やはりKeyの根源は、何も変わってはいなかった。
この作品はKeyらしくないと言われる人も多いですが、個人的には「さすが麻枝氏監修だな」と思わせるKeyらしい仕上がりだと思う。
共通ルート
まず、今回も相変わらず共通部分が長い。
そして、前回同様Keyらしい奇人変人が生み出すノリで笑わせていただいたので、そんなには弛まなかった。
特に、カルテット+鈴は特に面白かった。やはりこの5人が目立っている。
あとは野球練習での恭介の喋る言葉や、鈴が佐々美の名前を間違う時、美魚の「ワレワレは・・・キシャー」など笑えるところが多い。
ですが、多少ランキングバトルなどを使っての笑いもあったのでCLANNADより落ちていると思う。
それでも、Kanonくらいは面白かったので、おおむね満足。
個別ルート
シナリオ担当が城桐央氏のルート
能美 クドリャフカ
まずこのルートですが、リトバスの汚点といって差し支えない程に内容がなさ過ぎるシナリオにウンザリさせられた。
特に山場の、理樹の強い思いだけでクドを監禁している鎖の鍵が、海を渡って届いたなんていうご都合もいいところの流れが最低です。
いくら虚構世界だからといっても到底納得できる物ではありませんし、もう少しまともな話の流れをお願いしたい。
テキストも冗長気味で、結構飽きながらのプレイでしたしね。
最後に、確実にこのルートが評判を落とすのに一役買っていることは事実でしょう。
一方キャラ造詣は、Keyらしい口癖「わふー」や小動物的な動きが印象的で人気があるみたい。
個人的には好みではありませんが、個性溢れる奇人変人キャラには仕上がっていると思います。
追加エンドは後日アップ。
三枝 葉留佳
このルートですが、CLANNADの藤林姉妹みたいなドロドロとした感情が渦巻くシナリオで、結構Keyらしくありません。
ですが、完成度でいえば藤林シナリオよりはよく出来ていたし、葉留佳と佳奈多の姉妹が抱える問題がそこそこ描かかれている。
個人的には、姉妹で感情をぶつけるシーンやシフォンケーキの伏線なんかは結構楽しめたので、頑張っている印象。
クドルートと同じくテキストは冗長気味ですが、それを引いてもクドルートよりは断然良い出来。
小ネタですが、バッドエンドを2回見ますと、佳奈多が虚構世界を仄めかす発言をしてくれますので見たい方は是非。
キャラ造詣は、チャラけた感じと明るいノリが可愛いムードメーカーといった感じ。
個人的にはその表の性格と、偶に見せる影が良かったので佐々美に次いで好きなキャラである。
二木 佳奈多は後日アップ。
シナリオが樫田レオ氏のルート
西園 美魚
このルートは、後半がONEの里村茜シナリオがベースになっている感じで、オリジナリティに欠ける嫌い(悪い意味で)がありますけども、
文章力の方は麻枝氏を除いた中で一番頑張っていたという面もあり、個人的にヒロインルートで一番楽しめた。
話の作りも虚構世界だからこそという設定を上手に使っている感じで、ヒロイン別ルートでは高い点数をあげられる。
しかし欠点も持っていて、何か惹きつけられる様な魅力という物がシナリオ内になかった。
その点が、リトバスでは高めのレベルだった分、残念に感じることである。
キャラ造詣ですが、物静かな雰囲気を出しつつも鋭い突っ込みやネタで存在感を強調したり茶目っ気があるので、可愛く仕上がっているかと。
あと、声優担当の柚木かなめさんが変人さを出すのに一役買っていて、お仕事の良さが目立った感じである。
シナリオが都乃河勇人氏のルート
神北 小毬
このルートは、意外とシナリオに重視したストレートな感動物語でした。
小毬が抱える問題(兄の事)により、心身が崩壊してそれを理樹が救うというのがメインに描かれている。
描写や説得力の不足という部分は多いですが、多少のお涙頂戴位の出来にはなっていた。
あとはKeyで仕事をする以上、これからは独自の特徴を持っていく事でしょう。
あとこのルートで、都乃河氏はメインを引き立てる伏線が上手ということが分かった。
キャラ造詣は、まきいづみさんという個性派を起用しているのでその声を上手く活かすべく、製作者の方も頑張っている印象。
個人的にはまき氏の声は好きだし、誰とでも気兼ねなく付き合えるボケボケという性格を付された小毬にも悪くないと思ったが、
どうも世間の評判はイマイチ。キャスティングって難しいですな・・・・・。
来ヶ谷 唯湖
このルート(END1)は、ONEの世界観をベースに、メインを引き立てる事が上手い都乃河色が出ている。
まず、共通消化中にルートをクリアしても描写自体に優秀なものはないし、結局はONE劣化版といっていいレベルです。
しかし見所もあって、ヘタレ気味の理樹が来ヶ谷の姉御に告白を仕掛けようとするシーンはギャルゲーらしくなくて良かった。
評価の核となる、永遠の6月20日が続く事で姉御が虚構世界のカラクリに気づいてしまう、それにより2人の関係が終わるという部分が、
