ErogameScape -エロゲー批評空間-

okjさんの戦極姫4 ~争覇百計、花守る誓い~の長文感想

ユーザー
okj
ゲーム
戦極姫4 ~争覇百計、花守る誓い~
ブランド
げーせん18
得点
75
参照数
2299

一言コメント

戦極姫も今回で4作目。回を追うごとに物語は演出強化され、ゲームシステムはより遊びやすく改良されているが、果たして両者はうまく融合しているのだろうか?シンプルな作りで内政より合戦を重視したゲームシステム、天下統一ADVANCEの流れを汲む東軍SLG家、対するは立ち絵演出を用いたメインヒロインとの物語を中心とする西軍ADV家、シナリオモードにおける両者の争いは増すばかり……今がまさに天下分け目の大勝負かもしれない!?

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

本作品は戦国SLGを楽しみながら美少女化した戦国武将とエッチできるのが魅力の一つである。シナリオモードでは徳川家、武田家、上杉家、伊達家、島津家、足利家に関係する物語も楽しめて2倍お得!になるはずが、ゲームパートとADVパートのちぐはぐさが気になってしまい、思ったよりもゲームにのめり込むことが出来なかった。

★点線と実線の違い、分断される実線
戦極姫4のようなターン制歴史SLGは百機夜行のような1ステージクリア型SLGと比較した場合、演出に凝った長めのイベント(ADVパート)とは相性が悪い。1ステージクリア型SLGは1つのステージを大きな点とするならば各ステージ間には時間経過がある場合が多く、例えるなら『点線』といえる。一方ターン制歴史SLGは1ターンを1つの小さな点とするならば1ターン、2ターン、3ターン……と常に連続しており、小さな点がつながった『実線』とみなすことができる。1ステージクリア型SLGは点線なので点と点の間に長めのイベント(ストーリー)を挿入することによって、うまくステージ間を『つなげる』ことができる。つまりはゲームと物語が融合しやすいシステムであるが、ターン制歴史SLGはゲームパートそのものが常に連続しているので長めのイベントを挿入するとゲームパートが途中で分断されたように感じてしまうのだ。そう皮肉なことにADVパートが濃密に、魅力的になるほどゲームパートから遠ざかる結果になってしまう。

★背中合わせのゲームとイベント、すれ違う2つの要素
戦極姫4シナリオモードでの不満はメインイベントが進行する条件の大部分が総石高であることだ。石高は新たに城を取るか治水開墾した場合などで上昇するため、ある戦国大名を数十ターンかけて滅亡させる寸前でも総石高の条件を満たした場合、次のターン冒頭でいまのゲーム状況とは関係ないイベントが発生してしまう。総石高が一定以上になった場合、唐突に決められたイベントが進行するため、ゲーム状況とイベント内容がうまく合致しないのだ。また徳川家を除くと侵攻方向に制限はほとんどなく自由にプレイできるため、用意されたイベントとゲーム状況が矛盾することも起こりうる。実際伊達家でプレイ中、伊達輝宗死亡後のイベントで3万の敵に侵攻され、迎え撃つ伊達家は八千弱の兵しかいない窮地に追い込まれる。だがゲームパート上では敵に攻められることもなく、ゲーム上の兵力も数万あったためイベント上の都合で窮地に追い込まれたと言われても何だかすっきりしないのだ。

★達成感だけじゃない、小さな目標の積み重ね
ゲームと物語を融合しやすくする方法が徳川家のシナリオモードには存在する。徳川家シナリオモードの特徴としてはゲームパートで侵攻できる国が決まっている点である。そして侵攻できる国を平定するとイベントが進行して次の目標(侵攻できる国、例えば北信濃)が与えられる。イベント発生条件が総石高でなく、指定された国(複数の場合あり)の平定や指定された国へ初めて侵攻したときなどにイベントが発生する。これが他のシナリオモードとの違いになる。つまり小さな目標を設定し達成を繰り返させることによってゲームの進行状況にあわせたイベントを段階的に挿入することができるのだ。短所は自由に侵攻が出来なくなることだが、自由なプレイを求めるならシナリオモードではなく群雄モードをプレイすればいいので大きな短所にはならない。ただし徳川家のシナリオモードは1本道なので不満がないわけではない。

