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okjさんのGEARS of DRAGOON ~迷宮のウロボロス~の長文感想

ユーザー
okj
ゲーム
GEARS of DRAGOON ~迷宮のウロボロス~
ブランド
ninetail
得点
80
参照数
1622

一言コメント

間違いだらけの用語説明!?アベスターグ:秘宝(九尾)に宿るエロの力を危険視し破壊しようとするギルド。ルーチェ「エロなんて悪よッ!ゲームパート(RPG)に力を注ぐのよッ!」ハーミット:秘宝を平和利用し、規制による資源問題(おかず)を解決しようとするギルド。エレン「やっぱり基本は物語だよ。もっといい物語を研究しないと……」ベスティア:秘宝による新たなエロの誕生を目論む、狂信者組織。シータ「エロがないエロゲなんて無価値ね。」さあラディくん、家族(ユーザー)のために何処と手を組む?

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

何か一つだけが正しいわけではない。理想は全ての要素(ゲーム・物語・エロなど)が100点満点なのかもしれない。しかし現実は選択する自由はあるけれど常に制限という枠がつきまとう。悩みもがき苦しみながら一つにまとめ上げるのだ。全てのステータスがカンストしない、完全無欠にならないからこそいろんな特徴があって面白いのだ。

本作品ギアドラはゲームパート(RPG)メインの作品です。よく『人を選ぶ作品』という言葉を聞きますが、ギアドラに関しては『人(ユーザー)が選ぶ作品』の方がしっくりきます。
ユーザー自身がゲームシステム内の各要素を取捨選択することによって、いろんな楽しみ方ができるようになっていると思うのです。

ゲームシステムはたくさんの要素があります。6人パーティ編成、10種類以上の職業、11種類の攻撃防御用属性、13種類の異常ステータス、敵の耐性・弱点・体質、7つの刻限、ダメージ限界、スキルツリーシステム、リミットブレイク、スペジャルスキル、アサルトチェイン、研究室(魔石)、厨房(料理)、ギルドルーム、ギアカスタム、裏娼館システム……。これでもか、というくらいギュウギュウに詰め込まれたゲームシステムなので、初見で全て把握しようとすると煩雑に思えるかもしれません。

面倒くさいことは嫌だ、シンプルな洗練されたシステムが好きだ、という人にはお勧めできませんがそうでなければ十分楽しめると思います。というのは洗練されたシステムを懐石料理に例えるなら、ギアドラのシステムは食べ放題のバイキングになるからです。ユーザーは自分の好きなものを好きなだけ食べればいいのです。

敵の体質を気にしなかったり、魔石で装備品の改造なんていらねえよという豪気な人もいれば、綿密に計算してアサルトチェインに全てをかける!という人もいるでしょう。全ての能力がカンストした状態(装備品などの吟味も含む)なら一番効率の良い戦い方という答えは存在するのかもしれませんが、そうでなければユーザー自身がこれだっ!と思う戦い方で楽しめばいいのですから。ユーザー自身が望めばいろんな種類の要素があるので長く楽しめるというのがギアドラの特徴と言えるでしょう。

ただいろんな要素を詰め込んだ為の欠点もあります。使えるシステムとあまり使えないシステムがあるように各システム間で格差があるため、あまり使えないシステムを使う為にはユーザー自身が積極的にそのシステムを選択する必要があるからです。例えるならバイキングレストラン「ギアドア」人気メニューのアサルトチェインをあえて食べずに、他の料理(ギアカスタムなど)を食べてみようかなって感じでしょうか。

一時的にアサルトチェインが使えないという状況を作れば他の要素の必要性も増すかもしれませんが、ユーザーは自ら制限することは許容できても制限を強制されることを嫌う傾向があるので、選択する自由があるバイキング方式は受け入れやすいかもしれません。

ゲームシステムで一番評価したいのが敵の強さをユーザー自身がある程度調整できることです。ゲーム中に難易度変更(イージー、ノーマル、ハード)出来るだけでなく、主人公たちが戦うことによって敵の強さも上がるのですが、汚染された竜骸魂を破壊することによって段階的に敵の強さを下げることができます。ここでもユーザー側の選択によって敵の強さを調整するシステムになっています。

