そんなに良いとは思いませんが良いところもあり。前作が秀作、今作は普通ときて次は正念場でしょうか。
まず、私は先輩ルートで留学のお話が出る所あたりが個人的にマイナスでした。「留学」「婚約者の存在」「実は期間限定の滞在」、この三つは普通のイチャラブゲーにおいてとても安易なアクセントであると個人的に思っております。これらが出てくる作品は前後の関係性が乏しいままイベントを配置しただけのものになりがちで、いきなりそのようなネガティブな要素を突きつけられても我々は最後まで対象を愛し抜くことが難しく、心酔度が低い状態、もっというと「んじゃもういいよ」のような心理状態に陥りやすいと思っております。上手いライターさんは上記三点を入れたとしても全体の流れに最小限の影響しか与えない処理を上手に施し力量を見せつけるのですが、こちらでは先輩ルートの留学だけとはいえ若干比率が大きかった上、そのような安易さ、安直さが全体の完成度にも少し影を落としているような、大味な感じが見受けられました。コンセプトであろう明るく楽しい恋愛をただただ過ごす事についてはそれなりに成功しているとは思いますが、それでももう一段階安心の出来る、安定したイチャイチャを楽しみたかったなあというのが基本的な感想です。
肯定的な要素としては全キャラとても可愛いです。普通に可愛い女の子たちが(まあ普通に)自分の事を好きになり、普通に甘えてきてくれる、それなりの水準には仕上げられているとは思います。ただやはりそれだけでは面白い作品というまでには至らず、そういったコンセプトに対しさらに水準を引き上げる要素、恥ずかしくなるくらいのバカップルぶりやら意外性のある濃厚なエロスなどという突き抜けたものは見受けられず、前作のハートフルで素晴らしい、かの秀作と対比してちょっと落ちてしまったなと言わざるを得ないと思います。なんか短いようにも感じましたしね。
さて、それではHDDから消そうかという所ですが私は個人的な思いから消しておりません。特に大した作品ではないとは思いますが一点、素晴らしく秀逸であるという事が個人的にあります。それはメインヒロインの白取叶ちゃんのキャラ設定に他なりません。最近特に思うのですが、我々のような思い出迷子と言うべきクサレ人種にとって、このような超正統派ヒロイン・・・学校生活、部活も勉強も友達付き合いも明るくはつらつと楽しみ、恋に落ちたら一途に元気に大好き、チュッ!エヘヘみたいな感じは本当に眩しく、どうやって好きを回避しろと言うのか、女の子にとっての白馬の王子様みたいなもんじゃないかとすら私は思いました。銀髪+オッドアイで表現するシックで儚げで上品な印象に対し、人懐っこく楽しそうに笑いながら主人公を見る目は恋する女の子、隙あらばしっかり好きになっちゃうんだからね?みたいな感じが本当にたまらない。このようなクラスに一人いるかいないかという高嶺の花を絶妙な距離感に配置しつつ人懐っこいキャラ付けにするのはとてもズルく、且つ大変効果的な手法だと知りました。積極的に舌を絡ませてくる描写も見事、エッチシーンでは仰向けになりながらもぷくりと膨らみを主張するおっぱいを着衣から覗かせる。高嶺を落とした後に待つ至高の喜び、我々が望もうにも届かない願いに触れさせてくれたような、そんな気にさせて頂きました。
方向性は少し違うのですが、前作WithRibbonで終始表現されていた、このライターさんの特徴であろう「安定感+かわいさ」「丁寧さ」は引き継ぎ、また可愛い女の子とはなにかという矜持や魂が決して枯れていない証左であるような気が私はしました。クリスマス前に新品中古含め4本入手し、レビューを書こうと思ったのはこの作品だけというのが少しさびしい今のエロゲ業界を表していると思いますが、ですがユロットと読むのですか、ここの作品は次も必ず買います。我々をもっと身悶えさせてください。頑張れ。