何も考えずに、田舎の夏をのんびり楽しむ作品。
いわゆる田舎ゲーというものは沢山ありますが、ここまで何も起こらずに、ただただその何もなさを味あわせようという作品は結構珍しいと思います。シナリオを求める方にははっきり向かない作品であると言えると思います。
私はこのコンセプトがなかなか良いと思いました。田舎のいい雰囲気の中、登場人物はとても少なく舞台もほぼ二箇所というとてもシンプルな作風で、これ以上の何らかの特性を各所に出してしまうと作品がいずれかの方向に傾いてしまう為、あえてこれだけにした、あまり特色を出さずにただただユーザーを狐と一緒に田舎でのんびりさせてやろうという意思が感じられました。ですがそのコンセプトを守り通そうとするあまり、田舎ゲーやケモゲーに対して我々が一般的に望む要素が少し物足りなかった、薄かったような気もします。ケモ成分で言うと例えば、折角ぴょこぴょことうごめくお耳や尻尾を一日一回は甘噛みして困らせたいだとか、もふもふの尻尾にこれでもかと包まれて眠りたいだとか、自然な状態、自然な形でのケモとのふれあいの描写があまりなく、また舞台となる田舎の情景も、その特異性やノスタルジーがそこまで前面に出てくるわけではありません。悪く言うとどちらも少し中途半端な気がして勿体無い気がするのですが、あえてそう作ったのでしょう、夏の終わりに各駅停車に乗ってどこかの田舎に目的もなく行ってしまうような、そんな何もなさが心地いいという方には、その喜びをそれなりの水準で味わえる雰囲気ゲーであると思います。
でもこの作品の出来から言うと、やっぱりもうほんのちょっとだけでいいのでケモケモしたかったです。この作品はケモ度でいうと「2」そのもので、ホントもう少しだけでいいので、野生や本能的な部分と触れ合ったり、人間との差異に対して温かい目で愛でたり、狐の神秘性を表現したりと、作品のバランスを崩さない程度に「3」に近づける描写があったら嬉しかったなと思います。個別に入ってからのエロ展開もちょっと拙速に感じましたし、また作風から言えば決して悪くはないのですが、ケモノものとしてはエロスが少し淡白というかありきたりで、ほんっと二匹ともめちゃくちゃ可愛いのですが、もうほんの少しだけ踏み込んでみてもよかったかなと、中程度のケモナーの私は思ってしまいました。
化け狐ってほんっといいものですね。決して悪くはない、でも惜しい!そんな佳作という評価にさせて頂きました。かわいいタペストリーがついてきたので+1点です。