ErogameScape -エロゲー批評空間-

okjさんのSINCLIENTの長文感想

ユーザー
okj
ゲーム
SINCLIENT
ブランド
BOOST5
得点
50
参照数
1088

一言コメント

エロはおまけ、エロはおまけ、エロはおまけ、大事なことなので3回言いました。マルチエンディング主流の中、あえて選択肢のない一本道のゲームにしたのなら興味深いのですが、果たして……。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

本作品は選択肢のない1本道のストーリーで構成されています。これがいわゆる紙芝居ゲー?いや電脳小説?それともユーザーが楽しめればAVGといえるのでしょうか?

はじめに選択肢の有無について考えたいと思います。選択肢がないということはユーザーの意志が反映されにくい。基本的に小説やアニメ、映画などには選択肢がなく、ゲームの特権と言えるかもしれない。しかし本作品では選択肢がないためストーリー上の都合により雫と恋人になってしまう。雫より他のヒロインが魅力的に感じるユーザーにとって不満が募ることでしょう、何故他のヒロインが選べないのか、と。

ただし選択肢があっても万全とは言い難い。例えば美奈、舞、雫、シャーロットの4人が選択できたとしても、人によっては京や冬華、未来やシスティーナを選択したい人もいるだろう。選択肢があっても100%ユーザーの意志を反映することは出来ないのだ。しかし選択肢を用意することによって、ユーザーの許容範囲は確実に広がる。選択肢を無しにした場合、この大きな長所と同等の価値が生まれるのでしょうか?

また選択肢にはもう一つの隠された長所があります。それは一時停止です。本作品のエピソードBABYLONでは場面転換が多用され次から次へとイベントが起きます。同時並行でイベントが発生し進行するためユーザーが情報を整理しにくい。ストーリーに奥深さをもたせる為に場面転換を多用したと思うのですが、怒涛の展開が続くのでユーザーが情報を整理するために一息いれるタイミングが難しいのです。

そこで重要なのが選択肢の存在です。選択肢があることによってユーザーは一息いれて情報を整理し考えることが出来るのです。今まで知り得た情報をまとめ、その後の展開を想像して選択肢を選ぶ。この想像するという行為がゲームを楽しむ上で大事な要素であり、想像する時間を確保するために選択肢という一時停止が必要なのです。

逆に選択肢がないことの長所は、ヒロイン攻略に必要な手間を省くことができる、ひたすらストーリーに没頭できる等が考えられます。メーカーにとっては選択肢がない方が製作する手間が掛からないので、違う方面(例えば演出)に力を入れることが出来ます。ただしその結果が必ずしもエロゲ(ゲーム)としての楽しさ・面白さに繋がるとは限らないのですが……。

このように選択肢のもつ役割は非常に大きく、ゲームの中で重要な要素だと思うのですが選択肢がないゲームは駄目なのかと言われるとそうとも言い切れない。ズバリ選択肢に代わるものがあればいい。それは何?ということになりますが、本作品の感想と大きく外れてしまうし需要もないはずなので割愛しちゃいます。(か、考えてないわけではないですよ!本当ですよ!!)

さて一本道またはマルチエンドに関してですが、一本道は分岐がないのでイベントひとつの質を高めることが出来ます。反面1週目で全てを見せ尽くしてしまうのでボリュームが少ない場合は特に物足りなさを感じるでしょう。ただしゴールはひとつでも途中は自由にできるので物語に幅を持たせることが出来ます。ただ本作品は選択肢がない一本道のゴールなので物語の幅は狭い。ということは選択肢がない一本道に幅を持たせるにはそれなりの工夫が必要になる。残念ながら本作品にはそれは見られなかった。フルプライスで奥深さを感じにくい選択肢のない一本道のシナリオは非常に残念でした……。

余談になりますが一本道に幅を持たせる工夫として、視点変更や周回特典などがあります。ここでの視点変更の意味合いはキャラの視点をある程度の期間で変更するもので、ちょこちょこ変化させる場面転換とは異なります。本作品で例えると主人公徹、舞(CIA)シャーロット(CI-XX)美奈(BABEL)の各視点で物語を進行させます。分かりやすく言うと主人公変更でしょうか。さらに視点変更を表現するのはテキストだけではありません。当たり前のことなのですがエロゲ(ゲーム)はテキストだけにあらず、CG・音楽・効果音・CVなどが組み合わさってエロゲなのです。例えば徹が舞とシャーロットと会話しているシーンがあるとすると徹視点では立ち絵は舞とシャーロットですが、舞視点だと立ち絵は徹とシャーロットになります。そして大事なことは視点変更により背景も変わります。徹視点で見えなかったもの(ヒント)が、舞視点だと見えるのです。

周回特典はRPGやSLGに限ったものではありません。AVGでも周回特典を追加することが出来ます。例えば1週目はあえて60~70%の構成にして、2週目3週目でイベントを追加したり視点変更が出来るようにしたりすればよいのです。(選択肢を増やす、アイコンやコマンドを増やす、CG・音楽・効果音を増やすなど)


選択肢のない一本道のエロゲなので、もっと創意工夫して欲しかったというのが正直な感想です。個人的には立場の違いを生かして、内調(雫)、CIA(舞)、CI-XX(シャーロット)、BAVEL(美奈)の争いが見たかった。仲間と恋敵と任務の間で悩むヒロインたちの姿を……。そしてエロも(笑)