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okjさんの花色ヘプタグラムの長文感想

ユーザー
okj
ゲーム
花色ヘプタグラム
ブランド
Lump of Sugar
得点
65
参照数
724

一言コメント

綺麗な薔薇には棘がある、五色川特有の七つの花びらをもつ七華には何がある?

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

玉美、明日香、いずき、真乎、御湯利……可愛いヒロインたちとキャッキャウフフしていても何か物足りない。キャラクターのネガティブな要素(負の感情)を出来るだけ排除している様は、食材を煮込んで灰汁をしっかり取っているようである。ただ灰汁も食材の個性的な一部であり、スッキリとした味わい得るかわりにインパクトさに欠け、記憶に残る味(ゲーム)にはならない。

もっともメーカーとしては魅力ある原画を生かす(邪魔しない)ため無難な作りにしたのかもしれませんが盛り上がりに欠けるのです。フルプライスであることを考えるとちょっと厳しい評価、ミドルプライスなら納得でしょうか。ラーメンで例えるならラーメン専門店で800円前後のラーメンとしたらイマイチな評価、中華料理店で600円前後のラーメンなら納得、200~300円のカップラーメンでこの味なら十分満足できます。

ラーメンの構成要素をエロゲで考えると、スープはゲーム性を表すタレと物語(テキスト)を表すダシで作られ、麺はキャラ要素(CG、CV)とエロで、トッピングが音楽、効果音、動画(OP、ED)などで成り立ちます。RPGやSLGはゲーム性が高いのでタレの味が強いスープになり、ゲーム性が低く物語重視なAVGの場合はダシの味が強いスープになります。エロが充実している場合は満足感があるので麺の量が多いという表現になります。

さて本作品でのスープはタレをほとんど使わず、恋愛とジャパニーズファンタジーを主体としたダブルスープ。丁寧に灰汁を処理した透明感のあるスープに、素材(原画)の良さを生かした美しい色とりどりの麺(従来より20%増量?)見た目は淡麗系ラーメン!その味はというと……やっぱりスープの弱さが気になります。

よくありがちな恋愛の展開は、1)知り合い・友達状態から2)お互いが好きになり告白、3)恋人になって4)エッチへという流れになり意外性は低い。本作品でもそうですが萌えゲーで多いのが3)4)のイチャラブばかりがCGを用いて描かれるのです。やはり萌えゲーなら1)2)のイチャラブ過程のイベントを大事にして立ち絵とテキストだけで誤魔化さず、1枚絵のイベントCGをもっと増やしてヒロインの魅力を表現して欲しいな~。そうすれば原画家さんの魅力をもっと生かすことが出来ると思うのだけど……。

作品の独自性を出すにはもう一つの要素ジャパニーズファンタジーが重要になるのですが、どのルートでも内容が中途半端、主人公やヒロインの特殊能力(アンチアーク)もあまり活躍せず残念でした。アーク現象発生も解決も唐突・性急で、主人公たち周辺の狭い世界しか描写されていないのであまり面白くないのです。ヘプタグラムの活動は秘密裏なので、事件発生により困惑する村人の様子や事件解決後に落ち着きを取り戻す村人たちの描写がもっと欲しかったですね。

さて麺の出来ですが、かなりいい仕事をしてますね~。可愛らしいヒロインの姿、そして声もハマッてます。どのヒロインもエッチシーン毎に下着の柄が変わる気配りがあり、エロの破壊力は抜群!と言いたいのですが、テキストとCGのバランスや親和性にまだまだ改善の余地ありです。個人的にはさらにバストや局部アップ、ちょっとした手足の変化も欲しいかな。従来よりエッチシーンの回数が少し増えたのはうれしいですね~。ただその反面、キャラクターのネガティブな要素を排除したのは残念でなりません。重いシリアスな雰囲気は萌えの邪魔になるかもしれませんが、怒り、嫉妬、不機嫌、淋しさ、悔しさ、憂鬱などの負の感情はキャラクターをより魅力的にするのに必要だと思います。今回のお気に入りCGは明日香とエッチ後の教室内で隣り合わせに座っているシーン。エロい、エロいです。オチンチン再起動間違いなし!こういったエッチ後のCGがもっと増えないかな~

最後にトッピング、のんびりした五色川温泉郷の雰囲気にあった音楽が多いのですが、心に残るのは三味線の音がする五色節。御客様からの露天風呂貸切予約時間に関するクレームに対して、入浴の待ち時間まで玉美が三味線を弾く名シーンで聴くことが出来ます。でもちょっと待って、三味線を弾くという言葉の意味は……(笑)個人的には音楽に和楽器をもう少し使って欲しかったかも。特に村祭の曲は軽すぎる、太鼓の音などが良いと思うのですよ。演出に関して中身はよいのですがスキップ出来ないのはマイナスです。

もったいないと思ったのが七華の存在。花としての七華には何があるかと考えると、玉美・明日香ルートで八華という花は注目されますが七華の花としては特に語られず地味な存在です。シナリオ構成に関係することですが何故共通ルートから玉美・明日香ルートといずき・真乎に分岐させたのか?ぶっちゃけシナリオライターが2人だからというのが理由だったら悲しいなぁ。七華の花は桜色と空色の2種類あるので、桜色の七華、空色の七華で違う意味を持たせればそれぞれのルート対比が面白いんじゃないかな。

八華のエピソードは幸せを呼ぶ四葉のクローバーみたいなものでいい話ですね。でも八華が目立つと七華の存在が寂しくなる。ヘプタグラムが不可能を可能にする意味を持つのなら、同じ数字の7を表す七華も意味が欲しい。正七角形の見た目は不安定ですが正八角形だと安定感があります。七華に1枚の花びら足すと八華になる。そう七華には無限の可能性があるのではないでしょうか?そして花色ヘプタグラムもまた……。