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pi-toroHcさんの月の彼方で逢いましょう SweetSummerRainbowの長文感想

ユーザー
pi-toroHc
ゲーム
月の彼方で逢いましょう SweetSummerRainbow
ブランド
tone work's
得点
100
参照数
255

一言コメント

彼らの幸せに乾杯。未来を求めてもがく姿に乾杯。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

あれだけ2人の関係について深く掘り下げ、幸せのカタチを提起した本編があったにも関わらず、それ以上何を描くんだよと思ったが(FDはいつも同様な感情を抱く)、本編を無駄にせずより深く掘り下げてくれたこの物語に感服した。

1年前明らかに力の入れようが他ヒロインとは全違うと感じて物語に没入し、タイトルの伏線までさらっと回収し、私の心を奪っていった雨音に特化したFDであればやらないわけにはいかないと勇んで購入したが、大切なものを壊されるリスクを孕むFDを警戒するあまり長らく(3か月)積んでいた。
しかし今年の長い梅雨が明けてからの夏の暑さがSweetSummerRainbowを彷彿とさせ(?)、心が求めるがままにプレイした。

本編のことは記憶から離れようがないのだが、両ダイジェストは当然のごとくしっかりプレイ。
そういえば選んでない選択肢あったなと懐かしさに駆られつつ、足早なダイジェストにやきもきしながら物語を進めた。
そういえば学生編の海に行くイベントで何故水着立ち絵を用意しなかったのかはスタッフを小一時間問い詰めたいところだということを付記しておきたい。
しかし、泣けるシーンはしっかりノーカットで入れてくるあたりとても憎い。やっぱり2人は永久の運命で結ばれているんだと1年前に涙したシーンと同じシーンで涙し、気持ちがとても高まった。
もはやこれだけで3,000円の価値はあると思うほどに感覚がマヒしていた。
そして同時にやはりこの物語の隙間に一体に何を差し込もうというのかという不安も大きくなった。


SSRスクール編(未来を求めてもがくお話)
そういえば本編では告白イベントから復讐イベントを経て一気に卒業まで季節が飛んでいたことを思い出す。
告白までの心の距離の詰まり方があまりに素敵すぎて、あとのことに気が回ってなかったから気付かなかったみたいだ。しかし、なんということだ。2回も(本編は何度かやり直しているのでもっと)同じストーリーを見て何の疑問も抱かなったなんて。
そう、私は彼らの恋人としての学園生活を堪能していないのだ。俄然この物語に没入する気持ちが高まった。
初頭の彼女は本編学生編と変わらない不器用でちょっと不思議な女の子だ。
しかし、そんな彼女がダーリンのために、ダーリンとのとの未来のために変わろうとする。(もちろんダーリンとは私のことだ)
そしてカナタくん(私)もサマースクールを通じて自分の未来を探すためにもがき始める。
一方雨音は生理イベントで結婚を意識するとともに、変わらなければならないという意識が顕現した雨音は無理やりに今までの自分を放棄しようとする。
その後「ダーリン…ワタシ、がんばるね?」この言葉から違和感を感じて見事乗り越え雨音を救って見せた奏太くん(私)。
この2人の望む未来を求めてもがく姿はとても美しい。
そしてやはり交わる2人の運命、それを祝福するように現われる月虹。実にファンタジックなだがこの物語の美しさを演出するには必要十分な演出であり、涙せずにはいられないクライマックスだった。

リボンのくだりは、ここでそう来るかと思わずニヤリしてしましましたね。
この段階ではまだ完全に救われたわけではないとは分かっているが、彼女が生業としてエンジニアを選んだのはここが決めてなのではないかと思えてしまうほど自然につながるお話しだった。


SSRアフター編(幸せを見つけるお話)
スクール編がとてよかったので、これは本当に蛇足だろうと思っていた。
冒頭から幸せなそうな日々が繰り広げられ、心が満たされながらもこの物語に何か目的はあるのだろうかと不安になった。
しかし「ワタシは…ママとパパと一緒に生きた証が、欲しいのかも…」からのくだりで自分はとんでもないバカだと思い知った。
本編で雨音は思い出を抱いて未来を歩むことを決めて私もそれを見守り、この2人なら大丈夫だと物語の余韻に浸りながら満足した。
悪く言うとご都合主義な物語が多いこの界隈では、いわゆる物語の登場人物は思い出を糧に未来へ歩いて行ける強さをもっていることが多いが、思い出だけでは前に進めないことだってある。特に現実はきれいごとだけでは立ち行かないことが多い。
そう、頭ではわかっていても、実際に五感で触れてみないと心の底で納得できないことなんていくらでもある。

ここで、私はこの物語がとても現実味が深いことに気付いた。本編はファンタジックな演出が散見され、どこか創作であることを突き付けられ続けていた感じがあるが、これはとても現実だ。地に足着いた欲望だ。
蛇足だと思っていた物語にある種の衝撃を受け、それを綺麗に救済されてしまったらもう涙せずにはいられないだろう。
もはや私は、彼らの幸せに心の中でスタンディングオベーションするしかなかった。(実際にはスコッチ片手に「君たちの幸せに乾杯!」なんて阿呆なことをやっていたが)



ここまでの前置きはともかく、この物語は触れててみて最高だったと思えるものであり、この作品も本編で純分に語りつくした物語をさらに掘り下げるとても意義のあるものだったと感じた。
同時に新規2ストーリーがどちらもコンセプティブで納得の感動だった。
セックスもシチュが攻めてる感じでとても良い。惜しむらくはSummerなのに水着Hがなかったことか(もしかしてこの価値観古い…?)。
十分シコれましたので満足です。ぐへへ。


最後に佐倉(黒野) 雨音は最高だ!ということでこの感想を締めくくりたい。
のんべぇのテンションでチラ裏に書くような文章を書きなぐってすみません。








超どうでもいいことだが、高天原を「たかまがはら」と読むのは私の考え方と相容れないなと感じた。