全ルートクリア。夢中になって読んだ。ノベルゲーム史に残るガチの傑作
メーカーの大ファンで、過去作含めすべてプレイしてます
修学旅行中に京都の鞍馬寺でタイムスリップしてしまった世志常と楼子、紫都香の3人が、それぞれ平安時代の末期を生き抜いていく。
義経の伝説的な活躍と、その後義経が朝廷と頼朝の政争にまきこまれ没落していく、MIBUROの土方歳三が言った「俺たち、かっこよかったよな…」に象徴される滅びの美学を描いた史実がベースとなる源平合戦編(史実)
様々な義経生存伝説の中の一つである、義経北行伝説をモチーフにした、北行伝説編。このチャプターからIF職がだんだんと強くなり、最後は、魑魅魍魎跋扈するIFとファンタジー色が強くなり、上記2編で巻いた伏線を回収していく「偽経記」編の3チャプターで1つの「GIKEI」となっている。
まずそんな壮大なボリュームのあるシナリオを描いてくれてありがとうという思いしかない。
今どきこんな壮大な物語をエロゲというフォーマットで描いてくるメーカーがいくつあるだろうか。
片手で数える程ないだろう。
インレの作品の魅力は強引な設定から生まれる壮大な人間ドラマだと思っているので、史実、IFの両方の面から楽しめたことがすごく楽しかった。また、平安時代の史実は分からないことも多く、めちゃくちゃ調べたのであろう伝承を基にした大胆なオリジナルストーリーや魑魅魍魎が抜港する中盤以降の展開を作りやすかったかもしれないと感じた。
特中盤以降は日本史が好きな自分でも知らないことや分からないことが多く、非常にわくわくしながら読み進めることが出来た。
キャラクターに関して、当初から発表合ったように楼子、紫都香の2人しかメインヒロインとしての出番がないのはストーリー上分かっていたことだけど、弁慶や三郎、継信忠信姉妹、そして義久の型に嵌らない感じが凄く良かった。
特に世志常は君主だったということもあるが仲間キャラへの思い入れはかなり深い。
郎党だけではなく、中盤以降仲間になる教経やちょっと重い女である泰衡等、現代ではと等身大な人間として描かれている宗盛、猜疑心の強い頼朝、参謀としての政子など
過去作と比較しても敵味方キャラクターにそれぞれ味があった。
だからこそ、最低でも郎党たちはヒロインになって欲しかったという思いはかなりある。
MIBUROは史実を丁寧に描きすぎた点があまりユーザーにウケなかったこと(その分美学の描き方としては最高だった)、chushinguraの終盤の展開がやや強引だった(その分百花魁編は全エロゲ最高に面白いストーリーだと思う)というのはたぶん葉山こよーてさんも分かってるんだろう。
初めからラスボスを設定し、そこから逆算して話を作っているように見えたし、ご都合主義といえばそれまでだが、ラストまでユーザーへのサービス心にあふれていた。
過去の2作品を踏まえ、熱いストーリーに重きを置いた傑作のように思う。