最初は意味が分からないけど、世界のカラクリを理解した後にやると意味が分かって、都乃河氏の仕事のよさを実感できる。
要は、後で評価が上がる感じ。
END2については、個人的にはあんまりいい印象はありません。
世界のカラクリについての解答的な側面では、悪くない出来でした。
しかし、期待していた恋愛感情描写が少なくて、期待していたものとは違っていたのが大きい。
その辺を丁寧に描写するなど、頑張ってくれれば誉められた。
キャラ造詣は、一色ヒカル氏の声質を最大限に活かした大雑把な性格の皆の姉御という感じ。
そしてデレた時の可愛さも、普段の感じからのギャップが活きているのでそういう部分が好印象。
笹瀬川 佐々美は後日アップ。
シナリオが麻枝准氏のルート
棗 鈴ルート1&2+Refrein(要はメインルート)
このルートは麻枝氏だけあって、これぞKeyのADV構成のレベルといえる物になっていたので安心してプレイできた。
まずこの世界は、メインとして理樹と鈴の成長を促すための虚構世界であるわけですので恭介を始めとしてバスターズが頑張ります。
その辺を1周目の鈴は理樹ありきだったものに対して、バッド後の2周目では自立性が身につき始め、確かな成長を感じさせる。
そこに至るまでの流れは麻枝氏らしく、上手にかけていたと思う。
(理樹の場合は、他ルートでのヒロインの絡みを経て成長するわけですので省略)
そして結構繰り返して成長したと踏む恭介は2人を引き離すが失敗し、心身に深い傷を残しRefreinに向かう流れである。
この辺は、Refreinに向かうための伏線やらがRefreinに於いて説明されているので理解しやすいと思う。
肝心のRefreinですが、これは細かい事を抜きにしておけば良く出来ている。
特に理樹と恭介、謙吾、真人との虚構世界の崩壊による別れのシーンは、
4人の友情の深さを強調したKeyらしさ満点のお涙頂戴シーンで個人的にも一番良かった。
その後の、修学旅行の現実に戻り、鈴と2人で手を取り合って生きていくという流れまでは個人的に大好きですね。
欠点は、まず鈴が心を閉ざしてからまた開くという部分の描写が欠落していて有耶無耶になっているところでしょうか。
もう1つは、2人で生きていくエンドの後の大団円に向けての流れですね。
正直、伏線らしきものがありますけど、それを差し引いてもご都合主義万歳としかいえないレベルでしょう。
ですが、麻枝氏最後のシナリオ監修のゲームなので、最後くらいは綺麗に締めたかったのだと思ってある程度目を瞑りました。
朱鷺戸 沙耶は後日アップ。
BGM(音楽)関連
相変わらずKeyなのでレベルの高さは目立っており、サントラを買う価値は十分だと思う。
ですが、戸越氏の製作途中の退社の影響か外注が増えており、Keyらしい音楽は結構減った印象が強い。
個人的にはその部分でらしさが消えることを懸念して評価を落としたが、レベル自体は下がっていない。
出来のいい曲は「遥か彼方」、「勇壮なる戦い」、「スローカーブ」、「死闘は凛然なりて」の4曲。
麻枝氏と折戸氏はさすがKey専属ですね。Keyらしさが分かっている。
あと音質のよさも相変わらずですが、容量の関係で多少ビットレートが下がっている。
イラスト、背景など
今回の原画は、クドリャフカ、美魚、佐々美、沙耶、鈴、理樹、恭介、真人、謙吾の9人がNa-Ga氏、
小毬、来ヶ谷、葉留佳、佳奈多の4人が樋上いたる氏となっている。
はっきりいってNa-Ga氏の方が上手ですし安定感もあります。
さらに、結構好みな造詣も相成って気に入りました。
一方いたる氏は、CLANNADに比べてまた雰囲気が変わっている。
大分洗練されてきていて極端な見劣りはしなくなりましたし、旧来ほどではないにしろ個性もしっかりと残っている。
相変わらず崩れたり、顎が目立つ絵で上手いわけではないが、氏の独特の味があるんですよねぇ・・・。
システム
回想シーン、CG鑑賞、BGM鑑賞など一通り揃っているので、読むことを重視する自分にはあまり不便さはない。
ただ、相変わらずの薄い描写の回想シーンはあまり必要性を感じないと思うけどね・・・。
それにエクスタシーと銘打ったなら、MOON.の頃程度に描写を濃くしても良いと思う。
まとめ
なんだかなんだいっても、Key作品として楽しむことが出来た。
特にKeyに初めて触れる方にも、Keyにしてはクセが少なめで、
ミニゲームもあったりするので比較的お勧めしやすいゲームだと思う。
話が逸れますが、「Rewrite」からKeyはかなりの変貌を遂げるか、それとも今まで通りの世界観を無くさないのかが注目される。
個人的には、この作品で見せた都乃河氏の複数ライターでの引き立て役の上手さが、如何出ているかである程度出来が決まるような気がする・・・・。