ゲームパートでの不満はキャラ育成(装備品含む)とバトルに偏っている点です。3Dダンジョンと迷宮のウロボロスというサブタイトルから迷宮内で仕掛けや罠、謎などがたくさんあると妄想してしまったので、隠されていない隠し通路(笑)やボタンを押すとあらわれる通路系、落とし穴やダメージ床ぐらいしかないのは非常に残念でした。3Dダンジョン定番の一方通行、ワープ、回転床、ダークゾーンもなかったなぁ。個人的には歩くシリーズ:歩く罠(落とし穴など)・歩く宝箱・歩くボスなどのちょっとした工夫での変化もみたいのだけど……。ちなみに歩くシリーズの他には、走る・逃げる・飛ぶなどがあります。主人公に取りつく(尾行する)1マスしかないダークゾーンとか、壁に貼り付く落とし穴とか、あえぐ回転床とか……ヤバイ!妄想が止まらなくなってきたぞ!!

制限という枠があるためにキャラ育成とバトルにかなりの力を注ぐのは理解できます。ですがダンジョン内でのワクワク・ドキドキ感をなくしてもいいわけでもなく、残された力でもっと足掻いて欲しかったな~、と。それはゲーム以外の要素(物語・エロ)にもいえることなんですけど。

エロゲRPGはゲームパートに大部分の力を注ぎこみます。いくら物語が面白くても、エロがよくても肝心のゲームパートがつまらなければゲームをプレイしてもらえないからです。だってそれならADVやればいいじゃん、ってなりますよね。ただしゲームパートをより面白くするのに物語やエロは欠かせません。

本作の物語はゲームシステムと同様に目一杯詰め込んだなぁという印象です。物話が壮大なうえ多くの仲間になるキャラクターが登場し、さらにロウ/カオスルートに分岐するため、かなりのボリュームが必要になります。さらにエロいイベントも各所に挿入しなければならず、もうパンパンです(笑)というかオーバーフローしてるよね!5冊分のボリュームがある小説を無理矢理1冊にまとめたみたいになってます。1冊にまとめるためイベントをかなり削らなければならず不足分を用語辞典で補足しようとしていますが、ユーザーと製作者の間で世界観や過去の出来事に関しての浸透度に隔たりがあるため物語に感情移入しにくい気がするのです。燃えを意識し過ぎたラディくんの性格設定などにも感情移入しにくい理由があるとは思いますが……。

ロウルートがアベスターグ+ハーミット寄り、カオスルートがベスティア寄りの物話になっていますが、どれか一つが正しいという話ではないのでどちらのルートでもモヤモヤ感は残ります。個人的にはニュートラルルートでサクシードが新たな道を切り開く!というルートが欲しかったですね~。オーバーフローしているのにさらにルートを追加しようとする私。『もうらめぇええ!お腹がパンパンなの~~~』

……。さてエロに関してですが、カオスルートはそこそこ満足しました(主にルーチェ凌辱)がロウルートは残念の一言。カオスルートは凌辱シーンがあるためかエロ回数も多いのですが、ロウルートでは極端にエロ回数が少ないのです。シリアスな物語の展開によってエロが挟みにくいのは分かりますが少し工夫が足りないな~という感じがします。なぜか凌辱シーンも1回?だけあり、ロウルートだから凌辱展開が駄目だというわけではなさそうなのでロウルートのエロ減は残念でなりません。(捕縛した弥勒の前でシズナとラブラブエッチなんて面白いと思うけどな~)

他に気になったのはヒロイン毎にロウ/カオスルートで個別エンド(エッチシーンが無い場合もあり)を用意したのはいいのですが、これがとってつけたようなものが多いことです。あるヒロインが共通ルートやロウルートで特に親しくなるようなイベントがない状態でも、好感度が高く条件をみたしていれば個別エンドになってしまうのです。(唐突感ハンパないっス)せめて好感度上昇とともに段階的にイベントが発生してほしかったな~。ヒロイン数を増やした影響でヒロイン一人あたりの濃度が薄くなってしまったことが関係するのかなぁ?

ゲームも物語もエロもいろんな種類を用意して、その中でユーザーが好きなものを選び遊んで欲しいというのがギアドラなのでしょう。だからこそ『ユーザーが選ぶ作品』というのが相応しい気がするのです。ただ制限という枠がある以上、いろんな要素を詰め込んだゲームシステムを中核にするのならば、物語やエロは種類を絞って濃度を濃くした方がエロゲとしての完成度は高くなるのではないでしょうか。でもこのギアドラこそが九尾らしくていいのかもしれませんね。