ErogameScape -エロゲー批評空間-

optimistさんのToHeart2 AnotherDaysの長文感想

ユーザー
optimist
ゲーム
ToHeart2 AnotherDays
ブランド
Leaf
得点
90
参照数
1239

一言コメント

いくぶんシナリオの盛り上がりにばらつきはあるものの、個人的にはToHeart2の続編として楽しめた。批判の多い郁乃シナリオがむしろ一番好きかもしれない。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

郁乃・春夏さん・菜々子のストーリーをどう捉えるかでだいぶ評価が変わると思う。
まーりゃん先輩は…まあ、うん、ああいう人だし。
エロゲの続編としては、普通に主人公貴明として前作でエッチできなかったサブキャラ全員と結ばれてエッチできるのが筋だろう、というのはたしかにもっともだ。

だが待って欲しい。
このゲームにおいては必ずしもそうは言えないのではないだろうか。

まず郁乃ストーリー。
あえて主人公貴明ではなく、恋人の妹である郁乃目線で話が進み、最終的には貴明ではなくプレイヤー(開始前に名前入力)と結ばれる、という流れ。
たしかに貴明と結ばれてもなんらおかしくはない。
ただ、愛佳と郁乃とのつながりの強さを考えると、こういう設定でのストーリーも自然なものだと思う。
もちろん、それが唯一正しいなどとは言わない。
そして、こういう視点でのお話は珍しく斬新で、最後のサプライズ含めてもっと評価されていいと思う。
ヒロイン視点であることで、郁乃の心情が事細かに描写され、どういうことを考えていてどういう人物なのか分かるのが私にはとても面白くうれしいことだった。
そのキャラを好きってのは相手のことを知りたいってことだから。
知ってますます好きになる。

続いて春夏さん。
春夏さんは他のヒロインとははっきりと立場が異なる。
幼なじみの母親で”人妻”だ(夫は存命中)。
貴明は衆人環視の中で正々堂々と告白してはっきりと振られるけれど、
春夏さんにとっては(受け入れるわけには絶対にいかなくても)しっかりと女性として見てくれて告白されたこと自体はうれしいことだった。
それでお話としては十分の筈だ。
冒頭のエッチな妄想で限度だろう。
もし本当に春夏が告白を受け入れてエッチしてしまったら、間違いなく寝取りで不倫である。
柚原家崩壊は目に見えている。
それがToHeart2というあたたかでほのぼのとした世界にそぐわないことは明らかだ。

そして菜々子。
彼女は建前上どうあれ、どうみても〇学生だろう。
そんな子と付き合うことまではできても、実際にエッチしてしまうことが本当にあっていいのだろうか?
ありえない。
そういうゲームじゃないだろう、ToHeart2って。
好きだからいいだろう、とか、エロゲだからエッチしないとおかしい、とか言うのはさすがに無理があると思うよ?
ちょっとドキドキする甘やかな時間を一緒に過ごし、できれば一生側にいて欲しい――という思いを抱くに至る、という締め方は(お話のボリュームは物足りないが)十分納得のいくものだと思う。

そんなわけで郁乃、春夏さん、菜々子のストーリーはゲームの世界観の中で自然な形でまとめられていると思う。

話を戻して、
たしかに郁乃目線から見た貴明ってやつぁ、どうしようもない。
モンキー貴明でヘタレキング?
でもそういう奴だから仕方がない。
なんでそんなやつに惚れちゃうんだよ。
なんでだろうね?
恋しちゃったから一緒にいたいんじゃない。
一緒にいたいと思うのが恋、らしいよ?
だから答えなんてない。

そんな好き嫌いを除いて考えれば、シナリオ自体はサブキャラのアナザーストーリーとして十分楽しめる出来だったと思う。
ひいき目もあるけどさ。
ヘタレ同士のよっちシナリオなんて極上じゃないかい?

CG・音楽は安心のクオリティ。
OP曲のボーカルが変更になったのが最初ちょっと違和感あったがケチをつけるほどではない。