枝氏が単独で監修した最初の作品で且つ、氏の実力が遺憾なく発揮されていている傑作であり問題作である。
そして、麻枝氏はADV媒体の使い方が非常にうまいなと思わせた作品である。
内容面について
シナリオの面で見るとKey最高傑作は堅い上に考察しがいもあるので、個人的にはギャルゲー3本指に入る良シナリオである。
ですが致命的な欠点もあり、共通部分のテキストの出来が前作のKanonを考えると明らかに劣っていて、
国崎往人と霧島聖のネタ以外、初プレイでは暇(特に美凪&みちる)に感じられたことである。
自分はKey作品自体が好きなのもあって、2週目以降はこの電波テキストに馴染むことが出来た上に、
AIRキャラの楽しみ方のコツが分かったので大丈夫になりましたが、この影響で他人に勧めにくい印象を持っている。
一方、後半の個別に入るとその中弛みしやすいテキストはどこへやらという勢いで惹きこまれた。
実際、麻枝氏執筆の美凪ルート(夢現END含む)、AIR(観鈴)ルートでのシナリオ運び、良質の音楽、CGでの演出の
3つがきれいに融合した、デジタルノベル(ADV媒体)ではないと輝けない物語を提供している。
続いて佳乃ルート(イシカワ氏)は出来こそ麻枝氏のルートにはかなわないものの、
テキストなど劣る部分を演出でカバーしながらシナリオを運んでいて、仕上がりは良かった。
これで、もう少しテキストがよければ評価はもっと上がっただろう。
続いてSUMMER編の涼元悠一氏ですが、こちらは日常も笑えるテキストを提供しているし、
後半の翼人の物語の原点についても丁寧に説明されていて、AIR編の架け橋としてはいい仕事をしていた。
次作のCLANNADのことみシナリオでの完成度も頷ける出来栄えだったと思う。
上からの内容とずれますが、AIR編で印象的だったこと。
ラストのシーンは本来、神奈と柳也と裏葉から始まった1000年に渡る物語の完結のはずが、
やっているその場では、観鈴と晴子の母子愛で泣いてしまうというすり替わりがおきている点。
この辺に麻枝氏の技量の高さを感じられた。
音楽関連
Key作品で最高レベルであり、ギャルゲーの中でも個人的1位の出来のよさであった。
特に良かった曲も「夏影」、「水たまり」、「夜想」、「銀色」、「絵空事」、「跳ね水」など良曲ぞろい。
歌付きのほうもOPも「鳥の詩」、挿入歌の「青空」は素晴らしいですし、
「Farewell Song」も先の2曲より霞みますがいいと思います。
CG、イラスト
原画は樋上いたる氏。Kanonよりは上手になっていますし、まだ氏独特の味がしっかり残っている時代です。
いたる絵が味わい深かった(下手でも独特のよさがあった)のもAIRまででしょうかね・・・。
背景CGは鳥の氏です。前作同様かなり美しく、2000年とは思えない仕上がりで驚かされます。
個人的に、いつ見てもいい感じに夏の良さが表現されていると思う。
システム
いつものインターチャンネルのシステムです。
セーブ内容が分かりづらいという欠点はありますが、使いやすさは普通レベルでしょう。
肝心の読み進めるにいたっての問題点は、特にはありませんでした。
まとめ
シナリオはADV媒体をバランス良く且つ最大限に活かした素晴らしいものであったが、
テキストの方は前半部分のキャラ性格に問題があり、人を選ぶゲームの方に属するといえる。
個人的には一番Keyで好きなゲームである。
もし、共通ルートのテキストが不安に感じるけどやってみたいなと思っている方は、主人公まで声付きのフルボイスになっている
PS2、PSP版にすれば声優さんの仕事の良さで問題が解消されやすくなり、リスクが減ると思う。
プレイ後は自分なりのAIRの内容解釈を完成させて考察サイトを回ってみると、
よりAIRの世界観について楽しめるので、プレイして気に入った方は是非どうぞ。