基本的に通常のシナリオモードは天下統一という最終目標があるだけで自由にプレイでき、総石高の上昇に応じてイベントが進行する。一方徳川家のシナリオモードは決められた目標を達成すること(ミッションクリア方式)によって段階的にイベントが進行するためゲームと物語が一体化しやすくなっている点が評価できる。ただ個人的に目標(ミッション)は画面上に表示して欲しいしミッションクリア条件にはターン制限を付け加えたい。目標を明確にすることでユーザーは何をすればよいか分かりやすくなりモチベーションも向上すると思うし、ターン制限はミッションの成否によってその後の展開を変えることができるので1本道になりがちな物語を改善できると考えるからである。

★進化する演出と現行システム
徳川家のシナリオモードで一番残念だったのは終盤の見せ場、関ヶ原の戦いがADVパートの演出のみでゲームパートでの戦闘がなかったことだ。おそらく現行のゲームシステムでは合戦するマップが狭すぎるため、いろんな場所で数多くの武将が戦闘する関ヶ原の戦いをうまく表現できなかったためと思われる。ただ戦極姫シリーズはSLGをメインとしたエロゲーだと思っているので、ADVパートの演出のみで関ヶ原の戦いに決着がついたのがとても寂しかった。

★基本は変えずにプラス思考?で夢想してみる
関ヶ原の戦いを表現できるようにゲームシステムを改善する案としては大きく分けて2つ。
1)システムを一新する
2)システムを改良する

ただシステムを一新した場合、戦極姫ではない別の何かになってしまうような気がする。あくまで現行のシステムもかなり利用したい。そうすると現行システムを改良するしかないが今までの遊戯強化版での改良を見ていると、関ヶ原の戦いを表現できるような大きな変化は望みにくい気がする。現行システムを改良するのが難しいのなら、現行システムに新しいシステムをひとつ追加したらどうだろうか?現行システムは通常戦用として利用し新しく追加するのはイベント戦用のシステム、その名も国盗り合戦(仮)である!!

★夢想から妄想へ、システムの相乗効果
国盗り合戦(仮)では、その名の通りに国を1マップのフィールドで表現する。例えば山城の国なら1マップ内に二条、比叡山、伏見、勝龍寺、槙島の5つの城があることになる。戦国武将は配下の兵を含め1ユニットとなり合戦を行う。合戦はターン制。国盗り合戦(仮)を導入するにはミッションクリア方式が必須になる。例えばユーザーが三好家でプレイ、ミッションが『山城の城2つ攻略、期間15ターン』だった場合、15ターン以内に通常戦(現行システム)で二条、比叡山、伏見、勝龍寺、槙島のどれか2つの城を攻略したターンの終りに国盗り合戦が発生。イベント戦に移行する。

★イベント戦は『大きな点』
イベント戦はもちろん新しい見所になるが、大事なのは通常戦(現行システム)でどの城を攻略したかによってイベント戦の内容や難易度が変化するということである。二条、槙島と攻略し南北から挟み撃ちにするのか、勝龍寺と伏見を攻略し敵勢力を二つに分断するのか……というように戦略面でも楽しくなりますよ~。ターン制限された中、いかにうまく立ち回って城を攻略するのか。イベント戦の導入で通常戦(現行システム)の価値が大幅アップする、かも?

★ゲームとエロの関係も?
最後にエロの話をちょっとだけ。戦極姫4でエッチな回想シーンの数が多いのは評価できるのだが、総石高がある程度上昇してメインヒロインとのイベントが進行した場合や政略フェイズでひたすら武将と逢い続けた場合などに発生するご褒美エロばかりなのが残念でした。SLGであることを生かして、いろんな条件下でエッチなイベントが発生して欲しかった。もちろんイベント発生条件は必要だが、鍛練中とかマイナスイベント(一向一揆や疫病など)が発生した場合など、ゲーム要素に関係してエッチなイベントが発生すればエロゲーのSLGらしくていいんじゃないかな。あとは凌辱シーンが少ないのも物足りなかった。せっかく戦国の世なので、もっといろんな要素が混じりあって欲しかったですね。ん?CS化を見越してゲーム要素にエロを絡ませると面倒?何を言っているのかよく分かりませんね~(笑)

数少ないSLGメインのエロゲーなので次回作がどうなるのか気になりますが、望みはただひとつ。今より面白くなることだけなんですけどね。ゲームと物語とエロと……って欲張りですか?いやいやエロゲーマーは欲張りだから仕方がないのです!





どうでもいい話ですが、ターン制歴史SLGにイベント戦を追加したら1ステージクリア型SLG+ADVと似たような線になりましたね!